経営分析とは?知っておくべき重要指標・分析手法を徹底解説

 2023.01.30  株式会社システムインテグレータ

どのような業界でも、企業間の競争は必ず起こります。変化の激しい現代で勝ち残るために、適切な経営判断から戦略を立案し、業績改善・業績アップを目指すことが求められています。

そのためには、経営分析を正確に行うことで自社の経営状況を的確に把握し、状況に沿った新たな経営戦略を策定することが必要です。

この記事では、「自社の業績を改善したいが、どこからどう取り組んだらよいのか分からない」「経営分析をしているが、効率的に分析できず苦労している」という悩みを抱えている経営者の方向けに、経営分析の概要や重要な指標、効率的に行うためのポイントを解説します。 

経営分析とは

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経営分析とは、営業成績や財務諸表などさまざまな観点から、自社の経営状態を正確に分析することです。経営分析では、貸借対照表損益計算書などの実績を基にした社内での分析のほか、競合他社の動向や市場シェアの変化など外部資料を基にした分析も行われます。 

財務分析との違い

包括的に分析を行う経営分析と比較すると、財務分析は分析する範囲が狭くなっています。経営分析の中心に財務分析があるという位置づけとなっており、簡単にまとめると、定性的な分析を行うのが経営分析、定量的な分析を行うのが財務分析といえます。 

経営分析を行う目的

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経営分析は、自社の経営状況を把握し、経営戦略の策定や見直しを迅速に行うことが目的です。

頻繁に経営分析を行い、各種の経営指標や売上・利益など自社の資産状況の推移を正確に把握できると、さまざまな問題に適切かつ迅速に対処できます。 

経営分析の代表的な手法と重要指標

経営分析の効果を生かすためには、各種財務諸表からのデータを客観的に分析することが必要です。経営分析は主に「収益性分析」「安全性分析」「生産性分析」「成長性分析」の4つに分類されます。 

収益性分析

収益性分析とは、その企業の持つ利益を生み出す力を測るための経営分析で、企業がどれだけの利益を得ているのかを数値化します。収益性の指標は、売上高と各種項目の利益の比率から計算します。比率として見ていくため、規模が大きく異なるような企業間でも比較可能です。この指標が高い場合、少ないコストや資源で効率的に売上を上げているといえます。

以下にて、具体的な分析手法についてご紹介します。 

利益増減分析

利益額と利益率を比較して企業の収益構造を分析する方法です。各決算期での期間損益は、常に変動しています。その中で「その期間の損益の増減がどのような要因によりどの程度の影響を受けた結果なのか」を分析し、企業の収益構造を解明することで、今後の収益構造の予測を立てていきます。

具体的には、「販売価格の上昇および下落」「販売数量の増減」「原材料価格の高騰および下落」などの利益の増減要因を探りながらこれらの影響度を明らかにし、経営改善の方法を決定していくのです。 

損益分岐点分析

利益と総コストがプラスマイナス0になるポイントのことを指し、損益分岐点の計算は以下の式で表されます。 

・損益分岐点 = 固定費 ÷ {1―(変動費÷売上高)} 

この分析はCVP(コスト・Cost、バリュー・Value、プロフィット・Profit)分析とも呼ばれており、総コストと販売量を基に利益を分析する手法です。

損益分岐点分析を行うために、まず損益分岐点売上高を算出します。 

・損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 

損益分岐点分析の観点から経営の黒字化を図るには、売上を損益分岐点売上高よりも高めるか、コストカットによって損益分岐点を下げるかのどちらかの方法をとる必要があります。 

資本利益率分析

投入した資本に対してどれだけ利益が生み出せたのか、実際に企業にどれだけの稼ぐ力があるのかを分析する手法です。企業が持つ資本がどれほど効率的に利益につながっているかを確認することができます。

数値が高い場合、少ないコストで効率的に売り上げを上げている状態になります。つまり、コストが小さく生産性は高いことが分かるので、不況に強く資金調達時にも有利に働くのです。資本利益率分析は会社の根幹に関わることから、指標が悪い場合は即座に対策を講じなければなりません。 

収益性分析における主な指標

自社がどれほど利益を上げる能力があってどんな状況にいるかを分析する収益性分析では、主に以下の指標が使われます。 

・総資本経常利益率(ROA)

「年間の経常利益÷総資本の年平均×100」で算出される数値で、年間の経営活動の中で総資本に対してどの程度の利益を出したかを見る指標です。投資家が優良企業と判断する総資本経常利益率は5%以上といわれています。 

・ 自己資本当期純利益率(ROE)

