研磨とは?切削などとの違いや種類・加工工程を解説

 2022.02.28  株式会社システムインテグレータ

金属製品などの仕上げとして施されるのが研磨加工です。研磨は外観を向上できるだけではなく、表面の微細な微調整にも効果的です。

今回は研磨の基本的な知識や加工の種類、工程などを網羅的にご説明します。研磨について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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研磨とは

研磨とは

研磨とは、製品の表面の仕上げ加工に用いられる加工方法です。製品の表面の凸凹を滑らかにする効果があります。

具体的には、砥粒と呼ばれる硬度が高くて微細な粒を同時に多数作用させて、製品の表面を削って滑らかにしていきます。マイクロメートルという非常に細かな単位で調整できるため、精度や強度が求められる製品に多く用いられます。また、細かな調整を加えるために最終工程で行われることが多いです

例えば、スマホや車などの機械製品、スプーンやアクセサリーなどの日用品もほとんどが研磨により仕上げが施されています。研磨が行われるからこそ、きれいな輝きや手触りを持つ製品が誕生するのです。

研磨以外の除去加工

製品の表面の凸凹を除去する加工には研磨のほかに切削や研削、放電によるものがあります。それぞれの加工方法について詳しくご説明します。

切削加工

切削加工は、刃物状の工具を用いて製品の不要物を切りくずとして除去していきます。機械加工の一種で、旋盤やフライス盤などによる加工が代表的です。切削加工には工具を使いますが、研磨は砥石や研磨剤を使う点が大きな違いです。

切削加工はものの形状を作る加工方法ですが、鋳造や鍛造などに比べて比較的高い精度の加工が可能です。金型を用意する必要もなく、さまざまな製品の大量生産にも向いています。

さらに、鍛造などと異なり、加熱する必要がないため大規模な設備などの初期費用も抑えることができます。除去加工には後述する研削加工や放電加工などもありますが、それらに比べると同じ体積の製品を加工するエネルギーは小さくなります。そのため切削加工は、除去加工のなかでも経済性と精度のバランスが取れた加工方法といえるでしょう。

一方で、切りくずの発生で歩留まりが悪かったり、製品によっては大量生産できなかったりといった課題もあります。また、形状によっては加工できない場合があるなどの注意点も覚えておきたいところです。

研削加工

研削加工は、高速回転をしている研磨砥石を使って製品を削っていく加工方法です。研磨は一定の負荷で加工を行うのに対して、研削加工は切り込みを加えて加工していくという違いがあります。

研削加工の目的は、設計した寸法精度の形状を作り出すことです。そのため、高精度の加工が可能です。砥石にはダイヤモンドホイールやCBN砥石などを使います。これらは硬度が高いため、切削加工では加工できない硬さのものを削ることができます。

研削加工が施される加工品の例として、家具が挙げられます。家具の表面の面取り、平面出しに使われています。また、家電の軸受けやベアリングなどの機械内部の部品の加工にも用いられます。車のブレーキディスク、丸ノコなども研削で加工される製品です。

なお、研削加工で直角を出さなくてはならない場合、定期的に砥石を削って精度を上げる必要があります。また、砥石が回転しているときに、間違えて製品を落としてしまうことなどにも注意が必要です。

放電加工

放電加工とは、電気のエネルギーを熱に変換して金属を溶かす加工方法です。刃物状の工具では加工できない硬い素材や複雑な形状のものを加工する際に利用します。切削加工などに比べて高精度な加工が可能です。

放電加工は器具が対象物に触れることがないため、応力を発生させずに加工ができる点もメリットです。これにより残留応力による寸法のずれや変形、バリの発生の心配がありません。

一方で加工に時間がかかったり、伝導性のない素材の加工ができなかったりといったデメリットがあります。放電加工の種類によっては加工の向きが制限されるなど、電気エネルギーを活用する加工ならではの注意点があります。

研削加工の後工程で研磨加工を行う重要性

研削加工の後工程で研磨加工を行う重要性

研削加工の後にはほとんどの場合で研磨加工が施されます。その理由としては以下が挙げられます。

表面粗さの向上

加工面の凸凹の状態を示すのが表面粗さですが、精度を出すのに苦労することがあります。研削加工で目的の表面粗さを満たすには研削砥石の目を細かくする必要がありますが、それによって目詰まりを起こす可能性が高くなります。そこで研磨加工をすると研削焼けなどの心配がなくなり、目的の表面粗さへ近づけることができます。

真円度の向上

研削加工の後に行われる研磨加工には製品の真円度、つまり円形の正確さを向上させる役割があります。研削加工で製品を高速回転させると振動の発生を抑えることができず真円度を低下させるため、研磨加工を行って真円度を向上させます。

以上のような理由から、研削加工の後工程としての研磨加工が重要視されています。

研磨の種類

一言で研磨といってもさまざまな種類があります。ここでは6種類の研磨加工を取り上げます。

砥石研磨

砥石研磨は砥石を高速回転させて、加工物に当てることで表面を削ります。サンダーやグラインダーなどの研磨機が使われることが多いです。身近なところでいえば、包丁を研ぐのも砥石研磨に該当します。

なお、砥石に関しては金属用、木材用、樹脂用、ガラス用など加工物に合わせて使い分けることになります。金属用の砥石はステンレス用、鉄鋼用、アルミ用などさらに細かく分類されており、用途に応じて使います。

ラッピング研磨

ラッピング研磨は、ラップ盤(台)に加工物を置いて、砥粒を含んだ研磨剤でこすり合わせて研磨する方法です。

ラッピング研磨は、液体研磨剤を使う湿式法と、ラップ盤に砥粒が埋め込まれている乾式法の2種類があります。

砥粒が埋め込まれている砥石とは異なり砥粒が転がりながら削るため、平滑化効果が高く、きれいな仕上がりになります。一方で研削速度が遅いため、厚みを落としたい場合には向いていません。

