設備工事とは?目的や主な種類、業界の課題点まとめ

 2022.07.29  株式会社システムインテグレータ

「工事」とひとくちにいっても、建設業は実に29業種に細分化されており、さまざまな工程を行うにはそれぞれ国土交通省の認可が必要です。そのなかで、「設備工事」は電気・ガス・上下水道・空調など、建物内のインフラ整備を行う工事のことを指します。この記事では、設備工事にかかわる具体的な種類の特徴や解説および今後の課題について詳しく解説します。

設備工事の特徴

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「建物の工事」を想像すると、どうしても外観や内装のインテリアという表に見える部分を意識してしまいます。しかし、その空間を人間が快適に利用できるようにするためには、さまざまな設備の導入が必要不可欠です。

設備工事は、日常的にその全貌を目にすることはありませんが、日常生活を送るうえで非常に重要な工程と言えます。例えば、水道や電気といった設備は、蛇口や電気のスイッチは普段から何気なく使っていますが、その裏側がどのような構造になっているのか詳しく知っている方は多くないのではないでしょうか。設備工事の各工程は、地下や裏側のインフラ整備から照明やスイッチなどの内装にかかわる部分まで、実にさまざまな箇所に関わってきます。そのため、建設業のなかでも設備工事はもっとも現場にかかわる期間が長い業種と言えます。

また、建設工事のバックグラウンドを担う業種であるからこそ、他の工事内容との兼ね合いも非常に重要です。設備工事でのミスが発覚すると、内装工事をはじめとした他の工事内容に対してスケジュールの変更などが余儀なくされてしまうこともあるため、計画された工程を期日内にしっかりと対応することが重要とされています。

設備工事の目的

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設備工事の事業内容は、人間の生活水準を高めるための役割を担っています。外壁や内装の工事が終わったとしても、そのまま生活することは難しいでしょう。蛇口をひねれば水が出てきたり、スイッチを押したら照明がついたり、常に一定の温度が保たれたエアコンのある環境があったりなど、こうした「当たり前のようにできること」はすべて設備工事がなされた上で成り立っています。

また、「一度設備工事を行ったらそれで終わり」というわけではなく、さまざまな設備は経年によって劣化することが避けられません。また、問題なく使用していたはずなのにいきなり故障してしまった、ということも考えられます。このようなトラブルを防止するために、既にある設備に対して点検やメンテナンスをする、いわゆる「設備保全」も非常に重要な業務のうちの一つです。

設備工事のおもな種類

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では、設備工事とは具体的にどのような種類があるのでしょうか。種類ごとに見ていきましょう。

電気設備工事

電気設備工事は、電力会社から送られてきた電気を引き込み、安定的な供給が行えるような設備を導入するための仕事です。使用量メーターや分電盤、各部屋へのコンセントの配置のほか、電力供給の申請を行い安全に通電できるように整えます。これらの工程では、「電気工事士」という国家資格を保有している人にしか工事を行うことができません。

照明設備、コンセント配置

建物の電灯や照明、コンセントの設置を行う工事です。近年では、白熱灯などの古い電球をLED電球に丸ごと交換する工事も盛んに行われています。

受変電設備工事

電力会社から送られてくる電気は非常に高圧のため、家庭用もしくは業務用に差し障りのない程度に変圧する必要があります。家庭用と業務用で必要となる電圧は異なるため、それぞれの用途に合った変圧器の配置が必要です。

オール電化

電熱式床暖房や電子給湯器、IHヒーターなどを利用し、電気以外のエネルギーを使用している部分をすべて電気の力でまかなえるようなシステムを備えた建物のことを指します。一般的な住宅や施設よりもより多くの電気供給が必要なことから、オール電化に対応した分電盤などを別途配置する必要があります。

電気通信工事

「電気通信工事」は電気設備工事に分類されることもありますが、その名の通りインターネット回線や電話回線などの通信にかかわる設備を導入する際に必要とされる業種です。前述した電気工事とは扱う電力の差のほか、「情報伝達のために電力を要する設備」に対して行われるものという違いがあります。具体的には、電話・テレビ・インターネット・放送設備などがこれに該当します。

LANケーブル

LANはローカルエリアネットワークの略で、一つの建物内やフロア内など、ある程度限定された区域内で構成されるネットワークです。「家庭内LAN」や「社内LAN」として利用されることもあり、このLANを構築するために通信ケーブルの配線工事を行ったり、ネットワーク機器の設置を行ったりします。LANには有線と無線とがあり、双方では設備の設置方法が異なります。

携帯電話基地局

携帯電話やスマートフォンを利用する際には、効率よくそれぞれのデバイスに電波を届けられるように基地局を設置することが求められます。アンテナや無線機をはじめとして、ケーブルやコネクター、配管などを適切に配線し、基地局の開設のほか電波が届かないエリアでの通信試験やテスト業務を行います。

放送設備

公共施設でのアナウンス設備や音響システムなどの構築のほか、消防法を基準とした防災放送の設備に携わる業務です。学校などの教育機関や商業施設、工場、コンサートホール、スポーツ施設など必要とされる施設は多岐にわたります。

防災設備

防災にかかわる設備は、「消防法」と「建築基準法」という2つの法律によって定められています。これら2つの法律の条件に則って、施設や住宅を災害から守るためのさまざまな設備導入が求められるのです。例を挙げると、スプリンクラーや消火器などの消火設備、火災報知器やガス漏れ警報器などの警報設備、避難はしごや非常用照明などの避難設備などが挙げられます。

管工事

管工事とは、空調や上下水道、ガスなどの配管を使用した設備を設置するための工事を指します。

水道施設工事と混同されることがありますが、水道施設工事は公共施設への上下水道の配置を行うものであるのに対し、管工事は水道工事に関わらずさまざまな配管を用い、主に一般住宅や施設に対して行われるものという違いがあります。

