ビジネスプロセスの継続的な改善と業務効率化に効果的なことから、近年BPMの重要性が高まっています。ExcelやWordを使ってBPMを行うのはあまり適していませんが、BPMツールを利用すれば迅速にBPMの可視化・実施が可能です。
BPMツールによってBPMが容易になる一方、「どのようなツールを使えばいいのか分からない」という悩みを持つ方もいるでしょう。この記事では、おすすめのBPMツールを5つピックアップして紹介します。また、BPMツールの機能や導入のポイントも解説します。
BPMツールとは
BPMツールとはビジネスプロセスマネジメントを行えるソフトウェアを指し、「BPMS(BPM Software・System・Suite)」ともいいます。BPMツールによってビジネスプロセスの可視化をし、継続的な改善を進めていくことが可能です。
BPMツールを導入すると業務の進捗状況をリアルタイムで把握できるようになります。また、自動化によって人手が伴う作業の削減、属人化の防止、進捗管理による作業の遅延防止といったメリットが挙げられます。
BPMツールを使わずともBPMは行えますが、専門的なツールでないため時間や手間がかかり非効率的です。また、ビジネスプロセスを可視化し改善を加えても、管理・共有が難しくなってしまうケースもあります。BPMを効率良く行うためにも、フォーマットが統一されたBPMツールを使用した方が、管理作業をスムーズに行えます。
BPMとは
BPMは、「Business Process Management(ビジネスプロセスマネジメント)」を略した言葉です。企業では日々さまざまな業務が発生し、業務ごとに作業の流れやルールが定まっています。それらの業務を管理・可視化して、継続的な改善を進めていくマネジメントの方法がBPMです。具体的には、業務をタスクでなくプロセスで捉え、継続的な改善を前提に業務の流れを定型化し、定期的な監視を行います。
BPMの業務改善は、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)で進めていくのが基本です。まずはPlanで日々の業務について分析をし、業務プロセスの設計を始めます。Doでフローチャートなどを用いて、ビジネスプロセスの可視化を進める流れです。その後、Checkで新しく構築したビジネスプロセスを導入し、Actionで振り返りを行います。
BPMと混同されやすいものに「ワークフローシステム」がありますが、この2つは定義や搭載されている機能が異なります。ワークフローシステムは、業務の流れを定義したワークフローを電子化し、自動化を行うソフトウェアです。ペーパーレスによるコストカットや業務の効率化が可能ですが、BPMツールに搭載されているシミュレーション機能などがワークフローシステムにはありません。
BPMが重要視されるのは、業務に関してさまざまな効果があるためです。業務効率向上の他、プロセスの可視化によって課題や問題の早期発見、属人化の解消、品質安定などあらゆるメリットが見込めます。また、ビジネスプロセスは企業特有のものであり、他社からは把握できません。そのため、企業の競争力を高める上でもBPMは効果的な方法です。
BPMツールのおもな機能
BPMツールを利用する場合、長期的な運用が見込めるため、搭載されている機能を把握することが大切です。BPMツールには、「モデリング機能」「モニタリング機能」「シミュレーション機能」の3つが搭載されています。
モデリング機能
改善を進めるためにも、ビジネスプロセスの可視化は非常に重要で、各プロセスを理解するにはモデリング機能が必須です。BPMツールでは、このモデリング機能を使ってビジネスプロセスを可視化し、業務の全体像を把握します。業務プロセスをワークフロー図といった直感的なGUI(グラフィカルインターフェース)に落とし込むことで、処理の流れが分かります。また、モデリング機能は可視化を経て改善された業務プロセスを新たに設計したり、変更などを行ったりする際にも必要です。
モニタリング機能
モニタリング機能は、再設計したビジネスプロセスを監視することで、再設計時の動作確認や稼働状況を見る機能です。モニタリング時に問題点が見つかれば改善を加え、BPMにおけるPDCAサイクルを回します。
シミュレーション機能
再設計したビジネスプロセスを実行した際に、動作や影響を分析し予測する機能です。効率良く複数のビジネスプロセスを予測し、シミュレーションで出た結果の比較ができます。シミュレーション機能によって、再設計したビジネスプロセスで問題がないかどうか、実際の業務で目標達成ができるのかどうかの検証が可能です。
