配賦とは?目的やメリット、配賦基準の決定方法について解説

 2021.12.10  株式会社システムインテグレータ

企業の健全な経営と持続的な成長にとって、原価計算は必要不可欠な作業です。
どのような業界にとっても大切なことですが、特に様々な部品などを扱い、商品を製造する製造業においては、より正確な原価計算が求められます。原価計算ができていなければ、実際の商品がどの程度の利益を出していて、どれだけの出費が発生しているかを図ることはできません。正確な原価計算ができていればいるほど「本当の利益」が可視化され、適切な判断がくだせるようになります。

今回ご紹介する「配賦(はいふ)」は、原価計算をうまく進めるにあたって、非常に重要な役割を持っている考え方です。適切に配賦を行うことができれば、原価計算がより正確に行えるようになります。この記事では、配賦を実施する目的やメリット・デメリット、配賦基準の決定方法などについてご紹介します。 

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配賦とは

配賦とは?目的やメリット、配賦基準の決定方法について解説

配賦とは、複数の製品や部署にまたがってかかる費用を、企業で決定した基準で振り分けることであり、これは原価計算をするうえで重要な考え方のひとつです。各部署や製品に経費を割り当てて配ることから「配賦」と呼ばれます。後ほど配賦基準の設定方法についてご紹介しますが、これは配賦を実施する際に必ず決めなければならない重要なポイントです。。自社にとって最適な基準が設定できないため配賦を行っていない企業もありますが、配賦をすることによって、より正確な原価計算ができるようになります。

まずは配賦と按分との違いや配賦を導入するべきケースについてご紹介します。 

配賦と按分との違い

配賦と意味を取り違えやすい言葉に、「按分(あんぶん)」があります。配賦と按分は、どちらも割り振りを行う行為ではありますが、配賦は「配る」こと、按分は「分ける」ことという違う意味合いを持っています。按分は「案分」と記されることもありますが、意味は同じです。

いまいちイメージがつかないという方は、原価計算で考えると分かりやすいでしょう。原価計算における按分は「基準に応じて分けること」であるのに対し、配賦は「基準に応じて按分されたものを配ること」です。作業時間基準で配賦する場合は、費用を作業時間で按分した後に、按分したものを各部署の原価として配賦するという流れになります。

また、特に「配賦」は主に費用やコストの分配に関して使用される言葉で、按分はそれ以外の場合にも多く使われる言葉になりますが、配賦と按分は似た領域で使われる言葉になります。

なお多くの場合、配賦は以下のようなステップを経て実施されます。 

  1. 配賦基準の決定
  2. 配賦率の算出
  3. 配賦額の決定 

ステップ自体はシンプルですが、配賦基準や配賦率を見誤るといずれかの部門などにしわ寄せが行き、不満の種になってしまうこともあります。あくまで配賦を行うのは経費負担などを平等にすることです。配賦を実施する際には、各部門の担当者も交えて配賦シミュレーションを策定するのが良いでしょう。 

配賦を導入すべきケースとは?

配賦を実施するべき企業の業種や規模は、明確には決まっていません。しかし、部門やセクションが多い場合や、社内のグループ分けが細かく、それぞれが経費処理を行っている場合は配賦の必要性が高いといえます。そのほか、事業継続に欠かせないものの直接利益を生まない部門は、採算が取れない部門であると見なされてしまうことがあります。このような場合でも、配賦を導入することで経費処理が適切に行えるようになります。

大企業はもちろん、中小企業であっても、上記のケースに該当する場合は、配賦の導入を検討してもいいでしょう。 

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配賦の目的

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配賦の目的は大きく2つに分けられます。1つは「部署間の費用負担を平等にする」こと。もう1つは「各部署に会社全体の利益や、かかっている費用の意識を持たせる」ことです。

1つ目の目的は、費用を平等に分担することにあります。例えば、同じフロアの第1営業部と第2営業部で同じプリンタを利用しているとして、プリンタの購入費用を第1営業部がすべてまかなうとなると、不平等な状態になってしまいます。

