変化の激しい環境において、企業は競争力を維持・高めていくことが求められています。
そのためにはコーポレート・トランスフォーメーションへの取り組みが欠かせません。
本記事では2024年6月に経済産業省から出された「グローバル競争力強化に向けたCX研究会報告書」の内容も踏まえつつ、CXの概要、DXとの関連、メリット・デメリット、そして成功のための戦略を解説します。
コーポレート・トランスフォーメーション(CX)とは?
コーポレート・トランスフォーメーション(CX)は、企業が経営戦略や組織体制を大きく変革し、取り巻く環境や時代の変化に対応するためのプロセスのことです。
ビジネス環境が急激に変化する今の時代においては、常に経営戦略の見直しや業務プロセスの改善、人材育成などを通じて、企業全体の競争力を向上させることが必要です。
この取り組みは、デジタルトランスフォーメーション(DX)とも関連が深く、ITを活用した業務改善や新たなビジネスモデルの創出が含まれることもあります。
企業にとってCXは、継続的な成長や市場での競争力維持・向上に重要な要素であり、顧客満足度や生産性の向上など多くのメリットを享受できるものです。
CXとDX、BXの関係とは
CXとDXの関係
CXとDXは、緊密に関連していますが異なる概念です。DXがデータやデジタル技術を活用し、企業が競争優位性を確立するためにビジネスモデルを変革する取り組みを指すのに対し、CXは「企業全体の根本的な変革」を目指し、経営戦略、組織構造、人材育成など、デジタル活用に限らない広範な要素を変革の対象とします。
現代の環境では、CXとDXは多くの点で重なり合い、相互に影響しあっています。業務改善や経営戦略の見直しを促進するためにはデータ活用やデジタル技術の活用が欠かせないため、CXの取り組みにはDX推進も欠かせない要素となっています。
CXとBXの関係
ビジネストランスフォーメーション(BX)は、企業が現在のビジネス環境において競争力を維持・強化し、持続的な成長を達成するためにおこなう取り組みのことで、ビジネス戦略や事業モデル、組織構造、業務プロセス、ITシステムなどの全体的な見直しや改革などを行います。
BXはビジネスプロセスやモデルの変革に焦点を当てており、その背景に前提としてCXが存在しているといえます。
CXが必要な背景
2024年6月に、経済産業省が「グローバル競争時代に求められるコーポレート・トランスフォーメーション(グローバル競争力強化に向けたCX研究会 報告書)」を取りまとめました。
CXが必要とされる背景には、グローバル市場環境の変化と日本企業が直面する課題が挙げられます。
過去20年間で途上国市場は急成長し、日本企業の海外ビジネスも大きく拡大しました。これまで日本企業は「日本で作ってモノを輸出する」形を中心にしてきましたが、近年では海外へ直接投資することが主流となっています。
海外市場へのビジネス展開に伴い、企業規模が大きくなり、組織や経営の複雑性が増大しました。しかし、日本の経営手法は依然として新卒一括採用や終身雇用、年功序列を重視し、現場に過度に依存する連邦型経営が多く見られます。こうした状況ではグローバルな競争環境に適応しきれず、企業全体の統制が弱くなります。これらの課題を克服し、組織の仕組み化と現場力の強化を図るため、CXの推進が急務となっています。
従来型の日本的経営の課題
グローバル市場に対応するにあたり、従来型の日本的経営手法は、いくつかの課題を抱えています。多くの日本企業では、部署ごとに業務プロセスを最適化しており、企業全体のプロセス把握がされていません。また、特定の個人の知識や経験に依存した業務も多く、属人化した業務も多く残っています。
これに加えてITシステムも、業務単位で最適化されたため組織ごとに分断されているケースがほとんどです。グローバル全体でデータが繋がっておらず、経営判断に必要な情報をタイムリーに把握できることができません。
日本企業ではこのような現場に過度に依存する連邦型経営が多く、組織全体の統制が弱くなり、統合的な経営戦略の策定が困難になっています。これらの課題を克服し、グローバル市場での競争力を強化するためには、組織横断でプロセスの可視化や再構築を推進する仕組みが必要です。
グローバル競争力強化のための方向性
グローバル競争力を強化するためには、現場力の高さと強いコーポレート機能の両輪が必要です。これにより、不確実性の高い市場環境においてもイノベーションを起こし、稼ぐ力を高めることが可能となります。
ファイナンス機能の改善
日本企業のファイナンス機能で大きな課題となっているのは、コーポレート部門内の分断です。
経営企画部門と経理・財務部門が別組織であるため、ファイナンスデータに基づく経営方針や企業戦略の策定、機動的な修正が十分に行われていません。
また、本社と子会社で異なる仕組みが使われており、データがシームレスにつながっていないため、数字の合算作業に追われることになります。その結果、市場や製品を軸とした現状把握や分析、全社レベルの経営判断が困難になっています。
これを打破するためには、過去の実績を基に未来予測を立て、経営意思決定に貢献できるようなデータドリブン経営への転換が必要です。市場環境や競争環境の変化に応じて機動的な判断ができる体制を構築するために、経理・財務部門は、従来の予算管理などのバックオフィス業務におけるリソースのひっ迫を改善する必要があります。
HR機能の改善
日系製造業の海外現地法人の従業員数は、この20年間で倍増しました。この多くの外国籍従業員に対して適切な人材マネジメントが実行できているかどうかが、企業の競争力に大きく影響します。これまでは日本人駐在員による現地法人の管理が一般的でしたが、海外ビジネスの急拡大によってその管理が難しくなっており、多くの企業が現地法人のトップにローカル人材を登用し、現地経営を任せるモデルを採用しています。
人材獲得のグローバル競争が激化する中で、優れた人材を引き付け、定着させることが企業にとって最重要課題となっています。そのためには、グローバル全体で評価制度を同一基準とすること、ビジネス上の重要ポストに必要なスキルを明確にすること、そしてグローバル全体の人材を可視化することなど、人事マネジメントの抜本的な見直しが必要です。
DX機能の改善
経営の複雑性を解消するためにはデジタル活用が有効な手段です。
しかし、日本の多くの企業では各部門や現場で独自の業務プロセスが構築されており、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に当たっても全社的な対応ではなく、部門や現場レベルの個別の活動が中心になっています。
全社目線で業務プロセス全体を可視化し、経営判断に必要なデータをタイムリーに把握できる仕組みを構築することが、迅速で適切な経営判断を可能にします。
まずは業務のサイロ化から脱し、全社目線でDXに取り組む必要があります。
業務改善ならシステムインテグレータ
コーポレート・トランスフォーメーション(CX)を実現するためには、業務効率化の妨げとなっているバックオフィス業務の改善が不可欠です。多くの企業では依然として属人化した作業やアナログ業務が残っており、これが企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化は、CX推進の第一歩です。バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
企業が今後、グローバル市場において競争力を高めていくためには、CXやDXへの取り組みが欠かせません。
まずは、業務効率化を妨げているアナログ業務や属人化された業務がないかを確認するなど、業務の棚卸しから始めてみるのがよいでしょう。これにより、業務プロセスの最適化が進み、企業全体の生産性向上につながります。
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