こんにちは。
システムインテグレータの佐藤です。
ありがたいことにおかげ様で多くのお客様からECサイトリニューアル、新規ECサイトの立ち上げのご依頼を頂いているのですが、ご依頼が増えている背景には、もちろん我々が努力しているだけでなくて、EC市場が大きくなっていることが大きな背景としてあります。
今回は、経済産業省が2019年5月16日に発表した、平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)のポイントについてみていきたいと思います。
EC市場そのものについての解説はこちらの記事をご覧ください。
EC市場とは
2018年のBtoC EC 市場規模
2018年のBtoC EC市場規模は、EC2017年の約16.5兆円から8.96%成長し、17兆 9,845 億円となっています。
(引用元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
右肩上がりに成長している市場ですが、伸び率に着目すると2016年から2017年は9.1%の伸び率であったため、全体の伸び率としては鈍化しているといえます。
しかし、分野別での伸び率を昨年と比較してみると、
(経済産業省発表の報告書を筆者が加工し作成)
下がっているのはデジタル系の分野のみで、他の2分野の伸び率は2017年より伸びています。
ECサイトを運営されている皆様からすると一番興味があるのは物販系分野が伸びているのかどうかだと思いますが、そちらの伸び率は昨年よりも伸びているという結果となります。
次に物販系分野の伸び率の推移について見ていきましょう。
推移物販系分野という形で分けて集計された2014年からの伸び率を見てみると、上がったり下がったりしているのがわかると思います。
(経済産業省発表の報告書を筆者が加工し作成)
EC化率は右肩上がりなのに、どうしてこうも上下があるのかというと、この市場規模は金額ベースで見ているからです。
そのため、極端な話取引の数が昨年より1.2倍になっても、価格が0.8倍になってしまうと、市場規模はマイナスに転じる(1.2×0.8=0.96)ということがあり得ます。
経済産業省の報告書でも、同じ商品の価格を実店舗とECとを比較するとECの価格の方が安いという比率が他国と比べてかなり高く、ECの中でも価格競争が生じやすいという調査結果が紹介されています。
(引用元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
この調査によると日本では45%の商品がネットの方が安く、ブラジルを除く他の国と比べるとネットでの安売りがとても多いことがわかります。
ネットのほうが安く、安価を訴求する競争が多いだろうことから、つまり取引の数は増えても価格競争が理由で、金額ベースだとその数に比例して伸びないことを裏付けているとも報告書では記されています。
これは想像ですが、ECの普及が進み始めたタイミングである2000年代を振り返るとデフレ真っ只中でしたので、「ECだから安い」という形でECが普及していった結果、他国と比べるとECの方が安いという状況が今も続いているのかもしれませんね。
なぜデジタル系分野の伸び率が落ちたのか?
先程、物販系分野とサービス系分野の伸び率は昨年比で伸びているにもかかわらず、デジタル系の分野の伸び率は昨年比で落ちているとご紹介しましたが、ここではなぜデジタル系分野の伸び率が落ちたのかを見ていきます。
(引用元:平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)、平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
左が平成29年度の調査資料のデジタル系分野のBtoC-EC市場規模で、右が今回の平成30年度の市場規模なのですが、まずオンラインゲームが占める割合が大きいことに気づくかと思います。
平成29年(2017年)ではデジタル系分野の72.2%、平成30年(2018年)では71.1%をオンラインゲームが占めています。
そしてこの占める割合の大きいオンラインゲームの市場規模の伸び率を見てみると2017年は7.5%の伸びだったのに対し、2018年は3.0%の伸びと伸び率が半分以下になっています。
つまり、2018年のBtoC-EC市場の伸び率が昨年の9.1%から8.96%に鈍化したのは、デジタル系分野におけるオンラインゲーム市場の伸びが落ちた影響が大きい、と言えます。
グローバルをターゲットにしたゲームのヒット作が出れば大きく伸びるのでしょうが、GoogleやApple、Amazonが新たなゲームプラットフォームを作ろうとしているので、ローンチされるとその影響も受けるのかもしれませんね。
2018年のCtoC EC市場規模
ここまでBtoC-ECの市場規模について見てきましたが、ここからはCtoCについて見ていきたいと思います。
まずフリマアプリ市場は以下グラフの通りとなっています。
(引用元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
2018年のフリマアプリ市場は2017年の4,835億円から32%成長し、6,392億円となっています。
フリマアプリが登場したのが2012年だそうですから、急速に市場が拡大していることが改めて窺い知れます。
次にネットオークション市場はどうなっているかというと以下のグラフの通りです。
(引用元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
2017年の1兆38億円から9.4%成長し、2018年の市場規模は1兆133億円となっています。
ネットオークションはCtoCのカテゴリではありますが、ネットオークションの実態としてはCtoCだけでなくBtoCもBtoBも含まれています。
今のところはフリマアプリの市場が拡大する中でネットオークションの市場が減少しているということはないので、フリマアプリがネットオークション市場を切り崩しているようには見えません。
フリマアプリは手軽に換金したい、ネットオークションは出来るだけ高く売りたいという利用者側の目的の違いがあることため、それぞれの市場が伸びているように見えますが、出品される商品の重複が進んでくると競争が激化し、勝者と敗者に分かれてくるかもしれませんね。
2018年のBtoB EC市場規模について
最後に2018年のBtoB EC市場について見ていきたいと思います。
BtoB EC市場の考え方はこちらの記事でご紹介しています。
(引用元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
2018年のBtoB EC市場規模は、2017年の318兆円より8.1%成長し、344兆円となっています。
業種別で見てみると、以下の通りです。
(引用元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査))
どの業界も伸びていますが、特に対前年比で伸びている「建設・不動産業」と「産業関連機器・精密機器」、「卸売」について見ていきたいと思います。
建設・不動産業
建設・不動産業はまだEC化率が11.0%と、他の業種と比べるとEC化が進んでいない業界と言えます。
不動産に着目すると、売買の取引はなかなか難しいかもしれませんが、レンタルオフィスやコワーキングスペースなどが増えていることを考えると、賃貸領域におけるオンラインでの申込み、取引というのは増えているのかもしれません。
EC化率が低い反面、伸びしろの大きい業界とも考えられますが、建設や不動産の売買は高額な取引となるので、契約面のハードルの他、商慣習もハードルとなると思われます。
産業関連機器・精密機器
報告書によると、“はん用機械器具製造業・生産用機械器具製造業・業務用機械器具製造業”それぞれの業界の総売上高は、対前年比で117.5%、108.9%、98.4%となっているそうです。
売上高の拡大に伴いEC市場も成長している業種となっています。
今後はIoTのセンサーを活用した新たなサービス形態の登場が期待される分野ですので、従来の取引のEC化だけでなく、新たなサービスでの市場拡大もあるかもしれませんね。
卸売
2018年の法人企業統計データによれば、“卸売業”は、前年比107.4%となったそうで、業界全体の売上高が成長しています。
また、卸売業全体の市場が拡大しているだけでなく、大手GMS、大手スーパーマーケットを中心に、流通BMSに代表されるEDI標準化が進められているそうで、システムによる業務効率化という文脈でも卸売業のBtoB-EC市場が拡大していると言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は特にBtoC EC市場の伸び率に着目してみましたが、CtoCもBtoBも市場規模は堅調に拡大しています。
当然いつまでも際限なく拡大し続けるわけではありませんが、しばらくは堅調に拡大をしていくのでは、というのが多くの人の見方かと思います。
そんな市場を背景にECビジネスの拡大をご検討されておりましたら、ぜひご気軽にご相談くださいませ。
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