溶接とは?主な手法や発生しうる不良と対策について解説

 2022.07.11  株式会社システムインテグレータ

溶接は金属加工でよく用いられる方法です。単に溶接といっても実際にはさまざまな手法があり、手法によって使用する溶接機が異なるなど、細かな知識が必要です。

本記事では、溶接の基本知識やメリット・デメリットのほか、溶接の主な手法をご紹介します。ほかにも溶接で発生する不良の例も取り上げました。溶接について網羅的に理解したい場合は、ぜひ最後までご覧ください。

溶接とは

溶接とは金属を文字どおり「溶かして接合する」ことです。

金属は加熱や加圧によって融点(個体が液体になり始める温度)に達すると溶け始めます。溶接は、材料の接合部分を一部分だけ溶かした状態で冷やし固め、一つに接合する加工方法です。

ちなみに、金属の融点は鉄が約1,530℃、銅が約1,080℃など非常に高いため、溶接には多くのエネルギーを使います。そのため、溶接を行う職人になるには、何年もの経験や学習が必要といわれています。

金属加工の工程のうち、技術力の差が出やすいのも溶接の特徴です。後述しますが、溶接にはさまざまな手法があるなかで、手法ごとに得意な材質と不得意な材質が異なり、母材の厚さなどの条件も影響します。

このようにさまざまな知識が必要であることから、溶接に関してスキルを身につけるには長年の経験が必要になるのです。

なお、素材ごとの製造工程や管理方法などについては、以下の記事もご覧ください。
素材別の主な製造工程・管理方法・課題点を解説【金属・フィルムetc】
https://products.sint.co.jp/aisia-ad/blog/manufacturing_process#toc-3

溶接の対象物

溶接の対象となる素材は、ステンレス、鉄、チタン、アルミなど多岐にわたります。それぞれ素材によって加工のしやすさや強度、耐熱性などに差があります。

溶接で加工された製品は私たちの身の回りにあふれています。自動車や鉄道車両、航空機、建築物、建築機械など数々の金属構造物で溶接が使われています。また、近年ではリニア中央新幹線の車両や宇宙に飛び立つロケット、人工関節、介助ロボットなどさまざまな分野に溶接の技術が応用されています。

これから先も溶接は私たちの生活に欠かせない技術といえるでしょう。

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溶接のメリット・デメリット

ここからは溶接のメリットとデメリットをご説明します。まずはメリットから見ていきましょう。

溶接のメリット

気密性が高い

融解によって金属同士を接合すると、気密性や水密性が高まります。ネジやボルトを取り付ける機械的な接合ではどうしても隙間ができてしまいますが、溶接ならばその心配がありません。液体を入れる容器やパイプなどを溶接することで、水漏れや水分の侵入を防げます。

製品の重量が低減される

機械的接合ではネジやボルトを取り付けるため、製品自体の重量が増してしまいます。一方、溶接は製品同士の接合に部品を使わないため、全体の重量が増加することがありません。製品の軽量化を図る場合は溶接が向いています。

継手の形状の自由度が高い

溶接はさまざまな継手の形状や大きさに幅広く対応できます。溶接方法も多岐にわたるため、自由度の高さが特徴です。一方、機械的接合はネジの設置部分に最適な継手が必要となります。

短時間で加工できる

溶接は加工工程が少ないため、納期がほかの接合方法よりも短くなります。早く納品したい製品の製造に適しています。

上記のメリットに対して、溶接には次のようなデメリットもあります。

溶接のデメリット

寸法精度の維持が難しい

母体を融解することで流動的になるため、寸法精度の維持が難しくなります。寸法精度を高めるために、レーザーで部材の位置決めなどが行われています。

独特の欠陥が発生する

後述しますが、溶接には特有の欠陥や不良があります。欠陥や不良の種類によっては強度の低下や破損につながります。

解体が難しい

溶接によって接合点が強く結びつくため、加工後の解体が困難です。特に別々の素材を組み合わせた溶接の場合は、素材リサイクルも難しくなります。

不連続性が生じる

溶接すると製品の形状などに不連続性が発生します。ただし、不連続性は作業員の技術次第で最小限に抑えることができます。

以上が溶接のメリットとデメリットです。

溶接の主な手法

ここからは溶接の主な手法をご紹介します。溶接の手法には、融接、圧接、ろう接があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

融接

融接は、材料の接合部分を加熱して溶かし、冷却して凝固することで接合する手法です。おそらく多くの方が溶接と聞いてイメージするのは融接でしょう。融接は板厚が厚くて接合強度が必要なケースで用いられます。

また、融接にはアーク溶接、ガス溶接、レーザー溶接があります。それぞれの特徴は以下をご覧ください。

アーク溶接

アーク放電と呼ばれる強い光と熱を発生する現象を利用した溶接方法です。非常に高い熱を放出するため、融点が高い金属も溶接できます。高い強度が必要な場合にも適していますが、高品質の加工を行うには技術力が必要です。アーク溶接は、電極や使用ガス、溶加材によってさらに細かく分類されます。

ガス溶接

可燃性ガスと酸素が結びつき燃焼することで発生する熱を使って溶接する方法です。アーク溶接のように強い光が発生せず、接合部分を見手作業できるため不良を起こしにくい点や、温度調節のしやすさが特徴です。一方でアーク溶接よりも発生する熱が弱いため、作業時間は長くなります。

レーザー溶接

レーザー光を照射して溶接する方法です。微小なレーザー光を照射するため、微細な溶接が可能となります。精密機器などの溶接に向いている方法といえるでしょう。熱量の少なさから変形や歪みの軽減にもつながります。一方で設備費用が高価な点がデメリットです。

