近年は多くの企業でDXの取り組みが進められています。経済産業省が出したDXレポートでは「2025年の崖」問題などもやり玉に挙げられており、多種多様な業界でデジタル化が進められています。
こうした取り組みは、いわゆる「レガシー産業」と呼ばれる業界などで急務とされていますが、その中の一つが土木・建築などの業界です。現状の土木現場ではデジタルデバイスの活用が現場作業員レベルにまで浸透していないことも少なくありません。一方で、業界特性上、労働集約型の勤務形態に陥りやすいため、これから先の人口減少などを視野に入れると効率化は避けて通れない道なのです。
今回は現場業務に必要不可欠な「施工管理」に焦点を当てて、役立つ業務アプリをご紹介します。
施工管理アプリとは
施工管理アプリとは、建築業や土木業の現場で、図面管理・工程管理・品質管理・原価管理・報告といった施工管理業務をデジタルで行う業務効率化ツールです。現場作業にあたる自社や協力会社のスタッフが、スマートフォンやタブレットにインストールして使います。
施工管理とは
施工管理とは、その名の通り工事が円滑に進むように管理する仕事、および役割のことです。
工事を進めるうえでは、現場で手を動かす職人や作業員を確保することはもちろん、それら人員が安全かつ快適に作業できる環境を提供することも重要です。また、書類関係の手続きや各種申請業務、その他の進行管理などを分業して進めることも大切になります。
中には手を動かす作業員と施工管理などを兼務したり、全てを現場作業員に任せていたりするケースもありますが、その場合は概ね業務過多に陥っており、労働環境として健全ではありません。業務が集中してしまうことで生産性が低下し、作業遅延・工期遅れなどを招くリスクもあるのです。
そのため、管理業務を分担し、施工管理を担う専属の担当者を立てたり、施工管理業務を徹底的に効率化したりすることは非常に重要なのです。
施工管理に関する詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
施工管理とは?現場監督・施工監理との違いや主な業務内容を解説
施工管理アプリの主な機能
それでは施行管理アプリには主にどの様な機能があるのでしょうか。概略から見ていきましょう。
報告や指示がアプリでできる
施工写真や図面、工程表や作業報告など、現場業務において管理すべき項目は多数あります。
そして、これらの業務は帰社してから社内のパソコンで行っているという会社も少なくありません。
指示や報告などのコミュニケーションが上手くできず、連絡手段が煩雑になってしまったり、認識のズレが生じてしまったりと、工事を進める上でストレスになっていることは珍しくないのです。しかし、これらを現場にもちこんだスマートフォン・タブレットなどで入力し、現場で完結できるようになれば、施工管理作業を効率化することができます。
導入するサービスにもよりますが、施工管理アプリの中にはチャットや掲示板といったコミュニケーション機能が搭載されていることもあり、それらを用いて関係者への報告を一斉に行うことが可能です。また、共有すべき情報を同じアプリ上にアップロードしておけば、アプリを見さえすれば連絡や報告の用がすべて足りるようになります。このように、チャネルを一元化できることでコミュニケーションがスムーズになるほか、属人化などのリスクも低減できるのです。
報告用の写真撮影・管理が手軽
施工管理では報告・記録などのため、写真を多数撮影します。通常、撮影した大量の写真は、事務所へ持ち帰ってから確認・整理し、報告書の作成に使います。しかし、写真を整理する機能がある施工管理アプリであれば、現場で撮影した写真を直ぐにクラウドストレージに整理して保存できるので、事務所へ戻る必要はありません。報告書作成機能のあるアプリであれば、撮影をした現場で写真を報告書のテンプレート内に張り付けていけば、報告書の作成が楽になります。
写真の撮り直しが必要でも気が付いた時点で撮り直しが可能なため、後日わざわざ撮影箇所を探し回る必要もありません。また、アプリ上で撮影した写真を簡単に共有することもできます。
施工管理アプリを活用するメリット
次に施工管理アプリを活用するメリットを解説します。
業務効率の向上
施工管理では、日中は現場で作業の監督に当たりつつ、現場作業の後も、報告書の作成や撮影した写真の確認・整理などといった事務所での作業が延々と続きがちです。しかし、写真の確認・整理や報告書の作成をアプリ上で行えることで、現場と事務所の行き来にかかっていた時間を削減できます。
また、施工管理には図面や報告書など多数の紙媒体がつきものですが、施工管理アプリを導入してデバイスで管理すれば、いちいち事務所で印刷をしたり紛失や雨風による破損を気にしたりといった必要がなくなります。
