CSV経営とは?事例と合わせてメリットを解説!

 2024.08.23  株式会社システムインテグレータ

現代の企業は、環境問題や人権問題など多くの社会課題に責任を持って取り組む必要があります。社会課題の解決を目指す経営手法として、「CSV経営」があげられます。

本ブログではその定義やメリット・デメリットを詳しく解説し、CSV経営が企業と社会にもたらす影響についてご紹介します。

CSV経営とは?

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CSV経営とは、企業が社会的課題の解決と経済的価値の創造を両立させる経営手法です。CSVとは「Creating Shared Value」の略で、日本語では「共有価値の創造」といいます。ハーバード大学のマイケル・ポーター教授によって提唱された概念で、社会的な貢献は経済的な利益には直結しないという考えを覆した概念です。 

CSRとCSVの違いとは?

混同されがちな単語に「CSR」があります。CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が社会や環境に対して責任を果たすための活動のことで、ビジネスの成長とは直接的な関係性は見られません。一方、CSVは社会課題解決と経済的な価値創造を同時に追求する経営手法で、社会貢献がそのまま利益につながるような戦略をとります。

CSRは主に対外的なイメージアップに貢献し、CSVは企業価値向上や競争力強化に繋がります。

CSV経営が注目される背景

CSV経営が注目される背景には、社会課題の増加や消費者ニーズの変化などがあげられます。

世界的な環境問題や地域格差、健康問題などはますます深刻化し、企業に対して様々な責任や対応が求められるようになっています。
そのような社会背景もあり、消費者は、商品やサービスの価値だけでなく、企業の社会貢献活動にも関心を持つようになっています。 

このような背景から、企業はCSV経営に注目し、取り組むことが求められるようになっています。

CSV経営のメリット

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CSV経営のメリットは主に、競争力の強化や利益向上、企業イメージの向上が挙げられます。これらが重なり合うことで、企業は持続可能な成長が可能となります。

企業のイメージ向上

CSV経営を取り入れることで、企業は社会課題解決に貢献し、その姿勢が消費者やステークホルダーに評価されやすくなります。これにより、企業の信頼性やブランド力が向上し、市場での競争力が強化されることが期待できます。さらに、従業員のモチベーション向上や新たな人材の獲得にも繋がります。

社会問題の解決への貢献

今はすべての企業に社会問題への解決に対する取り組みが求められています。 

例えば2015年9月の国連総会で採択された国際目標にSDGs(エスディージーズ)があります。Sustainable Development Goalsの略で、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれています。これは持続可能でより良い世界を目指すために定められた国際目標で、2030年までに達成すべき目標として17のグローバル目標を掲げ、具体的な成果を出すために169のターゲット(達成基準)と232の指標が行動指針として示されています。 

その他にも、企業が利益追求だけでなく持続可能性(サステナビリティ)も両立するための変革を目指すSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)などの考えも重視されています。 

CSV経営を行うことで、このような企業として対応すべき社会課題への取り組みとビジネスにおける利益創出を両立することができます。 

ダイベストメントの回避

環境や社会的課題に対する取り組みは、ダイベストメントの回避にも繋がります。ダイベストメントとは、投資家が投資を引き揚げる現象のことです。近年はESG投資の拡大により、企業の環境や社会への悪影響を理由に投資から撤退する動きが活発になっています。

CSV経営を実践することで、環境保護や社会課題の解決に積極的に取り組む企業は市場から高い評価を受け、投資家の信頼を獲得できます。 

CSV経営の課題

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 CSV経営には、長期的な視点や投資が必要であるため、取り組む際には以下について理解しておく必要があります。 

一企業では課題解決が難しい

社会課題の解決は、一企業の力では難しい場合が多くあります。地球規模の環境問題や、根深い社会問題に対処するには、企業同士の協力やパートナーシップ、政府や地域との連携が不可欠です。そのため、単独で取り組むことが難しく、多くのリソースを必要とする場合があります。

