サプライヤーとは?ベンダーやメーカーとの違いから、選定方法・交渉のポイント・管理方法まで徹底解説

 2023.08.25  佐藤 嘉彦

ビジネスを成功に導くためには、良い製品やサービスを提供するだけでなく、それを支えるサプライヤーの存在が不可欠です。
サプライヤーとは一体どのような存在なのでしょうか?「サプライヤー」という言葉を耳にしたことがある方も多いかと思いますが、具体的な役割やその中心的な意味をしっかりと把握している方は意外と少ないかもしれません。また、サプライヤーと類似する言葉、メーカーやベンダー、バイヤー、ディストリビューターなどがありますが、これらはどう違うのでしょうか?

本記事では、サプライヤーに関する基本的な知識から、その選定方法、交渉術、そして管理方法までを詳しく解説します。

サプライヤーとは?

サプライヤー(supplier)とは、商品やサービスを供給する人・企業のことです。
ビジネスにおいて、サプライヤーは製品の部品などを製造して供給、納入する業者のことを指します。
自社から見たときの仕入れ先と考えるとわかりやすいでしょう。

業界によっては、サプライヤーに当てはまる業者が異なります。
例えば、小売業では、商品の仕入れ先のメーカーや卸問屋がサプライヤーとなります。
製造業では、原材料や部品などのメーカーや卸売業がサプライヤーとなります。

サプライチェーンとは?

私たちは日常的に数多くの商品に触れますが、これらのほとんどは様々な原材料や部品を利用して作られ、小売店を介して消費者の手に渡っています。
加工しない野菜や海産物も、生産者から最終的な消費者に届くまでの間に、いくつかの商流や物流のプロセスが存在しています。この商品や製品が最終的な消費者に届くまでの一連の過程(調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費)を、サプライチェーンと呼びます。このプロセスの中で繰り返される受発注や入出荷などの取引のサイクルは、鎖(チェーン)のような連続性があるため、サプライチェーンという言葉で表現されています。
このように、供給やビジネスの管理、システム運営など、さまざまな業務がサプライチェーンの中で綿密に行われているのです。

サプライチェーンについては以下の記事でも詳しく解説しています。

サプライヤーとメーカー・ベンダー・バイヤー・ディストリビューターの違い

これらはそれぞれ異なる役割を持っているのですが、立場によって呼び方が変わるところがややこしいポイントです。
例えば自社にとって原材料を提供してくれるのはサプライヤーですが、そのサプライヤーにとって自社はバイヤーであり、メーカーでもあります。
ここではそれぞれの役割についてご紹介していきます。

サプライヤーとメーカーの違い

サプライヤーは、製品の部品や原材料を供給・納入する企業や業者ですが、メーカーは、製品を設計・製造し、市場に提供する企業です。サプライヤーは、メーカーに特定の部品や原材料を提供する役割を担っており、メーカーはそれらの部品や原材料を組み立てて完成品を作り出します。
メーカーは製品の生産・品質管理・販売まで一貫して行うことができますが、サプライヤーはあくまで部品や原材料の供給に特化しています。このように、サプライヤーとメーカーは役割や機能が異なりますが、ビジネスにおいては緊密に連携し、製品の供給チェーンを構築・維持するために協力しています。
この場合、サプライヤーにとってメーカーはバイヤーでもあります。

サプライヤーとベンダーの違い

サプライヤーは、部品や原材料を製造・販売し、他の企業に供給することに重点を置いているのに対し、ベンダーは主に商品を売ることに重点を置いています。
サプライヤーは、ビジネスの運営に不可欠な部品やサービスを提供する役割を果たし、製品の開発や生産、運営のサポートしています。一方、ベンダーは、エンドユーザーや顧客に直接製品を販売して利益を得ることを主な目的としています。
サプライヤーはメーカーや中間卸に対して商品や部品を提供する立場、ベンダーは製品を直接消費者に売る立場と考えるとよいでしょう。

サプライヤーとバイヤーの違い

そのままですが、サプライヤーは提供する側、バイヤーはそれを買う側です。
つまり、バイヤーはメーカーでもありますし、ベンダーでもあります。
バイヤーが中間卸である場合、その先のメーカーやベンダーにとってのサプライヤーでもありますし、サプライチェーン全体においては後述するディストリビューターでもあります。
バイヤーは役割というより、買う側とシンプルにとらえるとよいでしょう。

サプライヤーとディストリビューターの違い

ディストリビューターは、サプライヤーが提供する製品を適切なチャネルや顧客に届ける役割を担っており、通常、商品の流通や在庫管理、販売促進活動を行っています。
卸売の中でも集荷や物流機能の提供に特化している業態を指して使われる場合もありますし、シンプルに自社の製品やサービスを取り扱っている業者を指して使われる場合もあります。
商品を供給する側のサプライヤーからすると、ディストリビューターはバイヤーでもあり、ベンダーでもあるので、より特定の役割を指す場合に使われる表現と考えるとよいでしょう。

