ECサイトを運営している方は、誰もが売上向上を目指して日々さまざまな施策に注力しているのではないでしょうか。売上を向上させるには、商品・サービスの向上・集客施策・顧客満足度向上といったさまざまな施策がありますが、意外と見落とされがちなのが、ECサイトの「デザイン」です。
当記事では、ECサイトにおけるデザインの重要性・デザインのポイント・参考になる情報の集め方・ECサイトデザインのトレンドまで幅広くご紹介しています。ECサイトの売上向上を図りたい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
ECサイトはなぜデザインが重要なのか?
ECサイトの売上にデザインはあまり関係が無いと考えている方は少なくないでしょう。しかし、実際にECサイトのデザインが売上に与える影響は非常に大きく、改善を施すことで売上が向上した事例は数えきれないほどあります。
ECサイトのデザインが売上に大きな影響を与える理由は、次のようなECサイトの特性・実店舗との違いにあります。
- スタッフによる接客の替わりに、写真・文章で販売を行う
- 商品を手に取って確認することができない
- オンライン上で複数の店舗(ECサイト)を容易に比較できる
ECサイトはオンライン上で手軽にショッピングを楽しめる反面、仮想店舗であるがゆえのデメリットもあります。ECサイトのデザインが重要である理由は、メリットを伸ばしてデメリットをカバーすることができるためです。
有用性・効果性を意識したデザインを行うことで、売上を着実に伸ばすことができます。
デザインは「CVR」「顧客単価」に影響
ECサイトのデザインは売上を伸ばすために重要であることは先にご紹介した通りです。ここでは、デザインが実際にどのような要素に影響を及ぼすかをご紹介します。
ECサイトの売上は、以下の数式で算出することができます。
売上=UU(ユニークユーザー数)×CVR(成約率)×客単価
このうち、デザインが影響を及ぼすのは「CVR(成約率)」と「客単価」です。つまり、デザインに注力すると、ECサイトから商品を買ってもらえる確率や、一度に購入してもらえる商品数を増やせるということです。
CVR・客単価はECサイトの販売効率そのものであるため、デザインをブラッシュアップすることで、同じ客数でもより多くの売上があがるECサイトを作ることができます。
売れるECサイトデザインの必須条件
ECサイトのデザインは千差万別ですが、売れるECサイトデザインの多くが共通して押さえているポイントがあります。ECサイトデザインを考える際には、このようなポイントを押さえることで、販売に結び付く有用性・効果性の高いデザインを見いだすことができます。
ここでは、売れるECサイトデザインを作成するために必ず押さえておきたいポイントの数々をご紹介します。
情報をシンプルに・見やすく整理
ECサイトに訪れたユーザーは、サイト内に掲載されている情報を閲覧してショッピングを楽しみます。つまり、掲載されている情報は実店舗でいう接客と同じ役割を果たします。
そのため、ECサイトデザインを行う際には、情報の視認性・可読性を重視したシンプルで見やすく整理されたデザインを心掛けることが基本となります。
以下に、ECサイトに掲載する情報をデザイン・設計する際のポイントをご紹介します。
ページ内の情報量を抑えて整理する
ECサイトの商品情報を掲載するページには、商品の特徴や魅力を訴求したいがために、つい沢山の情報を掲載してしまいがちです。しかし、情報量が多すぎると読みにくくなり、情報を読む負担も増してしまうため逆効果です。このようなページはユーザーに読んでもらえないだけでなく、離脱率を高める原因にもなります。
実際にECサイトで訴求力が高く読みやすいとされるページは、要点を絞って必要最小限の情報が記載されたページです。そのため、ECサイトの商品ページをデザインする際には、掲載する画像やテキストの取捨選択を行い、シンプルで情報が整理されたページを目指すことが重要となります。
適切なカテゴリ分け
膨大な情報量を有するECサイトでユーザーに分かりやすく情報を伝えるためには、カテゴリ分けが重要なポイントです。
同じ性質・属性の情報を1つにまとめてカテゴライズすることで、情報を整理して分かりやすくすることができるため、情報量が多いECサイトにおいてもユーザーは目的の情報を探しやすくなります。特に、複数のジャンルの商品を扱うサイトや膨大な商品点数を扱うサイトにおいては、カテゴリ分けのセンス次第でECサイトのユーザビリティーは大きく変わります。
カテゴリを設計・デザインする際には、ただ情報をまとめるだけでなく並び方や配置に規則性を持たせることも重要です。カテゴリはあくまでユーザーが利用するためのものであるため、ユーザー目線に立って分かりやすく使いやすいカテゴリを作成するようにしましょう。
余白を詰めすぎない
