ECRSとは?4原則の詳しい解説と具体例、実践の注意点も

 2023.02.21  株式会社システムインテグレータ

経済産業省がDX推進をおこなったことで、業種を問わず多くの企業がデジタル技術を活用した業務改革や業務改善を検討しています。そこで有効とされるのが、さまざまなフレームワークの活用です。

それらのフレームワークのひとつに「ECRS(イクルス)」があります。これは業務改善・効率化を図るフレームワークで、ECRSを導入すると、業務面だけでなくコストカットや職場環境の改善に役立つでしょう。

本記事では、業務改善の必要性を感じていながらも「何から着手すれば良いか分からない」という方向けに、ECRSを構成する4つの視点やその活用方法を解説します。併せて、導入時に気をつけるべきポイントも紹介します。 

ECRS(イクルス)の4原則とは

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「ECRS(イクルス)」は、「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(交換・再配置)」「Simplify(簡素化)」という4単語の頭文字を並べた言葉です。この4つの視点に沿って企業の受注業務を見直すことで、業務効率の足かせとなっている箇所を洗い出しやすくなります。また、洗い出された課題に対して順番通りに取り組むことで、より大きな業務改善効果が見込めるのが特徴です。さらに当初想定できなかった課題に対しても気づく糸口となります。

元々は製造現場における業務効率化を図るフレームワークでしたが、現在は小売業やサービス業など業種を問わずさまざまな企業に導入効果が期待できるものとして浸透しています。

また、変化には少なからずトラブルやデメリットも想定されますが、これらのネガティブな影響に関してもより少なく収まるとして注目されているのです。 

なお、業務改善に関する詳細は以下の記事で解説しております。
業務改善とは?目的や必要性、進め方の3つのポイント 

ECRSの4つの原則をそれぞれ解説

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4つの原則で構成されるECRSについて、具体的にどのような課題が洗い出されるのでしょうか。ここでは4つそれぞれの原則と具体例、実践のポイントを解説します。 

【E】排除 Eliminate

最初に取り組むのが「排除(Eliminate)」、つまり「現状の業務に排除(省略)できるものはないか」という視点です。排除はコストを伴わずすぐに実践できるため、ECRSの中でも最初の手順に位置づけられています。一つひとつの業務に対して「明確な目的があるか」「本当に必要か」を問い、排除した場合にほかの業務に支障が出ないかどうかを確認します。

コストといえば金銭が絡むものをイメージしやすい傾向にありますが、可視化できない「時間」「コミュニケーション」「人材やその人の体力」もコストに含まれます。単に排除という視点だけではなく、会議や前任者から引き継いだままの慣習を「見直す」という柔軟な視点で業務を振り返るのがポイントです。1つの業務を排除して全体で見た時の業務工数が減る分、その業務に要する時間や人件費というコストを抑えられます。具体的な排除(Eliminate)の例として挙げられるのは以下の点です。 

排除(Eliminate)の例

  • 目的が曖昧な会議や定例会の頻度・参加人数を減らす、または廃止する
  • 慣習となっている報告書や帳簿作成、押印をやめる
  • 出張をweb会議に切り替えることで出張費のを削減する 

【C】結合 Combine

排除の次に取り組むのが「結合(Combine)」です。複数の似通った業務をまとめる「結合」の他、複雑な業務を「分離」して簡素化できるものがないか検討します。担当者や工程で分断されていたものを集約、連続的に行うことで無駄な手間を省けます。E(排除)同様、着手する上でのハードルが低く、個々の従業員が得られるメリットも感じやすいといえるでしょう。

考え方のポイントは、ゼロベースで業務を見直してみることです。ある一連の業務を1人の担当者が行う場合、「誰が担当するのが最も効率的か」を検討します。例えば、発注業務を複数の部門の担当者がそれぞれ行っているとして、1人の担当者に発注業務を集約した場合のトータルの所要時間を比べます。1人が行った方が短時間で終了するならば、余分なリソースも減り、全体の作業効率改善を図ることが可能です。 

