システム開発・ソフトウェア開発は、複数人のメンバーで協力して進めることが一般的です。そのため、いかに情報の伝達や共有をスムーズに行うかが、プロジェクトの進行や製品の品質を左右します。
しかし、プロジェクト全般に渡って使用する各種設計書が、作成者しか分からない部分があったり作成者によって品質や内容にバラつきがあったりすることは、スムーズな情報の伝達や共有が難しくなる大きな原因となります。実際に、そのような経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
当記事では、システム開発・ソフトウェア開発の設計業務・設計書で生じる属人化の課題から、設計書を標準化することの重要性、標準化が難しい理由、標準化を進める方法までをご紹介します。
設計業務・設計書の課題を解決したい方や、設計書の標準化を推進したい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
設計業務で発生する属人化の課題
システム開発・ソフトウェア開発の現場で頻繁に起こっている事象が、設計業務ならびに「設計書の属人化」です。属人化とは、特定の担当者が行った業務内容や業務の進め方が、担当者当人以外では分からなくなってしまい、修正や内容の理解が困難な状況を指します。
システム開発・ソフトウェア開発のプロジェクトは、設計書を中心に進行するため、設計書の属人化はプロジェクト全体にさまざまな弊害をもたらします。属人化の程度やプロジェクトの状況にもよりますが、その弊害は思いのほか大きいものです。
ここでは、設計業務・設計書に属人化が発生した際に、実際にどのような問題や課題が起こるのかを解説します。
開発効率の悪化
設計書の属人化が原因で起こる問題としてまず挙げられるのが、開発効率の悪化です。
開発プロジェクトを進める指針となる設計書に属人化が発生すると、開発メンバーは作成者しか分からない部分については都度確認を行なわなければならず、手間と時間が増えるためです。
また、設計書の作成者はプロジェクトの中心に近い人物であることも多いため、確認作業が増えて業務負荷が集中すると、プロジェクトの采配を取れないという問題も発生します。
作成者が出張や休業などの理由で不在の際には、開発がストップしてしまうことさえあります。
このように、業務進行が人に依存すると開発効率の悪化を招くため、システム開発・ソフトウェア開発を生業とする企業は、できるだけ人に依存しない業務の仕組みを目指すことが重要となります。
トラブルの発生
設計書の属人化は、効率の悪化だけでなく不要なトラブルが発生するリスクも高まります。
例えば、設計書を参照したプログラマーが記載されている内容を誤認して、そのまま作業を進めてしまうケースなどが挙げられます。また、作成者に確認が必要な内容がありつつも、スケジュールに推されて曖昧な見解のまま作業を行ってしまうケースもあります。これらは設計書に定まった記載ルールがなく、設計書の作成者によってバラバラの内容になり属人化している場合に起こりやすくなります。
また、設計書の属人化に起因するトラブルは、そのトラブルの解決の際にも設計書作成者が携わらなければならないケースが多いという問題も発生します。
不要なトラブルが多発すると、修正や調整に無駄な時間と労力を割かなければならないため、開発プロジェクトの生産性は大幅に低下してしまうでしょう。
管理工数の増加
設計書の属人化により開発効率の悪化やトラブル発生を招くと、該当する設計書が関係する開発プロジェクト全体の生産性が低下するため、管理にかかる時間や労力も増加します。
もしあなたが複数のプロジェクトの品質を管理する立場だったとします。プロジェクトによって設計書の書き方がバラバラでは求めている品質が担保されているかの確認に多くの時間を要することになります。書き方が統一されていないとプログラマーが読み間違えるのと同様に、管理する側も読み間違えるリスクがあるのです。これは隠れたコストとも言えます。
このように設計書の属人化は管理工数の増加も招くため、設計書の属人化は開発プロジェクト全体の進捗の遅れや工期遅延の原因にもつながります。
設計書における標準化の重要性
設計業務・設計書の属人化は上記のように開発プロジェクトにさまざまな問題を生じさせるため、システム開発・ソフトウェア開発に取り組む企業にとって属人化の解消は重要な課題となります。
この厄介な属人化の課題を解消するためには、「設計書の標準化」を実施することが非常に効果的です。設計書を標準化すれば、設計書を活用する業務の平準化を図ることができるため、属人化により生じる多くの問題・課題を解消することに繋がります。
しかし、煩雑で難解なシステム開発・ソフトウェア開発の設計業務ならびに設計書を標準化することは、多くの企業にとって簡単ではないことも実情です。
ここでは、設計書の標準化の概要から、標準化の実現が難しい理由について解説します。
設計書の標準化とは?