ECサイトのデザインでは、沢山の情報を伝えたいがために画像や文字が詰め込まれているケースが多く見られます。しかし、あまり情報を詰め込み過ぎると見た目が悪くなるだけでなく、ユーザーも情報を読み取り難くなってしまいます。
そこで重要となるのが、適度な余白を確保してデザインを行うことです。たとえば画像や文字の間に適度な余白を入れることで、デザインが洗練されて情報も読み取りやすくなります。
Web制作業界においては、余白もデザインの一部と認識されており、余白がデザインやユーザビリティーに与える影響も踏まえてデザイン制作が行われます。ECサイトをデザインする際にも、余白が持つ役割・重要性を理解して、ユーザーにやさしいデザインを心掛けましょう。
スムーズに商品購入ができる
ECサイトに訪れたユーザーは、サイト内を回遊して購入する商品を決めたり決済を行ったりするため、デザインを決める際にはユーザーがスムーズに買い物ができる導線を設計することが重要です。
回遊性が悪かったり商品購入の手順が分かりにくかったりすると、CVRの低下や離脱の原因となってしまうでしょう。
以下に、ユーザーがスムーズに買い物ができるECサイトをデザインするために必ず押さえておきたいポイントをご紹介します。
ファーストビューでユーザーを逃さない
ファーストビューとは、ユーザーがWebサイトを訪れた際に、最初に画面に表示されている領域のことです。ファーストビューから得た印象・情報で、ユーザーはそのWebサイトを見るか離脱するかを決める傾向が強いため、ECサイトのデザインにおいても非常に重要な要素となります。
ECサイトのファーストビューでは、ユーザーの離脱を防ぎサイト内を回遊してもらうために、次のような工夫を行うことがおすすめです。
- ユーザーの興味・関心を刺激する情報やベネフィットのある情報を掲載する
- 商品・ショップ・ブランドの魅力が伝わる写真・動画を表示する
- 一目でどのようなお店か伝わるようなキャッチコピーを表示する
- ユーザーを飽きさせないようにこまめに更新する
ファーストビューで離脱されて商品やコンテンツを見てもらえないことはECサイト運営者にとって大きな機会損失です。そのため、ファーストビューはECサイトデザインで最もこだわるべき部分と言えます。
ユーザーがサイト内を閲覧したくなるようなファーストビューを徹底的に追求しましょう。
商品画像を充実させる
画像は文字よりも沢山の情報を直感的に伝えられるため、ECサイトでは商品画像を充実させることが非常に重要です。商品本体の画像が1枚だけ掲載されたECサイトよりも、商品の試用方法や使用イメージが伝わるように複数枚の画像が掲載されたECサイトの方が、売上があがるのは間違いないでしょう。
また、文字情報で伝えるよりも視覚的表現で伝えた方が効果的な訴求が行える場合も多くあります。例えば食品ECサイトの美味しそうな画像やアパレルECサイトのコーディネート画像などはその最たる例でしょう。
業界・業種によっては、ECサイトの成功要因は商品画像であると言われることすらあります。画像はユーザーが商品の特徴・魅力について知るための重要なコンテンツであることを意識して、画像のクオリティ・枚数を充実させましょう。
購入ボタンをわかりやすくし、少ないタップ数で購入できるように
いくら見やすさ・分かりやすさ・使いやすさを意識したECサイトデザインを作成しても、商品をカートに入れて決済するまでの導線が分かりにくいと離脱されてしまいます。
特に、商品購入導線の最初に位置する購入ボタンの影響は大きいため、分かりやすさ・押しやすさを意識してデザインする必要があります。目立つ色を使い、できるだけ大きなボタンを配置することがポイントです。
また、購入ボタンを押した後のプロセスが煩雑であることも、離脱率を高める大きな原因となります。そのため、少ないクリック・タップ数で商品を購入できるように、購入完了までのステップはなるべくシンプル化しておくことも重要です。
お届け予定日・送料など必要な情報を表示する
ECサイトでは、商品写真・商品説明といった販売に必要な情報だけでなく、次のようなユーザーが購入する際に参照する情報を漏れなく表示することも重要です。
- 送料・送料無料条件
- 配送方法・配送業者
- ギフト対応の有無
- お支払い方法
- お届予定日目安
- 問い合わせ連絡先
- 店舗所在地
- 運営会社
- プライバシーポリシー・返金・返品ポリシー
購入に必要な情報が欠けていると、ユーザーがECサイトに不信感を抱いたり、購入をやめてしまったりする原因にもなります。ECサイトのデザインにおいては、上記の情報を表示するだけでなく、ユーザーが分かりやすく参照できるようにデザインすることがポイントとなります。
ECサイトは顔の見えない販売を行うため、安心して買い物をできる店舗であると示すことは何よりも重要です。些細な理由で販売機会を逃したり信用を失ったりすることが無いように、購入に必要な情報は漏れなく正確に表示しておきましょう。
