業務フローとは、その名の通り業務の流れをフロー図で表したものです。業務の流れを可視化する目的で作成します。多くの人に馴染みやすいフロー図の形にすることで、関係者全員に業務の全体像を共有し認識合わせをすることができます。本記事では業務フローの書き方をサンプル入りで解説します。
業務フローの目的
システム開発において業務フローは要件定義のフェーズでよく使われます。
まず現在抱えている業務上の課題を洗い出し、その解決策を検討するために現行の業務フローを使います。さらに解決策を策定したあとに、その内容を反映した新業務フローを作成します。
また、業務フローで正常時の業務の流れを把握することで、フローから外れる例外パターンも洗い出すことができます。業務分析段階で例外が発生する可能性をおさえておくことで、例外対応の検討が要件から漏れることを防げます。
業務フローを用いて業務を可視化することでシステム開発以外にも活用できます。
たとえば業務の引き継ぎや新人教育といった、業務知識のない人におおまかな流れをすばやく掴んで欲しい場面にも直感的に理解しやすい業務フローは有効です。
またシステムの導入、改修にとどまらない業務プロセスの課題発見、改善(マニュアルやオペレーションの見直しなど)にも業務フローを用いた分析は役立つでしょう。
業務フローの典型的な書き方
業務フローには決まった記載ルールはありませんが、ここではイメージを共有するために例を示しながら典型的な記載方法を説明します。また、よく使われる記号についても解説します。
業務フローは「誰が」「いつ、何をきっかけに」「どんな場合に」「どんな作業を行う」を時系列で表しています。「誰が」は以下のような「スイムレーン」で表現します。
業務フローを一つのプールに見立てて仕切り線で区切り、業務を行う担当者やシステムを各レーンに配置します。どのレーンに処理が配置されているかで「誰が」がわかる仕組みです。
さらに代表的な記号とその意味についてまとめます。
矢印 |
業務や処理の流れ、データの流れを表現します。 |
開始・終了 |
業務フローの開始・終了位置に配置する記号で、端子とも呼ばれます。 中には業務を始める、または終えるきっかけとなる状態や操作(「誰が」「いつ、何をきっかけに」「どんな場合に」)を記述します。 |
プロセス・処理 |
一つのステップ・処理を表す記号です。「どんな作業を行う」を簡潔に記述します。一つのボックス内には複数の処理を書かないほうが見やすいフローになります。 |
判断 |
処理が分岐する際の「どんな場合に」をボックス内に記述します。 ひし形の各頂点から、それぞれの条件に合致した場合の次のステップに向けて矢印を引きます。 1つの記号で2パターン、または3パターンの分岐を表現することができます。4つ以上に枝分かれする場合は、分岐記号を複数重ねて表現できます。 |
サブプロセス |
一部の処理を別の業務フローに分割する場合に、この記号を使用して該当箇所をサブプロセスとして定義します。 |
データベース・システム |
データベースや別のシステムを表します。データをデータベースや別のシステムへ入出力する際に使用します。 |
書類・ドキュメント | 伝票や請求書といった書類や帳票を表す記号です。 |
繰り返し処理 | 開始・終了記号で挟むことで、繰り返し処理を表現します。開始記号内には繰り返しの開始条件、終了記号内には終了条件をそれぞれ記述します。 |
以下は業務フローの作図例です。
わかりやすい業務フローのポイント
業務フローはシンプルで流れが追いやすいことが重要です。以下では、わかりやすい業務フローを作成するポイントを解説します。
-事前に記載ルールを決めておく
フォーマット、使用する記号や記載する粒度といったルールは可能な限り作成開始前に決定しチーム内で共有しておきましょう。業務フローの作成を分担する場合に、複数の書式・記法が混在して読みにくいものになる、揃えるための手戻りが発生する等のリスクを減らします。
-凡例を示す
わかりやすい位置に凡例を書き、各図形を使用する意図を明確にしておきましょう。前述の通り業務フローには決まった記述方法はありませんので、凡例を示しておいたほうが多くの人に齟齬なく伝わります。
-使う図形を絞る
たとえ凡例があっても、使用する図形の種類はあまり増やしすぎないほうが直感的にわかりやすい図になります。前述した開始、プロセス、分岐など4〜5種類程度に留めるのが望ましいでしょう。
-開始・終了を明確にする
開始・終了は各一箇所に絞り、その位置が視覚的にわかりやすいように記述しましょう。
開始・終了の位置がわかりにくいと流れが追いにくくなります。もしフローを開始する条件が複数ある場合は、フローを分けて複数作成したほうが良いでしょう。
-分岐の条件を明確にする
処理が分岐する際には、その条件をわかりやすく記述しましょう。分岐の条件がはっきり示されていないと、処理を追う際にどちらに進めばよいのかわからなくなります。
また、分岐はなるべく少なくしたほうがわかりやすいです。
-時系列を追いやすいように線を引く
上から下、あるいは左から右へ読むと時系列が追えるように書き、処理が分岐した場合にもなるべく矢印がこの流れに逆行しないようにしましょう。時系列がわかりにくいと、業務の全体的な流れを把握しにくくなります。また線が複雑に交差してしまうと追うのが難しくなります。可能な限り線が交差しないように引きましょう。
-適切な粒度で書く
業務の全体像を把握できるように、各ステップはあまり細かく区切りすぎないようにしましょう。記述が細かすぎるとフローが膨大になり、流れがつかみにくくなります。より細かな業務について記載する必要がある場合は該当箇所をサブステップで表し、別途サブのフローを作りましょう。情報の加工を終え、他者や他のシステムに引き渡す準備ができるまで(ハンドオフの単位)を1つのステップとすると、記載の粒度を揃えやすいです。
-適宜分割する
一つの業務フローは印刷した際にA4用紙1ページにおさまる程度の大きさにし、膨大になる場合には、適宜分割しましょう。分割には時系列でいくつかに分割する(フェーズで分ける)、ある業務の記述の粒度を大きくし、別途詳細なフローを作る(サブプロセス化する)といった方法があります。
-他の資料と相互に参照しやすくする
業務フローに記載した作業の説明・システム名等の記述は要件定義で作成するその他のドキュメント(画面遷移図、DFD等)と揃えるようにしましょう。すべてのドキュメントを最終成果物としてまとめた際に、相互に参照しやすくなります。
-シナリオや手順書と組み合わせる
あるユーザー視点でどんな作業を実施するのか把握・説明したい場合には、視点を固定したシナリオや手順書といった別ドキュメントを作成しましょう。業務フローはすべての登場人物・システムが業務の中でどのように関係するか見渡すため、その分複雑にもなります。
特にユーザー教育等で業務の流れを説明する際には別途シナリオや手順書も用意しましょう。
まとめ
業務フローは業務の流れを可視化し、全体像を把握するために作ります。さらに現状を分析しての課題の発見や新システム導入後の業務の流れの共有等に使用します。多くの人にわかりやすく書くことができれば、業務をより効果的に改善できる、開発フェーズでの手戻りを少なくできる等の効果が期待できます。本記事で紹介したコツも取り入れながら、業務フローを作成し活用してください。
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