原価管理とは?

 2022.08.24  株式会社システムインテグレータ

1980年代から90年代にかけて、日本経済が好調だった頃には、原価管理はそれほど重要視されていませんでした。しかし、バブルが崩壊し、コスト削減と利益確保が最重要となったことで、原価管理が注目され、業界業種を問わず厳密な原価管理に取り組む企業が増加しました。

原価管理とは、1962年、財務省(当時の大蔵省)によって次のように定義されています。

「原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう」

引用:原価計算基準

簡単に説明すると、目標利益率を確保するための「標準的な原価」を設定し、それに応じた経営計画や生産計画、販売計画などを立てる。そこで実際に発生した原価と標準原価の差額を計算記録し、その差異の原因を分析することで、より適切な標準原価の設定と原価低減を目指す取り組みです。

今回は、この原価管理について、より詳しく解説していきます。

 

原価管理と原価計算の違い

原価管理と原価計算との違いについて混乱する方も多いかと思います。2つの違いを簡単に言えば、原価計算とは製造原価や売上原価などを計算するための「技術」であり、原価管理はその技術を用いて原価を適正管理するための手法です。

つまり、原価計算がツールで、その利用(管理)方法を定めるのが原価管理です。

原価計算についてはこちらのブログで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
原価計算とは?方式からシステム化のポイントを解説

原価計算によって求める「原価」とは?

原価計算を行うことで製造原価や、売上原価などを算出していきますが、ここで言う「原価」とは何を指すのでしょうか?製造業を例に考えていきます。

製造業における製造原価は、大きく分けて3種類あります。

まずは「材料費」です。これは、製造に必要な原材料や部品にかかる費用です。次は「労務費」です。これは、製品を製造するための作業員の給料です。

そして3つ目は「経費」です。これは外注加工先に支払った費用や工場の減価償却費などの費用です。

製品一つあたりの原価は、これらの原価を集計し製造した製品総数で割ると、算出できます。

 

≪製造業の原価例≫

(材料費50万円+労務費40万円+経費10万円)÷製品製造数1,000個=原価1,000円(1個あたり)

原価管理はなぜ必要か?

原価管理が必要な理由は非常にシンプルです。

それは、一つ一つの製品やサービスの原価を正確に把握し、それに応じた価格設定を行うことで、利益を確定するためです。

たとえば、販売単価が1個100万円の製品があったとして、一方の原価は20万円、もう一方の原価が23万円だとすると、どちらが利益を確保できるかは明白です。一つ一つの原価差額は微々たるものかもしれませんが、販売個数が1万個、100万個、それ以上となると、利益の差は大きく開きます。つまり、原価を下げるほど利益は大きくなり、企業は成長します。

もう一つ、原価管理の重要な役割は、原価変動の「リスクマネジメント」を行うことにあります。

原価とは常に一定ではありません。特に製造業においては、原材料や部品の仕入価格が色々な要因で変動するため、原価も大きく変動します。また海外から輸入している場合には、為替の変動が大きな影響を与えます。

もし原材料や部品の仕入において価格高騰が起きれば、原価が上がり、利益が下がってしまいます。にもかかわらず、従業員に支払う給与や設備費は変わらないわけですから、会社全体の収益を大きく圧迫することになります。

原価管理では、こうした原価変動のリスクを予測して、それに応じて対応策を立てておかなければなりません。

原価変動時の仕入先変更の計画を立てたり、販管費削減の計画を立てておくことで、万が一原価変動のリスクが現実になっても、迅速に対処し損失を最小限にとどめることができます。

このように、企業の利益を「守る」という役割も、原価管理は持っているのです。

 

原価管理をうまく利用した事例

原価管理によって成功を収めた有名な事例としては、マクドナルドの「100円ハンバーガー」があります。これは、変動費と固定費の特徴に目をつけたことで、大幅な原価削減に成功した例です。

変動費というのは、ハンバーガーを製造するためにかかる「材料費」です。材料量は製造する数量が多くなれば増えます。一方固定費は、人件費や設備など製造する数量に関係なくかかる費用を指します。固定費は販売数量が多くなるほど下がっていくという特徴があります。

マクドナルドのハンバーガーは変動費よりも固定費の方が圧倒的に大きかったため、当時210円だったハンバーガーを100円まで値下げし、販売個数を爆発的に増やすことで1個あたりの原価低減に成功したのです。

結果として、販売価格は下がったものの販売数量が増えてトータルの利益は大きく増加しました。

 

原価管理システムに求められるものとは

ここまで解説したように、原価管理は企業の利益を確保するために重要な業務だと言えます。

しかし、原価管理を適切に行うことは、そう簡単ではありません。そこで多くの企業が「原価管理システム」を導入し、原価管理の適正化を図っています。

原価管理システムにとって大切な要素は、他基幹システムと連携して正確なデータを把握することです。たとえば、原価管理システムと調達管理システムで連携が取れていると、仕入データが原価として自動で反映するため、正確な仕入金額を原価として計上することができます。

給与管理システム生産管理システムが連携していれば、給与実績と作業時間で人件費を容易に計算することができます。

原価管理では何よりも「正確なデータの把握」が重要となり、そのデータをもとに標準原価を策定し、実際原価を計算記録していきます。従って、原価管理システムに求められるのは、関係する業務システムと連携し、原価となる要素を集める仕組みと言っても過言ではありません。

原価管理とERPの関係

原価管理は材料費や労務費など様々な情報が必要になりますが、ERPは基幹システムを統合管理しているため、原価管理に必要な情報がすべて集約されています。

そのためERPを活用することでスムーズにデータ連携し、正確かつ容易に原価管理を行うことができるのです。

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まとめ

あらゆる業種や業態で原価管理を取り入れる動きが加速しています。製造業においては、もはや当たり前です。しかし、サービス業では「原価」という概念を実感しづらい傾向にあるので、原価管理への取り組みが進んでいないという報告もありますが、プロジェクトごとの収支などを的確に計画・管理すれば利益率を向上させることができるでしょう。

まだ、原価管理に取り組んでいないという企業は、これを機にぜひご検討ください。


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