サプライヤーの選定方法

自社にとって最適なサプライヤーを探すことは、自社の競争優位性を保つ上で重要です。
ここではサプライヤー選定の際のポイントについてご紹介します。

情報を収集する

優良なサプライヤーを探すには、当然ですがたくさんの情報を収集する必要があります。
情報収集の方法としては、インターネット検索、比較サイト、展示会、見本市、業界紙などさまざまな方法があります。また、業界イベントやセミナーに参加することで、最新情報や専門家からのアドバイスを直接得ることができます。さらに、競合企業や取引先、ビジネスパートナーとの情報交換も、有益な情報を得られる場となります。
情報収集の過程で得た知識や情報は、自社のビジネス戦略や意思決定に活用し、サプライヤー選定や取引を円滑に進めるための貴重な資源となります。
これらの情報源から適切な情報を効率的に集めるには、業界トレンドに明るいだけではなく、そもそもどんなサプライヤーを探しているのか明確である必要があります。

選定基準を明確にする

選定基準があいまいなままでは、正しくサプライヤーを評価することはできません。
QCDなどの要求事項を満たすことできるかどうか、という視点は大事ですが、その中でも優先順位をつけることでよりサプライヤー選定を効率的に行うことができます。
品質も価格も納期もどれも重要ではあるのですが、その中で最も優先するものが明確になっていると、どういった点に強みを持ったサプライヤーと商談を進めるべきか絞ったうえで選定することができます。
品質を重視するのであれば独自技術など技術力に強みを持ったサプライヤーから探すべきですし、安定供給が欠かせないのであれば供給力のあるサプライヤーから探すべきです。

長期的な関係が築けるか

サプライヤーと長期的な関係を築くことは、両者にとって利益があるため、意識しておくべきポイントです。長期的な関係を築くためには、信頼関係が重要です。そのため企業としての信用度をしっかり評価する必要があります。
サポートを含むコミュニケーションが円滑に行えるか、財務基盤は安定しているか、企業として各種統制が取れているかなど、長期的な関係を築くことができる企業かを見定めましょう。
近年では新型コロナウイルスの影響で経営状況が悪化している企業、安定供給が難しくなっている企業も多く存在しています。
サプライチェーンのレジリエンスを強化するという観点においても、できるだけ長期的な関係が築ける複数のサプライヤーと取引をする必要性が高まっています。

サプライヤーとの交渉術

サプライヤーとの交渉は、双方が利益を得られるように進めることが重要です。そのためには、自社のニーズとサプライヤーの能力を正確に把握し、互いに理解し合うことが求められます。
そのうえでコストを抑えるという観点において重要な2つの交渉についてポイントと解説します。

寡占化に対応する

寡占化とは、特定のサプライヤーしか選択肢がなくなってしまっている状態を指します。
サプライヤー(売り手)が寡占化してしまうと、売り手が強くなり、価格交渉などにおいて売り手有利な状態になってしまいます。
寡占化はいくつかの原因があります。
そのサプライヤーしか保有していない技術によって寡占化してしまっている場合、代替する技術を持った別のサプライヤーが登場するまでは寡占化が続いてしまいます。この場合自社ができる対策としては、そのサプライヤー特有の技術に依存しないよう自社製品側の仕様を変更することですが、それができるのであれば最初からそうしているという意味で難しいでしょう。

また、自社の納期や供給量の要求に応えてくれるサプライヤーがほかにいないため、結果的に寡占化してしまっているという場合もあります。この場合、自社の要求を変更することで他のサプライヤーが選択肢に上がってくるのですが、納期や生産キャパ以外にも自社独自ルールへの対応をサプライヤーに求めているケースも少なくなく、社内調整が困難なこともあります。
ですが、自社ルールの変更の影響と寡占化解消によるコストメリットを比較し、コストメリットの方が大きい場合は進めるべきでしょう。

こうしたリスクを加味したうえで、当初からサプライヤーの寡占が起きないようにするというのが理想ではありますが、なかなか理想通りにはならないのが難しいところです。

値上げに対応する

近年、経済の変動性が高まる中で、企業は様々な要因による商品やサービスの値上げに対応しなければなりません。例えば人件費や原材料の価格上昇、輸送費の増加などが、製品やサービスのコストに影響を与えます。
こうした背景からのサプライヤーからの値上げの要求を突っぱねてしまうと、下請法における買い叩きとなってしまう可能性があります。
自社のみに優位な価格交渉を行うのではなく、あくまで適正な価格での取引を目指すという考え方が重要です。

サプライヤーからの値上げがあった場合は、まず適正価格を算出しましょう。
ここでいう適正価格とは相場価格のことです。
値上げの要求が相場価格よりも高額な場合、適正価格程度への値引きの交渉は妥当と言えます。
この適正価格の調査の段階で、よりよい条件のサプライヤーがあった際には、そのサプライヤーと相見積もりを行うなど新しいサプライヤーの開拓を進めるとよいでしょう。

サプライヤー管理とは?