「年間の当期純利益÷自己資本の年平均×100」で算出される数値で、自己資本(株主資本)に対してどれほど純利益を得られたかを示す指標です。数値が高いほど、効率よく利益を獲得していると判断されます。ROEは、最も重要な指標としている投資家が多い傾向にあります。 

・ 売上高総利益率

「売上総利益÷売上高×100」で算出される数値で、売上高に対する利益の割合を示す指標です。売上総利益は、売上高総利益率は粗利率とも呼ばれます。この数値が高いほど、企業の商品やサービスの利益が大きいといえます。 

・売上高営業利益率

「営業利益÷売上高×100」で算出される数値です。売上高から経費などを差し引いたのが営業利益で、売上高に対するその割合を示す指標になります。この数値が高いほど本業で収益力があると判断できます。 

・売上高経常利益率

「経常利益÷売上高×100」で算出される数値で、売上高に対する経常利益の割合を表す指標です。経常利益は、企業の通常の業務で得た利益のことで、本業の営業利益に営業外収支を加えた数値を指します。 

安全性分析

安全性分析とは、負債・資本の構成や比率を見て会社の返済能力や財務面の安全性・安定性を測る経営分析の方法です。倒産する危険度を測る指標になり、安全性が低い企業は返済能力に不安があるといえます。 

短期財務安全性分析

短期間(おおむね1年以内)における企業の支払能力の安全性を表します。

支払能力が低下している企業は、短期間で倒産してしまうリスクが高いことになります。また、キャッシュフローがなくなると黒字倒産のケースもあるため、短期間における支払能力の安全性を確認するのは重要です。 

・流動比率

流動比率とは「流動資産÷流動負債×100」で算出される数値です。短期(1年以内)に返済する義務がある流動負債に対して、回収できる見込みの資産である流動資産の比率を表す指標になります。流動比率は200%以上が理想的で、100%を下回っている場合は倒産の不安がある状態といわれています。 

・ 当座比率

当座比率とは「当座資産÷流動負債×100」で算出される数値です。流動資産の中で現金化しやすい当座資産がどの程度あるかを表す指標で、100%以上が望ましいとされています。流動比率と比較して当座比率が低い場合は、棚卸資産が過剰でありすぐに現金化が難しいと判断できます。 

長期財務安全性分析

長期における会社の財務構造の安全性を表すものです。長期的な安全性が確認できれば長期的な支払能力があると考えられるため、企業全体としての長期の安全性・安定性を見ることができます。

大きな投資の際に自己資本でどこまで補えるかなどを判断するケースでは、長期財務安全性分析を行うことが多くあります。 

・固定比率

固定比率とは「固定資産÷自己資本×100」で算出される数値です。長期的に使用する固定資産と自己資本の比率で表される指標で、固定資産投資の安全性を判断できるものになります。具体的には、返済義務のない自己資本がどこまであるかを確認するもので、100%以下が望ましいとされています。 

・ 固定長期適合比率

固定長期適合比率とは「固定資産÷長期資本×100」で算出される数値です。自己資本と固定負債の合計である長期資本と固定資産の比率で表される指標で、固定負債の比率から企業の長期的な安定性を把握できます。100%以下ならば健全といえます。 

資本調達構造分析

資本の調達先に関する自己資本と負債の比率などから資本構造の安全性を表すものです。自己資本の多い方が財政基盤としては安全といえます。また、資本調達構造分析は上で述べた長期財務安全性分析に含まれることがあります。 

・自己資本比率

自己資本比率とは「自己資本÷総資本×100」で算出される数値です。総資本に対して返済義務のない自己資本の比率を表す指標で、企業における財政基盤の健全性を判断でき、数値の高い場合はリスクが低いと判断できます。この指標を上げるには、負債を減らすか自己資本を増やす必要があります。 

・負債比率

負債比率とは「負債÷自己資本×100」で算出される数値です。自己資本に対して負債の比率を表します。負債は支払利息が発生する上に返済義務があるのに対して、自己資本は支払利息返済義務がないため、低リスクの資本構造です。負債比率が小さいほど財務状況が安定しているといえます。 

生産性分析

生産性分析とは、売上額と比較して会社資源である人・物・金・情報を有効に生かしているかを判断するための経営分析です。生産性分析で使用される指標は大きく分けて、「労働生産性」「資本生産性」「労働分配率」の3つがあります。 

・労働生産性

「付加価値÷従業員数」で算出される数値です。従業員1人当たりがどれほどの付加価値を生み出したかを測る指標で、割合や比率ではなく金額で算出します。この式にある付加価値とは、労働による対価のことを指しており、「売上高-原材料費を含む購入した費用」で算出される場合が多い傾向です。数値が高いほど、従業員の生産性が高いといえます。 

