建設DXとは?推進のメリットや使われる技術など基礎知識を徹底解説

 2022.07.29  株式会社システムインテグレータ

日本国内では人手不足や業務システムの老朽化などが問題になっており、その対策としてDXの推進に取り組む企業が増加しています。建設業は近年DX推進が進んでいる業界のひとつで、先進的なIT技術を業務に活用する企業も徐々に増えてきました。しかし、建設DXの正確な定義が分からない、どういった施策を打ち出すべきか分からないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、建設DXの概要と主なメリット、使用されているIT技術について具体的に解説します。

建設DXとは

建設DXとは?推進のメリットや使われる技術など基礎知識を徹底解説

近年ではDX化による業務効率化やコスト削減を達成した事例が増えており、建設業界でもDXを推進することはさまざまなメリットが見込めます。ここでは最初にDXの概要について紹介します。

そもそもDXとは何か

DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、2018年に経済産業省によって公表された定義では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義づけられています。

DXを推進することによって、競争力や生産性の向上、業務システムの更新による業務効率向上、維持コスト削減などの恩恵が期待できるのです。

なお、DXは2004年に提唱された概念で、内閣府が提起した「Society5.0」では人手不足を解消する方法としてAIやロボット技術などを活用することが推奨されています。日本国内では少子高齢化による人手不足が深刻化していることから、近年ではさまざまな業界でDXが推進されている状況です。

DXについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?「2025年の崖」との関連性や推進ポイントまで解説

建設DXに注目が集まる理由

建設DXとは?推進のメリットや使われる技術など基礎知識を徹底解説-1

建設業界では、AIやIoTなどの先端技術を業務に取り入れることで業務プロセスの効率化を目指す流れがみられます。近年ではAIを活用した3次元測量、5Gを活用した建設機械の制御などが実施されており、建設DXの推進に向けた取り組みが進められています。

建設業界におけるDX推進が重視される理由として、複数の業界で問題とされる「2025年の崖」への対策もあげられます。2018年に経済産業省が公表したDXレポートで提示された問題であり、既存システム老朽化による維持管理費の増大、管理担当者不足などの問題について分析が行われました。老朽化しているシステムの維持管理を行える人材の定年退職、公衆交換電話網(PSTN)の終了といった問題が2025年頃までに集中して発生することから、2025年までに既存システムの見直し、DX推進などの対応が必要になるとされています。

そして、2025年までに既存システムの複雑化による問題を解消できなかった場合、2025年以降に日本市場で年間最大12兆円の経済被害が発生すると予測されています。

2025年の崖によるこうした経済損失を回避する方法として、経済産業省は企業のDX推進、既存システムの刷新が必要だとしています。建設DXの推進に向けた取り組みとして、国土交通省による「インフラDX総合推進室」の設置、建設業におけるデジタル技術の利用推進などが行われており、建設業界はDX推進に向けて注目されている業界だと言えるでしょう。

建設DXを推進することで得られるメリット

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建設DXの推進は国家単位で行われている取り組みで、国際的な競争力向上、老朽化したインフラの更新に向けた業務効率化の必要性などが主な理由として提唱されています。ここでは、建設DXは企業単位でどのようなメリットがあるのか、実際にどのような形で活用されているのかを具体的に解説します。

業務効率化

建設業界は計画、調査、施工など多数の工程があることから、DXの推進によって各工程の業務効率化が図りやすいことが特徴です。古い業務システムを更新することで、業務プロセスの効率化や作業速度向上といった効果が見込めます。

建設DXで活用される技術には図面の3次元化やデータ共有のクラウド化などが含まれています。各企業でDX推進が進むことで、立体的な図面をリモートで送受信できるようになり、情報共有や確認作業にかかる手間の削減が可能です。また、自宅や事務所などから業務を行う環境が整えられるため、業務のオンライン化による連絡効率の向上、移動時間の節約によるコスト削減などのメリットも見込めます。業務連絡においては建築物の構造や部品、コストなどを具体的に伝達できるようになり、情報共有や確認作業の効率化、手戻りの削減などが実現できるでしょう。

人手不足への対策

業務の自動化やオンライン化を推進することで、従業員の移動時間削減、現場作業の自動化による省人化が進められます。具体的には建設重機のリモート制御、監督業務のリモート化などを行うことで従業員が会社や自宅などから建設現場を確認できるようになります。商談や営業活動のオンライン化を並行して行うことで、より多くの作業を効率的に実施できる業務体制の構築が可能です。

ちなみに、国土交通省では建設業に対する3Kのイメージを払拭して新3K(給与・休暇・希望)を実現する取り組みが実施されています。その取り組みの一環として、建設DXの推進による業務効率化が含まれています。

一例として、2016年には災害復旧工事の際にWi-Fiを活用した無人化施工システムが用いられており、人が近づけない場所でも遠隔操作で建設機械を動かせる技術が実用化されています。5G回線を活用して無人化施工の効率化を図る取り組みも進められるなど、建設DXによる省人化は今後も推進されていくでしょう。

技術継承につながる

建設業界は就労者の高齢化が進んでいる業界のひとつです。55歳以上の就業者が全体の3割を超えている一方で、29歳以下の就業者は約1割に留まっています。将来的には定年退職や体力的な問題などによって現場を離れる技術者が確実に増加することから、熟練技術者から若手、中間層への技術継承の遅れが問題になっている状況です。

そんな技術継承の問題を解決する手段として、熟練技術者の考え方や動きをデータ化する技術があります。例えば、熟練技術者がカメラを装着して現場作業を行う様子を記録して、現場での動き方を映像化します。映像を社内で共有することで、技術継承を効率的に行える仕組みです。

