越境ECとは?市場規模やメリット・デメリット、成功させるためのポイントを徹底解説

 2023.08.31  株式会社システムインテグレータ

人口減少による国内需要の縮小にともない、国内向けにビジネスを行う企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなりつつあります。一方でECビジネスの参入障壁は低く競争相手が増えている現状も踏まえると、今まで以上に新たな顧客の獲得の重要性が高まっていると言えます。

そのための一つの解決策が販路拡大による売上への貢献です。

多くの企業では、販路拡大を目的に北米やEU、アジア諸外国などへの店舗/事業所展開やシナジー効果を求めた事業合弁、M&Aを加速させています。それと並行して、最近特に多くの企業がインターネットというボーダレスな世界を活用したECサイトの展開、いわゆる「越境EC」を検討・実践しているのです。 

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越境ECとは

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越境ECとは、国際的な電子商取引を指すもので、日本企業が中国・米国などの市場規模や成長率の著しい国や地域に向けて、ECサイトを通じた自社商品を販売すること、またはそのシステムを指します。 

越境EC実現の方法も、例えば自社で越境ECを構築・運営する手法から、販売したい現地のECモールに出店するなど、様々な手法があります。
日本国外に目を向けると市場規模や経済成長率などの観点から多くの企業が期待を寄せるのもうなずけます。それではまず越境ECの市場規模や動向についてご紹介します。

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越境EC市場の規模と動向

越境ECとは、インターネットを活用して国境や地域をまたいで国際的な電子商取引を行うことです。近年では越境ECを展開するインフラが整ったことから参入する企業が増えており、越境EC市場は急速な拡大を見せています。

海外のEC市場規模は日本国内を遥かに上回る国も多く、世界中を視野に入れると越境ECは非常に巨大なマーケットを形成していることとなります。未だに成長を続けているため、潜在的なポテンシャルは無限大と言えるでしょう。

シェアの獲得に成功すれば大きな利益が見込めるため、越境ECは将来性のある魅力的なビジネスであるとして注目を集めています。

越境ECに取り組むうえで最初に考えるべきポイントはターゲット市場を決めることです。そのためには、越境EC市場の動向について把握しておくことが重要となります。

まずは、データを基に越境EC市場の動向について見ていきましょう。

経済産業省によると、2020年の日本・アメリカ・中国の3カ国における越境ECの市場規模と伸び率は次のようになっています。

越境EC市場規模と伸び率(円換算)

越境EC購入額

伸び率

日本

3,416億円

7.6%

米国

1兆7,108億円

9.9%

中国

4兆2,617億円

16.3%

出典:経済産業省「産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」

数年前、国内で中国人による“爆買い”が話題になりましたが、EC市場においても人口の多い中国が圧倒的な規模を見せています。インバウンド需要ばかりに注目が集まっていますが、現在では越境ECの合計金額がインバウンドの金額を大幅に上回っています。

続いて、市場規模において2トップを占める中国・米国の越境ECでの購入先国ランキングについて見ていきましょう。

中国の越境ECでの購入先国トップ3

  • 1位:アメリカ 38%
  • 2位:日本 34%
  • 3位:韓国 27%

出典:ペイパル「2022海外通販レポート」

米国の越境ECでの購入先国トップ3

  • 1位:中国 27%
  • 2位:カナダ 11%
  • 3位:イギリス 9%

出典:ペイパル「2022海外通販レポート」

中国からの購入は日本が2位で購入額は1兆9,499憶円となっており、米国において日本はトップ3には入っていないものの、日本からの購入額は9,727億円に上っています。

閉鎖的な商習慣やネット検閲システムなど、中国独自の課題が存在しますが、マーケット規模の大きさやニーズの高さから中国は検討する価値が大きいと言えるでしょう。開かれたネット環境で越境ECを展開したい場合は、中国に次ぐ市場規模を誇る米国を視野に入れる必要があります。

現状では中国・米国が越境ECの最有力候補となりますが、急速な伸びしろを見せているインドや、欧州のイギリス・フランスも、今後インフラが整備されれば有力なマーケットとなる可能性を秘めています。

越境ECの市場規模・動向だけでターゲット国を決めるのは早計であるため、実際には自社商品の強み・ニーズ・競合の状況・現地事情・予算・リソースなどを多角的に分析・検討したうえで参入の可否を判断することとなります。

