マイグレーションの意味とは?比較される言葉や種類、実施方法も解説

 2023.02.10  株式会社システムインテグレータ

マイグレーションとは、既存のシステムを新環境に「移行」することです。IT活用の重要性が増している現在、このマイグレーションという言葉に触れる機会は多くなっていることでしょう。そこで本記事では、マイグレーションの意味や、モダナイゼーションやリプレースといった類似概念との違いなどを解説していきます。

マイグレーションとは?

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マイグレーションの意味

そもそも英語のマイグレーション(Migration)とは、移住や移転を意味する言葉です。ここから転じてIT業界においては、システムやデータなどをいままでとは別の環境に移行することを意味します。あるいはOSをアップグレードしたり、ストレージやアプリケーションを既存のものから新しいものに置き換えたりすることもその一種です。

言葉の使い方としては、「〇〇をマイグレーションする」などのほか、移行する対象や移行先の名称などを頭につけて、「〇〇マイグレーション」と言うこともあります。たとえば、あるデータを別のデータベースに移転することを「データマイグレーション」、オンプレミスからクラウドへ移行することを「クラウドマイグレーション」といった具合です。

レガシーマイグレーションの意味

日本の企業において近年喫緊の課題となっているのが「レガシーマイグレーション」です。これは簡単に言うと、老朽化して問題が多くなったシステム(レガシーシステム)を新システムへと移行することです。

2018年に経済産業省が公開した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」においては、レガシーシステムがもたらす深刻な影響が指摘されています。この資料によれば、2025年時点で日本企業における基幹システムの約6割が稼働21年を超え、技術的負債として最大で年間12兆円の損失が生じるとされています。

(参照元:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf)

そこで重要となってくるのが、クラウドシステムへの移行などを含めたレガシーマイグレーションです。これを実現するには当然コストも時間も必要となりますが、ICT活用が企業の成功を大きく左右する現代において、新しい技術に対応するためにもレガシーシステムの刷新は必要不可欠です。

マイグレーションと比較される言葉

IT用語の中には、「モダナイゼーション」「コンバージョン」「リプレース」など、マイグレーションと似通った言葉がいくつかあります。それぞれの言葉には、どのような違いがあるのでしょうか。

既存システムを利用しながら新しいシステムを作るモダナイゼーション

モダナイゼーションは「近代化」という意味です。とりわけITシステムの刷新を意味する場合は、「ITモダナイゼーション」という言葉が使われます。

モダナイゼーションとマイグレーションの違いをわかりやすく言うと、システムに抜本的な変更を加えるかどうかです。マイグレーションの場合、システムの構造や機能要件などには変更を加えず、新しい環境に既存のシステムを再現する形になります。例えばオンプレミスのシステムを、そのままクラウド環境に移行すること(リフト&シフト)などがその典型例です。

他方で、モダナイゼーションの場合は、システムそのものの根本的な変化を伴います。たとえば、オンプレミスのシステムからクラウドネイティブなシステムに最適化・刷新することなどが挙げられます。

手を加えずに新しくコンパイルし直すコンバージョン

コンバージョンまたはコンバートとは、「転換」を意味する言葉です。ITにおいてはソースやデータ、ファイルなどを別の形式に変えることを指します。

マイグレーションを行う際には、システムを新環境に適合させるために、データ形式などを別の形に転換させることが必要な場合があります。コンバージョンとはその際に行う作業であり、マイグレーションの実施プロセスの一部です。たとえばストレートコンバージョンは、レガシーマイグレーションを実現する手段であり、新しい環境下でコンパイルし直し現行資産を継続して使うことを意味します。

既存システムを新システムに置き換えるリプレース

リプレースとは、古くなったソフトウェアやシステムなどを新しいもの(今と同等以上のもの)に「置き換えること」です。マイグレーションの場合は、最新のプラットフォームへの移行など基盤部分の変更も伴いますが、リプレースの場合は、プラットフォームやOSといった基盤には手を加えないまま、スペック不足などの問題を抱えた部分だけを新しいものに置き換えることを意味します。

マイグレーションには4つの種類がある

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マイグレーションは「何を移行するのか」という違いによって4つの種類に大別できます。以下では、それぞれの違いについてまとめています。

データの移行

データ移行とは、あるデータを別のストレージシステムなどに移行することです。データ移行は、主にストレージ容量の拡大やデータ管理の合理化、コスト削減などを目的に実施されます。

データベースの移行

データベースの移行とは、データの保存先であるデータベースシステムそのものを別のデータベースへ移行することです。保存されたデータをそのままに、移行先でもテーブル作成やカラム変更などが可能です。また、新バージョンへのアップデートのために、データ形式の転換が必要となる場合なども指します。

アプリケーションの移行

アプリケーションの移行とは、使用するアプリケーションを別のものに変更することです。マイグレーションの手法のなかでは、実施する機会が多いものとして挙げられます。なお、アプリケーションの変更に伴って、以前のアプリケーションで使用していたデータの形式を変更しなければならない場合があります。

ビジネスプロセスの移行

ビジネスプロセスの移行とは、PDCAサイクルなどを活用しながら、ビジネスプロセス(業務活動)そのものを既存のものからより優れた方法へ移行することです。新しい市場への参入や組織変革など、企業の大きな変化に伴ってビジネスプロセスの移行が必要とされます。

マイグレーションの実施方法

マイグレーションを行うには、以下のようなプロセスを経る必要があります。スムーズに実施するためにも、ポイントを押さえておきましょう。

マイグレーションにより移行できるシステムか検討

最初に重要となるのが、既存システムの現状や問題点などを把握し、移行対象を選別することです。移行の方法や移行先などは自社に適したものを選ぶことが大切です。

システム移行後に関する計画立案

続いて必要になるのが、移行先のシステムを決定し、移行計画や移行後のシナリオなどを立案することです。プロトタイプのシステム、環境の準備もこの段階から進めていきます。

変換ツールを準備

マイグレーションに際しては、データ変換が必要になるので、データ変換用のツールを準備することも欠かせません。そして変換ツールを準備したら、まずはプロトタイプを移行します。

システムテストを実施

プロトタイプのシステムを使って、動作・結合テストを実施します。テスト後には評価を行い、そこで問題点などが見つかったらその改善に取り組みましょう。

本番の環境へ移行

テストの結果が良好だったら、新しい環境へシステムを本格移行します。テストを実施済みとはいえ、問題が起こらないとは言い切れないため、動作などの監視は欠かせません。また、新環境の品質評価を行うことも重要です。

まとめ

マイグレーションは、システムやデータなどを新しい環境に移行することを意味します。マイグレーションには、データ変換など複雑な工程を要します。


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