結合(Combine)の例

  • 出席者が似た複数の会議を同時に行う
  • 少人数で実施していた会議の参加メンバーを増やし、情報伝達の手間を省く
  • 類似する業務を複数の部署の担当者が行っている場合、集約する
  • 共通する部分は1人の担当者が行い、異なる部分は各メンバーで分担する 

【R】交換 Rearrange

E(削減)とC(結合)により、必要な業務が洗い出され、業務担当者を分担しました。続いては、交換(Rearrange)という視点です。交換のポイントは「1つ1つの業務に優先順位をつけて順番を入れ替える」「業務を行う手順や環境、担当者を変更・交換する」という点です。

E(削減)とC(結合)が難しい業務に関しては、交換や入れ替えによって業務効率を改善できないか検討しましょう。交換や入れ替えで担当者や機材の移動や待機時間を減らせるならば、改善効果があります。また、アナログな業務を効率化・時間短縮するICTツールの導入、専門業者への外部委託(BPO)も検討すると良いでしょう。 

交換(Rearrange)の例

  • 紙帳簿や判子の承認をワークフローシステム(デジタル化)に置き換える
  • 営業のアポイントは、より効率的に訪問できる営業ルートを組み立てる
  • 業務の棚卸と業務フローの見直しを実施し、より効率的な仕組みに再構成する 

外部委託(BPO)についてはこちらの記事をご覧ください。
BPOとは?知っておくべきメリットとデメリット、成功のポイント 

【S】簡素化 Simplify

ECRSの最後に行うのが「簡素化(Simplify)」です。業務が複雑になるほどヒューマンエラーは発生しやすくなります。トラブルを防止するために二重チェックを行いますが、チェックにかかる人員や時間はコストのうちの一つです。E(排除)が難しかった業務は、業務実態を見直し簡素化することで業務の難易度や複雑さを軽減できないか検討しましょう。

また、人間が行っていた作業を、RPAツールを用いて機械化・自動化することも有効です。 

簡素化(Simplify)の例

  • 繰り返し作成する資料や書類をテンプレート化し、都度作成にかかる時間を短縮
  • 作業マニュアルを作成し、属人化防止や育成コストを削減する
  • 経費精算などのデータ入力を専用ソフトによって自動化する
  • メールはチャットツールに置き換えて他の業務でも活用する

ECRSを導入するメリット

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ECRSの導入による大きなメリットは、業務のさまざまな要所でのコスト削減が可能な点です。また、業務全体がシンプルに整理されることで、職場環境に対するいくつかのメリットが期待できます。 

コスト削減

ECRSに沿って業務を精査すると、必要な業務だけが残ります。不要な業務を廃止・まとめられる業務はまとめることで、それぞれの従業員に求められる業務量や業務に費やす時間などの負担を減らせます。その結果、従来の業務を簡素化し省人化が必要な部署へ人材配置できるのです。自分の部署に限らず、組織全体の労働環境改善や生産性向上が見込めるでしょう。社内での身近なケースモデルとして、他の部署に対して良い刺激を与えるきっかけにもなります。

また、目先の金銭的なコストだけでなく、長期的な目線で企業成長を支える従業員という「人材」、各人が業務に費やす「時間」、心身の「体力」などさまざまな面にもメリットをもたらします。 

属人化の防止

特定の担当者が行う業務について、業務の詳細や進め方を本人しか把握していないことを「属人化」と呼びます。経験の長い従業員が担当する業務は作業スピードや正確性、成果面で見ても頼りになる存在です。一方で、その担当者の不在時や離職によって現場がうまく引継ぎを行えず、業務が滞り損失を生んでしまうリスクがあることを知っておかなければなりません。

ECRSでは、複雑で難易度が高い業務に関しても見直し、簡素化することで属人化を防止し特定の担当者に依存しない環境を整えます。簡素化された分作業スピードが速く、より効率的な生産フローを構築できる効果を得られるでしょう。 