設計書の標準化といっても、実際にどのようなことを指すのか分からない方もいるのではないでしょうか。設計書の標準化とは、誰が作成を行っても同じ品質の設計書ができあがるようにすることです。具体的には、設計書の様式・記述方法・記述項目・網羅性など諸々の要素が統一されている状態を指します。
設計書が標準化されることにより、システム開発・ソフトウェア開発の業務全般において以下のようなメリットがあります。
・設計書作成業務の効率化 設計書の作成方法が確立されているため、作成者は指定された方法に従えばよく、設計書作成業務を効率化できる。 |
・実装工程・テスト工程の効率化 常に誰が読んでも理解できる内容で作られた設計書で作業できるため、作業が人に依存することなくスムーズに進めることができる。また、品質が一定に保たれているため、情報の記載漏れや記載ミスに振り回されるケースを減らすことができる。 |
・保守・運用・管理業務の効率化 上記と同様の理由で、保守・運用・管理を行う際にも、担当者が設計書の内容をスムーズに理解して作業を行うことができる。 |
このように、設計書の標準化だけでも得られるメリットはたくさんありますが、もう一歩踏み込むと、設計書を活用する業務についても一定の手順・品質を確保できるようになります。これを業務の平準化と言い、設計書を標準化することはシステム開発・ソフトウェア開発の業務全体をブラッシュアップすることにもつながります。
最終的には、できあがるシステム・ソフトウェアの品質向上にも繋がるため、設計書の標準化を進めることはシステム・ソフトウェア開発会社を高収益体質にすることにつながるといっても過言では無いでしょう。
設計書の標準化が進まない理由
システム・ソフトウェア開発の設計書は標準化した方が、開発プロジェクトの進行がスムーズになり不要なリスクも回避できることは上述の通りです。
しかし、実際の開発現場では、設計書を標準化した方が良いと知りつつも、諸々の理由によりなかなか標準化が進まないことが実状です。
ここでは、設計書の標準化が進まない主な理由について解説します。標準化を阻む理由が分かれば、それを排除することで標準化実現に近づくことができるため、ぜひ参考にしてみて下さい。
設計書作成のルールが存在しない
設計書の標準化を進めるにあたってまず行うべきことは、設計書作成のルールを作成することです。
「どの程度まで詳しく書くのか」「どのような表記を用いるのか」「どのようなフォーマットで作成するのか」など、一定のルールに従って設計書を作成してこそ、標準化を実現することが可能となります。
明確なルールが存在しないと、いくら標準化を周知しても設計書の作成基準が人に依存するため、属人化が発生して標準化を進めることはできません。
標準化を進めるにあたっては、設計書作成のルールを必ず設けるようにしましょう。
リソースを割けない
設計書作成の標準化が進まないもう一つの理由として、標準化の必要性や設計書作成ルールを設けることの重要性を認識していても、設計書作成や開発業務に忙しく、標準化を進めるためのリソースを割けないことが挙げられます。
設計書作成のルール付けと一言に言っても、設計書の種類は豊富であり、設計書一種類に対して厳格なルール付けを行うだけでも多くの時間と労力が必要です。
通常開発メンバーは複数プロジェクトを並行して進めていることが一般的であるため、設計書の標準化にじっくりと向き合う時間を確保することは難しいのが実状です。
設計書の標準化は多くのことを厳密に考えなければならないため、中途半端に取り組むと開発現場の状況悪化を招く恐れがあるのも、標準化を難しくしている一因でしょう。
このように、設計書の標準化は一朝一夕で実行できる性質ではないことが、標準化がなかなか進まない大きな理由と言えます。
設計書の標準化を進める方法
システム・ソフトウェア開発で使用する設計書の標準化を進めるには、上記で解説したような多くの課題を解決する必要があり、時間と労力の確保も必要となります。
そこでおすすめとなる方法が、システム・ソフトウェア設計業務用のCADツールを導入することです。CADツールを活用することで、設計書標準化に伴う多くの課題を解決して、スムーズに標準化を進めることができます。
人の手によるフォーマット統一や書式の統一といったルール付けを行なうよりも、はるかに効率的に標準化を進めることが可能です。
ここでは、システム・ソフトウェア設計で使用するCADツールの概要と、設計書の標準化実施に効果的である理由、おすすめのCADツール製品についてご紹介します。
システム設計におけるCADツールとは?