回遊率を高めるデザイン
回遊性が高いECサイトとは、実店舗で言う商品を見て回りやすいお店と同義です。ECサイトにおいてはユーザーがサイト内のページをどれくらい閲覧したかを指しますが、回遊性が高いほどユーザーに多くの商品を見てもらうことができるため、より多くの商品を購入してもらえる可能性が高まります。合わせ買い・ついで買い・衝動買いといった購買行動も期待することもできます。
ECサイトで売上をあげるためには、回遊性を高めるデザインにすることが必須であると言えるでしょう。回遊性を高めるには、次のような方法があります。
- グローバルナビゲーション(共通ナビゲーション)の設置
- 適切で使いやすいカテゴリ分け
- 関連商品のレコメンド
- ユーザーレビューの表示
- Webサイトの階層を浅くする
ユーザーが回遊をやめてしまう理由を極力無くしたデザイン・情報設計を行うことが、回遊性を高めるコツです。回遊性はGoogleアナリティクスで調査することができるため、データを基にデザインの作成・改善を実施しましょう。
ページスピードを高速化
ECサイトのユーザーがスムーズに買い物をするためには、回遊性に優れたデザインだけでなくページが表示されるスピードも重要です。Webサイトの表示が遅いと、ユーザーの離脱要因となってしまいますし、SEO上も不利になります。
特に、ECサイトは情報量も多くたくさんの画像を使用するため、ページの表示が遅くなりがちです。ページスピードについてはGoogleが提供するツール「PageSpeed Insights」で計測できるため、デザイン制作時もリリース後も定期的にチェックすることをおすすめします。
ページスピードについては、サーバーのスペックを強化するだけでなく、画像軽量化やコーディングテクニックでも改善することができるため、ぜひ実施しておきましょう。
商品・ブランドのイメージに合ったデザイン
ECサイトのデザインは、分かりやすさ・使いやすさも大事ですが、もちろんデザインの本質であるビジュアルも大事です。ECサイトの場合は、オシャレでクオリティが高いデザインを作成することも効果的ですが、それ以上に自社ECサイトの商品・ブランドのイメージ・世界観に合ったデザインを行うことが非常に重要です。
例えば、高級なアクセサリーや時計を扱うECサイトがセール情報満載のネットスーパーのようなデザインではイメージが崩れてしまい、ブランド・ショップの魅力も低減してしまうでしょう。逆もまた然りです。
ECサイトのビジュアルについてデザインする際には、必ず自社の商品・ブランドおよびターゲットユーザーを想定して、イメージや世界観を崩さないデザインを行いましょう。
PC・スマホどちらでも使いやすく
ここまで売上に繋がるECサイトデザインのポイントについてご紹介してきましたが、これらはパソコン・スマホ・タブレット等、どのデバイスで表示する場合にも当てはまるスキームとなります。
なぜなら現代ではスマートフォンの普及により、スマートフォンでのインターネット利用者はパソコンを上回っているためです。ECサイトもスマートフォンからの利用の方が多い傾向にあります。
■インターネット閲覧時のデバイス利用率
スマートフォン:59.5%
パソコン:48.2%
タブレット:20.8%
ECサイトのデザインにおいても、パソコンのみ・スマートフォンのみといった特定のデバイスに注力することは、他のデバイスからの購入の機会損失となります。
ユーザーの利用デバイスに依らずECサイトの有用性・効果性を発揮できるように、今回ご紹介したデザインスキームはどのデバイスにも適用するようにしましょう。
参考になるECデザインが見つかるサイト
ECサイトのデザインについて理解を深めたい方や、自社ECサイトに最適なデザインを見いだしたい方は、「上質なデザインにたくさん触れる」ことがおすすめです。ECデザインを参考にする際に役立つのが、数多くの上質なデザインを集めたギャラリーサイトを活用することです。
ここでは、上質なECデザインを参考にしたい方におすすめのギャラリーサイトを3つご紹介します。ぜひチェックしてみて下さい。
MUUUUU.ORG
MUUUUU.ORG(ムーオルグ)は、世界中のハイクオリティなWebサイトを厳選して集めた、Web制作業界では誰もが知っているギャラリーサイトです。主に縦長デザインのWebサイトを中心に、あらゆるジャンル・業種のサイトが数多く掲載されています。
見やすさ・使いやすさ・分かりやすさにこだわって作られたギャラリーサイトであるため、トレンドのデザインを把握したり、好みのデザインを見つけやすいことが特徴。国内だけでなく海外のサイトも掲載されているため、海外のデザイン事情についても把握することができます。
上質なECサイトデザインを数多く参考にしたい方は、必ずチェックしておきたいギャラリーサイトです。
SANKOU!
