基幹システムとは?業務システムやERPとの違いや、種類について解説

 2025.08.04  株式会社システムインテグレータ

「基幹」とは何を意味するのでしょうか?また、「基幹システム」とは、どのような役割を果たすものなのでしょうか?この言葉に触れたとき、多くの方が「なんとなく重要そうだけれど、実はよく分かっていない」と感じるのではないでしょうか。

本記事では、「基幹」という言葉の意味や背景にあるビジネス上の本質的な価値に触れつつ、基幹システムとERP、業務システムとの違い、導入によって得られるメリットや注意点、そして選び方のポイントまでを体系的に解説します。
とくに、基幹システムの導入や刷新を検討し始めた情報システム部門・経営企画部門の部課長クラスの方に向けて、判断材料となる実践的な情報をお届けします。

企業の経営基盤として不可欠な「基幹システム」。その全体像を理解し、自社にとって最適な選択肢を見つける第一歩として、本記事をぜひご活用ください。

「基幹」とは何か?ビジネスにおける基幹システムの役割と重要性

基幹とは?基幹系システム、情報系システム、ERPについて 1

「基幹」とは何を意味し、企業にとってどんな存在なのでしょうか。本章では、ビジネスの現場で使われる「基幹」という言葉の本質を解説しつつ、基幹システムが事業の中核に位置づけられる理由を考察します。

「基幹」という言葉の定義と本質

「基幹」とは、もともと「物事の中心や根幹となるもの」を意味する言葉です。企業における「基幹」は、経営や事業運営の土台となるシステムや仕組みを指し、それらを担うITシステムは「基幹システム」と呼ばれます。現場では、略して「基幹」と呼ばれることもよくあります。
この基幹システムは、販売・生産・在庫・会計・人事など、企業の主要な業務を支える重要な仕組みです。そのため、基幹システムがこれらの業務を安定的に稼働させることは、事業の継続に直結します。

このように、基幹システムは単なる業務ツールではなく、「企業を動かすために欠かせない中核的な存在」として位置づけられるべきものです。

基幹システムが「停止できない」理由とビジネスへの影響

基幹システムは、企業の主要業務を支える中枢的な仕組みであるため、システムが停止すると、事業活動そのものに深刻な影響を及ぼします。
このような特性から、基幹システムは「Mission Critical System(ミッションクリティカル・システム)」と呼ばれることもあります。

たとえば、販売管理システムが停止すれば受注処理や請求業務が滞り、生産管理システムが止まれば製造ラインが稼働できなくなります。財務会計システムが使用できない場合は支払処理や決算業務が行えず、人事給与システムが停止すれば従業員への給与支給に支障が生じます。
こうしたシステム停止による影響は、単なる業務の遅延にとどまりません。納期遅延による売上機会の喪失、顧客や取引先からの信頼低下、従業員のモチベーションの低下、さらには法令違反や監査対応の不備など、経営リスクに直結する問題が次々と波及します。

そのため、基幹システムには高い可用性と信頼性が求められ、障害発生時の影響を最小限に抑えるためのBCP(事業継続計画)や堅牢な運用体制の整備が不可欠です。企業にとって、基幹システムを「止めないこと」は、安定した事業運営と信頼維持の前提条件と言えるでしょう。

なぜ今、基幹システムの導入・刷新が必要なのか?

近年、デジタル技術の進展、労働力不足、グローバル競争の激化、さらには法規制やガバナンスの強化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。しかも、これらの変化はかつてないスピードで進行しており、従来のやり方では対応しきれない課題に多くの企業が直面しています。
こうした急激な環境変化に柔軟に対応していくためには、業務プロセスの抜本的な見直しと、それを支えるシステムの柔軟かつ持続的な進化が不可欠です。

しかし、長年にわたって属人的な運用に依存してきた企業や、部門ごとに分断されたシステムを使用している組織では、業務の非効率や情報の断絶が慢性化し、それが経営判断の遅れや外部環境への対応力の低下を招いています。

