SQL Serverとは?基本からライセンス体系や機能について解説

 2021.08.17  株式会社システムインテグレータ

現在、データベース市場で主流となっているRDBMSの中でも、企業の利用実績が多いSQL Server。そのSQL Serverの概要と他のRDBMSとの違い、SQL Serverの特徴やライセンス体系、機能一覧、インストール方法をまとめて詳しく解説します。 

SQL Serverとは

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SQL Serverに正式名称は「Microsoft SQL Server」で、「MS SQL」と呼ばれることもあります。これはMicrosoft社が開発してリリースしたリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)で、Windows OSとの相性がよく、特に詳しい知識がない初心者もマウスで作業ができるなど操作性の高さから、導入する企業が多くなっています。また、Microsoft SQL Server Management Studioという管理ツールが用意されていて、リレーショナルデータ管理システムの中でも設定や管理、開発が行いやすいのも魅力です。基本的には有料サービスですが、無料で利用可能なサービスもあります。 
リレーショナルデータベース(RDB)はデータベースの型の1つで、データをテーブル(表)の形で保管しています。そのデータから各テーブルの関係性(リレーショナル)を作ることで、さまざまな使用方法に耐えうるデータベースへと発展していきます。たとえば、GoogleスプレッドシートやExcelのように、行と列の2軸でデータの関係性を定義すれば、複雑なデータ処理も可能です。データ処理を一貫して実施し、なおかつ複数テーブルのデータベースを構成すれば、追加や削除の処理コストも低減できます。SQL Serverの他にもOracle DatabaseやMy SQL、Postgre SQLなどのリレーショナルデータベース管理システムがあります。 

他のRDBMSとの違い

SQL Serverと他に人気があるリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)と比較して、規模やコスト、対応OSの違いについて解説します。 
 
・Oracle Database 
Oracle社が開発した世界で初めてのリレーショナルデータベース管理システムで、大規模システムに適しています。商用データベースとしてしっかりしたサポート体制が整っておりますが、それだけにコストは高めです。Standard Edition 2のNamed User Plusライセンスで4万2000円(税抜)、Processorライセンス210万円(税抜)がかかります。さらにアップデータとサポート費用も必要です。Windows、Linux、AIX、Solaris、HP-UXと幅広いOSに対応しています。 
 
・My SQL 
同じくOracle社が開発したリレーショナルデータベース管理システムで、規模を問わずオールマイティに使用できます。オープンソースもあるため、低コストでのシステム構築が可能です。年間サブスクリプション(1-4ソケット・サーバー/年)のMySQL Standard Editionライセンスが24万円と掲載されています。対応OSはWindows、Mac、Linux、Free BSDです。 
 
Postgre SQL 
オープンソースのリレーショナルデータベース管理システムで、複雑なクエリや大規模なデータベースを扱うことも可能です。多くの機能を持ち、拡張性があります。対応OSはWindows、Linux、UnixWare、Solaris、HP-UXとさまざまです。 
 
・SQL Server 
Microsoft社が開発したリレーショナルデータベース管理システムで、中規模から大規模のデータベースに対応しています。コストはOracrl Databaseに次いで比較的高価ですが、Windows製品との親和性がもっとも高く、Linuxにも導入可能です。エンタープライズ市場での実績が豊富で、コストパフォーマンスとしてのバランスは良いと言えます。  

SQL Serverの特徴

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SQL Serverはプログラムの処理手順を記入するプログラミング言語とは別に、SQLというデータベース言語を使用しています。これはデータベースの作成や登録データを検索する際に必要な言語で、データの定義づけとデータ操作、データ制御の3種類があります。リレーショナルデータベース管理システムとしてのSQL Serverの特徴は以下の6つです。  

Microsoft製品との高い親和性

Microsoft社が提供するデータベース管理システムであるため、Windows OSをはじめとするMicrosoft製品と親和性が高く、相性が良い点が第一の特徴です。また、機種やOSに依存せず同じプログラムを動作できる、ソフトウェアの実行環境などを支えるシステム基盤Microsoft.NETのデータベースとしても広く使用されています。 
加えて、C#のようなMicrosoftの開発言語との相性の良さにも定評があります。動作中に何かわからないことやトラブルが起きたとしても、他のOSよりも多くの情報を得やすいため、すぐに必要な情報にアクセスして迅速に対応することができます。 