SANKOU!は、Webデザインの参考になる国内のWebサイトを集めたギャラリーサイトです。Webサイトのタイプ・ジャンル・業界・カラー等さまざまなカテゴライズがされており、イメージに近いデザインを見つけやすいことが特徴です。
ギャラリーを何気に眺めるだけでも、国内ECサイトデザインのトレンドや定番を把握できるため、非常におすすめのサイトです。
ikesai.com
ikesai.com(いけてるサイトドットコム)は、2003年から運営されているWeb制作業界御用達のWebデザインギャラリーサイトです。名称の通り洗練されたデザインのWebデザインを厳選して紹介しているサイトで、カテゴリーも豊富に用意されています。
ECサイト・オンラインサイトも多数ラインナップされているため、ハイクオリティなECサイトを参考にしたい方や、洗練されたデザインを参考にしたい方は、ぜひチェックしてみることをおすすめします。
ECサイトデザインの最新トレンドは?
Webサイトデザインのトレンドは進歩や移り変わりが非常に早く、わずか数年で全くと言っていいほどトレンドが変わることも珍しくありません。ECサイトのデザインも同様であるため、ECサイトのデザインについて意識している方は、ECサイトデザインのトレンドも押さえておくことがおすすめです。
ここでは、ECサイトデザインの最新トレンドについてご紹介します。
ミニマルデザイン
近年は必要最小限のモノで暮らすミニマリストの活躍が目立ちますが、Webデザインにおいても必要最小限の情報で作られたミニマルデザインがトレンドとなっています。
ミニマルデザインは、シンプルでオシャレなだけでなく、無駄な情報やコンテンツが極力省かれているため、必要な情報や伝えたい意図が強調されるのが特徴です。また、写真・動画を強調したり美しく見せたりするのに適しているため、ブランディングや高級感を演出しやすいというメリットもあります。
ECサイトデザインにも適した手法であるため、高級品やブランドを扱うEC事業者の方は、たくさんのデザインをチェックしておくことをおすすめします。
ハンバーガーメニュー
ハンバーガーメニューとは、Webサイト内に三本線のアイコンで設置されるメニューのことです。クリック(タップ)することで収納されているメニューがスライドして表示されます。三本線のアイコンがハンバーガーのように見えることが名称の由来となっています。
スマホ・タブレット用のWebサイトに多用されており、普及率も高いため、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ハンバーガーメニューはスペースを取らないため、どのようなWebデザインにも設置できることが特徴。デザインの自由度を高められることはもちろん、スマホ・タブレット等のスペースが限られたデザインにも採用しやすいことがメリットです。
メインビジュアルに動画を使用
近年では動画コンテンツに対するニーズが高まっており、Webデザインにおいてもトップページのメインビジュアルに動画を使用するのがトレンドとなっています。
動画は情報量・情報伝達力が非常に高く、ECサイトのメインビジュアルとしても有用です。ブランディング・プロモーション・認知拡大・差別化といったさまざまなメリットを期待することができます。
また、ECサイトにおいてはメインビジュアルだけでなく、商品の使い方や特徴といった商品ページの商品紹介に活用することも非常に効果的です。
動画はうまく使えばECサイトの世界観演出や販売促進に繋げることができるため、EC事業者が必ずチェックしておきたい手法のひとつです。
無限スクロール可能なページ
無限スクロールとは、コンテンツを下にスクロールする度にコンテンツが自動的にロードされるページのことです。ユーザーは別のページに遷移することなく沢山のコンテンツを読み込むことができるため、大量の情報をまとめてチェックするようなページに適しています。
代表的な使用例では、Facebook・Twitter・InstagramといったSNSに採用されており、ユーザーは写真や投稿をまとめてチェックすることができます。ECサイトにおいても、商品を一覧で見せたい場合などに活用することができるでしょう。