現場で片手にはカメラを持ち、片手には図面を広げ、電話で会話しながら仕事を進めるといったようなことも無くなるでしょう。施工管理アプリがあれば、細々とした部分までかなりの業務を効率化することができます。
情報共有がスムーズに
施工管理アプリがあれば図面や報告書などをいつ・どこにいても容易に閲覧でき、現場でも事務所でも場所を問わずに情報共有が行えます。撮影した写真がクラウドストレージに保存されるタイプのアプリならば、いつでも見たい写真を取り出して共有することができます。
紙媒体での施工管理では、しばしば各現場の管理が管理者に属人化しがちでしたが、施工管理アプリを導入し、情報が共有できるようになると関係者全員に最新の工程を共有することができます。工程が可視化されることによって無駄な作業や無理な工程に気づきやすくなり、結果として作業の効率化が期待できます。
施工品質の向上や遅延防止
施工管理アプリとしてクラウド型のアプリを導入すれば、管理者が入力した内容や指示をリアルタイムで共有できます。「現場の状況が分からない」「指示が行き届かない」などの問題が無くなり、施工品質が高められるでしょう。
特に現場作業は天候によって左右され、遅延してしまいがちという特徴があります。指示が行き届いて作業に手戻りがなく順調に進められるだけでも、工事の遅延防止として有用でしょう。施工管理アプリそのものは施工品質に直結しませんが、情報共有の迅速性や管理者・現場との認識ズレの低減といった効果を通して、間接的に施工品質の向上が期待できます。
データの管理が容易に
施工管理アプリの導入により、アプリ上でデータ管理を一元化することができます。
具体的な例としては、現場で撮影した写真の確認・整理を現場にいながらできること、報告書をアプリ上で作成できる、他メンバーと容易にデータを共有できるといったことが挙げられます。管理できるデータの種類(写真・図面・工程表・出退勤・報告書など)はアプリによって異なりますが、現場で管理ができれば現場と事務所の行き来を削減できるため、所定外労働時間がかさみがちという業種特有の問題の解決の助けになるかもしれません。
施工管理アプリを活用する際の注意点
施工管理アプリには大きなメリットがありますが、最大限メリットを享受するためには効果的に活用しなければいけません。では、アプリの活用にあたってどの様な点に注意するべきなのでしょうか。
既存システムとの連携ができるか
施工管理で扱うデータは多岐に渡りますが、個々の施工管理アプリによって扱えるデータの種類は異なります。単に現場管理の機能のみのアプリで、原価管理・支払管理・会計管理などの既存システムとのデータのやり取りができない場合、必要な作業ができない場合があるため注意が必要です。アプリを導入しても効率化につながっていると感じられない場合、そうした既存システムとの連携の失敗が要因になっている場合もあります。
一つのアプリで必要な機能が賄えるか
使っているアプリで機能が不足しているからといって、複数のアプリを無秩序に追加して利用すると、データの一元管理ができない場合があります。提供会社が同じであればアプリ間で一元管理ができる可能性はありますが、提供会社が異なっていると難しいでしょう。
またアプリを導入するにあたって、コストをかけることが難しい場合に、無料版を導入するという場合もあるでしょう。しかし、無料版は機能が限定されていることも多く、業務効率化のためには複数のアプリが必要となるケースもあり得ます。コスト面だけを重視して複数のアプリを利用する状態に陥ってしまうと、逆に管理工数や手間が増えて、アプリ利用のメリットを享受できなくなる場合もあるため注意が必要です。
工事に関わる人数が多い場合や、工期が長くアプリの簡易的な機能では不足している場合には、コストがかかったとしても、工事の契約から売上金の回収までの各種データを一元管理できる施工管理システムを導入した方が良いでしょう。現場ではそのアプリ版でデータの閲覧や入力を行い、システム上では受発注や見積などの管理業務を行うという風に使い分けるのです。
施工管理アプリを選ぶポイント
施工管理アプリを選定する上で注目すべきポイントがどこにあるのか具体的に見てみましょう。
情報共有の相手は誰か
施工管理アプリを選ぶポイントとして、情報共有の範囲があります。施主との打ち合わせや、協力業者、職人など社外との情報共有ツールとして利用したい場合、使う人を選ばない操作性にすぐれたアプリが良いでしょう。また、施主の個人情報も扱うことになるので、ユーザーごとの権限設定や2段階認証などのセキュリティ機能の充実したものがおすすめです。
