光の当て方を照明機材で工夫する~直接光編~

 2020.09.28  株式会社システムインテグレータ

前回外観検査の現場では特殊なLED照明機材が使われていることを紹介しました。(前回の記事:なぜ外観検査では特殊な照明を使うのか

ではあなたが実際に照明機材を選ぶとしたら、どのようなことに気を付ける必要があるでしょうか。

今回から2回にわたってこんなお悩みを解決するために照明機材を選ぶうえで重要なポイントを実際の機材と共に紹介します。キーワードは「直接光」「拡散光」です。外観検査で利用する照明機材はこの2つの光の特徴を上手に利用しています。裏を返せば、この光の特徴をしっかりと理解することで照明機材の選定は8割方できてしまいます。

ぜひ身近にあるワークを例に、どの照明が使えそうか想像しながら読んでいただけるとより一層イメージができるかもしれません。いままで見えなかった何かが見えるかもしれません。

照明機材選定のカギを握る光

「直接光」と「拡散光」は光の反射角度の違い

基本的に外観検査では、照明を検査対象(ワーク)に照らした際「反射してくる光」を確認することで検査を行います。この光のことを物体光と呼び、「直接光」と「拡散光」に分類されます。

「直接光」は光が検査対象にあたり入射角と反射角が等しく返ってくる光(正反射光)や、ワークを透過した光(透過光)のことを言います。一方で、「拡散光」は入射角と反射角が異なっている光を言います。(図参照)

例えば、よく磨かれている対象物に光を当てると直接光の割合は多く拡散光は少なくなります。反対にざらついた表面の対象物では、拡散光の割合が多くなるという特徴があります。よく磨かれた鏡は強い光を反射しますが、くすんだ鏡だとぼんやりとしか光を返さないのはご存じかと思います。

(光の特徴について詳しく知りたい方は「AIに分かりやすく伝える画像データ ~光の当て方~」を参照ください。)

このように外観検査の照明には検査したい対象の「表面の特徴」と「光の特徴」を組み合わせて、よりよくワークの特徴が捉えられるようにする方法が求められます。

直接光と拡散光について

よい特徴づけを行うための機材選定

外観検査でいうよい特徴づけとは、検査したい特徴(キズや変色など)を最大限よく見えるようすることです。それを実現するための機材選定には、3つのポイントを抑える必要があります。

1つ目は、ワークの特徴と検査したい特徴の組み合わせです。例えば、ワークの特徴は、そのものの形状・素材・大きさなどの物体そのものの特徴を指します。それに対し検査したい特徴とは、ワークの表面に発生するキズや変色、変形などの特徴を指します。これらの検査組み合わせすべてのバリエーションを把握すること。

2つ目は、1つ目のすべてのバリエーションに対しそれぞれ「直接光」と「拡散光」のどちらに重心をおいて照明を当てればよいのかということです。検査したい特徴が多ければ多いほど、すべてのバリエーションの特徴をまんべんなく抽出することができる方法を選ぶ必要が出てきます。検査したい特徴によっては、「直接光」でも「拡散光」いずれの方法でも特徴は出ます。ただし、その発生度合いの強弱を鑑みて選択する必要があります。ただ、1つの照明にこだわらず複数の照明条件を切り替えて対応することも可能ですので検討してみてください。

3つ目は、実際の現場環境や運用に合わせて機材を選定することです。2つ目の話は理論上の話であるため実際やってみると違った、ということがよくあります。例えば、実際に運用するとなった場合の機材の配置場所のスペース問題や検査にもとめられる時間制約による原因で発生します。これについては選定以前に知っておくべき内容ですが、重要であるため必ず抑える必要があります。

外観検査の照明機材はこの3つのポイントに対応した機材が各社からさまざまラインナップされています。以降の章ではおもに直接光を使うことを念頭に置いた機材について詳しく紹介していきます。

