予知保全とは?基礎知識や予防保全・事後保全との違いを解説

 2022.04.19  株式会社システムインテグレータ

生産現場では、設備や機械が故障してしまうと製造ラインがストップします。製造業の企業活動は製品の生産であり、製造ラインのストップは避けたいところです。

製造ラインのストップを避けるには、保全業務が不可欠です。保全業務には予防保全や事後保全があります。近年はIoTデバイスやAIを利用した予知保全も注目されています。

本記事では、予知保全の基本知識や予防保全・事後保全との違いなどをご説明します。予知保全のメリット・デメリット、運用方法、課題など幅広い内容をまとめていますので、ぜひご覧ください。

予知保全とは

予知保全とは

予知保全とは、工場や生産現場における設備・機械などの故障の兆候を検知して保全することです。設備や機械は故障する際に兆候があるものです。その兆候を事前に察知できれば、故障を未然に防ぐことができます。

予知保全と混同しやすい用語に予防保全や事後保全があります。以下でそれぞれの違いをご説明します。

予防保全との違い

予知保全と予防保全の違いは実施するタイミングです。設備や機械などの故障や不具合を防ぐための保全業務という点では同じですが、予知保全は故障を予知するたびにメンテナンスを行うのに対し、予防保全では定期的に決められたタイミングで設備や機械のメンテナンスを行います。また、予防保全はスケジューリングが容易という特徴もあります。予知保全は予知する都度実施しますが、予防保全は一定の周期で予定を立てて実施するため、計画的に行なえます。

事後保全との違い

事後保全とは、工場や生産現場の設備や機械に、故障や不具合が生じてから行う保全業務です。予知保全や予防保全とは異なり、トラブルが起きてから保全業務を行います。

事後保全の目的はダウンタイムの短縮化であり、故障の発生原因をできるだけ早く究明して対応することです。早期の生産再開のために行う保全業務といえます。

このように保全には3つの種類がありますが、定期的に行うことを予防保全、設備に故障の兆候があるときに行うのが予知保全、故障が起こってから行うのが事後保全と区別すると分かりやすいでしょう。

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予知保全を行う目的

予知保全を行う目的は、工場や生産現場の設備・機械を常に監視し、故障や不具合を予知して故障によるダウンタイムを回避することです。

予知保全と予防保全はともに故障が起こる前の保全業務ですので、わざわざ2種類の保全をする必要はないように思えます。

しかしながら、予防保全は定期的な保全業務であるが故に、その実施タイミングでしか修理できないという特徴があります。偶然部品の調子が悪く予防保全の前に壊れる場合もあれば、逆に「次の予防保全のタイミングまでには壊れてしまう可能性がある」と判断して、まだまだ利用できる部品を交換することもあります。

一方、予知保全は的確に行うことにより「壊れそう」なタイミングで部品などの交換が可能となります。詳しくは後述しますが、壊れる前のタイミングに保全業務を行うことで、部品交換や人件費の最適化が図れます。

自動車に例えるならば、オイル交換で「次回のオイル交換の目安は○km」と想定を立てておくのが予防保全です。自分で頻繁にオイルゲージを確認して減り具合をみながら交換することで、部品やリソースを最大限に活用することにつながります。

予知保全のメリット

予知保全のメリット

ここからは、予知保全の目的を踏まえつつメリットをご説明します。予知保全のメリットは、以下の4点が挙げられます。

ダウンタイムの発生を抑える

定期的に行う予防保全だけでは、故障を完全に防ぐことはできません。予防保全のタイミングは部品の耐久性などから設定されますが、実際の故障はいつ起こるかわかりません。予防保全のすぐ後に起こることもあれば、予防保全の前に起こることもあります。

予知保全では、故障を予知したタイミングですばやくメンテナンスを行うので、故障によるダウンタイムをより抑えることができます。

製品の品質を安定化

予知保全は製品の品質を安定させることも可能です。製造現場において、設備や機械に異常があると、生産性だけでなく品質の維持にも悪影響を及ぼします。

例えば、設備や機械に普段とは違う挙動があったとしても「これくらいならば大丈夫だろう」と稼働させてしまうと、製品の品質が悪化することも考えられます。製品の品質が低下してしまえば、信頼を失ってしまうでしょう。製造のし直しなどになれば、時間も費用もかかってしまいます。

そのような事態にならないためにも、予知保全が重要になるのです。予知保全によって設備や機械に不具合が生じなければ、常に一定の品質を保てます。

部品交換や人件費の最適化

前述のとおり、予防保全ではすぐに交換する必要がない部品を交換することがあり、余計なコストがかかることがあります。特に修理やメンテナンス時の交換作業にかかる時間的なコストは、気になるところです。

予知保全では部品を寿命近くになるまで使ってから交換するため、何度も交換する必要がありません。予防保全だけでは何度も交換する部品が出てくる可能性もありますが、予知保全は最適なタイミングで交換できることから、部品交換のタイミングを最適化できます。

また、保全業務にかかわる人員の人件費の最適化も可能です。例えば、事後保全ではどうしても多くの人員を配置する必要がありますが、予知保全で最小限の人員で保全業務を行えば、事後保全の発生を防ぎ人件費を抑えることができます。

