OEMとは?種類やODMとの違い、双方のメリット・デメリットを解説

 2022.06.15  株式会社システムインテグレータ

昨今では異業種参入やグローバル化が急速に進み、各分野で品質の高い製品が増えました。
自動車・アパレル・スマートフォンなど、生活に欠かせないアイテムは色々なものがありますが、中でもお気に入りのブランドや信頼している企業があるという方も少なくないはずです。

こうした、お気に入りの企業の名前を冠した製品ですが、実は「OEM」と呼ばれる仕組みによって他の企業が製造を担当しているケースが増えていることをご存じでしょうか。誰もが愛用している人気の製品も、陰で製造を支えている立役者が数多く存在するのです。

そこでこの記事では、OEMという考え方を整理して解説します。OEMの概要や代表的な種類、ODMとの違い、OEM活用のメリット・デメリットなどについて分かりやすくご紹介するので、OEMの基本的な理解を深めたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

OEMとは

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OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略称で、OEMのメーカーが他社ブランドの製品を生産することを指します。完成した製品は委託側企業がOEMのメーカーから仕入れる形で、自社ブランド名や型番を付けて販売します。自動車業界やアパレル業界をはじめ、さまざまな分野においてOEMは活用されています。

OEMは下請け製造の一種として誕生したと言われています。コスト競争で生き残れなくなった企業が生産工程を放棄して受託者となったり、激しい市場の変化に追いつけなくなった企業が他社の生産設備を借りたりと、企業の奥の手としてOEMが活用されていました。

メーカーにとって「生産」という工程の放棄は簡単な決断ではありません。OEMに対して、当時はマイナスな印象を抱く事業者も少なくなかったのです。しかし、現在では多様化した企業活動を促進させるための手法として、OEMは世界の市場に受け入れられるようになっています。

OEMの目的

OEMの目的は、企業それぞれの強みを最大限に発揮させることです。1つの製品を製造するためにはさまざまな工程があり、自社だけですべての工程をカバーすることは簡単ではありません。製品の企画から製造、販売までを行うためには、工場の整備だけでなくスタッフの人件費や光熱費など、多くの手間とコストがかかってしまうためです。

そこで、製造のみを外部の企業に委託でき、コストをかけずに生産量をキープできる仕組みとしてOEMが誕生しました。

OEMで製造を委託する企業は、製品の企画や販売などにリソースを集中できます。より効率的に品質の高い製品を製造し、市場に供給していくために、OEMという手法は欠かせない存在なのです。

ODMとの違い

ODMとは「Original Design Manufacturing」を略した言葉で、他社ブランドで製品を設計・生産することを指します。OEMでは他社ブランドの生産のみを請け負うのに対し、ODMでは開発や設計も担当します。ODMの種類によっては、マーケティングや販売までを受託業者が担当するケースもあるようです。製造工程のみを外部企業に委託するOEMに対して、ODMの​​製造企業は商品を作るさまざまなフェーズに携わると覚えておきましょう。

OEMのおもな種類

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OEMのおもな種類としては次の2つに分類できます。

1つ目は、OEMの製造企業が企画をしてブランドを持っている委託企業に提案するパターンです。OEMを請け負う製造企業自らが製品の開発を行い、完成品や半完成品のアイデアを委託企業に持ち込みます。求めていた製品と一致すれば、委託企業側は製品開発を行う手間を省けます。OEMの製造企業としても自らで需要を開拓できるため、工場などの安定した稼働を確保できるのです。

2つ目は、ブランドを持っている委託企業が企画をして、OEMの製造企業に依頼するパターンです。委託企業が自社ブランド製品の仕様などの詳細を決めて、OEMの請負企業に製造を委託します。委託企業が仕様書や資材、原料などを製造企業に提供するなど、密な連携が欠かせません。状況によっては製造企業に対して技術指導を行って、製品の品質向上を図るケースもあります。

OEMのメリット

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OEMには多くのメリットがあります。製造側と委託側、それぞれの立場からOEMの魅力を見ていきましょう。

