製造業におけるスマート工場とは?企業が取るべきAI・IoTを活用した戦略と成功のポイント

 2020.02.03  株式会社システムインテグレータ

製造業で今最もホットなキーワードといえば、スマート工場(スマート・ファクトリー)でしょう。製造工場の生産ラインにある機械や設備にIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を搭載し、コンピューターネットワークに接続することで生産工程を完全にコントロールし、生産性向上や品質向上を図ります。ドイツでは同様の施策がインダストリー4.0と呼ばれ、政府機関が主体となってスマートファクトリー化が進められています。

本稿では、このスマート工場について情報を整理しつつ、企業が取るべき戦略と成功のポイントについて解説します。

スマート工場の重要性とは?

製造工場の生産ラインの機械や設備にIoTを搭載し、コンピューターネットワークによって生産工程を制御することは、企業の生産性向上や効率化、利益確保の観点で先進的な取り組みであり非常に重要です。それはスマート工場の概要を知るだけで容易に想像できます。ただし、スマート工場が目指すところは、それだけではありません。

激しいビジネス競争を勝ち抜くために必要なものは、顧客1人1人に合わせて製品をカスタマイズする“マスカスタマイゼーション”です。市場のニーズは常に多様化し、顧客は常に自分にピッタリな製品を求めています。このニーズに応えることこそ、これからのビジネス競争を勝ち抜く上で大切な要素と言われています。

しかし、マスカスタマイゼーションにおいては、大量生産方式と違い管理する情報や工数が圧倒的に多いため、生産工程ではよりインテリジェントなノウハウ、スキルが求められます。それらが備わっていない生産工程では生産性が劇的に落ちてしまうと言われています。これらの問題を解消し、大量生産方式と同等以上の生産性でマスカスタマイゼーションを実現するのが、スマート工場の目指すところです。

マスカスタマイゼーションでは製品の注文が入った時点で生産指示を出し、必要な材料や部品を投入して生産を開始します。製品によって生産工程も異なるため、大量生産方式に比べると生産性が低下します。これがスマート工場になると、製品の注文情報をコンピューターが自動的に処理して必要な材料や部品を投入し、IoT化された生産ラインではカスタマイズに合わせて生産工程が自動的に変化します。

これが真のマスカスタマイゼーションであり、実現すれば絶大な効果を企業にもたらします。

スマート工場におけるIoTとAIの関係

スマート工場の実現に欠かせない技術がIoTとAI(Artificial Intelligence:人工知能)です。

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)

IoTはあらゆるモノがコンピューターネットワークで繋がり、さまざまな情報をリアルタイムにやり取りするための仕組みです。モノをコンピューターネットワークに接続すると、従来は読み取れなかったデータをモノから集め、蓄積し、それを分析することができます。たとえば自動車がコンピューターネットワークに繋がると、道路の混雑状況や道路工事状況、路面状況などのデータをリアルタイムに集めて、情報発信することで多くの運転者と共有できます。

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このような機能はすでにカーナビに搭載されており、交通におけるさまざまな情報をリアルタイムに近い感覚で運転者に発信してくれます。ただし、IoTで目指す世界はもっと先にあります。

もしもすべての自動車がコンピューターネットワークで接続され、運転者同士が双方向で情報共有できるようになったらどうでしょうか?自分の行きたい場所の細かい混雑状況や路面状況などを運転手同士でやり取りして、常に正確な情報や関連した役に立つ情報を無意識のうちに提供してくれたりするかもしれません。また、これらやり取りされた情報はリアルタイムですべての運転者にも共有できます。

車でどこかに旅行へ行く場合もリアルタイムな桜の開花状況や天気が変化しやすい山岳部の天気を正確に伝えたり、自動車が巨大なネットワークに接続したりすることで日本中の情報が手に取るようにわかるようになります。

AI(Artificial Intelligence:人工知能)

IoTによってモノから収集したデータはDWH(Data WareHouse:データウェアハウス、データ格納庫)に蓄積するだけでは意味がありません。肝心なことは、蓄積したデータを限りなくリアルタイムに処理し、それを価値ある情報に変換しモノを使用している人や機械もしくはシステムにフィードバックすることです。

たとえば、3D地図、周辺車両、歩行者、信号、渋滞、事故、交通規制、路面などの情報をIoTによって蓄積し、それをAIが分析することで自動運転が可能になります。もしここでAIが無ければせっかく収集したデータもただのガラクタです。

スマート工場では生産ラインの機械からIoTによってあらゆるデータを取得し、それをAIで分析することで高度な自動化を実現しつつあります。一部の生産ラインではIoTとAIによる自動化に成功している工場もあり、今後更なる発展が見込まれています。

スマート工場を実現するには?

スマート工場などの産業IoT活用で成果を上げるための仕組みをCPS(Cyber Physical System:サイバーフィジカルシステム)と呼びます。これは、現実世界(フィジカル空間)にある様々なデータを収集し仮想世界(サイバー空間)へと送信、それらデータを分析して創出された結果を現実世界にフィードバックする、というサイクルが現実世界と仮想世界を一体化することで社会システム全体の効率化を実現します。

具体的には、IoTで収集されたデータを自社データセンターやクラウドコンピューティングに蓄積、それらをAIやBI(Business Intelligence:ビジネスインテリジェンス)を通じて分析して、その結果となるインサイト(洞察)情報を現実世界にフィードバックして活用する、という流れです。スマート工場のように自律的な生産活動を行える工場を実現するには、このサイクルが様々な生産ラインや生産機械で行われ、かつ互いに連携することが求められます。

スマート工場の実現において、必要な4つのステップがあります。①可視化、②分析、③制御、④最適化です。

① 可視化

生産ラインや生産機械に取り付けられたセンサーやディープラーニングを用いたAIで工場内のあらゆる情報を可視化し、それらを自社データセンターやクラウドコンピューティングへ蓄積します。

② 分析

可視化によってサーバーやクラウドコンピューティングに蓄積された情報は、さらにAIやBIによって自動的に分析され、利用可能な情報へと変換されます。これには情報を集約、管理、分析するためのシステムソリューションが必要です。

③ 制御

分析によって得られたインサイトを活用し、コンピューターで生産ラインや生産機械を制御します。たとえば製品の不良を検知したら生産ラインと生産機械をストップし、問題の製品を生産ラインから排除して再び生産を進めたりします。

④ 最適化

最終的には、様々な制御を組み合わせることで全体最適化を実現していきます。コンピューターと生産ライン、生産機械が互いに制御し合うことで最適な生産工程を生み、生産性を大幅に向上します。

現在、スマート工場化を事業戦略に組み込んでいる企業はそれほど多くありません。スマート工場を実現するには、まだ多くの課題があり、工場をスマート化するのにかかるコストも決して安くないからです。しかし今後は、AIやIoTのコモディティ化が進み、中小企業においてもスマート工場化が当たり前となる時代が必ずやってきます。

今後スマート工場に対応する計画がないという場合でも、スマート工場の動向を常にチェックし、必要に応じて対応の可否検討を行っていきましょう。

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