無限スクロールはトレンドの手法ではありますが、じっくり読みこまれるコンテンツには適さないため、採用の可否が分かれる手法です。デザインに使用する際には、採用するページが無限スクロールに適しているかを慎重に判断しましょう。
カルーセル
カルーセルとは、複数の画像・コンテンツをスライド表示で見せることができるWebデザイン手法です。限られたエリアで複数の画像・情報を提供することができることが特徴です。
カルーセルはファーストビューの有効活用を主な目的として使用されることが多く、Webサイト・Webサービス・ECサイトなどさまざまなサイトのトップページで多く活用されています。
ECサイトにおいては、訴求力の高い画像を用いたブランディングや、イベント・キャンペーンのバナー表示といった活用事例が見られます。
ECサイト構築・リニューアルのステップを解説
ECサイトのデザインの重要性や必要なポイントについて把握・理解できた方は、実際にECサイトのデザインがどのようなプロセスで進められるか知っておきたいのではないでしょうか。
ここでは、ECパッケージを提供するベンダーの目線から、ECサイト構築プロジェクトにおけるデザインの検討・設計・制作がどのように進められていくかをご紹介します。
調査、分析、プランニング(ECサイトデザイン要件定義)
通常我々がお受けするECサイト構築のプロジェクトではシステムにどのような機能を準備するべきかという機能要件や、パフォーマンスやセキュリティといった非機能要件を決める要件定義工程を2~3ヶ月程度の期間で実施致します。
スケジュールや進め方によって要件定義にかかる期間はこれより短かったり、長かったりするのですが、おおよそ週に1,2回程度の打ち合わせをお客様と繰り返しながらシステムの要件を決めていきます。
このシステム側の要件定義と並行して、新しいサイトではどのようなデザインにすべきかの検討が進みますどこまで実施するかはケースバイケースですが、まずは以下のような調査を実施します。
- ヒューリスティック調査(デザイン会社による主観的な調査)
- 競合調査(競合他社とのデザイン面に関する比較)
- インタビュー(実際にご利用されるお客様にインタビュー)
- 定量調査(現行サイトのアクセス分析など)
中には「今のサイトと比べて今っぽくなっていればそれでいいよ」というざっくりとしていて調査が不要なケースもなくはないのですが、我々にご依頼頂くECサイト構築のご依頼はビジネスの拡大を目的とされている場合がほとんどですので、根拠に基づいたデザインにする目的で調査を実施されます。
一方で、ECに限らずウェブサイトのトレンドの移り変わりは早いので、初期段階ではあまり調査にコストをかけず、ローンチ後のアクセス分析を通じてデータドリブンな改善していく方針を選択されるケースもあります。
またこれもやるかやらないかはお客様次第になりますが、「このサイトはどんなお客様がどんな時に、どんな風に使って、どのようなことを期待するのか」といったような、このサイトのターゲットを定義した上で、お客様がどのような行動を取るのかを可視化していきます。
例えばどんなことを実施するかというと、代表的には以下の内容を決めていきます。
- ユーザー定義
- セグメンテーション、ペルソナ定義
- カスタマージャーニーマップ作成
どんなお客様がターゲットなのかを設定しないと、どのようなデザインが適しているかも決めづらいですし、思い描くお客様像がバラバラだと、どのデザインがふさわしいかも決めることが困難です。デザインを決定する上で重要なだけでなく、このプロジェクトに関わる誰もが共通のお客様像を思い描けるようにしておくことで、プロジェクト全体のコミュニケーションが円滑になるという側面もあります。
ECサイトデザイン設計(ワイヤーフレーム)
現行サイトや競合がお客様の調査を行った、お客様がどのような行動するかの仮説も立った、と、ここまで進むと、いよいよ目に見えるデザインに入れるかと思われるかもしれませんが、実はまだ早いです。画面数や画面にどのような要素が必要かを洗い出さないと、デザインに入ることは出来ません。
我々がお受けするプロジェクトではSI Web Shoppingというパッケージがありますので、どんな画面があって、どんな要素が画面に出ているのかは確認することが出来ます。しかしながら、ほとんどのお客様が機能のカスタマイズを実施するので、カスタマイズ内容を踏まえた上で画面数や要素を考える必要があるのです。