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なぜ越境ECが拡大しているのか

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EC市場は年々拡大し続けていますが、越境ECについても同様の傾向が見られます。その背景には、越境ECが拡大する環境が整ったことや、越境ECへのニーズが高まったことなどさまざまな要因が挙げられます。

ここでは、越境ECが拡大した主な要因についてご紹介します。

インターネットやスマートフォンの普及

インターネット・スマートフォンは日本国内だけでなく世界中で急速な普及を見せており、世界人口の57%以上がインターネットユーザー・67%以上がモバイルユーザーというデータが出ています。

世界人口の半数以上にまでインターネット・スマホ普及率が高まり、時間・場所に関わらず海外の商品を手軽にできる環境が整ったことも、越境ECが拡大している大きな要因となります。

海外では日本国内よりもEC利用率が高い傾向にあるため、今後もインターネット環境の充実・端末の普及・越境EC事業者の増加に伴い、越境ECの市場規模は拡大し続けるでしょう。

出典:We Are Social Ltd「DIGITAL, SOCIAL MEDIA, MOBILE ET E-COMMERCE EN 2019」

インバウンド旅行客が帰国後にリピート

越境ECの拡大には、インバウンド需要の存在も大きく寄与しています。実際に日本を訪れて商品を購入した外国人が商品の品質・魅力に満足して、帰国後に越境ECでリピート購入するケースが多くあります。

また、インバウンドでなくても日本を訪れた友人・知人から商品の存在を知ったことをきっかけに、越境ECで購入を行うというケースもあります。

このように越境ECはインバウンド需要と親和性が非常に高いため、企業側としては積極的にニーズを掴み取ることがビジネス戦略上のポイントであると言えるでしょう。

商圏の拡大

日本国内では少子高齢化・人口減少により、生産年齢人口が減少し続けていることは周知の事実ですが、これは同時に消費人口の減少も意味しています。

国内のマーケットは縮小していることから、新たな商圏を拡大するために海外展開を視野に入れる企業が増えたことも、越境EC拡大の大きな要因となっています。

海外マーケットは巨大であり、日本の商品が普及していない国・地域や潜在的なニーズが見込まれる顧客が数多く存在しているため、マーケティング次第では無限の可能性を秘めていると言えるでしょう。

ECで出店することでコストを軽減

海外にビジネスを展開する方法には、現地に実店舗を構築する方法もありますが、莫大な費用・労力が必要となります。そのため、かつては体力のある一部の企業しか展開することはできませんでした。

一方、越境ECであれば、オンライン上に設けた仮想店舗で商品の販売を完結することができるため、現地に実店舗を構築するよりもはるかにコスト・労力を低減してビジネスを展開することが可能です。

近年では越境ECを実現するためのプラットフォームやサポートも充実してきており、かねてから海外進出を希望していた企業が積極的に出店を試みていることも、越境EC拡大の要因として挙げられます。

越境ECのメリットとデメリット

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越境ECは、国内ECとは性質が大きく異なります。越境ECへの参入を検討している方は、メリット・デメリットについて事前に把握しておくことが重要です。それぞれご紹介します。

メリット

越境ECの最大のメリットは、海外のマーケットを対象にビジネスを展開できることです。国内マーケットのみにECを展開するよりも圧倒的に巨大なマーケットを対象とできるため、顧客数・シェアを獲得できる可能性は非常に大きなものとなります。

日本製品は品質・安全性の面で優れていることから海外でも高い人気を誇っています。海外では国内よりもEC利用率も高い傾向にあるため、新たな販路開拓や売上拡大を目指す企業にとっては、越境ECの展開は非常に適した戦略と言えるでしょう。

また、オンラインで海外マーケットへ販売を行う越境ECは、現地に実店舗を構えるよりも圧倒的に低コストで労力も掛からないため、リスクを抑えつつ海外展開できることも大きなメリットとなります。

デメリット

越境ECのデメリットは、国境を跨ぐがゆえに言語・法律・商習慣・物流・決済・為替など、展開する国や地域の事情に合わせた対応が必要となることです。

これらの問題をクリアしないと、越境ECをスムーズに展開できなかったりトラブルを招いたりするため、国内ECと比べて参入障壁がやや高くなります。事前準備にも運営にも多大なリソースが必要となるのは避けられないでしょう。

