リバースロジスティクス(静脈物流)とは?課題解決の方法と事例

 2023.06.09  南野 春香

現代のECビジネスにおいて、商品の返品対応は避けて通れない問題です。そこで昨今多くのEC事業者が顧客側から生産者側への物流を意味する「リバースロジスティクス」の整備に取り組んでいます。本記事では、リバースロジスティクスの概要や重要性、導入事例について解説します。

リバースロジスティクスとは?

リバースロジスティクスとは、顧客側から生産者側へと流れる物流のことです。通常のロジスティクスでは、生産者から顧客に向けて商品を供給することに主眼を置きますが、リバースロジスティクスでは、返品対応などのために、顧客側から生産者側へと逆流(リバース)することに特徴があります。静脈物流や還流物流とも呼ばれ、主に以下のような場面が活用例です。

  • 顧客からの返品対応
  • 不良品や故障品の回収や修理
  • 廃棄物やリサイクル品の回収や再利用・再販売

従来、リバースロジスティクスと言えば、顧客からの返品対応が主な用途でした。しかし、近年ではSDGsや循環型社会の実現に向けた取り組みとして、リサイクルや再販売をするために利用されることが増えています。例えば、家電製品や衣類など、一度使われた商品を再利用・再販売することは、資源の有効活用や環境負荷の削減につながる取り組みです。

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リバースロジスティクスの重要性

顧客ロイヤリティの向上

顧客にとって利便性の高いリバースロジスティクスを構築することは、顧客ロイヤリティの向上を狙う上で重要です。不良品や故障品などの送付をする顧客は、基本的に自社へ対する不満を抱えていると考える必要があります。もしも返送の方法が分かりにくかったり、非常に手間がかかったりすれば、顧客の不満はさらに膨れて自社から離脱してしまいかねません。

また、ECの場合、商品自体の不備は特になくても、「Webで見たイメージと違った」などの理由で返品を求める顧客は数多く存在します。返品や不良品対応をスムーズかつ迅速に行えるリバースロジスティクスを構築することは、こうした顧客のニーズに応えるためにも重要です。返品対応・不良品対応を効率的かつ誠実に行うことで、顧客の自社に対する信頼感を高め、顧客ロイヤルティを向上できます。

SDGsへの取り組み

リバースロジスティクスの整備は、SDGsを実現するためにも有用です。例えば、返品された商品を再利用・再販売することで、新たに商品を生産する必要性を減らし、資源の有効活用を促進できます。そのままでは再販売できない製品でも、部品やパーツ単位では再利用できることもあります。こうした取り組みは廃棄物の削減につながるため、環境負荷を軽減するために重要です。

SDGsに資する取り組みを推進することは、社会的責任を果たす企業として自社のブランドイメージを向上するためにも役立ちます。

利益率の改善

効率的なリバースロジスティクスを構築することは、返品業務全体にかかる負担やコストを抑えるためにも重要です。具体的には、返品対応などにかかる送料や人件費、スタッフの業務負担などを削減できます。

また、返送された不良品は、今後同様のトラブルが起きないように分析するための材料になります。そのため、顧客に商品を返送してもらいやすい仕組みを構築することは、今後より良い製品を開発していく上でも重要です。これらの効果により、リバースロジスティクスの整備は利益率の改善に役立ちます。

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リバースロジスティクスの課題

上記のようなメリットがある一方で、リバースロジスティクスの構築・運用には以下のような課題が生じがちです。

予測が難しい

まず、返品数が予測しにくいという課題があります。通常のロジスティクスでは、商品の配送や在庫管理などは一定の精度で予測できるため、それに基づいた計画的な対応が可能です。しかし、返品はいつ、どこで、どのくらいの個数が発生するのか予測が難しいので計画的な対応が難しい面があります。