システム環境を選ばず使いやすい

SQL ServerはSQL Server Management Studio(SSMS)という統合管理ツールを使用してデータベース管理を行います。SSMSを使用するとデータベースの作成や更新などをスムーズかつ手軽に実施できます。また、SSMSの使用によってデータベースやデータの倉庫であるデータハウスが、ローカルなオンプレミス環境、オープンなクラウド環境のどちらにあっても運用に差し支えありません。システム環境を選ばないため、さまざまなケースでのデータベース管理に対応しています。SQL Serverの場合、他のデータベース管理システムとは異なり、わからないことをWeb検索するとすぐに必要な情報を抽出できます。情報検索がスピーディーにできることも特徴的です。 

マウスで直感的に操作が可能

データベース操作は通常、CUI(Character User Interface)またはCLI(Command Line Interface)からのコマンド入力によって行います。一方、SQL Serverはユーザーが命令や指示などを画面上で視覚的に捉えて指定できるGUI(Graphical User Interface)で操作します。このようにSQL Serverの管理ツールであるSQL Server Management Studioを利用して、CUIやCLIよりも直感的にデータベースを操作できる点は、導入のハードルを下げてくれる特徴の一つです。マウス操作で簡単にデータベースの作成や更新ができるので、データベース操作に慣れていない初心者でも扱いやすいでしょう。Oracle DatabaseにもGUI操作をサポートするツールがありますが、SQL Server Management Studioの操作性には及びません。 

システム規模に合わせた豊富なエディション

SQL Serverはシステム規模や用途に合わせてさまざまなエディションを選ぶことが可能です。大規模システム向けのEnterpriseから小規模システム向けのExpress、開発用途のDeveloperなどが用意されています。EnterpriseはSQL Serverのすべての機能を利用できるサービスで、大規模なシステム開発にも対応できます。その他のエディションはシステム規模に合わせた必要な機能のみを利用できる仕組みです。開発用のDeveloperだけはEnterpriseと同じ機能が使用可能ですが、試作のみで実際の稼働環境では使用できません。Microsoft社のクラウドサービスAzureで提供しているSQL Serverでも、多様なエディションを選ぶことができます。 

強固なセキュリティ

SQL Serverは複数のユーザーが同時にアクセスできると同時に、データやユーザーごとにアクセス権限を設定することができます。アクセス権限が付与されていない未承認のユーザーが、データベースにアクセスできないように設定できます。また、暗号化技術でデータ情報が外部に漏れないようにし、悪意のあるユーザーに情報を盗み出されないようセキュリティを強化している点が特徴です。ファイヤーウォールなども利用できるため、優れた信頼できるセキュリティ環境でデータベースを構築でき、さらにバックアップや復旧・復元の機能も用意されているなどトラブル時のデータ破損に強い点もメリットです。 

独自のTransact-SQLが使える 

SQL Serverはデータベースを操作するSQL言語と、SQLを拡張した「Transact-SQL(T-SQL)」の利用が可能です。Transact-SQLは、Microsoft社とソフトウェアのSybase社が共同開発した言語で、データベースを操作するだけでなく、変数や条件分岐、繰り返しなどプログラミング言語のように、データベースシステムの制御や構造を記述できます。ローカル変数や文字列、日付・数値処理など業務仕様のファンクションが追加され、データ取得・更新・削除、テーブル作成・変更・削除も簡単です。使い方はアプリケーションからTransact-SQLを送信するだけで、SQL Serverのデータベースに反映されます。Transact-SQLの仕組みにより煩雑なデータベース操作を簡単に行えるところも魅力です。 

SQL Serverのライセンス体系

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SQL Serverのバージョンは年号で表され、1~3年単位でバージョンが新しくなっています。2021年7月現在の最新版はSQL Server 2019です。SQL Serverのバージョンによって選択できるエディションが変わることもあるため、バージョンを細部までチェックしておきましょう。SQL Server 2019はEnterprise、Standard、Developer、Expressの4つのエディションで構成されています。一部は先述しましたが、Enterpriseはすべての機能が利用できる最上位版で、大企業や高度なデータ処理システム向けです。Standardは中小企業や大手企業の部門向けで、データ分析機能など一部機能が利用できません。DeveloperはEnterpriseと同格の性能ですが、開発用途のみの利用で運用は不可です。Expressは基本機能のみの提供で個人や小規模事業者向けとなっています。  