情報共有の範囲が社内のみで閉じているのであれば、電子黒板対応だったり、自動の写真管理機能・報告書作成機能があったりと社内業務の効率化につながる機能が充実しているものを選んでみましょう。
使いやすさ
現場への導入に当たっては、物心ついた時にはスマホに触っていたような若年層から、その道何十年のベテラン職人で現在もフィーチャーホンを手放せないというような人まで、携わる人々の年齢層が幅広いのが特徴のひとつです。アプリを導入しても使われず、結局紙媒体に頼って誰かがアプリに転記しているようでは導入した意味がないでしょう。試用版が提供されているアプリもあるので、実際に使う現場のユーザーに使い勝手を確かめてもらってから導入を決めるのも一つの方法です。
また、運用・操作・導入事例の説明会を提供元が開いていたり、平日だけでなく土休日も24時間チャットでのサポートをしていたりするアプリなどもあるので、サポート体制も確認しておきましょう。現場によっては土休日でも作業が続くところもあることを考えると、土休日のサポートがあるかどうかは気になるところです。
必要な機能
施工管理アプリの選定にあたってはどのような機能がそもそも必要であるのか、目的を明確にしましょう。効率化といっても内容は様々です。写真の管理を効率化したいのであれば、現場ごと日付ごとに自動的に整理してくれる機能のあるものが良いでしょう。事務所に帰ってからのデスクワークを減らしたいのであれば、アプリ上で必要な資料の作成を支援してくれる機能があるものを選んでみてください。
帳簿ごとの申請・確認・承認のワークフローに対応するアプリであれば、事務所にわざわざ戻る手間を省くことができて効率化が進められます。
使用する人数
アプリの利用料金の体系は、利用ユーザー数に比例するケースも珍しくありません。少人数なら無料で、一定人数を超えると料金が発生するものや、ユーザー数ではなく現場の数や規模による料金体系もあります。そのため、機能面だけでなく現場規模やユーザー数もアプリの選び方の上で重要なポイントです。
必ずしも人数と直結するものではありませんが、アプリによってユーザーとして想定する企業規模が異なります。大企業向けの大がかりな現場での複雑な管理を前提とした施工管理アプリもあれば、中小企業向けの比較的シンプルな施工管理アプリもあります。自社にとって必要で使いこなせる範囲の機能なのかも注意すべきポイントでしょう。
料金
アプリの料金体系として多いのが、利用人数に応じて変動するID課金型です。利用人数が多くなりそうな場合は、予算内に収まるか検討が必要です。人数の大きな変動が見込まれるようであれば、ゲストユーザーを無料で招待できるようなサービスも検討対象になるでしょう。
ユーザー数に左右されない定額タイプや、月額使用料は無料で、クラウド上のデータ保存容量に課金するタイプのアプリもあります。予算や自社での使い方、アプリを導入して何をしたいのかといった点を踏まえて使いやすい料金体系のものを選んでみてください。
ちなみに、アプリの利用にかかるコストとして「アプリ導入時にかかる初期費用」「継続的にかかるランニングコスト」「基本機能に追加して使うオプション費用」などが一般的です。ただ、これらの課金ポイントはID数に対して従量課金制の場合もあれば、基本機能・基本的なID数は定額制や無料で、データ保存容量の拡張やID数の追加に対してオプション費用が課金される場合もあります。
基本的に一度限り払いきりの初期費用はともかく、ランニングコストやオプション費用のような継続的にかかる費用については、どのようなときに費用が発生するのかよく確認する必要があるでしょう。
なお、ランニングコストは月額制であることが多いですが、年単位のまとめ払いをすることで割引される場合もあります。工期がある程度長くまとまった期間アプリを使い続けるのであればまとめ払いでコストを圧縮することも検討しましょう。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
施工管理アプリを活用することで、業務効率の向上や情報共有の円滑化といったメリットがあります。例えば、情報共有の円滑化が進み業務効率が上がるほか、間接的ながら施工品質の向上にもつながる効果なども期待できるでしょう。
そして今回ご紹介したように、アプリやシステム導入を検討する際は、現在どこに課題があるのか、どういった点に問題を感じているのかなどを鑑みて、自社に適したものを選ぶことが重要です。
下記ページでは、工事業が抱える業務課題や、システム導入の実態について解説した資料を用意しています。お悩みの方は、ぜひご参考にしてください。
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