返品コストがかかる

コスト面も課題です。まず、返品対応をするには配送料がかかります。特にBtoCのECビジネスでは、顧客が個々に返送する形になるので、配送料が過大になりがちです。配送料の支払い負担を生産者側が負うか、顧客側が負うかといった問題もあります。さらに金銭面以外でも、生産者側なら点検の手間、顧客側なら返品手続きや発送の手間など、労力面でのコストも過大になりがちです。

リバースロジスティクスの課題を解決する方法

続いては、上記の課題を解決するために役立つ方法を紹介します。

体制の構築

特にECビジネスの場合、顧客のニーズを考えると、コストがかかろうとも返品対応は避けては通れません。そのため、リバースロジスティクスの体制構築は必須のこととして取り組むことが重要です。しっかり体制を構築できていれば、スムーズかつ効率的な対応が可能になり、経済面でも労力面でも負荷を軽減できます。

自社内に対応できるだけのリソースやノウハウがない場合は、物流会社のリバースロジスティクスサービスを活用することもひとつの手段です。また、詳しくは後述しますが、返品・交換・キャンセルなどのCS業務を自動化するシステムや、返送料不要の返品ありきのサービスを最初から設計することも一考の価値があります。例えば、ファッション関係のECでは、実物の色味やサイズ感を確かめて購入したいなどの需要が考えられます。

商品情報の充実

返品対応の負担を減らすには、そもそも顧客が返品の必要性を感じないような施策を講じることも欠かせません。不良品などの場合を除けば、顧客が返品対応を望むのは、色味やサイズなどがWebで見たときとは異なることが理由になっていることが多いです。

そのため、顧客がWebで見た段階で実物に近いイメージを抱けるように、外観やサイズ感などの商品情報をできるだけ詳細に伝え、返品率を低く抑えることが重要です。商品情報を伝える手段としては、テキストや画像などが一般的ですが、最近ではARを使ったサービスを提供する企業も増えてきました。これは例えば、スマホカメラで映した室内の風景に家具の画像を投影し、サイズ感などを直感的に確認できるサービスです。

リバースロジスティクスの導入事例

最後に、効果的なリバースロジスティクスを構築するための参考になる事例を紹介します。

EC向け返品・発送サービスを利用

国内のある大手運送会社は、オンラインショップ事業者向けに返品対応プロセスを効率化するためのサービスを提供しています。このサービスでは持ち込み・集荷による配送業務に加え、返品の受付・確認・分析を効率化できるシステムがユーザーに提供されており、受付業務の効率化や対応スピードの向上が見込めます。

また、PCやスマホで簡単に返送手続きができるシステムによって、返品をする顧客の利便性を上げることもできます。こうした効果的な外部サービスを利用することで、顧客満足度の向上、返品コストの削減、ECの購入率向上などが実現可能です。

無料で試着・交換・返品サービスの展開

あるアパレル系のECサイトでは、無料の試着・交換・返品サービスを提供しています。服や靴などのアパレル用品は、ECで扱われる商品の中でも返品率が高く、顧客にとって実物を確認したいというニーズが高い分野です。そこで同サイトでは、「試着は屋内のみでする」「タグを切らない」などの諸条件を設けた上で、一定期間なら無料で返品やサイズ交換を受け付けるようにしました。

また、顧客側の返品の手間をなるべく減らせるように、QRコードを活用し、送り状伝票の記入が不要なシステムを構築したり、コンビニや宅配ボックスなどから返品できる体制を構築したりもしています。このように顧客のニーズや利便性を重視したリバースロジスティクスや返品サービスを構築することで、同サイトは競合への優位性を獲得することに成功しました。

まとめ

特にECビジネスにおいては、顧客にとって利便性の高いリバースロジスティクスの構築は非常に重要です。参考事例で示したように、リバースロジスティクスを軸にしたサービスが、競合への優位性として働くことさえあります。

以下の資料では、これからの時代にECビジネスを成長させていく上で重要なポイントがまとめられています。ぜひご参考にしてください。

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