企業間の情報管理が重視される昨今。さまざまな経営現場で「ERP(Enterprise Resource Planning)」が広く導入されつつあります。資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元的に管理・配分を最適化していく経営戦略です。ERPの登場当初は、それを実現するシステムを導入できる企業は大企業がほとんどでした。しかし、現在では中小企業向けに適したERPシステムが多く登場しています。
そこで本記事では、
- 中小企業にERPは必要なのか?
- 中小企業がERP導入するメリット、デメリット
- 中小企業がERP導入する際の注意点
- 中小企業におすすめ!ERP3選
など、中小企業のERP導入に関する内容を元に、さまざまな問題を抱える解決方法や導入のメリット、注意点まで詳しく説明していきます。
ERPとは?対象範囲は?
ERPとはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略称で、企業が保有している経営資源を有効活用するための概念のことを指します。しかし「ERP」というと、計画や概念ではなく企業の基幹システムを指す言葉としてよく使われます。
基幹業務は企業によってさまざまですが、例えば「人事」や「会計」「販売」などはほとんどの企業が共通の業務として持っています。これらを管理するシステムが基幹システムです。ERPはこれらの基幹業務を含め、会社全体の業務を網羅的にカバーし、全体の業務最適化を目的にするシステムです。
中小企業にERPは必要なのか?
そもそも中小企業にERPは必要なのか?ということですが、そのためにはまず中小企業が抱える課題を整理することが必要です。
中小企業が抱える課題
そもそもERP導入率が低いという点があり、その機能をよく知らないということが挙げられます。ERPといえば、大企業向けなのでコストがかかりすぎるというイメージがあるのかもしれません。
実際、3年ほど前までは、中小企業のERP導入率は20%前後と言われていました。ITシステム導入の遅れが生じ、過去10年、20年同じシステムを利用する傾向が見られています。
引用元:経済産業省 「中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2017/170329smartsme05.pdf
ERP導入率が低い理由としてはITソリューションを扱える人材不足が挙げられます。IT人材不足については、デジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている今、国内企業で深刻化している課題といえるでしょう。少子高齢化が加速していることも、長い観点からIT人材不足につながる可能性が高いです。
中にはERPではなく、会計システムや在庫管理システム、生産管理システムなど、さまざまなITソリューションを導入している中小企業は多くありますが、予算の関係上、新たなシステムの構築や既存システムのバージョンアップが難しいといった点も考えられます。
中小企業でもERPを導入すべき
これらの課題を考えて見ても、結論として中小企業でもERPは導入すべきといえます。
ERPは大量のデジタルデータを取り扱い、大規模なプロジェクトに使用されると思われがちですが、近年、クラウドERPが登場するなど、小規模のITシステムが登場しているからです。中小企業では深刻化する人手不足も、ERPを活用することによってまかなうことができるでしょう。
中小企業向けのERPのタイプ
かつては大企業が入れるものという認識の強かったERPですが、近年では中小企業における導入も進んでいます。クラウドサービスを含め様々なERPが普及しており、中小企業向けのツールやサービスも多く登場したことが導入促進の理由の一つでしょう。
それでは中小企業向けのERPにはどのようなものがあるのか、タイプ別にご紹介します。
もちろん、いずれの場合でも従業員数など、ターゲットが中小企業向けになっているシステムを選びましょう。
汎用性の高いERP
人事や会計、勤怠管理など、多くの企業が共通して管理している一般的な基幹業務を中心に統合管理が可能なERPです。
財務会計や経費精算、勤怠管理など別々のシステムで管理している場合、システム間連携のエラー等発生する場合がありますが、ERP導入によって連携の問題はなくなり、業務効率化につながります。
