TCO(Total Cost of Ownership)とは?削減のポイントと方法

 2023.07.10  株式会社システムインテグレータ

近年、企業が導入するソフトウェア・ハードウェアにかかる初期費用が低下傾向にある一方で、導入後のランニングコストは増加傾向にあるといわれています。従来、システム導入費用と維持費用では導入費用の方が高いことが多いため、コストカット対策として挙げられるのは導入費用でした。しかし、導入後の維持費用が高くつく現在において、従来のコストカット対策は無効であるどころか、むしろさらなるコストを派生させる恐れがあるのです。

こうした状況を防ぐために必要なのが、システムの導入から維持管理までの全体を見通して、本当に無駄なコストを洗い出して削減していくというやり方です。

この記事では、企業におけるこれからのコストカット対策を実現させるために必須である「TCO」について、その概要とコスト削減の方法、およびコストカット対策を進めるための対策について解説します。

TCO(Total Cost of Ownership)とは

TCOとはTotal Cost of Ownershipのことで、システムの導入から維持管理までのすべてのコストのことです。従来のTCOとは、システムの購入・導入にかかる費用を指していました。しかし、現在ではそれだけでなく、導入後の維持管理も含めた全てのコストを意味する言葉となっています。

まずは、TCOに含まれるコストにはどのようなものが挙げられるのか、そしてTCOがどのようにして算出されるのか、詳しく見ていきましょう。

TCOに含まれるコスト

TCOに含まれるコストは、「目に見えるコスト」と「目に見えないコスト」の2種類に分けられます。目に見えるコストとは、システムの購入費用や導入費用といった「初期費用」を指し、目に見えないコストとはランニングコスト全般をいいます。

TCOの算出方法

次は、TCOに含まれるコストをどのように算出するのか見ていきましょう。

はじめに、目に見えるコストと目に見えないコストそれぞれについて、詳細に洗い出します。代表的な項目は以下のとおりです。

目に見えるコスト(初期費用)

  • ソフトウェアおよびハードウェアの購入費用
  • 周辺機器の総購入費用
  • サーバー導入にかかる費用
  • システムの企画に際して必要な人件費
  • 設置工事費用

目に見えないコスト(ランニングコスト)

  • サーバー管理にかかる人件費
  • サーバー設置費用
  • システム操作の教育およびサポートにかかる人件費
  • ソフトウェアのバージョンアップ、インストールにかかる費用
  • バックアップ用の設備費用
  • トラブル発生時の対応にかかる人件費
  • 買い替えにかかるコスト

こうした項目について、実際にはどれくらいの金額がかかっているのかを明確にすることが重要です。

そして最後に行うのが、機会損失費用の算出となります。機会損失費用とは、何らかのトラブルが発生した際に失われた利益と、その復旧などにかかった費用のことです。

  • システム障害による損失費用
  • 人的要因やウイルスによる損失費用
  • システムの復旧、および原因究明や予防策にかかる人件費

「初期費用」「運用・管理費用」「機会損失費用」という3点について、詳細にその内訳と金額を算出していくことで、真に削減すべきポイントはどこにあるのかが明確になります。

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なぜTCOを重視すべきか

冒頭でも述べた通り、従来の環境と比べてシステムの導入から維持管理までにかかる費用のバランスは大きく変化しています。その背景としては、いわゆる「SaaS(Software as a Service):サービスとしてのソフトウェア」や「DaaS(Desktop as a Service):仮想デスクトップ」といったサービスコンテンツが充実し一般化してきたことで、ランニングコストの比重が大きくなってきたことや、そのようなシステムを必要とする「働き方の多様化」が浸透してきたことが挙げられるでしょう。

結果として、目に見えるコストである初期費用よりも目に見えないランニングコストが増幅し、適切な項目と金額の洗い出しを行わなければ削減すべき項目が不明瞭になってしまう、という事態が増加したのです。TCO(コストの総額)という視点で削減要素の洗い出しを行わなければ、間違ったコストカットを行ってしまい、むしろ余計なコストがかかることにつながりかねません。

例えば、従来通り初期費用の削減という方向性でコストカットを行うべく、安価なシステムを導入すると、提供されるサービスの品質は落ちる可能性があります。システム障害の発生頻度が増えたり、従業員への教育費用がかさんだり、ランニングコストの面で見れば費用は増加する恐れがあるのです。

そのため、個別の項目の削減にとらわれず、TCOを重視したコストカットに臨む必要があるといえます。

TCO削減を進める際のポイント

ここでは、実際にTCO削減を進めるにあたって把握しておきたいポイントを解説します。5つのポイントを確実に把握してTCO削減に臨むことで、適切な形でコストカットを実現できるでしょう。

見えるコストだけを見て削減を進めない

先述したように、間違ったコストカットはコストの増加につながりかねません。正しくTCOを行わないと、目に見えるコストである初期費用などにばかり注目してしまい、「安価なシステムを導入する」「中古のPCを購入する」といったコストカット対策を実行してしまう恐れがあります。

それ自体は悪いことではありませんが、結果として起こり得る事象、例えば「安価ゆえにサポート体制が不十分」「中古のPCゆえにメンテナンスにかかる費用がかさむ」といったことを想定できていないのであれば、TCO削減とはいえません。