「モデリング機能」「モニタリング機能」「シミュレーション機能」の3つを繰り返すことによって、BPMツールは効果を最大限に発揮できます。
他ツールとの連携機能
BPMツールには、モデリング・モニタリング・シミュレーション機能以外にも、他ツールと連携可能な機能が搭載されています。他のツールとデータの送受信処理を行い、複数のビジネスプロセスと連携が行えます。連携するプログラムの作成数を減らせるので、各ツール1対1での接続が不要です。
BPMツールを導入するメリット
BPMを導入すると、業務における課題の迅速な発見や解決、スピーディーな意思決定、業務におけるプロセスの標準化や急な変更に柔軟に対応できるでしょう。このようにBPMは、あらゆる業務の改善に役立つのです。
なお、業務改善の具体的な進め方についてはこちらの記事も参照してください。
業務改善とは?目的や必要性、進め方の3つのポイント
業務における課題発見に役立つ
業務プロセスにおける課題や問題を発見し改善につなげられる点は、BPM導入の大きなメリットです。BPMで業務プロセス全体を図式化すると、不要な作業・業務などの非効率な部分が表面化してきます。また、自動化できる作業を手動で行うといった、効率の悪い業務運営を浮き彫りにすることも可能です。BPMは課題点を可視化・発見することで業務改善に繋げることができます。
業務の標準化を実現できる
BPMツールは業務プロセスの標準化が可能で、企業全体の利益向上を図れます。標準化によって業務の属人化を解消でき、新しい従業員の投入や引継ぎなどがスムーズになるため、業務の品質が安定します。そして業務の品質が安定すると製品やサービスの安定につながり、顧客の信頼を得られ満足度も向上するのです。
業務プロセスの変更にも柔軟に対応できる
ビジネスを行う上では、業務プロセスに急な変更が生じるケースは少なくありません。BPMを導入することで、業務の細かい修正に加え、プロセスの変更・追加が可能です。このような特徴から、ビジネス上の急な変化や新規事業を立ち上げた際にも柔軟に対応できるため、積極的にBPMを導入する企業が増加しています。BPMによって業務プロセスの変更や追加、修正だけでなく、企業全体のビジネス環境に対する適応力も向上します。
意思決定がスムーズになる
組織全体の生産性向上を目指すには、高精度な意思決定を素早く行わなければなりません。BPMによってビジネスプロセスが可視化・最適化されれば、業務プロセスや各業務の目的・必要性などが分かりやすくなり、不要であったり形骸化してしまっている業務の削減や簡略化をやりやすくなります。
また、各業務への理解度が高まるため、メンバーや組織内の情報共有もやりやすくなり、各部署の意思決定もスピーディーに行えます。
おすすめBPMツールを5選ピックアップ
BPMツールは種類が豊富で機能やサービスが異なるため、自社に適したものを選ばなければうまく運用できません。そのため、運用費用の安さだけで判断したり、比較検討せず1種類のみを選んで導入したりするのは避けましょう。「自社に必要な機能がそろっている」「操作しやすい」「柔軟な対応が可能」などの条件を設け、複数のBPMツールを比較するのがおすすめです。BPMツールの大半はトライアル期間を設けているため、本格的な導入をする前に利用してみると良いでしょう。
BPMツールは海外製のものもありますが、ほとんどが日本語に対応しているため英語に詳しくなくても使用できます。
ここでは、おすすめのBPMツールを6つ紹介します。
intra-mart
「intra-mart(イントラマート)」は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートが提供するBPMツールです。現在の業務プロセスのパフォーマンス状況を確認できるだけでなく、過去の状況と比較したり、将来的な予測をだしたりといったことも可能です。また、ローコード開発ツールを利用することでシステム開発を容易にし、独自の業務や運用に合わせたシステム構築を実現します。
Ranabase
「Ranabase (ラーナベース)」は、株式会社ユニリタが提供するBPMツールです。無料で利用できるプランもあるため、エントリー向けのBPMツールといえるでしょう。直感的なUIのため簡単に操作できるのが特徴で、法人以外に学生や個人でも利用できます。業務フローの作成にはガイドやサンプルがあるため、継続しやすいツールです。
Ranabaseのプランは、フリープラン・パーソナルプラン・ビジネスプランの3種類です。フリープランは無料で利用できますが、業務フローなどの作成や編集ができるスケッチの枚数が5枚までと制限が設けられています。パーソナルプランは月額550円とリーズナブルで、スケッチの枚数は無制限です。なお、このプランでは閲覧ユーザーの利用料は発生しません。ビジネスプランの利用料は問い合わせが必要です。