特定業種向けのEPR
自社の業務に適した運用をする際は、ERPをカスタマイズして利用することがあります。しかしカスタマイズをすると基本的には費用が大きくなり、導入期間も長くなってしまいます。
その場合、特定の業種に特化した機能を持つEPRを導入することで、コストを抑えながら自社業務に適した運用を実現することが可能です。
中小企業がERP導入するメリット
中小企業がERPを導入することで得られるメリットは以下の5つです。
- 情報集約化
- 経営資源・資金の運用効率化
- 運用コスト削減
- 人手不足の解消
- DXの推進
これらのメリットは大企業だけでなく、中小企業こそ求めていることではないでしょうか。メリットについて詳しく解説していきます。
1.情報の集約化
一元化されたデータの選択・表示ができ、多くのERPで「経営ダッシュボード」の機能が搭載され、様々なデータを可視化できるようになりました。ERPを導入することで、会社全体の情報を一元化することで、迅速な経営判断が可能となり、結果、スピード感あるビジネス展開が期待できるでしょう。
また、部門間で情報共有や豊富な業種・業務向けソリューションとの業務連携の強化が期待できるので、組織全体の業務効率化も図れます。
さらに、財務体質の課題がブラックボックス化しやすい傾向にある中小企業では、ERP導入により財務状況を素早くデータ化し、財務体質の改善や経営意識の強化にもつながるでしょう。
2.経営資源・資金の運用効率化
さまざまな分野での数量や金額、在庫管理など、社内でリアルタイムに連動・更新されることで、業務の効率化や部門ごとのシームレスなデータ連係が可能となります。
また、法改正等の対応がある場合、複数のシステムであればベンダーに依頼し修正する必要があり、対応が非常に難しいといった課題がありました。しかし、ERP導入により、ひとつのシステムでベンダーによるサポートが可能となるため対応に困ることもありません。
3.運用コスト削減
クラウド型がなくオンプレミス型しかない頃のERP導入や運用については、膨大な費用がかかり中小企業にとっては大きな障壁となっていました。現在はクラウド型ERPの低コストかつ短期間で導入できるので中小企業でもコスト削減を目指した運用ができる可能性があります。
4.人手不足の解消
少子高齢化の影響もあり、多くの企業が人手不足に頭を悩ませています。ERPを導入し、基幹業務を一元管理することにより、業務の無駄を減らすことができます。例えば会計システムや在庫管理システムなど、複数のシステムを使用していることにより発生する二重入力やデータの確認作業が軽減できることで、結果として人的な負担を減らすことができます。
5.DXの推進
現在、多くの企業が競争力を高めるためにDXを推し進めています。ERPの導入によって結果的にレガシーシステムの見直しや一新に繋がったり、データの一元管理によって正確なデータを経営判断の指標にできたりします。ERP導入はDX推進にも大いに役立つでしょう。
中小企業がERP導入するデメリット
ここまで、メリットについて解説してきましたが反対にデメリットとなり得るのはどういった要素なのか、以下2つのポイントについて解説します。
- 業務プロセスが変わる可能性
- 導入後の混乱が生じる
1.業務プロセスが変わる可能性
統合的なシステム環境を構築するERPは、分散システムを導入していた中小企業や、そもそも何もITシステムを導入していない中小企業にとっては、システムの再構築が必要になる可能性があります。
その結果、ERPの導入費用やメンテナンス費用が高額になったり、システムを理解するための時間が必要になったりなど、導入時には一時的なコストと負荷がかかってしまうかもしれません。
2.導入後の混乱が生じる
分散システムや自社特有の業務プロセスを継続していたことにより、ERP導入後、会社の従業員たちが業務プロセスの変化に対応できなくなる可能性があります。新しいルールが複雑化を招く原因となる場合も想定しなくてはいけません。
混乱が長引けばせっかく導入したのにも関わらず、業務の効率化が図れない状況が続き、逆にコスト増という結果になってしまうでしょう。このような事態は早急に対応する必要があります。
中小企業がERP導入する際の注意点
これまでご紹介してきたメリットやデメリットもふまえて、ERP導入の際における注意点をお伝えしていきます。
