平成29年(2017年)の日本のEC市場規模
こんにちは。
システムインテグレータの佐藤です。
2018年も早くも下半期。
みなさんも年齢を重ねるたびに、1年がどんどん短くなっているように感じているのではないでしょうか。
今回は2018年が終わってしまう前に、というといくらなんでも気が早いかもしれませんが、2017年の我が国におけるEC市場がどうだったのかを忘れずに、簡単にまとめてみたいと思います。
細かい内容は経済産業省が出している報告書の本紙を見ていただくとして、本記事では「そこまで読んでいる時間はないよ」という方向けに、資料から読み取れるものをいくつかピックアップしていきたいと思います。
BtoC EC市場はどのくらい拡大しているのか
経済産業省が毎年出している、「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2017年の我が国のBtoC ECの市場規模は16兆5,054億円で、2016年よりも1兆3,669億円拡大し、EC化率は5.79%と2016年よりも0.36%増えたそうです。
出所:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」調査結果要旨
グラフの通り、伸び続けているのは一目瞭然なのですが、伸び率がどうなっているかを見てみましょう。
市場規模(億円) |
EC化率 |
前年比(市場規模) |
前年比(EC化率) |
|
2010年 |
77,880 |
2.84% |
- |
- |
2011年 |
84,590 |
3.17% |
108.62% |
111.62% |
2012年 |
95,130 |
3.40% |
112.46% |
107.26% |
2013年 |
111,660 |
3.85% |
117.38% |
113.24% |
2014年 |
127,970 |
4.37% |
114.61% |
113.51% |
2015年 |
137,746 |
4.75% |
107.64% |
108.70% |
2016年 |
151,385 |
5.43% |
109.90% |
114.32% |
2017年 |
165,054 |
5.79% |
109.03% |
106.63% |
どうやら伸び率は上がったり下がったりしているようです。
なんとなく伸びも加速していそうな気がしますが、実際には市場規模の伸びが一番大きかったのが2013年で、EC化率の伸びが一番大きかったのが2016年となっています。
2016年と2017年の市場規模の伸び率は近いのですが、2017年のEC化率の伸びは2011年以降最も低く、市場規模とEC化率の伸び率も一緒というわけではありません。
これはなぜかというと、ここでいう市場規模は物販だけでなくサービスやデジタル分野も含まれているのですが、EC化率は物販分野に限って算出しているためです。
例えばサービス系やデジタル分野のECの伸びが大きく市場規模がBtoC EC市場規模が大きく伸びたとしても、物販系がそこまで伸びていないとEC化率は同じようには伸びないというわけです。
BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率
それではここで、2017年の分野別の伸び率を見てみましょう。
出所:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」調査結果要旨
どの分野も伸びていますが、物販系の伸びが一番低い結果となっています。
これが2016年と2017年の市場規模の伸び率は近いのに、EC化率の伸び率が大きく違う理由といえるでしょう。
これは個人的な見解ですが、モノを所有するのではなく、シェアするシェアリングエコノミーがだんだん伸びてきていることもEC化率の伸びを鈍化させている一つの理由だと思っています。
服をECで買うのではなく、レンタルするサービスに切り替える人が増えてくると、その分物販が少なくなるからです。
シェアリングエコノミーというとAirbnbのような空間のシェアやカーシェアリングが多くを締めている印象がありますが、今後モノのシェアが進むとEC化率に与える影響も大きくなってくるのではと考えています。
デジタルとアナログの垣根が曖昧になった結果、これまでECの売上としてつけていた売上が店舗に付くようになったみたいな変化もEC化率の伸びの鈍化に繋がってきている一つの要素かもしれません。
感覚的な話ですが、オムニチャネル化が進んでECの売上を店舗につけるようになったという話を聞いても、逆に店舗の売上をECにつけるようになったという話は聞かないので、オムニチャネル化が進むほど、EC化率の伸び率に大きな影響を与えるのかもしれませんね。
モノやサービスへの支出
もちろんEC化率は、母数となるリアルとECを合わせた物販の市場規模にも左右されます。
1世帯あたりの財(商品)およびサービスへの年間支出金額がどうなっているかを見てみましょう。
出所:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」報告書
こちらの調査によると、2017年の財(商品)への支出は2016年と比べると伸びていることがわかります。
商品への支出が伸びて母数が増えたことが、2016年よりも2017年のEC化率の伸びが小さかった理由の1つと言えます。
一方サービス系分野では、2017年は2016年より減少しています。
先程の分野別のEC伸び率ではもっとも伸びていたのがサービス系分野だったことを考えると、サービス系分野ではEC化率という見方はしていませんが、母数が減った分ECを利用する割合が大きく伸びたという見方ができます。
サービス系分野のECについて
ここでいうサービス系分野とはどの領域のことを指しているかというと以下の通りです。
- 旅行サービス
- 飲食サービス
- チケット販売
- 金融サービス
- 理美容サービス
- その他 (医療、保険、住居関連、教育等)
サービス系のECはインターネット上で決済せずとも予約をインターネットで行った場合もECとしてカウントしています。
分野別の伸び率を見てみましょう。
出所:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」調査結果要旨
特に飲食と理美容が大きく伸びています。
これはネット予約のサービスが普及した結果と言われています。
確かに昔と比べるとネット予約に対応した飲食店が増えていますよね。
ネットで予約できる方がユーザーにとって便利というのもありますが、飲食店側も悪質な無断キャンセルを避けるために、会員登録されていてログインしてから予約するサービスの方がアナログな電話よりリスクが少ないというメリットもあります。
私は大人数で細かい調整が必要なシチュエーションや、当日いきなり思い立つというシチュエーションが多いので、実はネットでの飲食店の予約をすることが少ないのですが、これは完全に余談ですね。
サービスのネット予約は今後もどんどん増えていくはずなので、BtoC EC市場規模を増加させる重要なエンジンといえるでしょう。
デジタル系分野のECについて
最後にデジタル系分野のECについてご紹介したいと思います。
デジタル系分野の領域は以下の通りです。
- 電子出版(電子書籍・電子雑誌)
- 有料音楽配信
- 有料動画配信
- オンラインゲーム
- その他
デジタル系分野はデジタルコンテンツと考えていいでしょう。
分野別の伸び率を見てみましょう。
出所:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」調査結果要旨
電子出版や有料動画配信が大きく伸びていることがわかります。
私もiPadやiPhoneに入れているKindleアプリで買った電子書籍を読みますし、Kindle Unlimitedも使っていますし、Amazon Primeにも入っていますし、Huluにも入っていますし、Netflixにも入っていますし、Apple TVをつなげたテレビでiTunesを開いて映画をレンタルしたりします。
こうやって見ると、数年前では考えられないくらい有料デジタルコンテンツに手軽に触れられる時代になりましたね。
規模だけ見るとEC市場を占める割合は物販分野とサービス系分野と比較しまだ小さいですが、これからも大きな成長が期待できる分野と言えるでしょう。 [RELATED_POSTS]
まとめ
いかがでしたでしょうか。
EC市場は伸びているけど、物販EC以外の方が大きく伸びているというのは大きなポイントですね。
デジタル戦略が進めば進むほど、消費のスタイルが多様になり、デジタルとアナログの垣根が曖昧になってきて、結果として物販ECの伸びが鈍化しているように見えるというのは、EC市場の数字を読み解く上で重要な要素かもしれませんね。
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