越境ECへの参入を望むものの、繁雑な手間と労力が必要となることから躊躇している企業も少なくありません。

越境ECを始める方法

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越境ECは、国内とは言語・文化・法律・決済・規制などさまざまな面において違いがあるため、参入する場合はこれらを加味して相応の準備を行うことが重要となってきます。

ここでは、越境ECを始める具体的な方法・ステップについてご紹介します。

販売する商品の準備

越境ECを始める最初のステップは、販売する商品の選定・準備です。自社の商品ラインナップのなかから、越境ECでニーズが見込めそうな商品をピックアップしていきます。

その際、輸出入が禁止されている商品・規制の対象となる商品・関税が高い商品などそもそも越境ECに適さない商品もあるため、都度確認しつつこれらを除外しておくことがポイントです。また、現地で既に普及している商品やニーズが見込めない商品なども、売上に繋がる可能性が薄いため除外しておきます。

現地の見込み顧客の消費傾向やトレンドなども加味しながら、売上が見込めそうな商品を厳選していきましょう。

ターゲット選定

販売する商品を決定したら、市場調査を実施して商品を販売するターゲット選定を行います。

越境ECも国内ECと同じく、ターゲットを明確にしなければ具体的なマーケティング戦略やアプローチの方法も定まらないため、市場調査のデータを基に詳細なターゲティングを行うことが重要です。国・地域・年齢・性別・収入・趣味など、多角的多層的な観点からターゲティングを行いましょう。

また、ターゲット選定と同時に現地の購買行動に合わせた販売手法・販売プロセスについても設計しておきます。

出店方法の決定

越境ECで販売する商品・ターゲットを絞り込んだら、実際に商品を販売するためのECサイトの出店方法を検討します。

越境ECの出店方法には、大きく分けて次の5種類があります。

国内の越境ECサイト構築パッケージを利用する

難易度が低くコストを抑えられる反面、自由度が低く不便である場合がある。

国内の越境EC支援サービスを利用する

パッケージよりも高額となるが、ECサイト構築から言語対応・手続きまでを専門家に委任できる。

対象国のECサイトへ出店する

言語・システム等への対応が容易ではないが、対象国にマッチした販売を行うことができる。

国内で独自に越境ECサイトを構築する

フルスクラッチで越境ECサイトを構築するため自由度が高いが、難易度が高く多くの労力・時間・コストを要する。

現地法人を設立して独自ECサイトを構築する

最も難易度が高く費やすリソースも多くなるが、対象国で独自の販売戦略を展開できるため、優位性の発揮や差別化を図れる。

 

どの程度の規模で越境ECを展開するのか、またどの程度の予算・人員・リソースを費やせるかによって最適な出店方法は異なってきます。自社の事情や目指すゴールを考慮して、ベストな出店方法を模索しましょう。

越境ECサイト構築の検討ポイント

越境ECを始める方法について解説しましたが、実際に越境ECに参入する場合の、事業者様向けの検討ポイントをご紹介していきたいと思います。

1.どのような場所で売るか(プレイス)

ひとくちに越境ECと言っても、実はいろいろな方式があるのをご存知でしょうか。

ここまでの越境EC市場規模の推計範囲に含まれる方式をベースに見ていきましょう。
以下の表が、総務省の同資料にある越境ECの事業モデルです。

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(出所:平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

我々にご相談頂くことが多いのは「(1)国内自社サイト<BtoC>」のモデルです。
自社のECサイトを外国語および海外への配送に対応させたいという場合に検討するモデルですね。

越境ECといっても販売方法の選択肢は、ご覧の通り1つだけではありません。
以下にご紹介する他の検討ポイントを踏まえて、どのような場所で売るのが自社にふさわしいのかをしっかり検討する必要があります。

2.どのような商品を売るか(プロダクト)

次なる検討のポイントは、どのような商品を販売するかです。

日本で売れ筋の商品がそのまま海外でもウケるケースもあるでしょうが、そんなに甘いものではないと考えるべきでしょう。
となると、海外で売れる商品は何かをリサーチする必要があります。