直接光が映し出す特徴の世界

「直接光」を使うことを念頭においた照明機材は非常に種類が多いです。ここでは、代表的な3種類の機材を紹介します。それぞれの特徴とどのような用途に利用されるかも紹介していきます。

リング照明

角度をつけて狙ったところに直接光を強く照射できる万能照明

        図1リング照明(1)

【図 1リング照明】出展元:LDR2シリーズ|CCS:シーシーエス株式会社

  • メリット/デメリット
    メリット
     ・中心部の光が強く、特定の箇所の検査や小型品の検査に向く。
     ・照明の形状により360℃方向から照射可能であるため影ができにくい。
     ・設置のときに治具を使うことで、照射方向も上下左右と自由度が高い。
    デメリット
     ・検査対象が鏡面素材の場合はLEDの素子が映り込む可能性がある。
  • 設置例
    中心部に光が強くあたるように照射
    設置例
  • 撮像画像
    文字と周りの濃淡をはっきりと表現することが可能。また、検査対象自体の形状もはっきりと捉えることができる。

          ldr2_08    ldr2_08_2
               自動車部品(左画像)                         自動車部品 照明利用後(右画像)
               【図 2リング照明撮像画像】出展元:撮像例|CCS:シーシーエス株式会社
  • 適する検査
    文字認識、基板上の部品検査、キズ・汚れ検査、表面検査 など
  • まとめ
    検査箇所の位置が特定され、かつ照射範囲に収まる大きさでは比較的適合しやすい。
    ただし、鏡面加工のように光の映り込みが発生する素材には工夫が必要となる。

バー照明

直線状の検査対象に強く、角度をつけて様々な照射ができる照明

図3バー照明

【図 3バー照明】出展元:LDL2シリーズ|CCS:シーシーエス株式会社

  • メリット/デメリット
    メリット
     ・照射方向が一方向で均一に光があたるため表面検査や文字の読み取り検査に向く。
     ・機器の照射できる範囲が横に長いため、シート状、円柱上の検査(検査対象を動かしながら光を当てる)に有効。また、機器の形状が単純であるため横並びに複数台つなげることでより長く大きな検査対象にも対応できる。
    デメリット
     ・1本での設置では照明ムラが発生する可能性が高いため、複数台の導入を検討する必要がある。
     ・1方向からの照射が基本となり、360℃方向からの照射に適さないため凹凸、刻印検査には向いていない。
  • 設置例
    照明を2本使用した設置方法。バー照明の角度は変えることが可能であるため自由度が高い。
    設置例_バー照明
  • 撮像画像
    以下は、照明を4本使った設置方法。照明ムラがなくはっきりと撮像できていることが分かる。

          ldl2    ldl2_1
             タイル           タイル 照明利用後
                             【図 4バー照明撮像画像】出展元:撮像例|CCS:シーシーエス株式会社
  • 適する検査
    シート状の表面検査、文字読み取り、プリント基板検査 など
  • まとめ
    検査対象箇所がシート状や線状の表面キズや汚れといった面を確認する検査の場合に比較的適合しやすい。ただし、凹凸の程度が大きい場合や不規則な場合や刻印を確認する検査には適合しにくい。

直下式透過照明

検査対象の背面からの照射で、透明な検査対象の異常確認や形状確認ができる照明

図5フラット照明

【図 5フラット照明】出展元:TH2シリーズ|CCS:シーシーエス株式会社

  • メリット/デメリット
    メリット
     ・面で光を当てることができるため透過検査、検査面にできた小さな穴検査や形状確認検査に向く。
     ・他の照明に比べ、高密度にLEDが配置されているため全体的に強い光があたる。
    デメリット
    ・機材自体に厚みがあるため、カメラとの距離を長くとる環境下では向いていない。
  • 設置例
    設置例_フラット照明
  • 撮像画像
    形状をはっきりと捉えることができる。

         th2_pm_01   th2_pm_08_01    th2_pm_08_02

                                 ストロー                 ストロー照明利用後

         【図 6フラット照明撮像画像】出展元:高輝度タイプ|CCS:シーシーエス株式会社

  • 適する検査
    バリ検査、透明容器異物検査、フィルム汚れ検査、シート検査 など
  • まとめ
    検査対象を透過しての検査、形状の確認をする検査に適合する。
    発行面が検査対象より大きくなるため、設置スペースの制約を受ける。