このような課題を解消し、変化に強い企業体制を築くためには、企業全体の業務を標準化し、情報を一元的に管理できる基幹システムの導入・刷新が必要不可欠です。もはや基幹システムは、単なる「コスト削減」の手段ではなく、「経営基盤の強化」や「競争力向上」を実現するための戦略的な投資と位置づけるべきでしょう。

混同しやすい!基幹システムと他システム(ERP・業務システム)の違い

企業活動における業務

ここでは、業務で活用できる各システムの違いについて詳しく解説をしていきます。

基幹システムとERPの違い

「ERP」と「基幹システム」は混同されやすい言葉ですが、その関係性は次のように整理できます。
結論から述べると、ERPとは「複数の基幹業務を統合的に管理するシステム」であり、「基幹システムの進化形」あるいは「統合型の基幹システム」と捉えることができます。
従来の基幹システムは、販売管理、在庫管理、財務会計、人事給与など、企業の中核業務ごとに個別に構築・運用されてきました。それぞれの業務を支える仕組みではありますが、部門ごとにシステムが分断されている場合、データの一貫性や業務の連携に課題が生じやすくなります。

一方、ERPは、これらの業務システムをひとつのプラットフォーム上で統合し、企業全体のリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元的に管理・最適化する仕組みです。
たとえば、これまで部門ごとにバラバラに運用されていた販売管理システム・会計システム・在庫システムなどをERPに統合することで、部門間のデータ連携が自動化され、経営状況をリアルタイムに把握することが可能になります。

このように、ERPは単なる基幹システムの集合体ではなく、それらを相互に連携させて全社最適を実現する「統合型基幹システム」として位置づけられます。

※ERPについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

基幹システムと業務システムの違い

「業務システム」とは、企業内のさまざまな業務を支援するシステム全般を指す、最も広い概念です。
たとえば、営業支援ツール(SFA)や顧客管理システム(CRM)、勤怠管理、グループウェア、マーケティングオートメーション(MA)など、部門ごと・業務ごとに導入されるシステムはすべて「業務システム」に含まれます。

一方で、「基幹システム」はその業務システム群の中でも、販売、生産、在庫、会計、人事給与といった、企業の事業活動の根幹を支える中核的な業務に関わるシステムを指します。これらは、業務が止まることで企業全体の活動に直接的な支障をきたすような、極めて重要な領域です。
つまり、基幹システムは業務システムの一部と位置づけることができます

このように整理すると、基幹システム、ERP、業務システムは以下のような関係性で理解することができます。

業務システム > 基幹システム ≒ ERP

言葉の意味を明確にしておくことで、自社にとってどの種類のシステムが必要か、またどのような優先順位で導入・刷新すべきかを判断する際の有効な材料となります。

基幹システムの種類と主な機能

基幹とは?基幹系システム、情報系システム、ERPについて 3

基幹システムは、販売、生産、在庫、財務、人事などの各業務領域に対応した複数のシステムによって構成されており、企業の業種や規模によって導入範囲や優先度は異なります。
本章では、代表的な基幹システムの種類と、それぞれの主な機能、対象部門、および導入によって得られる効果について紹介します。

主な基幹システム一覧

システム種別 主な機能 対象部門 導入効果
販売管理システム 受注・出荷・請求・売上管理 営業、物流、経理 受注業務の効率化、売上データの一元管理
生産管理システム 生産計画、製造指示、原価管理 製造、調達、経営企画 生産プロセスの可視化、原価の最適化
在庫管理システム 在庫状況の把握、棚卸、入出庫管理 物流、購買 過剰在庫や欠品の防止、在庫回転率の向上
財務会計システム 仕訳・帳簿管理、決算処理、税務申告 経理、財務 会計処理の正確性向上、決算業務の効率化
人事給与システム 勤怠管理、給与計算、人材情報の管理 人事、労務、総務 給与支給ミスの防止、人事情報の一元化

