PostgreSQLとは、フリーのオープンソースRDBMS(リレーショナル型データベース管理システム)です。無料で利用できる高機能なデータベースとして、非常に高い人気を集めています。
本記事では、PostgreSQLの特徴やほかのデータベース管理システムとの違いなどについてご紹介します。
PostgreSQLとは
PostgreSQL(ポストグレスキューエル)は、データを表形式で管理するリレーショナル型のデータベース管理システム(RDBMS)です。
1986年にカリフォルニア大学バークレー校で開発されたPOSTGRESがもとになっており、たびたび機能追加や改修が行われてきました。今は高機能で信頼性の高いソフトウェアとして人気のデータベースとして知られており、日本語にも対応しています。
年に1回メジャーバージョンアップがあり、その後数回マイナーバージョンがリリースされます。2024年8月時点の最新バージョンは、2023年9月14日にリリースされたPostgreSQL 16です。
フリーのオープンソースデータベース
PostgreSQLは、全てのソースが公開されており、無料で利用できます。BSDライセンスを採用しているため、独自に機能追加や改変を行っても、公開義務が発生しません。
同じフリー版が存在するオープンソースデータベースとして「MySQL」があります。こちらは細かな規約がある「GPLライセンス」で提供されているため、独自に機能追加や改造を行い再頒布する場合は、GPL規約に従う必要があります。
これらの違いがあり、PostgreSQLはオープンソースデータベースの中でも大変使いやすいソフトウェアです。
データベースの人気ランキング世界第4位
PostgreSQLは、無料で使えるだけでなく、商用データベースと遜色ないレベルで高性能・多機能です。そのため大変人気があり、データベース製品のランキングでは2017年以降、世界第4位の人気を維持しています。
引用:DB-Engines Ranking - Trend Popularity(DB-Engines.com)
データベース製品の人気では、商用データベースであるOracle社の「Oracle Database」やMicrosoft社の「Microsoft SQL Server」には及ばないものの、この10年間で着実に評価を高めています。数年後には人気が追いつく勢いです。
PostgreSQLの特徴
ここでは、高い人気を誇るPostgreSQLの特徴をさらに詳しく見ていきます。PostgreSQLの利用を検討している方は、ぜひご覧ください。
1.導入時のコストが安い
フリーのオープンソースデータベースであるため、最も大きな特徴が「利用料がかからない」ことです。商用データベースは高機能ですが、Oracle DatabaseではEnterprise Editonで1CPUあたり570万円と、非常に高価です。それを考えると、できる限りコストを抑えたいと考えるユーザーにとって、PostgreSQLは大変魅力的なソフトウェアです。
2.商用データベースに匹敵する高機能
PostgreSQLはフリーでありながら、データベースの主要機能はほとんど利用でき、商用データベースに匹敵する高機能を有しています。具体的には、以下のようなものがあります。
- 標準SQLに準拠
- マルチバイト対応(日本語に対応している)
- 複数のプラットフォームに対応
- ストアドプロシージャ、トリガ、ユーザ定義関数などが利用可能
- 大規模システム向けの機能(パーティショニングなど)
- 高度なオプティマイザ機能
さらに、PostgreSQLは並列実行「パラレルクエリ」に強いことが挙げられます。これは、複数のCPUで処理を並列に実行することでパフォーマンスを高めた仕組みです。これにより、大量データを扱った処理でも高パフォーマンスを発揮します。
3.ほかのオープンソースソフトウェアとの連携が可能
PostgreSQLは、ほかのオープンソースソフトウェアとの連携が豊富です。たとえば、クラスタリングやレプリケーションなど、可用性を高めるツールが利用できます、これにより、高可用性が求められる大規模システムでも利用可能です。利用できるオープンソースソフトウェアとして、以下のようなものがあります。
- pgpool-II:負荷分散、レプリケーションなど
- Slony-l:マスタ・スレーブタイプの非同期レプリケーションソフトウェア
- PGCluster:マルチマスタタイプのレプリケーションソフトウェア
また、PostgreSQLでは、アドオンソフトであるPostGISを利用することで、地理情報システム(GIS)のデータを格納することができます。地図検索システムなどで豊富な実績があり、ほかのデータベースにはない大きな利点です。
4.企業からサポートが受けられる
商用データベースと比較してフリーのオープンソースデータベースでは、メーカーによる製品サポートが得られにくいというデメリットがあります。しかし、PostgreSQLでは以下の企業から提供されているサポートサービスが利用できます。
- (株)アシスト
- サイオステクノロジー(株)
- TIS(株)
- (株)日立ソリューションズ
これらのサポートサービスを利用することで、商用データベースと同じくサポートを得られます。PostgreSQLを運用する中で障害が発生した時などに助かります。
PostgreSQLとほかのデータベースとの比較
ここでは、同じRDBMSでも特に人気の高い「Oracle Database」「MySQL」との比較をご紹介します。
PostgreSQL | Oracle Database | MySQL | |
---|---|---|---|
概要 | カリフォルニア大学バークレー校で開発されたオープンソースデータベース |
Oracle社が販売する 商用RDBMS |
オープンソースデータベースだが、現在はオラクル社が管理 |
ライセンス | BSDライセンス | 商用ライセンス |
・GPLライセンス ・商用ライセンス |
特徴 | 基本利用が無料で導入コストを抑えられる | オラクル社からの手厚いサポート、高い安定性を誇る | 複数のストレージエンジンがあり、扱いやすさで評価が高い |
サポート | サポートサービスを提供する企業あり | Oracle社によるサポート契約あり | Community Editionはサポートなし。その他は有償サポートあり |
ストレージアーキテクチャ | 追記型(対象レコードを残し新規レコードを追加) | 更新型(対象レコードを更新) | 更新型(対象レコードを更新) |
PostgreSQLは、ほかの2つと比べて利用コストがかからないため導入しやすい点が大きな強みです。また、追記型のストレージアーキテクチャを採用しているため、並列実行に対して強みを持ちますが、不要データを削除するVACUUM処理を行う必要がある点に違いがあります。
まとめ
本記事では、オープンソースデータベース「PostgreSQL」についてご紹介しました。PostgreSQLは、以下の特徴があります。
- 利用料がかからず、導入コストが抑えられる
- 並列実行に強く、高パフォーマンス
- ほかのオープンソースソフトウェアと連携可能で拡張性も高い
- 企業提供によるサポートあり
PostgreSQLは利用料がかからず、高機能でありながら少ないリソースで稼働できるため、気軽に試せるデータベースです。ご興味がある方は、ぜひ試しに使ってみてはいかがでしょうか。