と言っても、日本国内であってもどの商品が売れるのかなんて正確に予測することは困難なので、越境ECはさらに困難と言っていいでしょう。
「日本の商品は高品質」と思われている、とすると、安全や安心などを含めて品質を押していきたいところになりますが、日本人が自慢したい日本と、海外の人が自慢して欲しい日本は、マッチしていないということも少なくありません。
ちょっと極端な例え話ですが、我々からすると「エジプトと言えばピラミッド」でも、エジプトの方からすると自慢したいのはピラミッドでないのかもしれない、というイメージです。

もちろん慧眼をお持ちで、これが海外で売れるのだ、という判断が出来る方もいらっしゃるのでしょうが、単に日本と同じものを並べたら同じように売れるとは限りませんので、何を売るかの検討はしっかりと行う必要があります。 

場合によっては、国内で販売している商品とは別の商品を販売することも検討しなくてはなりません。
グローバル消費財メーカーの立場で考えると、その国向けにパッケージを変える、ということはごく当たり前にやらなくてはならないことの一つでしょう。

実際自社がそこまで踏み込むことが出来るかは、越境ECにかける本気度によると思いますが、海外向けに商品を売るということはそんなにお気軽なことではなさそうです。 

3.どのように知ってもらうか(プロモーション)

どのような商品がウケるかのリサーチが必要というお話をしましたが、同じようにどのような広告がウケるかも国によって様々です。

単に日本語を外国語に翻訳しただけのサイトや広告では、海外のお客様は購買意欲をそそられないかもしれません。
これは国内に越境ECが可能な自社サイトを構築した場合も、海外に現地ECサイトを構築した場合も同様ですし、どうような売り方を選んだにせよ知っていただかないことには話になりません。
また、どのような内容でコミュニケーションを取るか以外にも、広告を掲載すべき媒体も国によって違うでしょう。

日本国内で現地のプロモーションに詳しい広告代理店とお付き合い出来れば良いですが、それが難しい場合、現地の広告代理店を頼りにすることになります。
もうそこまで行くと、越境ECで売上拡大、というより現地法人を立ち上げて現地で本腰入れてビジネスという感じに近いイメージになってきますね。

越境ECを始める場合の注意点

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越境ECは国境をまたぐ特性上、国内ECとは異なる点にまで注意を払う必要があります。ここでは、越境ECを始める場合に知っておくべき注意点について解説します。

事前に注意点を把握して十分な対策を行っておかないと思わぬリスクを招くため、ぜひ確認しておいて下さい。

日本国内よりも高い配送料

越境ECは国境をまたいで配送を行うため、国内ECよりも配送料が高くなる点に注意が必要です。国内業者・海外業者両方を含めると配送業者の選択肢はたくさんありますが、基本的に便利でスピーディーなサービスであるほど配送料は高騰する傾向にあります。

顧客や自社の利便性を追求することも重要ですが、あまりに配送料が高いと他社との競争においてマイナスとなる場合もあります。コストと利便性のバランスを見て、自社に最適な配送業者を選定することが重要となります。

販売先国の法律

越境ECでは、販売先国の法律を順守したうえでビジネスを展開するのが大前提です。もし法律に違反した販売を行ってしまうと、処罰を受けたりECサイトの運営に支障をきたす恐れがあるため、販売先国の法律については事前に入念な調査を行っておく必要があります。

また、商品の破損・不着・決済ミスといったトラブルが発生すると、顧客から訴訟を起こされるというリスクもあります。訴訟は基本的に販売先国で起こされるため、対処に要する時間・労力・コストは甚大です。

そのため、法令順守で越境ECを展開するだけでなく、不要なトラブルを起こさない運営を心掛けることも重要となります。

関税

関税とは、商品の輸出入を行う際にかかる税金のことで、国内産業の保護を目的として制定されている制度です。関税は商品によって税率が異なり、低く設定されている商品であれば10%程度ですが、高く設定されている商品の場合は30%を超える場合もあります。

越境ECを展開する際には常に関税の支払い義務が生じます。関税は基本的に顧客が支払うものであるため、自社商品の関税率・支払方法についてはサイト上に明確に記載しておく必要があります。

関税は販売先国や商品によって煩雑なルールが設けられており、非常に複雑な計算が必要となりますが、不要なトラブルを避けるためにも販売商品に掛かる関税については必ず確認しておきましょう。