情報共有の迅速化

組織としての規模が大きく業務上関わる関係者が増えるほど、迅速かつ正確な情報共有が必要になります。かつてはメールが主流でしたが、メールは少なからずタイムラグが発生するため、意思疎通が滞ってしまった経験がある方もいるでしょう。近年、メールの代わりに注目されているのが「チャットツール」です。チャットツールは画像データやクラウドを介したファイルの共有、メッセージ検索が可能で、セキュリティ対策も強化されています。

チャットツールは、ビジネスシーンに役立つ機能が付帯しており、国内企業でも導入が広がっています。これまでの履歴を確認しながら相手と連絡が取れるため、認識のズレが生じるリスクを減らせるでしょう。職場内でのコミュニケーションを活性化する糸口となり、職場内の雰囲気づくりにも寄与します。 

ECRS実践における注意点

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業務効率化に寄与するECRSですが、導入や実践にあたっていくつかの注意点を押さえる必要があります。ここでは、4つのポイントを見ていきましょう。 

目的を明確にする

ECRSを実践するにあたり、あらかじめ目的を明確にしておくことが大切です。ECRSでは4つの視点に沿って業務を見直し、改善によって業務の効率化を行います。先述した「コスト削減」「ICTツールの導入」は目的ではなく業務の効率化を達成するための手段です。そのため、「5の業務を3に減らす」「1か月後までにどこまでの取り組みを完了する」など、具体的な目標設定が必要となります。

コスト削減を重視するあまり、特定の部門に負担が偏ってしまっては逆に非効率で労働環境も悪化します。新しいツールを導入する場合も、いかに稼働させるかばかりを重視しては他の業務にしわ寄せが生じる恐れがあるので注意しましょう。 

対象となる業務の選定方法に注意

どのような業務においても改善は必要ではありますが、施策の実行には各種ツールの導入費用や変更に要する時間や人材とのバランスが大切です。そのため、より効果が見込める業務を優先して着手するのが賢明といえます。

なお、選定の際は、以下のような業務を優先しましょう。 

  • 費用対効果が高い
  • 総作業時間が長い
  • 発生頻度が多い
  • 業務に関わる人数が多い 

正確な業務フローの作成と浸透

はじめの段階で排除(Eliminate)に取り組むため、ECRSでは無駄を省くことに意識が偏る恐れがあります。省ける要素を見極める中で、必ず対になる「価値の創出」にも焦点を当てましょう。そのためには、業務を実際担当している現場担当者の声を丁寧にヒアリングし、現場が本来求めているものを把握することが大切です。

また、業務フローについて、効率的でも機械的なやり方では現場は疲弊してしまう恐れがあります。フレームワークに偏り過ぎず、施策を検討する管理職と現場担当者が二人三脚となってより良い在り方を重視しましょう。  

こちらでは、業務プロセスの改善方法を紹介しております。
業務プロセスを改善するには?手順と成功事例も解説! 

関係部署との協力体制を築く

ECRSによる業務の効率化は、周囲の関係部署との連携が不可欠です。企業という組織である以上、認識の有無によらず複数の部署で連携することで業務は円滑に進みます。人手不足や業務の多忙は、自分の部署に限ったことではありません。取り組みにより十分な効果を発揮するためにも、関係する他の部署から理解を得るための働きかけが必要です。社内全体で連携し、建設的な業務効率化を目指しましょう。 

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

ECRSのフレームワークを活用することで、「コスト削減による生産性向上」「情報共有環境の改善による社内コミュニケーションの活性化」「特定業務への属人化防止」などさまざまなメリットが期待できます。計画的に業務効率の見直しを図るため、抜けや漏れのない効率的な改善に役立ちます。

企業全体の業務最適化を目指すには、ERPと呼ばれるような企業の資源要素(人・物・金・情報)を適切に分配し、活用することが重要です。今回の記事と併せて、ERPの基本を分かりやすくまとめた資料「ERPのキホン〜ERPの基礎からDXへの活用まで徹底解説〜」も参考にしてください。


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