CAD(ComputerAidedDesign)とは、直訳すると設計支援コンピュータという意味であり、従来手作業で行われていた設計業務を自動化・効率化するための技術です。建築・製造の設計現場で主に使用されていましたが、近年ではアパレル業界などでも当たり前のように活用されています。
システム・ソフトウェア設計で使用されるCADツールは、Word・Excelといった汎用ツールを活用して手作業で行われていた設計業務を大幅に効率化することが可能です。設計書作成・修正・メンテナンス・管理はもちろん、今回解説した属人化や標準化の課題解決にも大いに役立てることができます。
システム開発・ソフトウェア開発の設計業務に活用するCADツールであれば、弊社の「SI Object Browser Designer」がおすすめです。以下に、ツールの特徴・性能・導入のメリットについてご紹介します。
システム・ソフトウェア開発設計用CADツール「SI Object Browser Designer」
弊社のシステム開発・ソフトウェア開発の設計用CADツール「SI Object Browser Designer」は、汎用ツールで設計を行う際に発生していた課題を解決して、設計工程を合理化・効率化することを目指してリリースしたツールです。
単に設計工程がスムーズになるだけでなく、属人化リスクの低減や標準化の推進に役立つ機能も備わっています。
「SI Object Browser Designer」の特徴・導入メリットを以下にご紹介します。
・設計工程を標準化できるため属人化を防げる ・豊富なテンプレートとフォーマットで設計書作成を効率化できる ・各種仕様書・設計書の作成を支援する充実した機能を搭載 ・Webアプリに必要なドキュメントをデータベースで管理できる ・設計工程の業務負荷軽減・業務時間短縮を実現できる |
「SI Object Browser Designer」は、導入事例も豊富で、実際に多くの企業の設計業務改善や課題解決に貢献してきた実績があるツールです。
設計業務・設計書作成の属人化発生や標準化推進の課題を抱えている方は、ぜひ弊社の「SI Object Browser Designer」の導入をご検討下さい。
まとめ
設計書を標準化して開発業務を平準化することは、システム・ソフトウェア業界において非常に重要な課題です。しかし、容易に解決することが難しく、設計書の標準化に踏み切れていない企業も多くあります。
今回ご紹介した弊社のCADツール「SI Object Browser Designer」であれば、設計書の標準化や作成の効率化・合理化を実現するための機能が充実しており、情報の一元管理・履歴管理といった設計書管理を効率化する機能も搭載されています。
設計書作成業務に限らず、設計書の活用や共有もスムーズに行うことができるため、開発業務全般の生産性・品質向上に大きく貢献することが可能です。
弊社では、設計書の課題解決に役立つ資料も無料で公開していますので、システム・ソフトウェア開発の設計書でお悩みの方は、ぜひチェックしてみて下さい。
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