ソフトウェアの品質を高めるためには、テストが非常に重要な工程です。
しかし、限られた時間やコストの中で、十分なテストを行うにはどのようにすればよいのか、悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、具体的なテスト技法として、ホワイトボックステストとブラックボックステストについて紹介します。
本記事では、ソフトウェアテストの重要性や7つの原則などに解説します。
ホワイトボックステストとは
ホワイトボックステストは、ソフトウェアの内部構造やコードを理解した上で行うテスト手法です。この手法は、ソフトウェアの内部のロジックやフローを深く掘り下げ、内部構造の網羅的なテストを目指す手法ですが、現実にはすべてのパスを網羅することはコストや時間の制約により難しいケースが多いです。
ホワイトボックステストの代表的な技法として、「制御フローテスト」と「データフローテスト」を解説します。
制御フローテスト
制御フローテストは、ソフトウェアの実行パスや分岐条件をできる限り網羅的にテストすることで、プログラムが意図した通りに動作するかを確認するテストです。if文やループ処理があるコードの中で、すべての条件を網羅することで意図しない挙動を検出します。
例えば以下のようなケース(pythonで記述)においては、以下のすべてのパスを確認することで、各分岐が意図した通りに動作するかを確かめ、プログラム全体のロジックの正確性を保証します。
・x > 10 の場合
・x == 10 の場合
・x < 10 の場合
def check_value(x): if x > 10: print("xは10より大きい") elif x == 10: print("xは10と等しい") else: print("xは10未満") |
同じような考え方で、ループ構造が含まれる場合は、ループが1回も実行されない場合、ループが1回実行される場合、およびループが複数回実行される場合など、あらゆるパスを網羅することが求められます。
データフローテスト
データフローテストは、変数の定義から使用に至るまでのデータの流れを追跡し、データの扱いに関する不具合を発見するテストです。
例えば、定義されているのに使用されていない変数(未使用の変数)や、使用されているのに定義されていない変数(未定義の変数)が存在しないかを確認することで、エラーの原因となる要素を早期に発見し、無駄なリソースを取り除くことができます。
ブラックボックステストとは
ブラックボックステストは、外部からシステムを操作してその動作を確認するテスト手法です。より具体的には、外部からの入力や操作に対する出力結果が期待通りであるかを検証します。
ホワイトボックステストと異なり、内部構造を知らなくてもテストできるなどの利点がある一方で、内部の実装に由来する不具合はホワイトボックステストと比較して見つけにくい、入力ケースを多くしすぎるとコストが高くなりやすいなどの特徴もあります。
同値分割法
同値分割法は、入力データをいくつかのグループに分け、それぞれ代表的な値を選んでテストする手法です。例えば、ユーザーが年齢を入力するシステムであれば、「0-17歳」「18-64歳」「65歳以上」といったグループに分け、各グループから代表的な値を選んでテストします。この手法は、テストケースの数を削減しつつ、効果的なカバレッジを確保することができます。
境界値分析
境界値分析は、同値分割法で分けたグループの境界にある値を重点的にテストする手法です。
境界値では不具合が発生しやすいため、例えば「18歳」と「17歳」など、境界付近の値をテストすることが重要です。この手法により、エッジケースにおけるシステムの安定性を確認できます。
デシジョンテーブルテスト
デシジョンテーブルテストは、入力条件とそれに対する出力結果を表形式で整理し、すべての組み合わせの網羅を目指す手法です。
例えば、支払い方法や配送オプションの組み合わせなど、複雑な条件が絡むシステムにおいて、すべての条件を体系的に確認することができます。この手法により、条件が絡み合う複雑なケースでも論理的に正しい動作を保証します。
状態遷移テスト
状態遷移テストは、システムがある状態から別の状態に遷移する際の挙動を確認する手法です。
例えば、ログイン画面からホーム画面に移行する場合など、特定の条件下でシステムが正しく状態を変化させるかを確認します。状態管理が複雑なシステムにおいて、状態遷移テストは特に重要です。
組み合わせテスト
組み合わせテストは、複数の入力条件のすべての組み合わせをテストする手法です。
例えば、異なるユーザー権限(管理者、一般ユーザー、ゲストユーザー)と異なる操作(閲覧、編集、削除)のすべての組み合わせをテストすることで、システム全体の挙動を確認します。この手法により、複雑なシステムにおいてすべての入力が互いにどのように影響し合うかを検証しますが、テストケースが膨大になることを避けるため、ペアワイズ法などを用いて効率的にテストを行うことがしばしば実践されています。
まとめ
本記事ではソフトウェアテストの基本的な技法であるホワイトボックステストとブラックボックステストについて解説しました。それぞれの手法は異なる視点でソフトウェアを検証するため、両方を組み合わせることでテストの効果が高まります。
また、各機能やモジュールに対して、不具合が発生した場合の影響度(インパクト)と不具合の発生頻度をもとにリスクを評価し、限られたリソースを効果的に配分することも重要です。限られたリソースの中で最大の効果を得るために、各手法を適切に組み合わせて実施していきましょう。
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