【2021年度改訂版】電子帳簿保存法のポイント

 2021.09.15  株式会社システムインテグレータ

国税に関わる帳簿書類の保存方法等を定める「電子帳簿保存法」は施行されて以来改正を続けており、企業の担当者は電子ファイルへの保存方法や条件などを理解するとともに、改正内容を追っていく必要性に迫られています。

そこで、ここでは帳簿の電子化など実務へ活かすことができるよう、電子帳簿保存法のポイントや2021年の新たな改正内容について解説していきます。

電子帳簿保存法とは

Accounting Records - Yellow Ring Binder on Office Desktop with Office Supplies and Modern Laptop. Accounting Records Business Concept on Blurred Background. 3D Render.

まずは、「電子帳簿保存法」の概要を説明しておきます。

電子帳簿保存法の正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」です。国税の納付について適切な履行は確保しつつ、関係書類の保存にかかる負担を軽減する目的で施行されました。具体的には、情報化社会に対応する形で紙の書類を管理する負担を軽減し、電子化での保存も認める、という内容になっています。

今となっては、さまざまな情報が電子化され、データとして保管するのが当たり前になっていますが、施行された1998年以前は、書類は紙として保存するのが当たり前でした。近年はITが進歩し、それを駆使するのが一般的になってきたため、電子データとしての保存を認めるようになったのです。

しかし、当初はデータとしての保存が認められているものが限られており、例えば紙のスキャンデータを保存することは認められていませんでした。

今では関連法令の整備などがなされ、国税関係の書類を複合機等でスキャンし、これをデータとして保存するスキャナ保存も認められています。さらに、その規制も徐々に緩和されつつあり、今後もより企業の負担が軽減される方向へと改正されていくことでしょう。

電子帳簿で保存できる書類とできない書類

現在はあらゆる電子帳簿が許されているわけではなく、帳簿でも電子化できるものと、そうでないものとがあります。保存できるものとしては、大きく分けて「帳簿」「決算関係書類」「証憑類」があります。具体的には、それぞれ以下のような例が挙げられます。

  • 帳簿:売掛帳、経費帳、現金出納帳、買掛帳、仕訳帳、固定資産台帳、総勘定元帳
  • 決算関係書類:損益計算書、貸借対照表
  • 証憑類:レシート、請求書、領収書、見積書、納品書、契約書

そのほかに、手書きの仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿、同じく手書きの補助簿や請求書の写し、取引先から渡された請求書などはデータとしての保存が認められていません。

なお、これらの分類とは別にスキャナ保存が認められるかどうか、という違いもあるので、これらにも注視する必要があるでしょう。

例えば、契約書や領収書、レシート、請求書、見積書、納品書、契約書など、相手方から受領する証憑類はスキャナ保存が認められています。

しかしながら、仕訳表等の帳簿、損益計算書・貸借対照表といった、決算関係の書類はスキャナ保存が認められていません。

2022年に施行される新たな電子帳簿保存法

Caucasian businessman holding newspapers, which are floating away from his hands

これまでも電子帳簿の保存に関しての法令が整備されてきましたが、2022年1月1日には新たに「改正電子帳簿保存法」が適用されます。

現行法と大きく変わるポイントとして、「事前承認制度の撤廃」「タイムスタンプの付与期間の延長」「適正事務処理要件の廃止」などが挙げられます。

それぞれの改正内容について、以下で詳しく解説していきます。

事前承認の撤廃

現行法では、帳簿の電子保存やスキャナ保存をするにあたり、事前に税務署長の承認を受ける必要があります。そのため、事業者は同法に従って運用を始める前に、申請書を作成して税務署へ提出し、承認を受けてようやく電子化をスタートさせられる、という状況にあります。さらに、3ヶ月間の審査期間を要するため、導入がスムーズに進まないという問題を抱えています。

改正後はこの事前承認を得る必要がなくなり、一定要件を満たせば、速やかに運用が開始できるようになります。

これまでの承認制度が事業者の負担になっていることや、電子保存がなかなか普及しないことなどを受けて、2022年1月1日以降、備え付けを始める国税関係帳簿・国税関係書類についてこれらの変更が適用されます。

タイムスタンプの付与期間延長

現行法ではスキャナ保存にあたって、スキャンした際に受領者は自署のうえ、タイムスタンプの付与も3営業日以内に対応しないといけません。

しかし、改正後は受領者の署名が不要となり、タイムスタンプの付与期間は最長約2ヶ月と大幅に伸長されます。したがって、データの訂正や削除の際、システム上で入力期間内に電磁的記録を保存したと確認できれば、タイムスタンプの付与も併せて省略することができます。

前項の導入段階のルールとは異なり、この改正内容は導入後担当者にかかる負担を軽減する効果が見込めるでしょう。

適正事務処理要件の廃止

現行法では、相互けん制や定期的な検査、再発防止策に関わる社内規程整備といった「適正事務処理要件」が定められています。これは、企業が適切に帳簿保存できるよう設けられたルールで、原本との照合などが求められるうえ、事務処理を担当する者が2名以上必要となるため、企業にとって大きな負担となっています。