商品が輸出入や国際間輸送の制限にかからないか

越境ECで取り扱う商品は、各国・地域の輸出入・国際間輸送に関する法律やルールによる制限を受けます。日本国内では当たり前のように流通している商品でも、販売先国の事情によってはそもそも取り扱いが禁止されていたり規制の対象となったりしている場合もあるため注意が必要です。

輸出入・輸送の制限についての検討は後回しにされやすい傾向がありますが、取り扱えない商品を抱えたままビジネスを推進しては労力が無駄になってしまうため、最優先で確認しておくべき項目です。

健全な越境ECをスムーズに推進するためにも、物流の制限については慎重に精査しておきましょう。

為替相場

越境ECは基本的に販売先国の通貨で商取引を行うため、為替変動により売上が変動することに留意しておく必要があります。例えば販売先国の通貨がドルである場合は、円安であれば売上は増加しますが、円高であれば売上が低下してしまいます。

越境ECを展開する限り為替相場の影響を受けることは避けられないため、利益を確保するためにもあらかじめ変動幅や影響範囲を加味したうえで、商品価格の設定やビジネス全体のキャッシュフローを設計しておくことが重要です。 

越境ECにおける多言語対応・英語対応

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インターネットユーザーの利用言語は英語が全体の約25%に対し、日本語はたったの約3%しか利用されておりません。※

※参考:Internet World Stats; Nielsen; ITU; GfK /Worldwide; as of April 2019; Internet users who speak the respective language

今後さらに増えることが想定される越境EC化の中でも、多言語対応の注意点と、効率的に運用するためにはどのように対応すればよいかという内容についてご紹介します。ここで記載する多言語対応とは、文字だけでなく言語によるページ管理を表しています。

多言語対応の際の3つの課題

主に課題としては大きく3つに分けられます。

それは①システム要件、②人的要件、③翻訳内容です。

①システム要件

まず①システム要件ですが、多言語対応を進めようとする場合にまず思いつく方法が、日本語以外のデータベースを、商品やコンテンツ等に拡張する方法です。データベースの拡張に加え、人力翻訳した情報を各言語のデータベースに登録し、デザインチェックをしてから最終公開する流れとなります。このような仕様の場合、まず課題となるのが開発コストとなります。海外からの売上がまだ上がっていない中、初期開発として投資ができないケースがあります。

②人的要件

次に②人的要件として、リリース時に全て人力翻訳で対応すると多額の翻訳費用が必要です。また、リリース後には日本語コンテンツの更新スピードに人力翻訳が追い付かない、またここでも、全て人力翻訳すると運用コストが膨れ上がるという問題があります。この運用フェーズでの課題が現状は最も大きくなっています。

③翻訳内容

最後に③翻訳内容ですが、全て人力翻訳する場合でも日本文化の表現のままでいいか、現地文化に合わせる必要があるかの検討が必要です。一方で、コストを下げるためにGoogle翻訳などの機械翻訳を利用するケースも多くなってきていますが、機械翻訳だけでは商用としては推奨できないレベルとなることもあり、誤訳なども多くなります。また、文字量の変化により意図しない改行も出てきてしまいます。

多言語運用体制と翻訳方法について

越境EC運用にあたり、運用体制と翻訳方法は紐づいています。運用に関するよくある事例をご紹介します。

社内のリソースで多言語での翻訳ができる

社内リソースにより、人力翻訳、または機械翻訳の後に人力修正を行うポストエディットを行うことで翻訳工数を抑えるケースがあります。取扱商品によっては現地薬事法への対応や知的財産管理により翻訳を社外に出せない場合もあり、そのような場合は全て社内のリソースで人力翻訳します。このようなケースの場合、翻訳支援ツールと呼ばれる、翻訳資産の管理や翻訳サポートを行うシステムを導入するケースが多くなっております。

社内リソースでは、人力翻訳はできないが、チェックはできる

人力翻訳を外注する、もしくは社内リソースでポストエディットでの翻訳対応になります。ただし、人力翻訳を外注する場合では、翻訳費用が負担になるケースも多くなっています。最近では機械翻訳の精度も上がってきているので、機械翻訳後に人力チェックを行うケースや、機械翻訳に用語集を持たせて対応するケースもあります。翻訳を外注する場合の留意点として、翻訳ポリシーを策定し、外注先と相互認識をもっておく必要があります。直訳に近い表現なのか、各言語圏の文化に合わせた表現を意識するのかといった情報・翻訳ポリシーを依頼する際には決めておく必要があります。