エディションで異なるライセンスと費用

SQL Serverのライセンスはコア単位とサーバー単位、サーバーに加えて接続するクライアント数による3つのライセンス形態があります。コア単位ライセンスはサーバーのCPUコア数に基づいて料金が変わります。1CPUにつき最低4コアと設定されているため、最小でも4コア分の費用が必要です。サーバー単位は物理または仮想OS環境ごとにライセンスが必要となり、サーバーにアクセスするデバイス数に応じてクライアントライセンスが必要となります。Enterpriseはコア単位のみの提供で、最低料金は13,748米ドルです。Standardはコア単位とサーバー・クライアント数単位のどちらかを選べます。コア単位の最低料金は3,586米ドル、サーバー単位の料金は1OSごとに899米ドル、クライアントごとに209米ドルです。Developerはユーザーごとにライセンスが割り当てられ、Expressはライセンス不要です。どちらも無料で利用できます。 
 
※料金は2021年7月12日時点のもの 

無料版と有償版の違い

SQL Serverは、エディションによってEnterpriseやStandardの有償版と、DeveloperとExpressの無料版に分かれています。無料版は個々のデータベースサイズが10GBという制限を受けますが、小規模なシステム開発であれば差し支えはないでしょう。データ量が10GBを超える場合は複数のデータベースと作成し、分散させる方法で対応できます。ただし、CPU1つにつき4コアまで、メモリは1GBという利用制限があります。また、データベースの定期的なバックアップとSQL Serverの特徴的な機能である、日時を指定して自動実行させるジョブスケジューラ機能が使えません。 
Expressはメンテナンスプランを使用できないため、定期的なデータバックアップを行うには、そのためのSQL文を記述するか、Windowsのタスクスケジューラーに登録する作業が必要です。これらの機能をプログラミングする場合、必要な専門知識を得るための時間や、エンジニアの工数を増やしてしまうなどロスが生じてしまいます。また、Developerは開発及びテスト用システムのため、本番稼働用のサーバーに利用するとライセンス違反となります。なお、無料版から有償版にアップグレードするには専用ツールを使用すれば簡単に移行できるため、小規模なExpressから利用を始めると安心して導入できるでしょう。 

SQL Serverの機能一覧

SQL Serverの機能についてリスト形式で記載しました。項目ごとにリストアップしています。 

オブジェクト管理

・オブジェクトのツリー、リバース表示 
・オブジェクト作成、検索、コピー機能 
・オブジェクトのソース編集、印刷 
・スクリプト出力機能 
・統計情報取得、権限付与機能 
・データ出力、生成機能 

SQL実行

・SQL実行、計画表示 
・SQL整形、ビルダ、結果出力 
・コードアシスタント 
・エディタツールパレット 
・ユーザー定義SQL、スクリプト実行機能 

ストアドプログラム作成

・専用スクリーンエディタ 
・コンパイル 
・実行 
・デバック  

DBA向け機能

・ユーザー情報、表領域情報、プロセス情報表示 
・ロック情報表示(ロック統計の解析可能) 
・データベース情報、ジョブ情報表示 
・SQLキャッチ、テーブルアクセス表 
・バックアップ 
・テーブルデータCSV入出力、デタッチ・アタッチ 

その他

・接続先リスト、クロスリファレンス機能 
・マトリクス、オブジェクト比較機能 
・インデックスアドバイザ、コメントチェック 
・ドキュメント出力、SQLリファレンス 

SQL Serverのインストール方法

SQL Server 2019は指定サイトから簡単にダウンロード可能です。管理ツールSSMSのインストール手順も併せて紹介します。  

SQL Serverのインストール手順 

基本的にはウィザード画面に従ってインストールを行います。 

  1. 下記サイトからダウンロードしたexeファイルを実行します。
  2.  ウィザード画面でインストールの種類が表示されます。 
  3. 「基本」「カスタム」「メディアのダウンロード」のうち、通常は基本を選択します。 
  4. ライセンスの同意を確認されるので、「承認」を選択します。 
  5. インストール場所を確認されるので、既定の場所で問題なければ、そのままインストールして完了です。 
参照URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/sql-server/sql-server-downloads 

SSMSのインストール手順

SQL Server Management Studio(SSMS)も同じように、ウィザード画面に従ってインストールできます。 

  1. 下記サイトからダウンロードしたexeファイルを実行します。 
  2. ウィザード画面でインストール場所を確認されます。 
  3. 既定の場所で問題なければ、そのままインストールして完了です。 

参照URL:https://docs.microsoft.com/ja-jp/sql/ssms/download-sql-server-management-studio-ssms?view=sql-server-ver15 

まとめ

SQL Serverはシステムの規模や用途に合わせてエディションを選べますが、エディションによってラインセンス内容が異なります。無料版はデータやメモリの制限や、使用できない機能がありますが、小規模なシステムであれば十分でしょう。無料版から始め、必要に応じて有償版にアップグレードすると導入時のリスクヘッジにつながります。 

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