製造側のメリット

まず、OEMの製造側のメリットとしては製品の製造によって利益を得られることが挙げられます。OEMを依頼された商品の売上が上がれば、比例して製造企業の収益もアップします。国際的な人気商品のOEMともなれば、得られる利益も莫大です。 ブランドを支える影の立役者として、名前を連ねている有名な製造企業も少なくありません。

次に、余剰の工場設備や技術の有効活用もOEMなら行えます。優れた技術者や設備があったとしても、使い道がなければ手に余らせてしまいます。仕事がなければ継続して雇用を生み出すことも簡単ではありません。そこでOEMで委託企業から依頼を受けられれば、製造企業の能力を十分に発揮できます。商品販売のブランド力やアイデアが不足している企業であっても、製造というスキルを有効活用できるのです。

さらに、製造に関連するノウハウの蓄積も行えます。製造企業としての強みを活かせるOEMですが、すべての案件がスムーズに進むとは限らないはずです。委託企業と話し合いを重ね、試行錯誤の中で新製品を誕生させるケースも珍しくありません。そうした経験は貴重な財産として製造企業に残ります。得意として売る製造のスキルにさらに磨きをかけられるのです。

委託側のメリット

続いて、委託側のOEMのメリットを考えてみましょう。最も代表的なメリットとしては、製造で発生するコストの削減が挙げられます。OEMの目的でお伝えしたように、商品の製造は簡単ではありません。工場やそこで働く人材など、さまざまなリソースが必要です。さらに、優れた品質の製品を誕生させるためには、スキルやノウハウなども欠かせません。OEMであれば製造を得意とする企業に工程をすべて任せられるので、委託企業は手間を大幅に減らせます。委託企業は工場の整備や人材の雇用など省いて、アイデアを製品として販売できるのです。

製造工程を他社に任せられると、委託企業は企画や販売などほかのコア業務への集中が可能です。優れた機能を持った製品を製造できたとしても、マーケティングや宣伝などを疎かにしていると収益は望めません。インターネットやスマートフォンが当たり前になった世の中で、消費者に商品の魅力を伝えるのは工夫が必要です。委託企業はOEMを活用すればそれぞれが得意とする作業を分担できるので、より効率的に製品の製造から販売までを行えます。

さらに、製造部門を持たない小売企業や百貨店などであっても、OEMであれば自社ブランド品を販売できます。例えば、コンビニなどで販売されているプライベートブランド商品を思い浮かべてみてください。確かな品質と品揃えで大ヒットし今では定番商品に成長していますが、製造に携わっているのはコンビニとは別の会社です。製造するノウハウを全く持っていないとしても、OEMを活用すればアイデアやブランドを売り出すことができるのです。

OEMのデメリット

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一方、OEMのデメリットには何があるでしょうか。製造側と委託側、双方のデメリットを認識しておきましょう。

製造側のデメリット

製造側のデメリットとしては、まず自社ブランドが育たないことが挙げられます。OEMでは依頼を受けた他社ブランドの製品を製造します。OEMの製造企業の名前は前面に出ないため、消費者から認識される機会は限定的です。OEMの製造企業の名前など全く認識していないという方も珍しくありません。優れた製品製造の技術を持っていたとしても、自社ブランドの育成はどうしても不利になってしまう点は認識しておきましょう。

また、利益も委託側からの受託量に左右されてしまいます。委託側の商品が人気で一定の需要があれば、製造側の利益も安定します。しかし、OEMの商品の需要が落ちてしまったり、委託側の販売方針が変わってしまったりすると、OEMの製造側企業への影響は軽視できません。1つの委託側企業に依存してしまっている場合だと、経営が大きく傾いてしまうケースも少なくないのです。

さらに、製造企業の技術やノウハウが流出するリスクもあります。OEMとして製造を委託されたタイミングでは、ブランドを持つ委託企業には技術やノウハウは少ないかもしれません。しかし、長年のOEMの継続で委託企業に技術などが流出して蓄積されていく恐れがあります。OEMで製造工程を請け負っていれば、自社の技術を完全にブラックボックスとして保護することは難しいケースもあると認識しておかなければなりません。