基幹システム導入で得られる経営視点のメリット

基幹とは?基幹系システム、情報系システム、ERPについて 4

基幹システムの導入は、単に日々の業務を効率化するだけでなく、経営全体の質やスピードを大きく底上げする効果があります。ここでは、経営視点で注目すべき4つの主要なメリットをご紹介します。

業務プロセスの効率化と自動化

従来、手作業で行っていたデータ入力や集計、帳票作成などをシステム化することで、業務の処理スピードが飛躍的に向上します。これにより、作業負荷の軽減やヒューマンエラーの削減が実現され、限られた人員でもより多くの業務を効率的に処理できる体制が整います。

業務の標準化と属人化の解消

基幹システムの導入により、業務フローの明文化と統一が促進されます。これにより、個人のノウハウや慣習に依存した属人的な業務運用から脱却でき、担当者が交代しても一定の品質で業務を継続できる体制づくりに寄与します。

経営情報の可視化と迅速な意思決定

販売、在庫、財務などの情報が一元的に蓄積・管理されることで、経営状況をリアルタイムに可視化できるようになります。データに基づく客観的な判断が可能になり、集計・報告作業の負担も軽減され、意思決定のスピードと精度が向上します。

コンプライアンス強化と内部統制の徹底

業務プロセスがシステム上で管理されることで、操作履歴や承認フローなどが自動的に記録されます。これにより、不正の抑止や内部監査への対応が容易となり、法令順守や社内ルールに則った運用を仕組みとして実現できます。

基幹システム導入における注意点とリスク回避策

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基幹システムの導入は、業務効率や経営力の向上に大きく貢献しますが、同時にいくつかのリスクや注意点も伴います。ここでは、導入時によくある代表的な課題と、その回避策についてわかりやすく解説します。

導入コストの見誤りに注意

基幹システムの導入には、初期費用(ライセンス、インフラ、導入支援、開発など)と、運用費用(保守、サポート、アップデート、クラウド利用料など)がかかります。
また、バージョンアップ対応や法改正への対応にも追加費用が発生する場合があるため、ベンダー対応の範囲や費用の有無は事前に確認しておく必要があります。
最近は、AWSなどのクラウド環境で構築・運用するケースも多く、インフラの月額費用も予算に含める必要があります。
システム本体以外にも多くのコストが発生するため、ベンダーと詳細まで擦り合わせ、抜け漏れのないようにしましょう。

基幹システムは高額投資です。導入前には、中長期的な総コストを試算し、予算と照らし合わせて検討することが重要です。

現場の抵抗感を最小限にする

新しい基幹システムへの切り替えは、単に操作方法が変わるだけでなく、これまで使っていた用語や業務定義も新しいシステムに合わせて見直す必要がありますのような慣れない環境は、従業員の業務停滞や入力ミス、さらにはモチベーション低下につながる恐れがあります。

こうした抵抗感を最小限に抑えるためには、以下のような対策が有効です。

  • 導入前の業務マニュアル整備とユーザートレーニングの徹底
  • テスト導入による業務シナリオの事前検証

これにより、現場への負担を抑えながら、スムーズで確実な移行を実現できます。

システム停止リスクとBCP対策

基幹システムは、販売、会計、在庫、人事など、企業の中核業務を支える重要な仕組みです。
そのため、システムが停止すれば、事業活動全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに備えるには、以下の対策が有効です。

  • バックアップ体制の整備
  • システム障害時の復旧手順(DR)の明文化
  • BCP(事業継続計画)の策定と定期的な見直し

これらを徹底することで、万一の障害発生時にも、迅速な復旧と安定した事業継続が可能になります。

過度なカスタマイズによる弊害

自社業務に合わせすぎた過度なカスタマイズは、開発コストや導入期間の増加につながるだけでなく、
将来的なアップデート対応を困難にする恐れがあります。
そのため、導入時には次のような方針が重要です。