コストの総額を見た上で削減することが重要なため、目に見えるコストだけに焦点を当ててコストカット対策を進めることは避けましょう。

TCOは長期的な視点で考える

TCO削減において重要なのは、導入から運用管理、そして廃棄までにかかる長期的なコストについて想定し、将来的に状況が変化する可能性までを把握することです。

現状かかっているコストや、行っているコストカット対策が将来も継続できるとは限りません。なぜなら、自社で新しくシステムを導入する可能性があったり、従業員が増えるなどの事態に合わせたシステムアップデート(または新システムの導入)を行う必要があったりするからです。それだけでなく、古くなったシステムの廃棄にかかる費用についても注目しておかなければならないため、IT環境の変化によって何らかの影響を受けることもあるでしょう。

このように、将来的な社内外における環境の変化を想定した上で長期的な目線を持ち、TCO削減に臨む必要があります。

見直しのタイミングに注意する

システムの導入、およびシステムの入れ替え時が、TCO削減を見直す際に最適なタイミングです。

例えばシステム入れ替えの際、既存システムとの比較をした上で導入するシステムを選ぶことがほとんどでしょう。この際、単に既存システムより導入費用(目に見えるコスト)が安価だからという理由で選ぶことは割けるべきだ、ということは既にお伝えしている通りです。TCOという視点を持っていれば、初期費用だけではなく、各種ランニングコストについても比較した上で新規に導入するシステムを選択できます。

ランニングコストの中には、既存システムの廃棄費用も含まれるため、まさしく「トータルコスト」を認識した上で新たなシステムの導入が可能です。

全社的に削減に取り組む

TCO削減を進めるにあたって、部署部門ごとの取り組みの他にも、全ての部署部門で洗い出された削減可能ポイントを企業全体で共有・管理し、会社として取り組むべきTCO削減に優先順位をつけて実行していく必要があります。ただ優先順位をつけるだけでなく、部署部門ごとに最適な形でのTCO削減方法を見極め、共有していくことが重要です。

適切なTCO削減を実現するのであれば、社内の一部署、一部門で行うのではなく、全社的に進めていくことでこそ真価を発揮できます。

TCOを削減する方法

前章の通り、TCO削減にはさまざまなポイントがあります。では、具体的にはどのような削減方法があるのでしょうか。

クラウドへの移行

システムの購入・導入から管理運用までを自社内で完結させることは、TCO削減の観点だけでなく、スキルを有した人材が乏しい場合などには「属人化」に発展する恐れがあります。そのため、自社完結型からクラウド型に移行するという手法がおすすめです。

クラウドサービスとは、「サービス提供企業が準備するインターネット上の仮想空間を用いて、システムなどの利用を可能にする」サービスを指します。このサービスを利用すれば、自社内で設置していた物理サーバーの設置費用や管理費用が必要なくなり、システム導入にかかる費用も従来のものより安価で済む場合が多くなります。つまり、初期費用(目に見えるコスト)の削減につながるのです。

また、クラウドサービスは提供する企業によって管理運用が行われるため、管理運用業務にかかる人件費を抑えられるほか、トラブル発生時の対応を提供企業側に任せられます。これによりランニングコストの削減にもつながります。

一方、提供サービスの利用にかかる料金を毎月負担することになる点には注意が必要です。また、サービスを提供および管理運用しているのはあくまでも提供企業となるため、企業側の事情によりシステムが利用できないケースがあったり、利用できる機能に制限が課されたりする場合があります。

サーバーの統合

複数のサーバーを利用している場合、サーバー統合によってTCO削減を実現できる可能性があります。なお、サーバー統合には以下の3種類があります。

論理的統合

個別管理されている複数のサーバーについて、管理ソフトウェアや管理プロセスを用いて一元管理すること

物理的統合

拠点ごとで個別管理されているサーバーについて、データセンターなどに集約して管理できるようにすること

合理化

複数のサーバー機能を1台のサーバーにまとめたり、既存のサーバーよりも高機能なサーバーを用意したりしてサーバー台数を減らすこと

一般的に、サーバー統合は「物理的統合」を指し、サーバー統合によって期待されるのは、拠点ごとに管理運用していたサーバーにかかるコストを削減できる点です。管理運用するサーバー台数が減少するため、その分コスト削減につながるということになります。

注意点としては、サーバー台数の削減によって処理機能が低下する恐れがあることでしょう。また、サーバー統合に伴う問題点として、サーバーに何かしらの問題が発生すると集約された他のサーバーにも問題が伝染する恐れがあります。

保守運用のアウトソーシング

ランニングコストにあたる保守運用を外注する取り組みもTCO削減に有効です。もし、自社において十分な数のエンジニアがいない、あるいはスキルを有した人材がいない場合は、無理に自社内で保守運用を行うよりもアウトソーシングという選択肢を選んだ方がコスト削減につながる可能性は高いでしょう。

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

TCO削減に際して最も重要なのは、目に見えるコストである初期費用に注目するのではなく、目に見えないランニングコストにも焦点を当てた上で、適切なコストカット対策を行うことです。

ERPを活用することで、お金だけでなく様々な情報を一元管理することができるので、コスト削減の検討もすばやく進めることができます。

比較資料をご用意していますので、ぜひご覧ください。

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