ROEとROAの違いとは?定義と算出方法、ROEの改善方法をわかりやすく解説

 2023.09.15  株式会社システムインテグレータ

投資家が注目する財務指標の一つに、ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)があります。どちらも企業分析に役立つ指標ですが、それぞれ計算方法や分析方法が異なるため、正しく理解することが重要です。

この記事では、ROEとROAの違いから定義や算出方法、ROEの改善方法を分かりやすく解説します。

ROEとは

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ROEとは「Return On Equity」の略で、自己資本利益率や株主資本利益率のことです。まずはROEの基本を詳しく解説します。

定義と算出方法

ROEは自己資本に対してどれくらい利益が上がっているかを示すものです。ROEでは「その企業の株に投資すると、どれくらい効率よく利益が得られるか」が分かるため、投資を考えている方は目安として把握しておきたい指標といえます。

なお、自己資本とは株主から出資を受けて得たお金をはじめ、返済する必要のない資産のことです。自己資本は純資産とも言い換えられ、総資産から総負債を引くと算出できます。

多くの日本企業がROEの数値改善に力を入れるようになったのは、2014年に経済産業省から公開された「伊藤レポート」がきっかけです。伊藤レポートは、企業の持続的な成長において指針となる報告書で、一橋大学の伊藤邦雄教授を中心としたチームがまとめています。

伊藤レポートの中では、日本企業のROEは欧米企業と比べ低いと指摘されており、実際日本企業のROEの平均が5%であるのに対し、欧米企業は8〜10%となっています。そのため、今後日本企業がグローバルな投資家から評価されるには、最低でも8%を上回らなければならないのです。

では、どのようにROEを算出するかというと、以下の計算式が用いられます。

ROE(%)=当期純利益÷自己資本(純資産)×100

例えば、自己資本1億円を元に企業が1事業年度活動し最終的に1,000万円の利益を上げた場合、1,000万円÷1億円×100=10%となり、ROEは10%です。

ROEは10%を上回ると投資する価値のある優良企業だといわれていますが、業種によって多少数値にバラつきがあります。以下に、業種ごとのROEの目安をまとめました。

ROE(自己資本当期利益率)(2021年度)

業種

ROE(自己資本当期利益率)

全体

9.7%

卸売業

13.1%

鉱業、採石業、砂利採取業

12.8%

情報通信業

12.6%

製造業

9.8%

サービス業

9.1%

個人教授所

8.7%

物品賃貸業

7.8%

小売業

7.5%

学術研究、専門・技術サービス業

6.4%

クレジットカード業、割賦金融業

6.4%

飲食サービス業

5.1%

電気・ガス業

1.9%

生活関連サービス業、娯楽業

-0.7%

(出典:経済産業省企業活動基本調査

ROEからわかること

ROEが高ければ高いほど、自己資本をうまく使って効率よく利益を生み出している会社であり、反対にROEが低いほど経営効率の悪い会社となります。また、ROEが高い場合は投資する価値があると評価され、投資してもらいやすくなります。そのため、ROEの数値は株価を左右し、経営に影響を与えるといえるでしょう。

ただし、ROEは総資本のうち他人資本の比率が高ければ相対的に上がり、自己資本を増やすと相対的に下がります。

ROAとROEの違い 

ROEと類似されるものに「ROA」がありますが、ROEと併せて覚えておいた方がよい用語です。ここでは、ROAの概要とROEとの違いを解説します。

定義と算出方法

ROAとは「Return On Assets」の略で、総資産利益率を指します。つまり、総資産に対する利益を測る指標です。総資産とは、自己資本と返済が必要な他人資本を合わせた全ての資本をいいます。

なお、ROAは以下の計算式で算出可能です。

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

例えば、総資産3億円を元に企業が1事業年度活動し最終的に3,000万円の利益を上げた場合、3,000万円÷3億円×100=10%となり、ROAは10%になります。

ROAは5%を上回れば投資する価値のある優良企業だといわれていますが、業種によっても多少平均値が異なるため、一概に判断できません。業種ごとのROAの平均は以下の通りです。

 

ROA(総資産当期利益率)(2021年度)

業種

ROA(総資産当期利益率)