まず何よりも大事なのは、自社の規模、業務内容に合ったERPを選ぶことでしょう。
EPRは、業務を効率化できる最適なシステムですが、実際に運用を行うのは現場の従業員です。導入の際は、自社の規模に合ったERPを導入する必要があります。
例えば、オンプレミス型かクラウド型という点。
「オンプレミス型」とは、自社でサーバーを用意しソフトウェアをインストールする形態を指します。セキュリティに優れており、自社内で設備を保有するのでカスタマイズが自由にできるメリットがある分、初期費用含めたコストは高くなります。
「クラウド型」は、サーバー上に構築されており、導入する企業はインターネットを介してシステムを利用する形態です。ストレージの拡張性が高く、急な環境の変化にも対応でき災害復旧に強いといった特徴もあります。設備投資もいらないのでコストは抑えられるので、中小企業向きです。
近年はSaaSとしてクラウド型ERPを提供している企業も増えています。
▼参考記事
中小企業がERPを導入する際の比較ポイント
それでは実際にERPを導入する際にどのような点に考慮すれば良いのか、ポイントをご紹介します。
自社の改善したい業務に適しているか
ERPも汎用的なものから特定の業種に特化したものまでさまざまです。まずは自社の業務を洗い出し、どの業務を効率化したいのか考えましょう。
人事や会計、販売と一口にいっても企業によって基幹業務は様々です。
自社がどのような運用を実現したいのかを考え、それを実現できるEPRを選定しましょう。
コストと機能のバランスは問題ないか
基本的に、ERPは保有する機能が豊富であれば高額になりがちです。また、どの程度カスタマイズを実施するか、オンプレミス型とクラウド型のどちらを採用するのかなどで大きく費用は異なってきます。
機能が豊富でも、使わない機能が多ければもったいないですし、安いからと言って必要な機能がなければ本末転倒です。自社が実現したいことと、コストのバランスを見極めましょう。
ベンダーの経験は十分か
ERPを導入するということは、既存のシステムや運用方法が一新されるということになります。データの統合管理をするという特性上、ERP導入による影響範囲も広くなるのが一般的です。
ERPの導入は頻繁に行うことではないため、十分な知識やノウハウを持ったベンダーによるサポートが必須といえます。場合によってはERPを導入したい企業の課題解決をサポートしてくれるERPコンサルタントの活用もおすすめです。
関連ブログ:ERPコンサルタントが担う役割とは?活用の重要性や必要スキルを紹介
サポートは充実しているか
ERPを活用していくうえでトラブルなどが起きた際に、十分なサポートを受けられるかも重要なポイントです。
ERPは企業活動において欠かせない業務に関わるため、問題が起きた際はより迅速な解決が求められます。サポートの範囲などは事前に確認しておきましょう。
中小企業におすすめのERP
ここからは具体的に中小企業へおすすめできるERPを3つご紹介します。
1.GRANDIT サブスクリプション
経理、債権、債務、販売、調達・在庫、製造、人事、給与、資産管理、経費の10モジュールを利用でき、オンプレミス型、クラウド型を選択して導入することができます。
導入実績は1,200社を超え、ERP導入に実績のあるシステム会社13社が集結し、多彩な業務ノウハウを集大成させた次世代コンソーシアム方式を採用しており、優れたコストパフォーマンスが特徴です。
ユーザー指定のインフラ環境を構築できるほか、Microsoft Azure環境と併せて提供することもできます。多言語・多通貨対応によって海外のグローバル企業にも対応できるでしょう。柔軟性の高いERPです。
2.奉行VERP
国内企業に求められる高い業務水準を網羅しているERPです。製品ラインナップはERP業界No.1ともいわれており、会計、固定資産、人事、労務、販売管理など業務アプリケーションごとのシステム構築が可能です。ユーザーが必要とする業務だけを選び、必要な機能のみ導入することができます。
外部との連携に対する柔軟性も高く、データ連係、アダプタ機能、API連携など、エンジニアが持っているようなプログラミングのスキルが無くとも、データ連携処理が自由に作れるので、様々なクラウドサービスとシームレスにつながることができるでしょう。