・資本生産性

「付加価値額÷総資本」で算出される数値です。事業において投入した資本に対してどの程度の付加価値を生み出したかを測る指標で、労働生産性と同様に金額で表すのが一般的です。数値が高いほど、投下した資本が効率的に付加価値を生み出していることになります。資本の大小にかかわらず判断できるのが特徴です。 

・労働分配率

「人件費 ÷ 付加価値額× 100」で算出される数値です。付加価値の中で、人件費(給与+法定福利費)がどのくらいあるかを表す指標になります。一般的には40~60%といわれており、数値が高いと良い待遇で社員を雇用できているということになります。 

成長性分析

成長性分析とは、企業の成長の程度や将来の成長の可能性を測る経営分析です。これまでの業績がどのように変化しているかを見て企業の成長性を確認します。

成長性の経営分析では、市場全体と自社との成長の度合いを比較することが重要です。例えば、自社の成長よりも市場全体の成長が大きければ、自社の存在価値は低下しているかもしれません。自社の数値だけでなく、競合他社との比較という観点を持つこともポイントです。 

・売上高増加率

「(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100」で算出される数値です。前期に対してどれだけ売上高が伸びたかを表しており、プラスなら成長しているとみなされます。また、企業が成長する勢いを表しているともいえるでしょう。 

・利益増加率

「(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100」で算出される数値で、経常利益がどれだけ伸びたかを表しています。数値の高い方が会社は発展しているといえますが、前期より低下している場合は改善が必要です。 

・総資産増加率

「(当期総資産−前期総資産)÷前期総資産×100」で算出される数値です。今度は前期に比べて総資産がどのくらい増加したかを表します。総資産増加率は、企業規模としてどれほど大きくなっているかを測れます。 

・純資産増加率

「(当期純資産−前期純資産)÷前期純資産×100」で算出される数値です。前期と比較して純資産がどのくらい増加したかを表す指標になります。純資産のほとんどは自己資本で構成されるため、純資産が増えるということは会社の安定性が増しているといえます。 

・従業員増加率

「(当期従業員数−前期従業員数)÷前期従業員数×100」で算出される数値です。前期と比較して従業員がどのくらい増加したかを表しています。この数値からも企業規模がどの程度拡大しているか、あるいはどれだけ成長しているかを分析できます。 

経営分析のポイント

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ここまで、各種の経営分析について解説してきました。では、経営分析を行う際は具体的にどのような点を押さえておくと良いのでしょうか。ここからは、経営分析を正確に行いながら迅速に経営判断を下すためのポイントを紹介します。 

正確なデータを利用する

財務諸表のデータ収集や分析にどれほど時間をかけたとしても、その数値に誤りがあれば分析結果も間違ったものになり、早く正しい経営判断を下すことはできません。経営判断を誤ってしまうと、業績にも悪影響が生じます。そのため、常に数値が正しいかの確認をし、正確な数値に基づいた分析を行うことが重要です。 

自社に適した指標を使う

経営分析の方法は様々ですが、自社で感じている課題や状況に合った分析方法を選択しましょう。効率的に経営分析を行うことが大切です。 

多くの指標を使いすぎない

経営分析に使用される指標はここでは紹介しきれないぐらいに多くありますが、利用する指標は可能な限り絞ることをおすすめします。自社の現状を見て必要な指標や重視したい指標などに絞ることで、効率的に経営分析を行うことが可能になり、必要な分析に集中できます。 

ツールを活用して効率化する

経営分析を行う際は、ツールを活用して自社の経営状況を素早く正確に把握することが必要となります。

経営分析に活かせるツールはさまざまで、経営に役立つ多様な機能を備えたものから、財務諸表の作成など一部機能に特化したツール、そしてBIツールのような状況の把握に便利なツールなどが存在します。 

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

変化の激しい現代では経営分析の重要性が増しています。経営分析のポイントを押さえて丁寧に行うことで、より有用で現実的な経営戦略の立案が可能です。

分析にはツールの活用が便利ですが、分析すべき社内のデータが断片化して管理されていると実効的な分析は困難でしょう。より効果的な分析を行うために、まずは社内の必要なデータがどこにどのように管理されているのかを正確に把握し、一元管理することが重要になります。

このようなデータの統合管理には、ERPの導入もおすすめです。ERPについての基本をまとめた資料がありますので、経営分析でお悩みの方はぜひご覧ください。


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