全体

4.1%

鉱業、採石業、砂利採取業

8.8%

情報通信業

6.4%

卸売業

5.1%

製造業

5.0%

サービス業

3.5%

小売業

3.3%

学術研究、専門・技術サービス業

2.8%

個人教授所

2.4%

飲食サービス業

2.0%

物品賃貸業

1.2%

クレジットカード業、割賦金融業

0.78%

電気・ガス業

0.44%

生活関連サービス業、娯楽業

-0.2%

(出典:経済産業省企業活動基本調査

ROAからわかること

ROAもROEと同じく、数字が高いほど効率よく利益を上げていると分かります。しかし、異なる点として、ROAは設備の規模も考慮して数字を見なければなりません。

例えば、事業拡大や設備投資など、経営としてプラスの理由で資金の借り入れをした場合にも数値は低下します。また、多額の負債を抱えていたとしても、多くの利益を生み出している場合はROAも高く出てしまうのです。

ROAの数値は経営の状況を判断するのに役立ちますが、より正確に分析するにはROAだけでなく、他の指標も見ることをおすすめします。

ROEとROAの違い

ROAは、借入金といった負債も全て加味した総資産に対する経営効率を見る指標であり、ROEは自己資本をどれくらい効率的に活用しているのかを見る指標です。つまり、ROEとROAの2つの指標を活用すれば、会社の経営分析ができるのです。

ROEが高くROAが低い場合、負債が大きく、倒産のリスクがあるといえます。また、ROEが低くROAが高い場合、財務レバレッジを活用しきれていない恐れがあるでしょう。

なお、財務レバレッジとは、他人資本を含めた総資産が自己資本の何倍になるかを見る数値です。財務レバレッジを計算すれば、総資産の中でどの程度他人資本が占めているかの割合が分かります。

ROEの注意点

投資価値を判断する際は、一般的にROEは高い方が良いとされます。しかし、あくまでROEは企業を評価する要素の一部であり、信頼しすぎると経営リスクを見落とす恐れがあります。そのため、ROAといった他の指標も慎重に見ていかなければなりません。例えば、以下のケースで考えてみましょう。

  • A社:総資産100億円(内訳:他人資本60億円・自己資本40億円)・当期純利益10億円
  • B社:総資産100億円(内訳:他人資本30億円・自己資本70億円)・当期純利益10億円

この場合のROEは以下の通りになります。

  • A社のROE:当期純利益10億円÷自己資本40億円×100=25%
  • B社のROE:当期純利益10億円÷自己資本70億円×100=約14.3%

一見、A社の方がROEの数値が高く良い企業であるように見えますが、健全性を考慮した場合、負債の少ない(自己資本の割合が多い)B社の方が経営基盤が安定しているといえます。つまり、ROEだけで投資の判断をするのではなく、他人資本も考慮したROAも判断に取り入れ、ROEの弱点を補うことが重要です。

ROEを改善する方法

ROEが低い場合、ここで解説する対策を行うことで高められます。ポイントは、当期純利益を増やすことと自己資本を減らすことです。

当期純利益を増やす

当期純利益とは、段階的に計算された利益の内の最終的な利益です。当期純利益率の割合が高ければ企業の収益力が高いことになり、割合が低ければ企業の収益力が低いことになります。当期純利益を増やすには、売上総利益・営業利益・経常利益のそれぞれを高めなければなりません。

売上総利益を増やす

企業にとって売上総利益を増やすことは、ROEを高めるために最も重要といえます。

売上総利益が低い状態は、商品の弱さや原価の高さを表しています。したがって、売上総利益を高めるためには、利益率の高い商品を開発する・仕入れコストを削減する・在庫ロスを削減するといった対策が必要です。

営業利益を増やす

営業利益とは、売上総利益から販売費と一般管理費を差し引いたものです。

同業他社と比較した時に、売上高総利益率に大きな差がないにもかかわらず営業利益率が低いとしたら、販売費や一般管理費の比率が高まっていることになります。過剰な人員はいないか、無駄な経費が発生していないかなど、販売費と一般管理費を削減すべきでしょう。

