ショ―ルーミングとは?起こる理由と消費者行動の変化、事例を紹介

 2023.06.09  株式会社システムインテグレータ

実店舗で見た商品をオンラインで安く買う「ショールーミング」は、一見すると小売業にとって不利益の多い消費者行動です。しかし最近では、このショールーミングを積極的に活用した販売戦略を実施する企業が増えています。そこで本記事では、ショールーミングの概要や普及した背景、企業がとるべき対策などについて考察します。

ショールーミングとは

ショールーミング(showrooming)とは、実店舗で直接確認した商品を、ECで店頭価格より安く購入しようとする消費者行動のことです。ECが価格面で実店舗への優位性を得て以来、ショールーミングを行う消費者が増え始めました。ショールーミングは従来、企業にとって厄介な課題として見なされていましたが、昨今ではこれを新たな販売戦略として活用する動きも出始めています。

注目されるようになった背景

ショールーミングを行う消費者や実店舗での購入よりECでの購入を優先する消費者が増えた社会的背景としては、インターネットの普及やコロナ禍の影響が主に挙げられます。

今日の消費者はインターネットを通して、多種多様な商品を簡単に閲覧・購入できるようになりました。実店舗や店員を持たないECは、その分だけ価格が安く設定されていることも多く、消費者にとっては利便性の面でも価格面でも魅力的な選択肢になっています。

実店舗よりECでの購入を優先する傾向は、コロナ禍の発生によって、さらに拍車がかかりました。コロナ禍では、感染予防の観点から他者との接触を控えることが奨励されたからです。

こうした影響により、実店舗で商品の実物を見たとしても購入はECで行う消費者や、そもそも実店舗に行かない消費者が増えてきました。

ショールーミングとウェブルーミングの違い

ショールーミングとは対照的な消費者行動が、「ウェブルーミング」です。ウェブルーミングとは、インターネット上で商品について下調べした後、実店舗に出向いて購入する行動を指します。ECでは商品の到着までに一定の時間が必要であったり、送料が高かったりするので、そうしたデメリットを避けたい人がウェブルーミングを行うものと考えられます。

つまり、「実店舗で商品を調べてECで購入する」ショールーミングに対して、「Webで商品を調べて実店舗で購入する」というのがウェブルーミングです。

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ショールーミングが起こる理由と消費者行動の変化

「商品情報ならWebで調べられるし、どうせECで購入するなら、なぜわざわざ実店舗に行く必要があるのか」と疑問に感じる人もいるかもしれません。たしかに商品情報の大半は、Webで調べることが可能です。今の社会では、いくつもの店舗を見回って商品を比較検討する暇がなく、Webでの情報検索を活用している人は増えていると考えられます。

ただし、いくらWebで情報を集めても、実物がその情報通りであるとは限りません。例えばWebでは良い色合いに見えた服が、実物を見たら全然印象が違ったという事態はよくあることです。画像やテキストだけでは、実際のサイズ感や風合いがよく分からないこともしばしばあります。

そのため、最終的には価格がより安いオンラインで購入するとしても、Webだけでは把握しきれない商品の実態を実店舗で確かめ、失敗のリスクを減らしたいという気持ちが生じます。そのような消費者の需要が、ショールーミングという行動を生み出しています。前向きに考えると、ショールーミングをする消費者は、少なくとも「実物を確認できる」という点においては実店舗に価値を感じていることになります。

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店舗の対策方法

誰もがスマホを持ち、容易にオンラインショッピングができるようになった現在、ショールーミングに向かう消費者の志向を変えることはできません。そのため、企業としてはショールーミングが起こることを前提にした戦略やサービスを積極的に展開した方が建設的です。そのための具体的な施策としては以下のような方法が挙げられます。

ショールーミングストアの設置

第一の対策は、ショールーミングストアを設置することです。
ショールーミングストアとは、商品の販売ではなく、商品情報の提供を目的とした店舗を意味します。ショールーミングを訪れた消費者は、商品の実物を見たり触れたり、場合によっては試用したりして、オンラインでの購入判断に役立てます。

ショールーミングストアは販売を目的にした場ではないため、レジや多数の販売員、在庫を用意する必要はありません。場所によっては、無人で商品だけを展示することも可能です。商品を購入してもらいやすくなるように、QRコードなどを設置してオンラインストアへ誘導するための手段を用意するだけで済みます。ショールーミングストアの設置は、企業にとって少ないコストや労力で、高い効果を生む可能性のある施策です。

OMOやO2Oの導入

OMOやO2Oの仕組みを導入するのも効果的な対策です。

OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインを融合したマーケティング手法を指します。例えば、商品をECで購入して実店舗で受け取れるようにすることや、実店舗の商品棚に設置されたQRコードから商品の詳細情報や口コミなどを見られるようにすることなどが含まれます。

他方でO2Oとは「Online to Offline」の略で、オンラインで顧客へアプローチを仕掛け、実店舗への集客に役立てる手法を意味します。例えば、アプリやSNSでクーポンを配信して、実店舗での購入を促す手法などはO2Oの典型例です。

概念上の細かな違いはあるにせよ、O2OもOMOも、オンラインとオフラインを柔軟に結びつけて活用することは共通しています。オンラインとオフラインを高度に連携ないしは融合させることは、消費者のショールーミングに対応するためには非常に重要です。
例えば、「クーポンによって来店を促進する」という手法は、ECではなく実店舗での購入を促すのに役立ちます。また、オフラインの実店舗での購入履歴や行動履歴も全てデータ化すれば、オンラインでより良いアプローチをすることが可能です。

先に紹介したショールーミングストアも、実物が見られないというオンラインの弱点をオフラインで補いつつ、オンラインの売上を向上させるという意味では、OMOの一環として捉えられます。このように、消費者のニーズを満たすことを基軸に、オンラインとオフラインを縦横無尽に駆使することで、より良い顧客体験を提供することが可能です。

ショールーミングの事例

鉄道会社の例

ある鉄道会社は、駅の構内にショールーミングストアを設置しています。このショールーミングストアには、その鉄道会社が運営しているECサイトの商品が展示されており、消費者は気に入った商品のQRコードを読み取り、その場ですぐにオンラインで購入できます。この鉄道会社がショールーミングストアには、「ショーケースに入った商品を見られる無人の店舗」、「商品に触れたり味わったりできる体験型の有人店舗」、「オンラインでオペレーターの接客を受けられるオンライン接客型店舗」の3種類があります。

百貨店の例

次の例は、ある百貨店によるショールーミングストアの活用例です。その百貨店は、実店舗にあまり置いていない商品を中心に取りそろえたショールーミングストアを設置しました。ショールーミングストアを「商品を売る場所」としての役割を持たせず、購入はECで行えるような仕組みにしています。その代わり、ショールーミングストアには「新しい魅力的な商品との出会いの場」として位置づけ、百貨店との接点の薄い若年層を含めた幅広い顧客層にアプローチしています。

まとめ

昨今では、実店舗での購入よりECでの購入を優先する消費者傾向が強まっていますが、実店舗の価値や需要が完全に損なわれたわけではありません。ショールーミングを行う顧客が実店舗に足を運んで商品を確認するという行動を取ること自体、オンラインの限界やオフラインの価値を意識していることを裏付けています。そのため、企業としては、OMOの導入などを通して顧客のショールーミング体験をさらに向上させ、自社のビジネスの拡大を狙うための施策を取ることが有効です。

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