サプライヤー管理とは、サプライヤーの様々な情報を収集・整理し、それらの情報をもとにサプライヤーを評価し調達戦略に活かす活動です。
サプライヤーの情報は、サプライヤーの選定、評価、監査、品質管理、価格交渉などの様々なプロセスに必要です。サプライヤー管理は、企業の業務効率や競争力を向上させるだけでなく、製品やサービスの品質向上やリスク軽減にも寄与します。

サプライヤー管理の目的と重要性

サプライヤー管理の目的は、最適なサプライヤー選定を通じて、競争優位性を確保することです。製品やサービスの品質の向上やコストの最適化を達成し、顧客満足度を高めるためにはサプライヤー管理は不可欠です。
また、サプライヤー管理はリスク管理の観点からも重要です。取引先の信用リスクや供給リスクを評価することは、安定した事業運営には欠かせません。
さらに、環境や労働条件などのサプライチェーン全体に関わるCSR(企業の社会的責任)も、サプライヤー管理の重要な側面です。これらを適切に管理することで、企業はビジネスの持続可能性やブランド価値を向上させることができます。

サプライヤー管理の手順

サプライヤー管理の手順は、以下のように大別されます。

1.サプライヤーの情報収集

企業のニーズに合致したサプライヤーを見つけるために、業界検索やバイヤーの推奨などの情報収集を行います。

2.サプライヤー評価

サプライヤーの品質、価格、納期、サービスなどの観点から総合的に評価し、最適なサプライヤーを決定します。

3.契約管理

サプライヤーとの契約内容を明確化し、双方の役割と責任範囲をまとめます。

4.品質管理

サプライヤーが提供する商品やサービスの品質を継続的に監視し、問題があれば改善要求を行います。

5.価格交渉

市場動向やコスト構造を分析し、適切な価格で商品やサービスを調達するための交渉を行います。

6.サプライヤー監査

定期的にサプライヤーの業務遂行状況やコンプライアンスを確認し、必要に応じて改善提案を行います。

これらの手順を遵守することによって、企業はサプライヤー管理の効果を最大限に発揮し、競争力の向上やリスクの軽減を実現することができます。

サプライヤー管理のポイント

サプライヤー管理は、ビジネスにおいて重要な要素です。適切なサプライヤーを見つけて、製品やサービスを提供してもらうことで、企業は競争力を維持し、消費者へのサービスを向上させることができます。この記事では、サプライヤー管理のポイントを解説します。主なポイントには、属人性を排除する、公開情報の入手・更新を効率化する、非公開情報も入手する、などがあります。

また、業界や業者によっては、異なる取引や運営方法がありますので、それぞれの業界や企業に応じたサプライヤー管理を行うことが重要です。

属人性を排除する

サプライヤー管理において、属人性を排除することは重要です。個人が持つ特定の知識や経験に依存することなく、システムや手順を整備することで、より効率的なサプライヤー管理が行えます。例えば、取引先の評価基準や選定方法を明確にし、情報の共有や担当者の教育を行うことで、属人性を排除し、管理を改善することができます。

さらに、内部の情報共有や連携を強化することで、組織全体でのサプライヤー管理が可能になります。

公開情報の入手・更新を効率化する

サプライヤー管理においては、公開情報の入手・更新を効率化することが重要です。企業サイトや業界団体から得られる公開情報を活用することで、業界動向や競合状況を把握し、適切な判断が行えます。また、情報収集や分析に効率的なITツールを活用することで、より短時間で情報を取り入れることが可能になります。

また、定期的に情報の更新を行い、適切なタイミングでアクションを起こすことで、リスクの低減や競争力の向上に繋がります。

非公開情報も入手する

サプライヤー管理には、非公開情報の入手も重要です。公開情報だけでは把握できないサプライヤーの内部情報やプロセスを理解することで、より正確な判断や効果的な取引が可能になります。例えば、リアルタイムでの生産状況や納期状況を確認できることで、計画の立てやすさやリードタイムの短縮が期待できます。

非公開情報の入手には、信頼関係を築くことが重要です。良好な関係を維持し、サプライヤーから情報提供を受けられるよう、継続的なコミュニケーションを大切にしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
良い商品を安定的に市場に供給し、競争優位性を保つには適切なサプライヤー管理が欠かせません。
ですが、こうしたサプライヤーの管理や実際の調達の業務についてはまだまだシステム化されておらず、非効率なアナログ業務が残っているのが実情です。
例えばBtoB ECサイトを導入することで、調達から販売までサプライヤーにとっても、バイヤー(消費者)にとっても使い勝手の良いシステムを実現することができます。
こうしたデジタルシフトする企業の購買プロセスの変化に対応するポイントについてまとめた資料をご用意しております。
ぜひご覧ください。

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