「ERP導入にはいくらくらいお金がかかるのか?」ベンダーから見積を受け取って説明を聞いても、ERP製品ごとにいろいろなライセンスの価格体系があって、非常にわかりづらいと思います。さらに、ERP導入にはライセンス価格以外にも導入に必要なコストがいくつかあります。
ERP導入の価格構成
ERPを導入するとき、イニシャルコストとランニングコスト2つの種類のコストが発生します。いわゆる買取型(オンプレミス型)のERPでは、ライセンス、導入、開発に関わるコストがイニシャルコストになり、年額や月額で支払う保守料などがランニングコストとなります。
最近では、クラウドサービス型のERPも少しずつ増えてきており、月額の利用料のみでイニシャルコストがかからないものもありますが、初期導入費などとしてイニシャルコストが発生するケースもあります。
今回は、買取型のERP導入に関連するライセンス価格などの必要コストについて説明していきます。
ERPそのものについてはこちらの記事で詳細にご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
イニシャルコスト
イニシャルコストは、主に以下の3つで構成されているのが通常です。
- ライセンス価格
- 導入費
- 開発費
ライセンス価格
まず、ERPは会計、販売、生産、人事、給与など企業内の広い業務領域をカバーする複数の製品(以下、この製品単位を「モジュール」と呼びます)で構成されています。これらのモジュールが、それぞれ単一または複数の組合せで導入できます。
ライセンス価格は、導入対象となるモジュールと利用者数などによって決まることが多いのですが、そのライセンス価格体系にもいくつかの種類があります。
パターン1:基本ライセンス価格+ユーザーライセンス価格
基本ライセンス価格は、導入対象のモジュールを購入する価格と考えればわかりやすいと思います。それに利用者人数分のユーザーライセンス価格が加算される体系です。
サンプルケース:会計モジュールと販売モジュールを導入する場合、
会計モジュール基本ライセンス価格=200万円
販売モジュール基本ライセンス価格=400万円
基本価格合計=600万円会計モジュールユーザーライセンス10人分×5万円= 50万円
販売モジュールユーザーライセンス50人分×5万円=250万円
ユーザーライセンス合計=300万円
このケースでは、ライセンス価格合計は、基本ライセンス価格600万円+ユーザーライセンス価格300万円の合計900万円ということになります。
パターン2:ユーザーライセンス価格のみ
基本ライセンス価格は発生せず、導入対象モジュールに関する利用者人数分のユーザーライセンス価格のみが発生する体系です。上記サンプルケースでは、ユーザーライセンスのみということになりますので、下方に記載した300万円がライセンス価格ということになります。
なお、上述の「ユーザーライセンス」の意味において、利用者(ユーザー)の定義に2種類あります。1つは「同時アクセス利用者」、もう1つは「利用可能な最大利用者数(アカウント数)」です。1つ目の「同時アクセス利用者」の場合には、契約ユーザー数を超えてERPにログインすることはできません。もう1つの「アカウント数」は、利用するであろうユーザーを全員登録しておくことにより、登録されている人のみが利用可能になります。
パターン3:企業規模によるライセンス価格
一番少ないパターンですが、従業員数など(利用者数に近い意味)企業規模によるライセンス価格体系を採っているERPもあります。このケースでは、労働形態の多様化に則して、契約社員、パートタイマーなどの方々が利用者となる場合のルールが特別に設定されているようです。
導入費
導入費とは、仮にERPをカスタマイズやアドオンの開発なしに導入する場合にも発生する以下のような作業に関わる費用を指します。
- ユーザーの業務を分析してERP機能に適合するかどうかのFIT&GAP(要件定義)作業
- マスタ設定や操作方法の教育作業
- 古いシステムにあるデータを移行する作業 など
これらの価格は、通常ユーザーの個別業務内容やシステム導入範囲によって見積もられる場合が多いです。また、たまにこれら作業が固定価格でパック料金になっているケースもありますが、ユーザー固有の状況を考慮した進め方がされることは少ないようです。
開発費
カスタマイズやアドオンの開発を行う場合の費用です。これらは、ユーザーが希望する要件に基づいて個別に見積もられるのが普通です。
また、クラウドサービス型のERPは原則カスタマイズやアドオンの開発ができないので、開発費は発生しません。つまり、自社の業務と合わない機能があってもシステムを改変することができないので、業務をシステムに合わせるか、ERPの外側で別のシステムを構築する必要があります。
ランニングコスト
買取型のERPでは、いわゆる保守料と呼ばれるものがランニングコストになります。この保守料は通常ライセンス価格に一定率(○○%:保守料率)を乗じて算出されるケースが多いようです。クラウドサービス型のERPでは、月額利用料などがランニングコストになります。
ERPを導入するとき、ユーザーはどうしてもイニシャルコストにばかり気を取られがちですが、ERPの中にはイニシャルコストを安く抑え、その分をランニングコストに転嫁しているような製品もありますので注意してください。
ERPは基幹業務システムですから通常は10年以上利用します。そうなると、その利用期間中にERP自体がバージョンアップしたり、途中で関連法令が変更になったり、ERPが稼働しているハードウェアやミドルウェアが保守切れになったりすることも容易に予想されます。このような事態に備えておくためにも、保守料にどのようなサービスが含まれているのかしっかり確認しておきます。サービス内容の範囲によっては、利用期間中のランニングコストに大きな追加コストが発生する可能性もあります。
最近では、利用期間中のトータルコストを把握しておく意味でも、イニシャルコスト+10年間ランニングコストの合計金額に関する見積の提示を求められるケースも増えてきました。この合計金額には、上記のようなバージョンアップなどのイベントコストも含んでおくことになります。
なお、ERPの保守については、製品の機能に関する質問回答や操作の説明が保守の内容として定められているのは普通ですが、法改正・税制改正の対応、バージョンアップの対応、これら2つに関しては、ERPごとに方針、条件が大きく違うので必ず確認しておいた方がいいです。
法改正・税制改正の対応
例えば、消費税率の改正が実施された場合、税率マスタが存在するERPでも税率設定を変更するだけではなく、税率変更後の経過措置期間や軽減税率が適用された場合の税率内訳を確認するリストなど、マスタ設定変更だけでは対応できない要件も発生します。その場合には、ERPベンダー(メーカー)から何らかしらの改定プログラムが提供されるのが通常です。このときどこまでの作業が保守契約の範囲に含まれているのか確認しておきましょう。
バージョンアップの対応
ERPは、定期、不定期にかかわらず、機能強化やバグ(欠陥)修正などを行った新しいバージョンプログラムをリリースします。このとき、「カスタマイズやアドオンの開発をしている場合に、そのバージョンアッププログラムを利用できるか?」という疑問が生じます。しばしば、ベンダー(メーカー)が(セールストークで?)「利用できます!」と回答していると聞きますが、本当に利用できるのかよく確認してください。カスタマイズを施していないプログラムであれば新しいプログラムに置き換えは可能かもしれません。しかし、カスタマイズなどをしているプログラムに新しいプログラムを機械的に被せるとカスタマイズした部分は物理的に消えてしまいます。よくよく確認してみると、「被せるときに作業が発生するので、その作業費は有償です。」と後になってから言われるケースもあり、しかもそのバージョンアップ作業費が非常に高価だったとよく耳にします。
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まとめ
ERPは、基幹業務システムとして長期間にわたって利用しますので、イニシャルコストだけではなく、利用期間中で発生し得るコストもきちんと見積もってもらい長期計画を策定しておく方がいいと考えます。また、ライセンス価格は、製品によってさまざまな価格体系がありますので、自社の利用形態に合ったものを選んでください。
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