ゴムの加工方法や製造時に起こりうる不良の例を紹介

 2022.05.16  株式会社システムインテグレータ

私たちの日常生活にはゴム製品があふれています。靴のゴム底、ベルト、ホース、チューブ、タイヤなど挙げたらきりがないほどです。それらがゴム製品として流通されるまでには、さまざまな加工工程があります。

本記事では、ゴムの加工方法や製造時に起きうる不良の例を中心にご説明します。ゴム加工に関して基本知識がないという方にもわかりやすいように、基本事項からまとめています。ゴム加工に関して知識を身につけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

ゴム加工とは

ゴム加工とは

ゴム加工とは、その名の通りゴム素材を加工して目的の形状に成形することです。ゴム素材には、板状や紐、ブロック状などさまざまな形状のものがあります。それらの素材に手を加えることで目的の形状にしていきます。

ゴムは柔らかくて弾みやすく、圧力・力をかけるとよく伸びる性質があります。力を加えて伸ばしても離せばもとに戻る、弾性が特徴の素材です。

一方でゴムは材料が劣化しやすいことや劣化の時期を予測することが難しいことが弱みです。加工後の製品には老化防止剤を塗ることが対策として考えられます。

ゴム素材はカッターのような刃物でカットすることも可能ですが、刃物でカットすると加えられた力によって変形するため、きれいに仕上げるのは難しいです。そこでゴムの形状にあわせた加工方法が必要になります。

次章以降ではゴムの加工工程や具体的な加工方法をご説明します。

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ゴムの主な加工工程

ここではゴムの主な加工工程をみていきます。ゴム製品が仕上がるまでには以下の工程があります。

1.設計

原料ゴムに混合する薬品やその他材料の種類、使用料などを決定し、配合表にまとめます。

2.ロール(材料の完成)

配合表をもとに配合剤を計量します。製品によっては10種類以上の配合剤を使うことがあるため、間違いのないように注意力が求められます。薬品を計量したらポリマーなどの機械を使って精練して材料が完成します。

3.押し出し

製品によっては仕込み材料の準備として行う工程です。

4.検査

材料が仕上がった段階で設計通りになっているか検査・試験を行います。複数の評価試験機を活用してさまざまな角度から試験を実施します。

5.成形

材料に問題がなければ成形に移ります。型に流し込んで形を作ったり決められた大きさに裁断したりします。

6.2次加硫

裁断、成形されたゴム素材を、円筒系耐圧缶の中で加圧蒸気によって加熱(直接蒸気加硫)、二十加硫缶の中で間接的に加熱(熱空気加硫)するといった方法で製品にします。加硫とは、ゴム素材に硫黄を混合・加熱することで分子を網目状の構造にすることです。

7.仕上げ

製品によって余分な部分を裁断するなど仕上げを行います。

8.検査

仕上げが終わった製品に問題がないか、目視や機械などで検査を行います。

以上がゴム製品の一般的な加工工程(製造工程)です。製品によって工程が異なる場合があります。

次章以降では、加工方法の具体的な内容をご紹介します。

ゴムの加工方法

ゴムの加工方法

成形加工

成形加工とは、形を作るための加工です。さまざまな加工方法がありますが、ここでは5種類をご紹介します。

圧縮成形

ゴムの成形方法で最も使われている手法です。金型にゴム素材を流し込んで熱と圧力を加えて成形します。メリットは金型のコストが安くて、設備の導入や操作が簡単な点です。一方でバリが多く出るデメリットがあります。ホースやチューブ、パッキンなどの製造に用いられます。

押出成形

材料を押出機の中で溶解・流動化させ、圧力をかけてスクリューで連続的に前進させることで断面形状が同じ長尺品を作る方法です。パイプやホース、チューブなどの製造に向いています。

圧入成形

ゴム素材をポットに入れて加熱・加圧して成形する方法です。寸法精度が高く、形状が複雑であっても成形できます。構造が複雑な場合は金型が割高になり、スクラップの量も増えます。精密機械の部品、OA機器の部品などに使われる方法です。

機械加工

ボール盤や汎用施盤、NC施盤などを使う成形方法です。金型費用がかからず、少量の生産に向いています。手作りの要素が多いため、厳格な精度が求められる場合には向きませんが、幅広い製品に対応できます。パッキン、ガスケットパイプなどの製造に採用される方法です。

射出成形

加熱して溶解させたゴム素材に圧力を加えて金型に流し込む方法です。型締め、射出、加硫などの順を追って行います。他の方法よりコストがかかるものの、自動で材料供給ができれば無人での製造が可能です。機械部品、大量生産品、OA機器部品など幅広い製品で採用されています。

切削加工

切削加工は、旋盤やフライス盤といった機械を使用したり、職人の手作業によって切削して目的の形状に仕上げる方法です。

ちなみに、人の手で切削加工する場合はロクロなどを用いますが、精度が保角が難しいため、機械を使うことがほとんどです。

切削加工のメリットは、金型を使わないため初期費用や金型製作の時間がかからないことです。さらに小ロットでの生産にも向いています。

規格変更が多い製品や試作品を作る際には切削加工が向いています。切削加工で対応できない形状もありますが、金型を使った加工では難しい複雑な形状を実現できます。

一方で金型を使わないことから大量生産には向かない方法です。1個当たりの生産コストも割高になりやすいため、生産個数が多い場合はほかの加工方法を選ぶのが賢明でしょう。