直接光を照射する機材と一言でいっても、機材そのものの形状も異なり、得意とする検査や光の当て方まで異なることが分かりました。ここで上げたのは一例です、他にもいろいろあるので照明会社のカタログを見てみてみるのもいいと思います。現在外観検査を行われていて満足のいく結果が得られていない方は、この機会に1度照明機材を見直してみるのも良いかもしれません。次の章では、照明機材変更によって改善が見られた実例を紹介します。

撮像方法があっているか確認する ~直接光で対応する~

弊社のお客様で、製品に刻印している文字があるかどうかを目視で確認しているお客様がいらっしゃいました。刻印がないまま出荷してしまうとその日に出荷したものすべてを回収しなければならないため、非常に重要な業務でした。そのために人を何人も配置して見逃しがないようにしていました。

 

リング

 

 お客様「毎日、検査員が製品に決められた刻印があるか確認するだけなのですが、見逃して出荷してしまうことが多くて困っています。以前市販のカメラで撮影した画像をつかって画像処理ソフトで判断をしようと試みたのですが、うまくいきませんでした。」

 SI「なるほど、画像処理で利用した画像を見せてもらえますか」

見せていただいた画像は、ワークの中央に刻印が入るようにきれいに写っていました。ただいくつかの画像も拝見すると、画像によって明るさもまばらで、ときどき人の影が映りこんでいます。

 SI「この画像の撮り方はどのように決めましたか。あと使っている照明を見せてもらえますか」

 お客様「検査員がいつも見ている見え方のアングルで撮れるようにWEBカメラを設置して撮影しています。照明ですか?検査員が座っている部屋の蛍光灯ですよ。」

この撮り方は、検査員の見え方を忠実に再現し刻印も見えて一見良いようにも思います。しかし、外観検査の画像としては不足しています。既存のカメラ、蛍光灯、設置環境では人間の見え方を再現するだけで終わってしまい画像処理に適した見え方にはなっていません。

外観検査で画像処理を使って検査をする場合は、人が見た視点で撮るだけでは特徴(キズ、欠け、刻印など)を際立たせることは難しいです。なぜならば、人が見た視点(角度)を整えても、光の当たり方はその時々で異なるためです。そのために、同じものでも見え方が毎回異なり、判断基準はあいまいになってしまいます。それでは画像処理を行う機械では判断できません。機械は曖昧なものに対しての判断を苦手とします。そのため、検査対象に適した照明、カメラ、治具を使い一定の環境下で撮像し「特徴(キズ、欠け、刻印など)をはっきり撮る」ということが大事なのです。そこまで厳密にしなくてもAIなら大丈夫ではというお声もいただきます。たしかにDeepLearningにはその曖昧さを解決してくれる部分はあります。ただし、精度を追求するのであれば、最低限撮像条件は整える必要はあると考えます。

結果的にこのお客様には特徴をはっきり撮るために、リング照明を使い直接光を照射し刻印部分を暗くその他の部分を明るく照らすことで、よりくっきりと「刻印」という特徴を表すことに成功しました。

このように、現場に適した照明機材を使うだけで問題を解決することができます。実際にリング照明はその使い勝手の良さからさまざまな現場で使われています。しかし、だからと言ってなんでもリング照明でうまくいきません。それは直接光のような強い光であるが故に起こってしまう問題でもあります。

次回は、この問題に少し触れつつ解決策としての拡散光についてお話しします。

 

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