委託側のデメリット

委託側企業のOEMのデメリットも確認しておきましょう。まず、商品の製造ノウハウが得られないことが挙げられます。製造工程を委託してしまうため、当然ながら製造に関するスキルや技術は自社に蓄積されません。製造工程で自社の技術力を向上させていきたいと考えている場合は、OEMは計画的に利用する必要があります。

また、当然ながら生産によって利益を得ることはできません。生産を得意としていれば付加価値として収益も発生しますが、OEMの委託では費用が発生します。依頼する製造の工程が複雑であれば、支払うべき対価としての費用もアップします。商品の製造も自社で行える場合であれば、利益にも直結する工程です。出費に見合う製造企業を見極めなければならないと認識しておきましょう。

さらに、製造企業が競合になってしまう可能性もあります。製造企業は、委託側企業の製品の仕様書や構造などを知り尽くしています。模倣や自社製品の開発に転用するといったリスクはどうしても発生してしまいます。委託側企業と製造企業という関係が永劫に続くとは限らないため、製造企業が将来的な競合企業になる可能性も考慮しておく必要があるでしょう。

おもなOEMの事例

私達の身の回りにはOEMの事例が多くあります。代表的なOEMの例を製品別に見ていきましょう。

自動車

まずは、OEMの代表例として自動車が挙げられます。数多くのモデルがOEMで誕生しており、ほとんどの自動車メーカーでOEMが採用されています。

例えば、トヨタ「ライズ」はダイハツ「ロッキー」、マツダ「フレア」はスズキ「ワゴンR」のOEM車です。パワートレインやボディサイズといった基本的なスペックは同様ですが、エンブレムなどのエクステリアデザインやグレード構成、用意される純正アクセサリーが異なります。自動車メーカーとしては自社に足りないセグメントの穴埋めが可能になるため、OEMが広く浸透しています。特に軽自動車では盛んにOEMモデルが販売されており、スズキとダイハツは供給元として有名です。

スマートフォン

続いて、スマートフォンでもOEMが採用されています。アップルの大人気製品であるiPhoneを製造しているのは、台湾に本社を置くフォックスコンという会社です。フォックスコンはスマートフォンだけでなく、主要各社の家庭用ゲーム機生産なども一手に請け負っており、その売上高は10兆円にも及んでいます。なお、電子機器におけるOEMは、EMSとも呼ばれるので覚えておきましょう。

また、OEMが自社製品を他社ブランドで販売するのに対し、自社ブランドの製品の製造を外部委託するビジネスモデルはファブレスと呼ばれます。違いについては以下ブログで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

ファブレスとは?メリットやデメリット、代表的な導入例を紹介

化粧品

化粧品業界でもOEMの活用は盛んです。大手化粧品会社のカネボウやポーラは、関連会社としてOEM企業を構えています。それぞれ、カネボウコスミリオンとエクスプレステージという社名でOEM事業を行っています。自社で蓄積した高い製造技術やノウハウを活かして、OEM事業を行っているのは国内の化粧品ブランドに対してだけではありません。台湾や中国企業などの製造販売元として積極的に事業展開しているのです。

さらに、私たちが身に着けているアパレル製品もOEMが盛んです。OEMの製造企業はブランド企業から指定された素材やデザインで、依頼元名義の商品の生産を行います。具体例として、高品質で低価格な商品が人気のユニクロは、マツオカコーポレーションという企業が製造に携わっています。このように、多くの製品がOEMを活用して誕生しているのです。身の回りで普段から使っている製品も、よく調べてみるとOEMだったというケースもあるかもしれません。

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

今回はOEMをテーマにご紹介しました。OEMは委託する側・される側の両社にメリットがありますが、受託企業は生産コントロールが難しくなる場面もあります。OEMなどにおける生産管理はどのように行うのが良いのか、詳しく解説した資料があるので、ぜひご覧ください。


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