社内で人力翻訳もチェックもできない

外注で人力翻訳を行う、もしくは機械翻訳メインでの運用が多いです。翻訳を外注する場合であっても最終的な責任はEC事業者様側にあるので、コストとスピードを考慮し機械翻訳をベースとした運用を選択されることも多くなっています。その場合、間違えてほしくない固有名詞(人名、商品名、ブランド名など)や比喩表現といった用語をケアする必要があります。過去にも、機械翻訳のみで公開したコーポレートサイトの表現がおかしくなってしまい話題になったケースもありました。最近では機械翻訳も一般に広く認識されているため利用される場合も多いですが、言語が切り替わる際に翻訳が機械翻訳である旨をポップアップで表示する、承諾を得る、といったサイトも多く見られます。

翻訳対応だけではない越境EC化

多言語対応の中でも翻訳をメインに記載しましたが、越境EC化の多言語対応には他にも様々な考慮が必要となります。

画像対応

ECサイトではバナーを画像として管理するケースが多いですが、多言語対応をする場合は画像内のテキストを言語別に翻訳し画像を作成する必要があります。そのため、ページを作る際に画像の中に文字を入れずに作成するケースも増えております。または、文字を画像の上にHTMLで管理することによって、Google翻訳などを離床して翻訳が可能となり、画像の多言語対応にかかる工数が不要になります。越境ECでも日本語の画像のままのサイトも多くあるので、対応しないという判断もあるかと思います。

言語別デザイン調整

日本語から英語やドイツ語に変換する場合、文字量が多く(文字数が長く)なります。そのため日本語のデザインにはなかった改行が入ったり、フレームをはみ出してしまうなど、想定していないデザインのズレが起こる場合があります。そのため、CSSで言語別に幅やフォント調整が必要になります。

また、文字変換としての翻訳対応だけではなく、利用言語により売れ筋商品や見られるコンテンツ量も変わってきますので、できれば言語別に文化・商習慣を意識して訴求内容を変更されることをお勧めします。

海外SEO対応、プロモーション

Google翻訳などの機械翻訳でフロントのみ言語切り替えをする場合、翻訳情報はインデックスされていません。そのためEC自体は翻訳されているように見えますが、海外SEO対応はできない仕様となっています。その場合はSNSでの集客にも力を入れるなど他の対応が必要です。

データベースに多言語で情報を持つ、海外SEO対応可能な翻訳管理(多言語管理)システムを導入するといった場合はインデックスされますので、翻訳した情報での自然流入も一部見込まれます。また、国内のリスティング広告の延長で海外にも対応するケースも見られますが、対応言語ごとにしっかり対応することで効果が大きく変わります。

越境ECの成功事例

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海外向けのECサイトを構築している企業は多く、成功事例も多く報告されています。
例えば「Yamada LLC」はカメラ関係の商品を取り扱ったECサイトを運営し、アメリカやカナダで越境ECを成功させた事例です。
日本製のカメラはその性能の高さから、海外での需要が高く販売の機会が多かった点が成功につながっています。

甲冑のレプリカを扱う「SAMURAI STORE」も、海外向けECサイトの成功事例の一つです。
甲冑の販売に絞った専門的な販売形式が強みで、リピーターの確保と口コミが広がった結果オンラインショップとして安定した運営ができています。

「DCPエンタープライズ」は、中古のブランドバッグやジュエリーを販売する海外向けECサイトとして成功しています。
実店舗を持ちながら中古商品の買取・販売を行っていて、迅速かつ丁寧な配送で顧客の満足度を高めている点が特徴です。

海外向けECサイトの成功事例を見ると、海外ならではの需要を把握したうえで、安定した環境で販売をすることが成功の鍵になっていると考えられます。
海外の需要を確認する時間を確保し、ECサイトとして安定した環境をスムーズに構築するには、海外向けECサイトに適したサービスの利用がおすすめです。