以上のように融接方法を用途によって使い分けていきます。

圧接

圧接は金属の接合部分を電気や大によって加熱して、圧力を加えて接合する方法です。正式名称は加圧溶接です。加える圧力は機械で設定されるため、作業者のスキルの熟練度に左右されることなく、一定の品質を保つことができます。

圧接にもさまざまな種類があります。例えば抵抗溶接は、材料を重ね合わせて接合部分に電極を挟んで電流を流し、電気抵抗が発する熱を利用して溶接する方法です。接合部分が点になるスポット溶接が主流で、短時間で溶接できることから大量生産の製品で用いられます。

ただし、材料の板厚が厚いと溶接が不十分になり、強度が低下します。薄い板材の溶接に適しているでしょう。

ろう接

ろう接は材料よりも低い温度で溶解する溶加材で接合する方法です。前述した融接や圧接と違うのは、溶加材を用いて溶接する点です。母材同士が接合されないため強度はほかの溶接方法よりも劣ります。

ろう接は、さらに「ろう付け」と「はんだ付け」に分けられます。

ろう付けは融点が450℃以上の溶加材を利用してろう接合する方法です。溶加材にはアルミろうや銀ろうなどを用います。融点が高いため、ガスバーナーを使って溶加材を溶かして接合します。

はんだ付けは、融点が450℃以下の溶加材を利用してろう付けする方法です。使用される溶加材は軟ろうと呼ばれ、亜鉛や錫、鉛などが用いられます。はんだ付けは電子部品、プリント基板などの製造で主に使われる接合方法です。

溶接加工において発生しうる不良と対策

溶接加工では、さまざまな不良が発生します。以下で発生しうる不良と対策をご紹介します。

オーバーラップ/アンダカット

溶接速度が遅くて溶着する金属量が増えるとオーバーラップが発生します。逆に過剰な溶接電流や溶接速度によってアンダーカットが生じることがあります。いずれも溶接条件を見直すことで対策できます。

高温割れ

母材に含まれるリンや硫黄といった成分偏析が、凝固温度幅の拡大などにつながることで発生します。高温割れが起こったら、リンや硫黄の含有量を減らしたり溶接速度をさげることで対応します。

低温割れ

溶接部分の拘束応力や歪みの集中箇所に、水素が侵入して拡散することで発生します。溶接中の水素侵入の低減、余熱を利用して冷却速度を調整し対応します。

SR割れ

合金元素を含む鋼材(クロムやパナジウムなど)のHAZは450℃以上加熱されると著しく脆くなります。そのため、再加熱処理の際に発生する応力で粒界割れが生じます。熱処理温度の低下、保持時間の短縮などによる対策が有効です。

ラメラテア

母材の鋼材に含まれる介在物が、溶接によって板厚方向の引張力によって引き裂かれることで発生します。対策として耐ラメラテア鋼の使用が挙げられます。

スラグ巻き込み

溶接の前層や前パスでスラグの除去が不完全な場合や、融合不良などが原因で発生します。スラグ除去や融合不良の防止で対策します。

溶接作業における注意点

ここからは溶接作業における注意点をご説明します。溶接作業では以下の3点に注意が必要です。

溶接方法に適した溶接機の利用

一言で溶接といってもさまざまな手法があります。それぞれの利用シーンに適した溶接方法と溶接機を使用する必要があります。用途に合った溶接機を利用することで、作業効率が向上するだけではなく、作業員の安全の確保にもつながります。

例えばアーク溶接では、アーク溶接機や被覆アーク溶接機、マグ溶接機、ティグ溶接機、ミグ溶接機といくつもの機械を使い分けます。それぞれの特徴を活かして、用途に最適な溶接機を使うことが作業効率の向上につながります。

安全対策を万全に

溶接方法によっては火花が散ったり高温の熱が発生します。アーク溶接のように一瞬にして強い光が生じるケースもあり、作業員の安全対策が必要不可欠です。

遮光溶接ヘルメットや厚手の手袋、サングラス、革エプロンなど作業員の身を守るための用具を揃えましょう。万が一、怪我や事故が生じたときの対応フローも用意しておくことも重要です。

なお、溶接作業の安全衛生に関しては法律で定められています。溶接作業の知識習得と合わせて法律関係の知識も身につけておきましょう。

例えば、金属アーク溶接などで発生する溶接ヒュームや塩基性酸化マンガンについて健康被害が懸念されることから、2021年に特定化学物質障害予防規則が改正されました。作業に関係する法律の知識については、常に最新のものを身につけていきましょう。

参考:特定化学物質障害予防規則改正(金属アーク溶接等作業への規制強化)について
https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/tokka_arc.html

知識の習得や入念な準備

作業の安全性を確保するためにも、事前に知識の習得が必要です。前述のとおり、溶接を行う際には豊富な知識と熟練した技術が必要です。単に経験を積めばいいというものではなく、作業効率の向上も求められます。

安全性と効率性を高めるには、道具の用意とメンテナンス、使用方法の注意点の把握といった事前準備が重要です。溶接に関する広い知識を身につけて作業に臨む必要があります。

まとめ

金属製品の製造過程では溶接をはじめとするさまざまな加工方法が使われますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、不良が発生するパターンもさまざまです。実際のところ、不良品の発生を完全に防ぐことは難しいのが現状です。そのため、検査によって不良品の流出を防ぐ必要があります。

検査手法のなかでも目視による外観検査はよく採用されていますが、人手不足や検査の難化などによって正確な検査が困難になっています。そこでAIを用いた外観検査が近年注目を集めています。外観検査の自動化について、以下の資料に詳しくまとめましたのでぜひご覧ください。

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