システムの要件定義では、どのような機能が必要かを決めていくのですが、この段階ではまだ画面はあまり出てきません。次のシステムの基本設計段階に移ったところで画面が出てきて、追加や変更になる機能が画面上ではどのような表現になるのかの検討が始まります。
「○○する機能を作る」と要件定義で決まったとしても、画面上でどのような動きが必要になるかを画面で確認することで想定の抜け漏れや、あるいは不要なものが出てくることもしばしばです。そのため、この段階ではまだあれが増えたこれが減ったということが起きるので、ここが固まり始めたところでデザインとしてようやく「ワイヤーフレーム」の設計に入ることが出来ます。
もちろんスケジュールによっては、先にワイヤーフレームが走り出すケースもあるかと思いますが、修正を出来るだけ抑えるという観点では、システムの基本設計が済んだ画面から着手していくという進め方が望ましいでしょう。
システムの要件定義、基本設計を踏まえて、ようやく目に見える「デザイン」であるワイヤーフレームと向き合うこととなるのです。
ECサイトデザイン制作
デザイン会社が作成したワイヤーフレームが承認されると、次はそのワイヤーフレームに基づいたデザインの制作に入ります。
デザインを作成する前に、デザインの見た目面でのコンセプトを決定します。例えばコーポレートカラーやブランドカラーをベースにどのような配色にするのか、フォントをどうするのか、全体的な見た目の雰囲気に関わるコンセプトを決めていきます。コンセプトが固まったら、そのコンセプトに基づいてページデザインの作成が進んでいくのですが、まだこの時点でのデザインは画像なので、実際に動くものではありません。
見積もりの段階で必ず確認頂きたいポイントとしては、「デザイン会社がデザイン制作をどこまで実施するか」です。具体的には納品物に作成したデザインの画像に基づいた、htmlおよびcss、javascriptが含まれているかどうかを必ず確認してください。
我々もシステムのお見積をする際に、「デザインはhtml、cssでご納品頂く」という前提条件を記載させて頂きますが、画像だけお渡し頂いてもそれを元にhtmlにコーディングを行わなければシステムに組み込むことが出来ません。ECシステムのプログラミングとデザインをhtmlに起こすコーディングは分野としては異なるのですが、システム会社もデザイン会社もどちらも作業する想定でなかったとなると思わぬ費用増につながってしまいますので、欠かさず確認すべきでしょう。
デザインのシステムへの組み込み
デザインが作成され、それに基づいたhtml、cssが納品されるといよいよ動くシステムへの組み込みとなります。デザインの組み込み作業は、システム側のプログラムの製造フェーズで行うことが多いので、システム会社側の理想のスケジュールとしては、製造に入る前の「詳細設計」が完了するタイミングと同じタイミングでコーディングされたデザインが納品されるのが望ましいです。
とはいえ、毎回理想通りに進むとは限らず、実際には完了し、承認されたデザインから順番に納品されていく、という進め方になるケースもあります。これが大幅に遅れることがあるとシステム側の開発スケジュールも遅れることになる場合もあります。同時に色々な検討を進めるのは大きな負担ではありますが、「システムを決めてからデザインはどこにお願いするかゆっくり考えればいい」という形だと、思わぬスケジュール延期につながってしまいますので、なるべく早く検討を進めるのが望ましいです。
まとめ
情報の提供だけでなく商品販売を行うECサイトでは、デザインの良し悪しは商品の売れ行きにも大きく影響します。そのため、単にビジュアルが良いだけでなく、訴求力・視認性・利便性まで意識したデザインを行うことが重要なポイントです。
これからECサイトを立ち上げる方は、今回ご紹介したポイントを押さえたデザインを行うことで、売上向上に繋がる効果的なECサイトを作成できるため、ぜひ意識してみて下さい。
弊社では、ECサイトの構築・運営・売上アップに役立つ資料を多数ご提供しています。ECサイト運営について理解を深めたい方や、ビジネスを成長させたい方は、ぜひご活用ください。
- カテゴリ:
- ECサイト構築
- キーワード:
- ECサイト構築