他企業やステークホルダーなどとの連携を通じて、持続可能な社会づくりに貢献し、自社の成長につなげることが期待されています。 

取り組みが長期的になる

CSV経営は、企業が社会的課題の解決を通じて価値を創造する取り組みであり、経済的成長と持続可能な環境を両立させることが目的です。

この目標を達成するためには、長期的な視点での取り組みが必要です。具体的には、ビジネス戦略の策定や地域との関係構築、研究開発活動などが挙げられます。

短期的な利益が出るものではないということを理解し、長期的な視点で事業を進めましょう。 

CSV経営の実践方法

Young creative business people at office

CSV経営を実践する方法としては、自社の強みやリソースを活用しながら、社会的課題の解決に取り組むことが重要です。

自社製品の見直し

自社製品の見直しは、企業がCSV経営を推進する上で重要なステップです。例えば、環境や健康に対する影響を最小限に抑えるような製品設計や材料の選定をするなど、既存製品の見直しだけでなく、社会課題の解決に貢献する価値を提供できるような新サービス・製品を新たに考えることも必要です。

顧客や市場のニーズを適切に把握し、製品の販売戦略やプロモーション活動を見直すのも有効でしょう。 

サプライチェーン・生産プロセスの見直し

サプライチェーンや生産プロセスを見直し、コスト削減や効率化を目指すだけでなく、環境や社会への影響を最小化し、持続可能性を追求することが求められます。

サプライチェーンを見直して環境負荷の最小化をはかったり、生産プロセス全体を見直して無駄のない生産システムを構築したりといった対応が必要です。

温暖化への取り組みとしてはカーボンニュートラルカーボンフットプリントといった対応があげられます。 

産業クラスターの形成

産業クラスターの形成とは、企業同士が連携し、地域の経済発展や雇用創出、環境改善に貢献することです。具体的には、以下のアプローチがあります。

  • 連携による競争力向上:同業他社や関連産業との連携を通じて、競争力や事業規模の拡大
  • 地域資源の活用:地域特性や資源を活用し、地域に根ざした事業活動を展開
  • 知識・技術の共有:企業間で知識や技術を共有し、イノベーションを促進

このような取り組みを通じて、一企業だけでは難しい社会課題の解決にも寄与できるビジネスにつながります。 

先進企業に学ぶCSV経営事例紹介

group of young business people having fun, relaxing and working in creative room space at modern startup office

ネスレ日本株式会社

ネスレは、家族やペットの生活の質を高めるため、ネスレの長年の経験と研究開発の専門知識を活かして、安全、手頃な価格、持続可能、そして高品質な製品の提供に取り組んでいます。また、世界中の農業コミュニティや農業従事者が、自身や家族を養うことができるような、公正な仕事の提供や支援も積極的に行っています。

https://www.nestle.co.jp/csv/whatiscsv 

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、2050年までに二酸化炭素排出ゼロを目指すなど環境への取り組みを実施しています。この取り組みでは、エコ素材の使用、リサイクル技術の開発、生産ラインでの二酸化炭素削減や水使用量の最小化を行い、循環型社会を目指しています。また、気候変動、水不足、資源枯渇、生物多様性の損失など地球環境問題の解決に向けて、NGOや地域社会と連携してCSV活動を推進しています。

https://global.toyota/jp/sustainability/esg/environmental-policy/ 

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、2013年は日本で初めてCSVの名称を使った部門(CSV本部)を発足させ、CSVを経営の基軸に据えました。

「酒類メーカーとしての責任」「健康」「コミュニティ」「環境」の4つの分野でCSV活動を推進しています。

具体的な活動には、健康被害を減らすためのアルコールの適正飲酒への取り組みや、原料生産地の持続的な発展への取り組み、ペットボトルの再利用による資源削減などがあげられます。

https://www.kirinholdings.com/jp/impact/

まとめ

CSV経営は、企業が社会的課題の解決と経済的価値の創造を両立させるための重要な手法です。本ブログで紹介した事例からもわかるように、取り組むべき課題は多岐にわたります。CSV経営を実践することで、企業は持続可能な社会づくりに貢献しながら、自社の成長を図ることが可能です。企業が環境や社会に対して積極的に取り組むことで、消費者や投資家からの信頼を得るだけでなく、長期的な競争力の強化にもつながります。CSV経営を導入し、持続可能な未来を目指しましょう。


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