改正後はこの適正事務処理要件が撤廃されることにより、わざわざ原本を保管したり、事務処理の担当者を複数名配備したりする必要がなくなります。定期検査も不要となるので、企業はより本来業務に注力しやすくなることが見込まれます。

電子帳簿保存法の法改正推移

前項で説明したように、法改正によって企業の負担は軽減されます。これまで何度も行われてきた改正も企業の声が反映された結果です。わかりやすく流れを説明すると以下のようになります。
  • 1998年施行時:電子データとして作成されたもののみ対象
  • 2005年改正時:スキャナ保存が可能
  • 2015年改正時:スキャナ保存の対象が拡大
  • 2016年改正時:スマホ等で撮影した画像も受容可能
  • 2020年改正時:キャッシュレス決済における証憑処理のペーパーレス化

1998年の施行が改善に向けた一番大きな変化ではありますが、具体的な課題が見えていない状態で実用に移ったため、まだまだ課題は山積みでした。

施行後に見えてきたさまざまな問題点や要望に応じて、2005年の改正でスキャナ保存に関する規定が追加され、2015年の改正では請求書や領収書の金額上限の撤廃や、電子署名の省略などが適用されたことで、導入ハードルが大幅に下がりました。

さらに、続く2016年の改正ではスマホやデジタルカメラでの撮影データも活用できるようになり、スキャナ保存の運用が加速しました。

また、キャッシュレス決済が増加したという社会情勢の影響を受け、2020年にはキャッシュレス決済における領収書を不要とするなど、社会の変化に応じて規制が緩和されています。

紙の書類を電子化するメリット・デメリット

Excited businessman throwing papers at the office

書類を電子化して保存することが容易になりつつあり、導入企業も増えてくることが予想されます。これから電子化への取り組みを考えている企業は、電子化することのメリット・デメリットについても知っておくことが大切です。

電子化するメリット

電子化のメリットとしては、主に以下が挙げられます。

  • 従業員の負担軽減
  • 書類の検索性・システム利用による利便性向上による業務の効率化
  • 書類紛失や情報漏洩などのセキュリティのリスク低減
  • ペーパーレス化によるコスト削減

紙の場合、ファイリングをして検索性を維持することになりますが、ファイリングする作業や特定の書類の検索などに、大幅な時間と労力がかかってしまいます。

電子化することですべての情報をシステム上で保管できるようになるので、確認したい情報を即座に閲覧でき、事務的な処理が効率的に進められるようになります。従業員の負担軽減や業務効率のアップが見込めるほか、書類作成や保管にかかるコストも削減できるというペーパーレス化のメリットを得られます。書類管理等に時間・労力・コストがかかっているといった課題を抱えている企業は検討してみてはいかがでしょう。

電子化するデメリット

電子化にはメリットだけではなく、デメリットも存在します。

例えば、これまでデジタル化がまったく進んでいなかった企業の場合、比較的大きな初期費用が発生し、効率的な運用が開始できるようになるまで想定外の時間と労力がかかるかもしれません。

システムの運用にランニングコストがかかることもあるため、導入初期ではコスト高になる可能性があります。

さらには、電子保存に関して社内へ周知させ、適切な運用ができるよう教育も施さなければなりません。導入後しばらくはトラブルが発生するおそれもあるうえに、秘匿性を高く維持しなければならない情報に関しては、特に配慮が必要です。

そこで、全社的に研修等を実施して、最低限必要な知識やスキルを身に付けたり、電子保存に関して知見を有する者を配備したりして、体制を整えることが重要になってきます。

ノウハウが不十分な状態では、データのバックアップや運用ルールの整備などが難しくなります。法改正は企業側にとってプラスに働くことが多いですが、ルールの変更を理解し、その都度対応していかなくてはなりません。

電子帳簿保存が認められるための要件

電子帳簿保存が認められるには、一定の要件を満たす必要があります。電子データとして作成されたものを保存する場合、以下の要件が定められています。

  • 真実性の確保(訂正・削除履歴の確保、相互関連性の確保、関連書類等の備え付けなど)
  • 可視性の確保(検索機能の確保、見読可能性の確保など)

スキャナ保存に関しても、真実性と可視性の確保が求められますが、「重要書類」に区分される場合は、より厳格な要件が定められています。

例えば、見積書や注文書といった「一般書類」の場合は適時入力すればよいとされ、グレースケール画像も認められており、適正事務処理要件なども設けられていません。

しかし、契約書や請求書などの「重要書類」は、受領後速やかに入力しなければならず、解像度の指定や適正事務処理要件、タイムスタンプに関する細かな指定なども規定されています。

そこで企業には、これらの要件を満たし、効果的に電子化ができるシステムの利用が必要になります。帳簿の電子保存、スキャナ保存など、区分ごとの要件をすべて満たすシステムであることが重要です。

まとめ

電子帳簿保存法は特に、経理関係の業務効率・負担に大きく影響する法律です。電子化を進めれば、作業者の負担を減らせるほか、コストカットも見込めます。しかし、何度も法改正が実施されており、度々ルールが変わっているため、企業にとっては法改正に関する情報のキャッチアップが不可欠です。今後も改正は続くと見られるので、最新の法令に準拠したシステムの利用をぜひ検討してみてください。

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