BP Director
アシストマイクロ株式会社が提供する「BP Director(ビーピー・ディレクター)」は、ガントチャート形式を採用したBPMツールです。時間軸に沿って「誰が」「いつ」「何をしたか」が分かるため、状況をリアルタイムで把握できます。また、BP Directorはブラウザ上でワークフローやフォームを作成できるため、プログラミングの知識が必要ありません。ツールの提供は「クラウドプラン」と「オンプレミスプラン」の2つで、利用形態はサブスクリプション方式です。両プランとも利用料金は同じですが、詳しい費用は提供元に問い合わせましょう。
DataSpider BPM
「DataSpider BPM(データスパイダー・ビーピーエム)」は、株式会社セゾン情報システムズが提供しているBPMツールです。損益が発生した理由や原因、業務プロセスを可視化します。DataSpider BPMは、ドラッグ&ドロップに対応しており、操作が簡単です。無料ダウンロード版を30日間限定でトライアルできます。
利用体系は、基本パッケージとユーザーパックを組み合わせて購入する形です。基本パッケージはCPU単位で税別150万円、ユーザーパックはCPU単位が50の場合、税別100万円に設定されています。
octpath
株式会社アクロリアが提供する「octpath(オクトパス)」は、入社・退社の対応や支店の管理、備品の発注などのバックオフィス業務に最適なBPMツールです。octpathで日々の作業を登録することで、属人的な業務を削減できます。また、octpathは15日間の無料トライアルも可能です。
提供プランは現在、スタンダードプランのみの提供となっています。スタンダードプランの利用料金は、1ユーザーで月額1,650円です。業務設計支援の追加オプションもありますが、料金やサポート内容の詳細は問い合わせる必要があります。
Questetra BPM Suite
株式会社クエステトラの「Questetra BPM Suite(クエステトラ・ビーピーエム・スイート)」は、クラウド型のBPMツールです。ドラッグ&ドロップに対応しているため、ワークフローシステムはノーコードで開発可能で、現場主導の自動化を目指します。
プランはBasic・Advanced・Professionalの3つで、年次支払いと月次支払いに分かれています。年次支払いの場合、Basicは月額960円、Advancedは月額2,400円、Professionalでは月額3,840円です。年次支払いは、月次支払いよりも20%引きに設定されています。
BPMツール導入のポイント
BPMツールを導入する際、業務の状況によっては導入に手間がかかる場合があります。そのため、ツールを導入する前に業務上の課題を見つけ、現状を把握しておくと良いでしょう。また、導入後も継続した業務改善が求められます。
既存業務の見える化と業務課題の明確化
管理したい既存業務の見える化を行い、現状を把握します。現状を把握できていなければ、課題とする部分が見えず、BPMツール導入の費用対効果も分かりません。見える化にはフローチャートなどを活用し、業務の流れを細かく洗い出してみるのがおすすめです。
特に、業務が複雑である場合は業務内容やプロセスを洗い出し、そこから課題を明確にするのが良いでしょう。
ツールに合わせて業務プロセスを変更する
BPMツールは、提供元が推奨している使い方に合わせることでより効率良く活用できます。そのため、既存の業務プロセスに合うようにBPMツールをカスタムするよりも、業務プロセスをツールに合わせて変更するほうが良いでしょう。ツール導入時に業務フローの見直しからサポートしてくれる提供元もあるため、相談しながら進めていくことをおすすめします。
導入後もPDCAを継続する
BPMの目的は継続的な業務改善であるため、ツール導入後はPDCAサイクルを利用して改善を進めましょう。業務の効率化には、業務プロセスの定期的な見直しが不可欠です。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
BPMツールを導入すると、BPMを簡単かつ円滑に行うことができるようになるでしょう。BPMを行うメリットは、業務の課題発見や属人化の解消、高精度な意思決定などさまざまです。また、BPMツールに加えて業務自動化やシステム統合が可能なERPを活用すると、より業務プロセスの改善が進めやすくなります。
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