  • カスタマイズは必要最小限に留める
  • システム標準に業務を合わせる「Fit to Standard」の考え方を採用する

これにより、保守性と拡張性を確保しつつ、持続可能な運用体制を築くことができます。

※Fit to Standardについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

失敗しない!基幹システムの選び方と導入成功のポイント

基幹システムの導入は、企業の業務プロセスだけでなく、将来的な経営戦略にも大きく影響する重要な意思決定です。導入効果を最大化し、失敗を防ぐためには、複数の視点から慎重に検討を行う必要があります。ここでは、選定と導入を成功に導くための主なポイントをご紹介します。

導入目的と課題の明確化

まず重要なのは、「なぜ基幹システムを導入するのか」という導入目的を明確にすることです。
たとえば「業務効率を30%向上させたい」「部門間のデータ共有をリアルタイム化したい」など、具体的かつ定量的な目標を設定することで、選定・要件定義・導入後の評価がブレにくくなります。
目的が曖昧なままだと、導入が迷走し、効果も見えにくくなります。

クラウド型 vs. オンプレミス型の選択

基幹システムの導入形態は、大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」に分かれます。

  • クラウド型は、初期費用を抑えやすく、ベンダーによる保守やセキュリティ対応により運用負荷が低いのが特長です。一方で、細かなカスタマイズには制限があります。
  • オンプレミス型は、自社環境に構築するため、柔軟なカスタマイズが可能ですが、導入や保守にかかる工数・コストが大きくなります。

自社のIT体制・予算・将来の運用方針に応じて、最適な導入形態を選定しましょう。

機能要件・拡張性・カスタマイズ性の確認

システムが自社の業務に必要な機能を過不足なく備えているかを確認することが基本です。

加えて、事業の成長や業務の変化に対応するための拡張性、自社の業務に適応させるカスタマイズ性も重要な検討項目です。近では、クラウド型ERPでもノーコードツールや外部サービス連携などにより、ある程度の柔軟性を確保できる場合があります。
導入時点の要件だけでなく、5年後・10年後の活用イメージを持って評価することが、長期的な成功につながります。

使いやすさとサポート体制

高機能なシステムでも、現場が使いこなせなければ意味がありません。

  • 直感的な操作性やわかりやすい画面設計は、ユーザー定着に大きく影響します。
  • また、導入後にトラブルが起きた際に迅速に対応できるサポート体制も非常に重要です。

導入フェーズだけでなく、運用・保守まで含めた支援体制を確認しましょう。

セキュリティとベンダー信頼性

基幹システムには、財務情報や顧客情報など機密性の高いデータが集約されます。そのため、強固なセキュリティ対策が施されていることは当然の要件です。加えて、以下の点もチェックポイントになります。

  • ベンダーの導入実績
  • 同業種での採用事例の有無
  • 長期的な支援・保守体制

信頼できるベンダーを選ぶことで、導入後のトラブルや運用リスクも大幅に軽減されます。

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

本記事では、「基幹」とは何かという概念の整理から始まり、ERPとの違いやシステムの種類、導入によって得られる経営的メリット、導入時のリスクとその対策、さらに選定と導入の具体的な進め方までを網羅的に解説してきました。
繰り返しになりますが、基幹システムは単なる業務支援ツールではありません。企業の経営資源を支え、全社最適とスピーディな意思決定を実現する、戦略的な「経営インフラ」です。販売や生産、財務、人事といった基幹業務をつなぐことで、データはリアルタイムに可視化され、経営判断の精度とスピードが飛躍的に向上します。

特に、ERPのような統合型基幹システムは、複数の業務システムを横断的に連携し、企業全体の変化対応力を高めるソリューションとして注目されています。GRANDITSAPのような製品は、まさにこうした変革ニーズに応えるための有力な選択肢です。
もちろん、導入には相応の時間とコスト、組織的な変化への対応が求められます。しかし、明確な目的設定と的確な製品選定、そして導入後の継続的な運用改善に取り組むことで、その投資は確実に貴社の競争力へと転化されるはずです。

今後のビジネスを支える「経営のためのシステム基盤」として、基幹システムの導入・刷新は避けて通れない選択です。本記事がその第一歩となり、貴社の成長を後押しする実践的な指針となれば幸いです。


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