研磨布紙加工

研磨布紙加工は、固定された砥粒が配列された布や紙で加工物を磨きます。紙やすりで磨いていくイメージに近いです。

製造現場では研磨ベルトと呼ばれる帯状の布が用いられることが多く、つなぎ目のない輪っか状の研磨ベルトを機材で回転させて加工物を当てていきます。ベルト研磨は、プラテン型、コンタクトホイール型、フリーベルト型に分類されます。また、研磨布紙ディスクを用いて研磨を行うこともあります。

研磨布紙加工が対象となる加工物は多岐にわたりますが、大きく分けると金属加工と非金属加工です。

金属だけではなくバリ取り、キズ取り、塗膜面の仕上げなどにも用いられる加工方法です。

バフ研磨

バフ研磨は、綿などの柔らかな素材で作られたバフに研磨剤をつけて、回転させながら加工物を磨く方法です。研磨手法に関してはラッピング研磨と同様ですが、ラッピング研磨よりも微細な砥粒を使うため、滑らかな鏡面にすることが可能です。

そのため、加工物のツヤを出したいときなど、最終工程で行うことが多くなっています。指定された表面粗さにするには、バフ素材や研磨剤の種類を使い分けます。

バレル研磨

バレル研磨は、容器に研磨剤と加工物を入れて、振動や回転により多くの加工物をまとめて研磨する方法です。また、流動式といって底部分の回転盤を洗濯機のように回転させて、容器内部に流動状態を作り出して研磨する方法もあります。

研磨機にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。遠心バレルは、加工時間が短いものの機械のコストが高いです。回転バレルは加工時間が短く操作も容易ですが、大量生産には不向きです。振動バレルは操作が簡単で自動化もでき、ワーク中に加工物の確認も可能です。ただし、機械が高価であることが注意点です。

このように機械ごとに特徴が異なるため、適切な機械を導入するために慎重な検討が必要です。

電解研磨

電解研磨は加工物を電解研磨液に浸して、電流を流すことにより研磨する方法です。電気分解によって凸部を優先的に溶解する効果を利用しています。表面を高精度で仕上げることができるため、ほかの研磨方法を使えない部分の研磨も可能です。

ただし、電解研磨を使える金属が限られていることや、コストがかかる点がデメリットです。

研磨の工程

研磨の工程

研磨の工程は、下地、ならし、ツヤ出し、鏡面仕上げの4つの工程に分けられます。各工程について詳しく見ていきましょう。

下地

まずは下地工程として、目の粗い砥石などを使って、加工物の表面の大きな凸凹を取り除きます。下地の工程は特に重要であり、しっかりと行わないと良い仕上がりになりません。

下地の研磨で使用する砥石には番手が低く、目が粗いものを選びます。下地では細かく表面をそろえることよりも大胆に削ることが求められており、この段階では細かい寸法などを気にする必要はありません。

表面の凸凹、異物の取り除きに注力することが下地のポイントです。

ならし

ならし工程では下地工程よりも目が細かな砥石を使って、下地工程で凸凹や異物を取り除いた表面を文字通りならしていきます。加工物の表面が平らになっているならば、そこまで難しい工程ではないでしょう。

ならし工程が終わるころには加工物の表面はほとんど平らになります。

ツヤ出し

ツヤ出し工程では、下地やならしで平らにした表面に光沢を出します。ならし工程で使用した砥石よりもさらに細かな目の砥石を使います。ツヤ出し工程は、次の鏡面仕上げでつるつるにする前の段階と考えるとよいでしょう。

ならし工程では表面の凸凹や異物を取り除くことができますが、あくまでも加工物の表面を平らにしただけです。このツヤ出し工程によって表面の汚れを落としていくことになります。

ちなみに、目の細かい砥石を使っての研磨だけではなく、バイブレーション研磨やヘアライン加工のように、あえて表面にキズをつける加工方法もあります。

鏡面仕上げ

研磨の最終工程となる鏡面仕上げでは、表面を鏡のように研磨します。最終工程と聞くと非常に神経を使うように思えますが、ツヤ出し工程までしっかりと行っていれば大変な作業ではありません。

鏡面仕上げでは、砥石の番手が高く目の細かなものを使うことはもちろん、少しずつ砥石の番手を上げていくことで細かな仕上げを行います。また、研磨とはいうものの砥石ではなくバフ仕上げを行うこともあります。

研磨加工における不良

研磨加工においては、さまざまな不良が起こります。びびり、キズ送りマーク、目詰まり、目つぶれ、目こぼれ、焼け、割れなど研磨加工でうまく仕上げることができないケースも少なくありません。

多様にある不良のなかでもよくあるのが研磨不良です。研磨不良とは、研磨した加工物の表面に粗い部分が残る「磨き抜け」が起こることです。磨き抜けは下地やならしで磨ききれていない部分がある際に発生し、その状態で鏡面仕上げを行ってもきれいになりません。

例えばプラスチック製品の加工ではじめに目が粗いペーパーで磨いてから細かい目のペーパーを使うように、表面研磨を行うときは、研磨する表面全体をバランスよく研磨することがポイントです。

まとめ

主に金属加工の仕上げとして実施される研磨は、見た目の美しさや表面の微調整など外観を整えるために重要な工程です。研磨のなかでもさまざまな加工方法や工程があり、素材により適切なものを選ぶ必要があります。さらに、キズなどの不良がないように注意深い検査も必要になります。

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