そのような事態を防ぐために、事前に配賦を決めて経費での平等性を確保することが重要になります。配賦の決め方は状況ごとに異なります。先ほどのプリンタの例であれば、それぞれの営業部の人数の比率に応じて配賦したり、平等に配賦したりといった方法があります。いずれにしても費用を平等に分担することが目的なので、そのための配賦基準を決めるといいでしょう。

また、配賦の2つ目の目的として、各部門や各部署の責任者に企業全体の利益を意識させることがあります。配賦の対象となる費用は直接的に利益を出すことはないものですが、企業の経営上必要不可欠な費用となります。配賦前は黒字だった店舗が、本社経費や共通経費を配賦されたことで赤字に転じることも珍しいことではありません。

配賦をうまく活用すれば、企業の経営維持のために必要なハードルを各部門に示し、より高い視点で利益を追求しようという精神を育てることができるでしょう。 

配賦のメリット・デメリット

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配賦を実施するメリット、およびデメリットにはどのようなことがあるのか、こちらでご紹介します。 

メリット

適切な基準で配賦を行うことによって、原価計算の精度が上がります。原価計算の精度が上がれば、各部門・各部署で発生するコストを正確に把握できるようになるため、より効率的なコスト管理やコスト削減ができるようになります。さらに、社員のコスト意識向上も望めます。

また、共通経費である間接費の振り分けによって、各部門・各部署の責任者には率いているところの利益だけでなく、会社全体の利益を考える必要性が生まれます。「分配される経費を含めた利益」を前提としながら黒字を目指していくことによって、責任者の意識改革が期待できるでしょう。

さらに、基準を決めることによって費用分配がしやすくなることもメリットです。配賦によって明確な基準を決めることによって、経費分配が円滑にできるようになり、数字も明確になるため利益の計算がしやすくなります。 

デメリット

配賦の適切な基準設定は、配賦のカギとなるポイントです。しかし、ここが一番の難所でもあります。配賦によって赤字部門を黒字化できることもあれば、逆のパターンも起こり得ます。すべての人を納得させることのできる平等な基準を設定することは非常に困難でしょう。

例えば「人員数」を基準とした場合、経費負担を減らすために実際の業務状況を考慮しない人員削減を行うといった不当なしわ寄せが発生し、不平等感が生まれてしまうことも考えられます。また「売上高」を基準とした場合、売上が上がるほど経費も増してしまうため、社員のモチベーションを低下させる原因にもなります。 

種類の「配賦基準」

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配賦を行う際の配賦基準には、以下でご紹介する2種類の基準があります。自社にとって最適な配賦基準を選ぶようにしましょう。 

部門別配賦

部門別配賦とは、自社の部門を直接部門と間接部門とに分けて、間接部門で発生した費用を配賦率に従って直接部門に配賦する方法のことをいいます。日本における企業の組織は、現業部門とバックオフィス部門に分かれるケースが多く見られます。人事部や経理部などのバックオフィスで発生した費用を、販売部や製造部などの現業部門に配賦することが部門別配賦です。

部門別配賦は、「直接配賦法」「階梯(かいてい)式配賦法」「相互配賦法」の3種類にさらに分けられます。では、それぞれの配賦方法についてご紹介します。 

直接配賦法

間接部門間では配賦を行わず、間接部門の間接費を直接部門に一度で配賦する方法で、最もシンプルな配賦方法です。補助部門同士でのやり取りを計算上すべて無視して、補助部門費を製造部門だけに配賦する方法で、計算も最もシンプルです。

一方、補助部門同士のやり取りをすべて無視するため、製造の実態を把握できないという欠点があります。 

階梯式配賦法

経費の優先順位が分かりやすい場合に望ましい配賦基準で、間接部門に優先順位をつけて、優先度の高い部門から低い部門へと配賦を行う方法です。直接配賦法に比べると計算は複雑になります。階梯式配賦法での補助部門の順位付けは、他の補助部門に対して用役の提供数の多い補助部門を優先します。用役提供数が同じ場合は以下2つの方法のうちどちらかで順位を決定します。