また認定インストラクターが6,000人近くおり、情報セキュリティの評価基準ISO15408を認証取得しています。タンドアロン、オンプレミス、クラウドから利用環境の選択が可能です。
3.GRANDIT miraimil
GRANDIT miraimilは経理や販売、調達在庫など、中小企業が主要とする基幹業務の機能を備えた統合型クラウドERPです。商社・卸売業・IT・情報サービス業に特化するなど、日本の商習慣に合わせた機能になっているため、細かい設定をしなくてもすぐに利用開始できます。
また、クラウドサービスでの提供となるため、導入から利用開始をスピーディに、かつ安価で実施できます。
4.マネーフォワード クラウドERP
マネーフォワード クラウドERPは、財務会計管理から人事労務管理など、バックオフィス業務全体を統合管理できるクラウドERPです。
スモールスタートや短期導入が可能なERPで、最短1ヶ月で導入が可能です。
また、「経理系業務」や「人事系業務」など、サービス単位での導入が可能なため、必要な機能のみ選んで導入することが可能です。
5.クラウドERP ZAC
ZACは900社を超える導入実績を持つクラウドERPです。案件・プロジェクト型ビジネス向けの機能を多く備えており、プロジェクト管理を得意としています。
リアルタイムの損益管理や、プロジェクトごとの収支管理を行うことができ、スピーディな経営判断に役立ちます。
6.クラウドERP freee
クラウドERP freeeは経理業務に特化したERPです。会計や経費精算、請求書などで細かくサービスに分かれており、自社の環境や課題に応じて適したプランを選択することができます。
予算に応じて導入が可能なため、個人事業主から中堅・中小企業まで幅広く活用されています。レポート機能や分析機能が充実しており、分析結果を経営活動に活用することもできます。
7.Clovernet ERPクラウド
Clovernet ERPクラウドはNECネクサソリューションズが提供するERPです。財務会計から販売管理、在庫管理、勤怠管理まで、中小企業のバックオフィスをまとめて効率化することが可能です。
システムのインフラ管理や保守、バージョンアップや法令対応もすべて行ってくれるため、社内でのシステム管理負荷も軽減できます。
8.GEN
GEN(ジェン)は中小企業向けの純国産クラウドERPです。販売管理や在庫管理、生産管理などをブラウザで一元管理できます。
商社やアパレル、ITサービス、工場など、各業種の商習慣にフィットした業界別サービスを7つ提供しています。
画面やマスタの追加、入力項目の追加など、コーディング不要でカスタマイズを自由に行うことができます。
9.Oracle NetSuite
Oracle NetSuiteはOracle社が提供するERPです。在庫管理や財務管理といったERP機能だけでなく、CRMやECの機能などが統合され一元管理できるのが特徴です。
管理した情報をネイティブビジネスインテリジェンスの機能によって、リアルタイムに分析することも可能です。
10.Reforma PSA
ReformaPSA(レフォルマ ピーエスエー)は株式会社オロが提供するクラウドERPです。「販売管理」「購買管理」「勤怠・工数管理」「経費管理」を統合して管理することができます。
クラウドERP「ZAC」で培ったノウハウをもとにIT・広告・WEB制作などの商習慣に特化させることでコストダウンを実現しています。
まとめ
業種や規模によってマッチするERPは異なります。会社の組織規模や自社の既存業務との適合性を考え、自社とマッチするERP製品を選ぶことが業務の効率化につながるでしょう。
会社の従業員たちが管理・運用しやすい現場のユーザビリティを追求し、慣れないシステムから業務効率化を図れないなど、逆にコスト増にならないように注意することが大切です。ERPにお悩みであれば株式会社システムインテグレータにお任せください。
また、中小企業にもマッチするであろう、国産のERPを比較した資料をご用意しました。
ERPを検討する上で、必ず比較するポイントについてマトリクス形式でまとめ、ERPを比較検討する上で考慮すべき基本的なポイントや、押さえておきたいポイントなどもまとめております。ご検討にぜひお役立てください。
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