ビジネスを推進する上で、KPIを設定することは基本中の基本です。“Key Performance Indicator”、日本語で「重要業績評価指標」という意味のKPIは、ビジネスの最終目標を達成するための過程を管理するために設ける、定量的な計測基準となります。
このKPIはデジタルマーケティングと言ったマーケティング施策だけものではなく、システム開発プロジェクトにおいてもその活用が広がっています。ウォーターフォール型開発でもアジャイル型開発でも、KPIを設定することで円滑なプロジェクト推進を目指す企業が増えているのです。
今回はシステム開発に欠かせないKPI設定のポイントについてご紹介します。
システム開発でKPIを設定するメリット
KPIと類似した指標として“KGI(Key Goal Indicator)”があります。これは「重要目標達成指標」といってビジネスで最終的に達成すべき目標のことを指します。システム開発に置き換えるならば、システムのQCD(品質、コスト、納期)を遵守しかつ顧客にとって経営課題を解決するようなシステムを開発することがKGIだと言えます。もちろん、KGIもKPIと同じように定量的な計測基準がなければいけません。
ただしKGIはあくまでシステム開発の最終目標になるので、プロジェクトで進捗を追うべき重要な指標はやはりKPIになります。では、システム開発にてKPIを設定するメリットとはどう言ったものでしょうか?
スケジュールの影響で機能の質を落とさない
システム開発プロジェクトはスケジュールとの戦いと言っても過言ではありません。バッファ(余裕)を多めに取ったスケジュールでも顧客と協議して決定した納期は簡単に変更することはできません。そのため工程が進むほどスケジュール優先で対処してしまい、機能や品質を落としてまでもスケジュールを確保すると言ったことが頻繁に発生します。
機能や品質を抑えてしまうと当然のことながら、システム本来の目的が果たせなくなってしまいます。つまり納期は守れても顧客にとってのシステム価値は低くなり、QCD全体を満たすことにはなりません。そのためKPIの設定と活用は、スケジュール管理ばかりが優先されるものでなく、機能と品質、スケジュールを正しくバランスして予定通りに開発できているかを常に確認します。
効果測定を可能にしてトライ&エラーで改善していく
開発したシステムやリリースした機能が、本当に効果があったかを判断することはとても大切です。開発手順に問題があり、違った方法を取っていれば目的が達成できたというケースも多々あります。そうした事態を避けるためにもシステム開発の目的や手段を適切に考慮した上で、測定可能な定量的な計測基準を予め設定しておくことが重要です。
計測基準を設定することにより、システム開発後や機能リリース後にトライ&エラーやチューニングなど目標値をクリアするための改善を繰り返し実施します。計測可能なKPIを設定するためには、設計レベルで事前に考慮しておく必要があるため、後々設計変更や追加対応などをしなくて済むように、前もってKPIの設定と計測方法を確定させ設計内容に盛り込んでおくことが重要です。
KPIの設定は課題を絞り込みバランスをとる
システム開発においてKPIを設定すると、開発チームが自然とKPIに最適化されて作業を行うようになります。たとえば顧客満足度を重点にKPIを設定すると、自ずとその点が優先事項となり、それを重視するが故に知らず知らずのうちに管理コストが増加してしまうと言ったことも起こります。このようにKPIを策定することでの思わぬリスクがあることも確かです。
そのためKPIは効率的かつ必要最低限なものに限定しながらも適切なバランスを取ることが重要です。正しくKPIが設定されるとプロジェクトの方向性が明確になり、生産効率を高めたりQCDを満たせたりと、何も設定しない場合と比べて様々な課題をクリアすることができます。
KPI設定時の留意点
KPIを設定するためには、ビジネスゴールと連動していることが重要ですが、一方で、現場レベルでの役割、日々のオペレーションとの関係性も無視できません。そのため、実際にKPIを設定する際に注意すべき留意点を挙げてみたいと思います。
システム開発のQCDと整合している
このシステム開発は何を目的としているのか? QCDとして設定したどのKPIを達成したいのか?といった方針はどのようなプロジェクトにも存在します。良いKPIの第一条件はそれらの目的やQCDと正しく整合性が取れていることです。
効果や成果と連動している
KPIを改善することでシステム開発のQCDが改善されないようならば、それは良いKPIとは言えません。KPIを改善したにも関わらずQCDの改善が見込めないのならば、それは計測のための計測に過ぎません。
具体的かつ定義がシンプル
システム開発には多くの開発者が関わりますから、認識のズレ等が起きないようにKPIは具体的かつシンプルに策定しなければいけません。一般的ではない用語を使用したり、不明瞭であったり複雑なロジックでKPIが設定されていると、効率良く改善活動を続けていくことが難しくなります。
多角的かつ網羅的でバランスが良い
KPIの視点が偏ってしまうとシステム開発が誤った方向へと進んでしまうリスクがあります。視点が偏っていると管理コストの増加等に気づかない可能性があるため、多角的かつ網羅的でバランスが取れるように配慮してKPIを策定しましょう。
責任の所在がハッキリしている
そのKPIを管理する責任は誰にあるのか?これがハッキリしていないとシステム開発におけるKPI設定は失敗します。必ず責任の所在をハッキリさせて指示系統も整え、実効的な運用を目指します。
努力により目標達成ができる
KPIを策定するにあたって無謀であり、明らかに無理な目標を用いる場合があります。しかしそれでは開発メンバーのモチベーションを下げるだけであり、KPIとしては機能しません。
測定可能である
膨大な作業がないと計測できないようなKPIでは管理が続きません。システム開発と同時進行で管理していくので、効率的で少ない作業で測定可能な計測基準を設けましょう。
計測基準が明確で期限が決められている
計測基準が無いKPIを設定しても意味はありません。また期限がないと改善スピードは鈍り、それによってシステム開発のQCDも下がります。そもそも基準と期限がないものは目標として成立しません。
計測対象が絞られている
KPIの計測対象が広すぎるとそれだけで計測作業が大変になり、計測結果と原因の紐づけが難しくもなります。計測にかかる労力を最低限に抑えて、効率良くデータを収集し分析できる基準を設けることが大切です。
計測結果が改善活動につながる
KPIを計測して改善の必要性が明確になっても、それを具体的な活動に繋げなければ意味はありません。計測結果の良し悪しが問題なのではなく、改善に向けたアクションが取れないことが問題となります。基準に対して結果が伴わない場合は、何を実施するべきか対策できることが改善につながります。
このように良いKPIには複数の条件があります。これらの条件を押さえることでシステム開発が円滑に進み、QCDを効率良く満たすことができるでしょう。
場合によって、事前に定めたK P Iが実態に即さなくなることも起こります。その場合は、適切に見直しを行うとともに、チームメンバーにもきちんと合意を得ることで、新たなKPIに全体が向かって進むことができるように配慮することが大切です。
まとめ
いかがでしょうか?今回はシステム開発工程で役立つKPIについてご紹介しました。KPIはシステム開発の目的や目標に直結する指標となるため、システム開発の設計段階においてもきちんと考慮されていることが重要です。
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