なお、切削加工の種類もさまざまですので、具体的な方法を簡単にご紹介します。

ウォータージェット加工

ゴム素材に高い水圧をかけてカットする方法です。あらゆる角度から切断できるため、複雑な形状にも対応しやすいです。

フライス加工

フライス盤に装着した刃を回転させ、素材を刃に当てながらカットする方法です。ネジ山作りや外径・内径の削りに採用されます。

ロクロ加工

固定したゴム素材を回転させて砥石などで削る方法です。ある程度成形された素材の仕上げに使われます。

ボール盤加工

ボール盤にセットしたドリルを回転させて、ゴム素材を削る方法です。セットした素材を移動できないため、主に穴あけに使われます。

裁断加工

裁断機にセットしたゴム素材を刃で押し切る方法です。直線状にカットする場合に向いています。

接着加工

ゴム同士やゴムと金属など、複数の素材をつなぎわせる方法です。接着剤や両面テープを使ったり、加硫接着といった方法で接着します。

抜き加工

抜き加工は刃がついている型を使って打ちぬく成形方法です。打ちぬく際はプレス機やハンドプレスなどを使います。クッキーの型抜きのように素材に型を押し込んでくりぬくイメージがわかりやすいでしょう。

抜き加工のメリットは、費用がかからずにできること、大がかりな設備が必要ないこと、同一形状を数多く製作できること、少量でも対応可能なことなどが挙げられます。

しかし、平面形状しか作れない、機械の形状にあった素材しか使えない、寸法精度が低いといったデメリットもあります。比較的コストがかからない加工方法ですが、型代がかかる点も覚えておきたい点です。

抜き加工の具体的な方法も簡単にご紹介します。

ビク型抜き

木型に刃物を装着して抜き加工を行う方法です。金型などに比べて低コスト・短期間で対応できます。

金型プレス抜き

金型とプレス機を使って加工する方法です。大量生産をしたい場合に向いており、加工精度が高い点も特徴です。しかし、設備費用など比較的コストが大きいというデメリットがあります。

スーパーカッター抜き

ビク型などを使って自動裁断する方法です。寸法精度が高く大量生産に向いています。

ポンチ抜き

ポンチを使って打ちぬく方法です。ポンチ自体はホームセンターなどでも購入できるため、比較的安いコストで行えます。使っていくうちに刃が劣化するため、大量生産には向いていません。

ゴムの加工で起こりうる不良

ゴムの加工工程ではさまざまな不良が起こりえます。加工方法によっても考えられる不良が異なりますが、たとえば切削加工では寸法のズレや切削面のバリなどが発生します。

また、加工方法によらずゴム素材に異物が混入すると、出来上がった製品の品質を下げてしまいます。仮に異物が混入したパッキンは、シール機能が低下して漏水の原因になるでしょう。

加工工程で切れが発生すれば製品の外観が失われるだけではなく、 真っ当な製品としての機能が果たせません。

そのほかにも、聞きなれない言葉ですが「ぐいち不良」が起こることもあります。「ぐいち」とは、型のつなぎ合わせ部分の位置が上下で一致していない状態です。

型が上下でズレていれば成形しても上下のズレが生じてしまい、寸法のズレや異物混入と同様に不良品の発生につながります。はをメーカーに外注することが多いため、自社では対応できないこともあるでしょう。型の検査でぐいちがないかしっかりと確認する必要があります。

ゴムの加工工程における不良は、これ以外にも種類があります。各工程でどのような不良が発生しやすいのか、発生時の対策をまとめておくと対処しやすいでしょう。

ゴム製品の検査方法

前章ではゴムの加工工程で起こりうる不良をご紹介しましたが、検査をすることで不良品の流出を防ぐことが重要です。

寸法不良であれば型寸法を確認し、NGの場合は修正や再製作を行います。型が正確に仕上がっている場合であっても寸法不良は起こります。圧縮に使う金型の熱の充填量をチェックすることもポイントです。他にも成形機の種類、熱の温度、時間・圧力によって寸法が変わるため、注意する必要があります。

切れ不良は目視検査で検知します。ただし、目視だけでは不良を発見できないことが多く、検査の際は製品を引っ張ったり曲げたりして確認します。

あまりにも切れの不良が多い場合は、金型の変更も必要になるでしょう。仕上げミスで切れが発生するならば、作業者のスキル向上も必要かもしれません。

また、ゴム素材への異物混入の検査でも一般的に目視検査を行います。効率的な検査を行うには、熟練されたスキルを持つ検査員の育成が必要ですなりません。また、、拡大鏡や光学顕微鏡を使う場合もあります。

異物混入は対策していても完全に防ぐことはほぼ不可能です。通常の環境では空気中にさまざまな異物が浮遊しており、たとえクリーンルームを設けても異物混入を0にすることは難しいでしょう。

異物をなくす努力も必要ですが、検査の品質や効率を向上して異物を見つけたときに迅速な対応ができるようにすることも大切です。

まとめ

ゴム製品の製造過程ではさまざまな加工方法が使われます。しかし、それぞれにメリット・デメリットはあり、不良品の発生を完全に防ぐことは難しいのが現状です。

不良品の流出を防ぐために不可欠なのが外観検査ですが、人手不足や検査の難化などによって検査員による的確な検査が困難になっています。そこでAIを活用した外観検査が近年注目を集めています。

外観検査を自動化する方法についてまとめた資料がありますのでぜひご覧ください。

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