記録映像をAIに学習させることで現場での動き方を解析し、熟練技術者の動き方をデータとして再現する技術も存在します。建設DXを推進することで技術継承の効率化、会社全体の技術レベル底上げなどが見込めるのです。

競争力が高まる

建設業界はDX化が比較的進んでいる業界ですが、既存システムの見直しや新技術の導入を行う建設DXは検討段階、もしくは限定的な実施に留まっている企業が多い状況です。経済産業省が公表している「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」によると、2020年10月時点で自己診断レポートを提出した企業の95%はDXに全く取り組んでいない、もしくは取り組み始めた段階であると評価されています。

建設DXの推進によって業務効率化、技術継承の促進、人手不足解消などのメリットを得られるようになると、建設業界内での競争力が高まる効果が期待できます。建設DXで用いられる技術には比較的低コストで導入できるものも含まれているので、状況に応じて建設DXを推進することが競争力を向上させるポイントです。実際にどういった技術が用いられているかは次章で解説します。

建設DXで活用される技術と解決できる課題

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業務の効率化や技術継承の促進など、建設DXの推進は企業にとってさまざまなメリットが見込まれます。建設DXに取り組む企業では実際にどういった技術が活用されているか、どのような状況において役立つ技術かを紹介します。

クラウド技術

クラウド技術とは、インターネット上の仮想サーバーで画像やテキストなどの送受信が行える技術です。業務資料や従業員が保有する技術などを仮想サーバー上で一元管理することで、インターネットを通して業務連絡や顧客管理などの業務を行えるようになります。通信環境が整っている場所であれば屋内外を問わず利用できるので、工事の進捗をリアルタイムで共有することも可能です。クラウド型管理システムを併用することで、業務連絡や受発注業務に用いるフォーマットを統一するといった使い方もできるでしょう。

クラウドを用いたDXはさまざまな業界で推進されており、建設業界でも業務効率化、システムの刷新などに役立つ技術として用いられています。

AI

AIは人工知能の略称で、建設業界では映像解析によって建築物の状態を分析したり、建築物の設計をシミュレーションしたりする形で活用されている技術です。具体的には、建築物の映像から老朽化している部分を自動的に検出する、過去の設計事例をもとに適切な構造パターンを検索、提示するといった技術が実用化されています。

AIは記録されたデータを学習していくことで、より適切な回答を行える仕組みになっており、データの蓄積、学習が進むほどAIの精度は向上する傾向があります。カメラや無人制御のドローンなどを併用して、遠隔地や高所などにある建築物を遠隔点検する活用事例もみられます。

建設DXの一環としてAI技術を取り入れることで、業務効率の向上、人手不足解消、競争力強化といった業務改善に寄与するでしょう。

ドローン

建築業界では、ドローンを橋や線路、鉄塔などの点検に活用する企業が増えています。遠隔地からカメラを搭載したドローンを操作することで、老朽化した設備や高い場所にある設備などの点検を低リスク、低コストで行えるようになります。

参考として、2021年9月に行われた航空法施行規則の一部改正によって「高層の構造物周辺の飛行」と「人口密集地や夜間の飛行」の飛行条件が緩和されました。

元々は地表から150メートル以上を飛行させる場合は国土交通大臣の許可が必要でしたが、改正後は対象の構造物から30メートル以内の飛行であれば許可不要となっています。また、人口密集地や夜間帯に飛行する場合も国土交通大臣の許可や承認が必要でしたが、改正後は30メートル以下の紐でドローンを係留し、飛行範囲内における第三者の立ち入り制限を行う場合は許可不要となっています。

点検作業にドローンを活用することは、コスト削減の他に作業の安全性向上が見込めます。厚生労働省が発表した資料によると労働災害の件数は減少傾向にありますが、建設業は「墜落・転落」に分類される労働災害が多い業種です。点検作業のリスクが軽減されることで、建設業のイメージ向上や労災防止、人手不足解消などが見込めます。

5G

5Gとは第5世代の通信規格という意味で、4Gまでの通信規格と比べて通信の遅延が少なく、高速で大容量の通信を行える技術です。1台の基地局に同時接続できる数が多いことも特徴で、建設業界では建設機械の遠隔操作に用いられた事例があります。ウェアラブルカメラや無線LANなどの情報機器と5Gを併用することで、事務所から建築現場の管理を行う技術も研究が進められています。

5Gを利用するには多数の中継基地局が必要であり、2022年7月時点では通信エリアが限られています。限られたエリアで小規模ネットワークを構築するローカル5Gという運用方法も存在しており、国で指定された無線局免許を取得することでローカル5Gを運用することが可能です。

総務省は5Gの基地局増設事業を推進しており、携帯基地局の建設を手掛ける建設業者にとって5Gの普及は収入増加が見込める要素でもあります。

BIM/CIM

BIM/CIMは建物や土木といった構造物を3Dデータで表現する技術です。建設業では企画段階から3Dで表現された図面を用いることで、建築物の仕上がりや構造などを具体的に伝えられるようになります。建築物の性能を設計段階でシミュレーションできるので、コスト削減と設計品質の向上が見込めることもメリットのひとつです。

国土交通省は2023年度までに小規模工事を除く全ての公共工事にBIM/CIM原則適用するための施策を推進しています。3Dデータの使用を考慮した業務体制の構築、ワークフローの標準化などを2019年度から2023年度にかけて段階的に進めていくとされています。

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まとめ

今回は建設業界のDXをテーマに解説しました。建設業界ではクラウドやAIなどのIT技術を活用することで、DX化を推進する企業が増えつつあります。建設業界には人手不足の改善や業務効率向上といった課題が複数存在していますが、建設DXの推進に取り組み、新たなデジタル技術を活用することで課題解決の糸口が見えてくると思われます。

工事業向けの当社ソリューションをご紹介した資料もありますので、こちらもぜひご覧ください。


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