経常利益を増やす

経常利益とは、一定して得ている営業利益と営業外収益を指します。

営業利益率までは大きく変動していないのにも関わらず、経常利益率だけ大きく下がっている場合、営業外費用が負担となっている恐れがあります。特に支払利息は重要であり、企業の中には売上高の数10%の利息を支払っているケースもあるのです。無駄な設備投資を行ったがために、過大な借入金の金利負担が発生するようなことは避けた方が賢明です。

売上原価の見直し、販売費および一般管理費の削減など、コスト管理を行うことは経営の大原則といえます。また、売り上げ単価を上げて売上を増やすのはもちろんのこと、収益を得るのに直結しないコスト削減をするのも一つの方法です。具体的には、在庫の保管コストや収益の獲得に直結しない宣伝広告費などを削減対象とし、売上に影響が出てしまう人件費は避けましょう

総資産回転率を高める

総資産回転率とは、企業がどれくらい総資産を有効活用し、売上を上げられているかを見る指標です。総資産回転率の計算式は以下のようになります。

総資産回転率(回転)=売上高÷総資産

1.0より大きいと総資産回転率が高いといわれています。総資産回転率が高い状態は、「投資→販売→回収」のサイクルがスムーズに回っており、効率的に総資産を運用できているため、会社にとって理想的な状態です。反対に、総資産回転数が1.0を下回る場合、総資産の運用効率が良くないといえるでしょう。1.0付近であればそれほど問題はありませんが、大きく1.0を下回るような場合は「売上高が小さい」か「総資産が大きすぎる」のどちらかが原因です。

また、総資産回転率が低くなるパターンとして、「資金調達で総資産を増やしたが、売上は伸びなかった」といったものがあります。総資産回転率を高くするには、総資産を抑えつつ売上高を伸ばすことが必要です。少ない資本で効率よく収益を伸ばすためには、遊休資産といった不要な資産を減らすことをはじめ、工夫をしなければなりません。例えば留保利益が多い場合は、新たに事業や設備に投資をして営業規模を拡大したり、不良在庫がある場合は適正在庫となるよう管理したりすると良いでしょう。

また、総資産回転率の平均はおおよそ1.0〜1.1といわれていますが、業界によっても数値に差があります。

総資産回転率の平均

業種

総資産回転率(2022年)

全体

1.0

水産・農林業

1.3

情報通信業

1.0

卸売業

1.5

建設業

1.0

サービス業

1.2

小売業

1.4

電気機器

0.8

石油・石炭製品

1.1

食料品

1.1

鉄鋼

0.8

パルプ・紙

0.8

電気・ガス業

0.6

空運業

0.7

(出典:ザイマニ

財務レバレッジを高める

ROEを改善するには、財務レバレッジを伸ばす方法もあります。財務レバレッジとは、他人資本を含めた総資産が、自己資本の何倍になるかを見る数値です。

レバレッジ(Leverage)を直訳すると、てこの原理を指します。財務レバレッジとは、他人資本を「てこ」として収益を増やし、ROEを大きくすることです。そのため、財務レバレッジを把握すれば、どれくらい他人資本を事業に使っているのかが分かります。他人資本を使うことで相対的に自己資本の割合が低下するため、ROEを高められるのです。しかし、財務レバレッジを高めすぎると、他人資本という負債への依存度が上がり、経営状態が悪くなる恐れもあります。レバレッジを利かせた取引は大きな収益を得られる可能性もありますが、その分リスクも大きいため、資産状況に注意しましょう。

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まとめ

ROEは自己資本利益率を指し、自己資本に対してどれくらい利益を上げているか、つまり会社が効率よく利益を上げられているかを見る財務指標です。また、似た言葉にROAがありますが、これは総資産利益率を指し、総資産に対する利益を測る指標です。ROEの数値だけでは経営状態を把握できませんが、ROAによって補えます。

ROEを高めるには、「当期純利益」を増やし「自己資本」を減らすことが大切です。負債と投資のバランスを見て対応してみましょう。

なお、企業の収益性を分析する際は、数値を正しくデータとして管理する方法がおすすめです。特にERPであれば企業の資源を一元管理し、有効活用できます。分析に必要な情報を常に最新の状態で出力することで、効率的に分析を行えるでしょう。

ERPの基本について解説した資料もありますので、ぜひあわせてご覧ください。


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