中国向け越境ECを成功させるポイント

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今後も越境EC事業を立ち上げようという日本企業の多くが、まず中国をターゲットにするのではないかと思います。従って、ここでも中国向け越境ECサイトを立ち上げることを前提に、成功のポイントについて解説していきます。を立ち上げようという日本企業の多くが、まず中国をターゲットにするのではないかと思います。従って、ここでも中国向け越境ECサイトを立ち上げることを前提に、成功のポイントについて解説していきます。 

ポイント1. ECサイト構築と集客

中国向け越境ECサイトを構築する方法として最もポピュラーなのが、国内サーバでECサイトを構築し、それを中国市場で公開するというものです。中国国内でサーバを立てECサイトを構築するとなると、中国工進部(日本の経済産業省にあたる政府機関)の認可が必要になるので、手間・コスト面から考えて、現実的とは言えませんとして最もポピュラーなのが、国内サーバでECサイトを構築し、それを中国市場で公開するというものです。中国国内でサーバを立てECサイトを構築するとなると、中国工進部(日本の経済産業省にあたる政府機関)の認可が必要になるので、手間・コスト面から考えて、現実的とは言えません。

国内サーバでECサイトを構築すれば認可を受ける必要はないので、この方法で越境ECサイトを立ち上げる企業が多いでしょう。

ただし問題は“集客”です。

日本国内でお馴染みの検索エンジンといえばGoogleやYahoo!ですが、これらの検索エンジンは中国で規制されています。加えて中国の検索エンジン市場はBaidu(百度)が97%のシェアを独占しているので、慣れ親しんだSEO対策はまったく通用しません。当然ですがGoogle Adwordsなどのリスティング広告は使えません。 

打開策としては、Baidu(百度)リスティング広告やディスプレイ広告に出稿することになります。Baidu(百度)には日本法人もあるので確認すると良いでしょう。

また、Tmall(天猫)かJD.comといったECモールに出店することも検討する必要があります。中国では商品検索を行う際、検索エンジンではなくECモール内の検索機能を利用する人の方が多いという声もあり、これらのECモールに出店することも重要です。

ポイント2. 問い合わせ対応

中国ではスーパーコピーなどの偽物商品が多く流通していることから、中国人は品質に対してかなり敏感です。日本国内では正規店から購入しているという安心感もあり、爆買いする光景がよく見られますが、ECサイトではそうした光景はむしろ稀です。

このため中国人向けに問い合わせ対応を整備する必要があります。また、中国のECは、チャットでのコミュニケーションが主流なことで有名です。時にはチャットを介して値引き交渉されることなどもあり、それに対応することで販売に貢献することも多々あります。このような文化の違いを吸収することも重要なのでしょう。 

ポイント3. ECサイト決済システム

中国ではクレジットカードが普及していません。第三者による不正利用や不正送金が多く、これを懸念してクレジットカードを持つ消費者が少ないのです。

では、どういった決済を行っているかというと、最も普及しているのが「支付宝(アリペイ)」です。アリペイはメルカリの決済システムのような方式を取っていて、消費者が商品を受け取ってから料金が支払われる仕組みになっています。 アリペイか、ペイパルか、あるいはその他の決済システムを利用するか、成功の命運をわけるポイントです。

ポイント4. 物流コスト

最後は物流ですが、中国の物流事情は複雑で、故に原価が高くなってしまう可能性があります。加えて中国のEC事情では送料無料が当たり前なので、必然的に物流コストが高くなってしまうのです。

しかし、中国EC市場では最初の物流コストを犠牲にしてもファンを付けることで、将来収益拡大が狙えるので、慎重に検討しなければなりません。

まとめ

越境ECを展開する環境が整ったことや、日本商品の海外でのニーズが高いこともあり、越境ECの市場規模は今後も伸び続けることが予想されます。

特に新型コロナウイルス感染拡大によるインバウンド需要の落ち込みから、多くの企業が売上の確保に苦戦している状況であるため、インバウンドの代替手段として越境ECに注目が集まっています。

越境ECを成功させるためには、言語・法律・規制・物流・現地事情といった国内ECには無いさまざまな障壁をいかにクリアしていくかがポイントです。これから参入を予定している方は、これらを十分に考慮して慎重にビジネスモデル・ビジネスプランの設計を行いましょう。

越境ECの課題の一つである多言語対応については、課題や解決策についてより詳しくまとめた資料もございます。こちらもぜひ併せてご覧ください。

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