さらに、予知保全は異常を検知した後に、その規模に応じて無駄の少ない人員配置ができます。人員は企業において重要な財産であり、経費として大きな割合を占めます。予知保全を実施することで現場の稼働率を向上させることが可能です。

保全担当者のスキル向上

予知保全は設備や機械の不具合の兆候を察知することが必要であり、経験とスキルを身につける必要があります。

事後保全の場合はトラブルへの対処に重点が置かれるため作業が中心となり、スキルを学ぶ機会は得にくい傾向があります。一方、予知保全の場合は、どうすれば故障を防げるかを能動的に考えて実践する機会が得られるため、スキルの向上を期待できます。

保全担当者のスキルが向上すれば、リソースの最適化にもつながり、過剰な人件費を削減できる可能性もあるでしょう。

予知保全のデメリット

予知保全にはさまざまなメリットがありますが、デメリットや注意点もあります。ここでは予知保全のデメリットを2点、ご説明します。

保全に関する工数がかかる

予知保全は、故障や不具合などを防ぐためにさまざまな工程を踏むことがほとんどです。さらに、担当者が熟練の技術により業務を行う場合は、一定の作業時間が必要となります。規模によっては人員のリソースを割くことになり、稼働効率の調整が難しいところです。

ただし、近年の予知保全ではIoTデバイスを活用しており、工数の多さや人材不足の問題に対応できるようになっています。

とはいえ、IoTデバイスを活用するからといって、全てを完璧にすることは難しいのが実情です。このあたりの課題について詳しくは後述します。

コストがかかる

前述のとおり、予知保全にはIoTデバイスを活用します。IoTデバイスは、機械や設備をモニタリングして、計測したデータをAIなどによって分析します。異常が検知されるとアラートで知らせてくれます。

非常に便利なシステムですが、IoTデバイスは導入コストがかかることがデメリットといえます。さまざまなシステムが提供されていますので、複数のシステムを比較してできるだけコストを抑える工夫が必要です。

IoTデバイスを比較する際は、特徴や運用方法をしっかりと把握しておくことも大切なポイントです。

予知保全の運用方法

予知保全の運用方法

ここでは、予知保全の運用方法を具体的にご説明します。予知保全の運用には大きく分けて、IoTによる監視とAIによる分析があります。以下でそれぞれの内容をみていきましょう。

IoTによる監視

予知保全では、IoTデバイスによって設備や機械を監視させます。異常があれば検知するわけですが、検知させるには最適なデータを読み込ませることが必要です。読み込ませるデータは、稼働状況の正常と異常を捉えた大規模な内容になります。

例えば、同じ機械を使っている工場があっても、地点によっては取り扱っている材料が異なるケースがあります。稼働条件が異なると、一方の機械が早く故障する可能性もあるでしょう。そのため、使用地域や稼働状況が異なっても高い精度で異常が検知できるデータベースが必要です。

データが集まった上で、状態インジケーター(正常と異常の区別)の特定を行います。

AIによる分析

IoTデバイスの導入により正常と異常の区別を特定・監視をしたら、そのデータをAIに分析してもらいます。AIがデータを分析して故障の予兆を正確に捉えられるように、アルゴリズムの選定や学習期間が必要です。

アルゴリズムが選定できたら実装に進みます。クラウドやエッジデバイスに実装することができますが、特にクラウドへの実装ならば、より大量のデータの収集や格納をすることが可能です。

ほかにも組み込みデバイスなどに実装できます。組み込みデバイスなどの実機に近い場所であれば、インターネット環境がなくても実装可能です。クラウドとデバイスの両方に実装できることもあるため、状況に応じて検討しましょう。

予知保全の課題

予知保全はIoTデバイスなど最新の技術を応用できるわけですが、課題がないわけではありません。ここからは予知保全の課題をご紹介します。導入前に把握しておきましょう。

予知保全に着手できないケースがある

これまで予知保全を行っていない企業にとって、いきなり予知保全を実施する際にはジレンマが生まれやすいです。というのも、設備が故障してしまえば故障の修理を優先することになり、予知保全に時間を割くことができません。

しかし、予知保全ができなければ設備や機械の故障が再び起きてしまうでしょう。故障が起きれば予知保全ができず、事後保全にリソースが必要です。こういったジレンマから予知保全に取り組めないケースがあります。

完璧ではない

「予知保全はIoTデバイスやAIを活用するから精度も高いだろう」と思えますが、完全には異常の発生を防げない場合があります。予知保全システムを構築するためのデータが不足していたり、故障につながるデータが足りなかったりすると、精度を上げることが難しいです。

また、新たなシステムを導入する際は費用対効果の実証が難しく、自社にとって導入することが最適であるかの判断に迷うことがあります。製品の品質を維持するための取り組みは、IoTデバイスやAIを活用するだけではなく、外観検査なども含めて幅広く行うべきでしょう。

まとめ

近年、製造現場における設備の保全活動として予知保全が注目されています。設備の安定した稼働を実現して、コストの最適化などを進め、よりスマートに工場を運営するために欠かせない要素です。

また、予知保全の実現だけでなく、IoTやAIの活用が広がったことで、さまざまな工程が自動化できるようになりました。品質の維持に不可欠な外観検査のAI化もそのひとつといえます。人手不足を解消する手段としても注目を集めていますが、近年は検査の複雑化・高度化によって目視検査に限界を感じてAIを導入するケースも増えています。

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