  1. 部門個別費と部門共通費の合計額が多い補助部門を優先する
  2. 用役提供額の多い補助部門を優先する 

相互配賦法(簡便法)

製造部門がはっきりと分かれている会社におすすめの配賦基準で、間接部門の費用を配賦した後に、製造を担当した部署にのみ二次配賦する方法です。相互配賦法では補助部門同士のやりとりを考慮するため、補助部門費を製造部門のみならず他の補助部門にも配賦する必要があります。 

製品別配賦

製品別配賦とは、製品の製造過程で生じる費用を直接費・間接費に分け、配賦率に従って間接費をそれぞれの製品に按分する手法のことをいいます。製品製造にあたっては通常、製造ラインの共通利用や検査の共通化が行われており、このようなコストを各製品に配賦するのが製品別配賦です。 

配賦基準を設定する際のポイントは?

配賦の実施において大切なポイントは、どこかの部門や部署の利益を最優先にせず、あくまですべての人が納得できるよう平等に配賦することです。すべての人が納得できる基準を設定するためには、配賦のシミュレーションが重要になります。配賦方法、または配賦基準をいくつか設定し、これによって得られた結果を各部門・各部署の責任者に示して、どの配賦基準が最も納得できるかの確認を行ったうえで、導入を進めることが望ましでしょう。

しかし、平等を目指すあまり、基準の設定を細かくしすぎないようにするなど注意が必要です。設定を細かくしすぎると計算が複雑になり、かえって効率が悪くなってしまう可能性もあります。事前にしっかりとしたシミュレーションを行い、自社に合った平等な基準の決定が難しいという結論に至った場合や、配賦を実行すると業務効率や社員のモチベーションが下がるといったデメリットが大きいと判断できる場合は、「配賦を行わない」という決断を下すのも選択肢の一つでしょう。 

配賦計算はERPで効率化

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配賦は、間接費を適切に割り当てて原価を算出するために必要となる作業です。手計算での配賦も不可能ではありませんが、必要なデータを集計したり、配賦額を算出したりといった作業をすべて手計算で行うことは非常に困難です。しかし、会社を経営するうえでは、正確かつ適時に原価を把握する必要があり、配賦も迅速に行われる必要があります。

そのため、効率的かつ精度の高い配賦を行うためには、間接費や稼働時間などの集計や、配賦基準の設定を迅速に行えるような仕組みを構築することが重要なポイントです。具体的におすすめできる方法として、各部門のデータを統合できる「ERP(統合基幹業務システム)」を導入することが挙げられます。ERPを活用することで、部門ごとに散らばっている情報を集約し、常に最新の情報を把握できるようになるため、迅速かつ高精度の原価計算を実現できるのです。

特にWeb制作会社などのIT企業では、原価のほとんどを労務費が占めています。労務費を正確に把握するためには、部門ごと、プロジェクトごとの工数管理が重要です。しかし、プロジェクト数が増えることによって管理に手間がかかるため、それらをExcelで管理する、手計算をする、といった方法は現実的とは言えません。原価の見えにくいIT企業には、集計を自動化できるERPが特に有用になるのです。ERPに関する詳しい内容は、以下の記事でもご紹介しています。併せてご覧ください。 

ERPと管理会計
https://products.sint.co.jp/grandit/blog/erp-ca

 会計ソフトとERPの違いは?ERPに移行するメリットとは
https://products.sint.co.jp/grandit/blog/erp-accounting 

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まとめ

配賦の実施は正確な原価計算のみならず、社員に対する会社全体の費用の意識づけができるといったメリットがあります。とはいえ、手作業で配賦計算を行うのは非常に時間がかかるうえに、タイムリーな原価計算ができない可能性もあるため、システムを使わない方法はおすすめできません。

各部門のデータを統合管理できるERPなどを導入すれば、スムーズにデータのやり取りが可能になります。原価計算を正確に実施したい方、原価計算を自動化したい方は、ぜひERPを活用して効率的な仕組みを構築してみましょう。

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