ガス配管

コンロや給湯器など、ガスを利用した設備を安全に供給できるようにするために行われる工事です。ガスの供給方法は都市ガスとプロパンガスの2種類があるため、その家屋に併せた配置を行わなければいけません。

水道配管

キッチン、トイレ、お風呂などの水回りの設置には欠かせない水道管を配置するための工事です。給水管の引き込み、屋内配管工事、下水道排水整備の3つのセクションに大別できます。不備があると漏水などの危険性が高くなるため、メンテナンスも慎重に行うことが重要です。

ダクト

ダクトは一般家庭ではなかなか見かけませんが、飲食店や商業施設などに多く設置されている空気の循環を良くさせる通り道のことを指します。室内から室外に空気を通過させる配管を通し、嫌な臭いのする空気のこもりや一酸化炭素中毒などを防ぎます。

機械器具設置工事

機械器具設置工事は、建設業許可では「機械器具の組立等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事」とされています。「現場で組み立てが必要な工事」というところがポイントで、すでに完成している機械や器具を設置する場合はこれに含まれません。比較的大がかりになることが多く、エレベーターやサイロ、立体駐車場、舞台装置、プラントなどの設置を行う場合に該当します。

その他の設備工事

空気調和設備工事

建物内の温度や湿度、空気の対流を適切に行うために必要なエアコン、空気清浄システムなどを設置するための工事です。空調機器はもちろんのこと、換気設備やダクト、排煙設備などもこれに含まれます。

テレビ共聴放送設備工事

地上波や衛星放送を受信するためのアンテナを家屋の屋上などに設置する工事です。

集合住宅の場合は共同アンテナで受信したものを、各部屋に分配するための増幅器や分配器なども同時に設置する必要があります。

さく井工事

「さく井(せい)」とは井戸を掘ることを表しており、さく井機器などを用いて水源の確保や地熱発電や調査を行うための機器を設置する工事のことを指します。近年は災害でライフラインが停止することが想定されるとして、その対策としてさく井工事による地下水開発が注目を集めています。

地中深く地面を掘削する必要があるなど、非常に大がかりな工事になることが特徴です。

築炉工事

金属などを加熱・溶解・焼却させる場を「炉」と呼びます。溶鉱炉や焼却炉、窯業炉など用途によってさまざまな炉がありますが、これを建設する工事が築炉工事です。炉内は非常に高温になるため、耐熱に特化した素材や施工が行われます。

設備工事の課題

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これまでご紹介したように、設備工事事業は日常生活を送るうえでなくてはならないものですが、業界全体の課題はどのようなことが挙げられるのでしょうか。

コスト面

日本全体としての建設投資額は1992年の84兆円がピークとなっており、以降は減少傾向が続きました。また、2008年に発生したリーマンショックの影響により、コストを抑える方向で競争が激化し、建設業界に大きな影響を及ぼしました。海外をはじめとした受注数の減少や単価の切り下げなどによって、工事費のコスト削減に踏み切る業者が増加しています。

さらに、新設の案件だけでなく、今後は将来的なメンテナンスや整備・維持によるコストが増加する点においても注視しなければいけません。例えば国土交通省のデータによると、2013年度の維持管理費が約3.6兆円であったのに対し、それから20年後の2033年度にはおよそ約4.6~5.5兆円まで膨れ上がることが予想されています。こうした経年劣化による施設の整備や維持といった工程に関しても、安全な地域インフラを構築するために非常に重要です。

人材面

建設業全体で就業者数の減少という課題もみられます。就業者数は1997年の685万人をピークに、2016年にはおよそ3割減少した492万人という結果となっています。これには就業者の高齢化の進行が原因として挙げられ、55歳以上の従事者がおよそ3割であるのに対し、20代の従事者はわずか1割程度と、若手の人材が大幅に不足していることがわかります。

この結果は日本の業界全体の平均と比較しても顕著であり、今後は中長期的に若年層の育成を図ることが急務となっています。

加えて、建設業は他の職種と比較しても労働時間の長さが課題とされており、人材確保を促進させるためにも抜本的な働き方改革が求められています。実際に、全業種の月間平均労働時間の平均が1,741時間程度というデータでは、建設業のみに絞った場合それをはるかに超える2,078時間という結果でした。これには労働時間の増加により休暇の取得が難しいといった問題があり、4週間のうち休みの日が4日以下というスケジュールの建設業従事者が6割を超えているというデータもあります。

このような問題から、「週休2日モデル工事」という適切に休日休暇を取得できる取り組みを進めるなど、人材確保とともに働き方の是正が重要という側面もみられます。 

教育面

肥大する就業時間を短縮させるには、単に働き方改革によって労務環境を整えるだけではなく、さまざまな工程の生産性を向上させる必要があります。国土交通省は、建設業における長時間労働の是正措置として、生産プロセスにICTを導入し2025年度までに生産性を2割向上させる「i-Construction」という取り組みを実施しました。

例えば測量にドローンを導入し3Dでのデータ採取を実施したり、これまで人の手で行われており紙媒体で保存していた土地の計測データをデジタル化したりするなど、限られた日数の中で高い生産性を維持し工事日数削減を目指すというものです。

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まとめ

今回ご紹介した通り、設備工事の種類は多岐にわたっており、工事業務の中でも長期間携わることとなります。建設において必要不可欠な工程ですが、近年ではコスト面・人材面・教育面を中心に課題を抱えている領域でもあります。対策として、デジタル技術の活用やシステム導入などで抜本的な改革が必要とされています。

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