2024年問題とは?与える影響や物流業界が解決すべき問題もご紹介

 2022.09.05  株式会社システムインテグレータ

物流業界はドライバーの人手不足や再配達の頻発など現状でも多くの問題を抱えています。
しかし、これらの問題に加えて今後新たに「2024年問題」が不安視されていることはご存知でしょうか。本記事では、2024年問題とはどのような問題か、どのような影響が出るのかなど、分かりやすく説明していきます。

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2024年問題とは

2024年問題とは?与える影響や物流業界が解決すべき問題もご紹介 1

2024年問題とは「働き方改革関連法」の施行にともなって、物流業界で2024年に起こるとされている様々な問題の相称です。

この関連法の施行に伴い、自動車運転業務の年間時間外労働は上限が960時間に制限されます。これによりトラックドライバーの長時間労働を是正し、労働環境を良くしようという狙いがあります。しかし、この労働時間の上限設定により、ドライバーが長距離でモノを運ぶことが難しくなったり、運送業界の売り上げ減少や、それに伴うドライバーの収入減少などの問題が発生し、物流業界に大きな影響を与えると予想されています。

以下では、2024年問題とは何か、その要因である働き方改革関連法とは具体的にどのような内容なのかを解説します。

ドライバーの時間外労働時間に制限が設けられる

2024年問題は、働き方改革の一環として、2024年4月1日から「自動車運転の業務における時間外労働の上限規制」が適用されることで起こると予想されています。

そもそも働き方改革関連法案とは、労働者がより適正な労働環境・労働条件で働けるように日本政府が定めた一連の改正法案です。労働基準法や労働安全衛生法、労働契約法などさまざまな法律に変更を加えるものであり、柱のひとつとして長時間労働の是正に関する労働基準法の改正が行われました。これまでは限度基準告知にとどまっていた時間外労働に法律上の上限が設けられ、大企業は2019年4月から、中小企業でも2020年4月からすでに施行されています。

このうち、一部の事業・業務は5年間の猶予期間が設けられており、そのひとつが「自動車運転の業務」です。物流業界のドライバーはこれにあたるため、2024年3月までは労使が合意した場合の時間外労働に実質的な制限がありません。

しかし、猶予期間が終わる2024年4月からは、物流業界のドライバーにも時間外労働の上限が適用されます。具体的には、特別条項付き36協定を締結した場合のドライバーの時間外労働は、上限が年間960時間までとなります。物流業界のドライバーは長時間労働が常態化していますが、適用後はたとえ人手不足だとしても、上限を超えてドライバーを働かせることはできません。

時間外労働時間の制限を超えた際の罰則が設けられる

働き方改革関連法の特筆すべき点は、時間外労働の上限を超えた際の罰則規定が設けられたことです。違反した事業者は「6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦」を科される可能性があります。もしも、利益優先で時間外労働の上限規制を破ってしまった場合、かえって大きな損害を招くリスクがあるわけです。

なお、ほかの事業・業務においては、「時間外+休日労働の合計が月100時間未満」「時間外+休日労働の2~6か月平均が1か月あたり80時間以内」「時間外労働が45時間を超えるのは年6か月まで」とする規制があります。しかし、自動車運転の業務に関しては、年間の時間外労働が960時間を超えるか否かで違反の有無が判断されます。

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現在、物流・運送業界が抱えている問題

物流業界は2024年問題以前に、現状でも深刻な問題を抱えています。

そのひとつがドライバーの人手不足問題です。長時間の運転が不可欠なドライバーの業務は、負担の大きい仕事として一般に捉えられており、求人募集しても多くの人が集まりません。それゆえ、人材の補充が思うようにいかず、既存のドライバーを長時間労働へ駆り立てる形になってしまっています。

また、頻発する再配達も大きな問題です。国土交通省は、配達物の約2割は再配達になっているという調査結果を報告しています。多くの物流業者は無料で再配達を行っているため、こうした現状は経営効率を悪化させ、ドライバーの負担をさらに増加させてしまっているのです。
(参照元:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/re_delivery_reduce.html

物流業界としてもこのような状況に無策でいるわけではなく、物流システムやアウトソーシングサービスの利用などを通して、問題の改善に取り組んでいます。自動運転車ドローンによる配達ロボットによる業務の自動化など、最新のテクノロジーの活用も今後期待されている取り組みです。

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2024年問題がもたらす影響

上記のような既存の問題に加えて、物流業界へ新たに降りかかってくるのが2024年問題です。以下では、2024年問題が物流業者にもたらす影響について解説します。

運輸会社や物流会社の売上が減る

2024年問題によって第一に想定されるのが、運輸会社や物流会社の売上が減ることです。ドライバーの労働時間に上限ができることは、それだけ自社が請け負える仕事は減るということであり、会社の売上も落ちる可能性があります。

もちろん、ドライバーの時間外労働が減ればその分、人件費を減らすこともできますが、賃料などの固定費は従来と変わらないため、減った分の売上額を補填するには至らないでしょう。一人を長く働かせられない分、人海戦術で仕事を回すことも考えられますが、ドライバーは元から人手不足であるため、それも期待できません。

ドライバーの収入が減る

2024年問題は企業だけでなく、ドライバーの生活にも影響を与える可能性があります。時間外労働時間が減れば、それにともなって残業代も減ってしまうからです。もしも、ドライバーが時間外労働を苦にせず、むしろ残業代のほうを重視していた場合は、収入が減ることで離職してしまう可能性が考えられます。

そうなると、ますます人手不足が悪化することになるでしょう。残業代ありきとはいえ、高収入目当ての求職者も減ってしまうかもしれません。

荷主が支払う運賃が増える

物流会社や運送会社のクライアントである荷主も、2024年問題と無縁ではいられません。先の理由から売り上げの維持が難しくなれば、運送会社などは利益維持のために運賃を上げるかもしれません。今よりも運賃が上がれば、それだけ荷主の負担する物流コストも重くなってしまいます。

現状、EC業者などは「送料無料」を消費者へのアピールポイントにしている場合がありますが、運賃が高騰すれば、そうしたアプローチは継続しにくくなるでしょう。

2024年問題を解決するために行う必要がある施策

それでは2024年問題に対して物流業界はどのような対応をすべきでしょうか?     こちらでは2024年問題に備えて物流業界が取り組むべき施策について解説します。

生産性や効率の向上

第一に必要な施策は、生産性や業務効率を向上させる取り組みです。今後人手不足は解消されるどころか、ますます深刻化していくと想定されます。その状況で企業がするべきことは、今よりも少ない人数、少ない時間で、より効率的に作業をこなせるようになることです。

たとえば、近年はICT活用によるビジネスの変革「DX」に多くの企業が取り組んでいます。物流業界でもAIやドローン、ピッキングロボットなどの最新のテクノロジーを積極活用していかなければなりません。

運転時間の見直し

ドライバーの運転時間の見直しも着手すべき取り組みです。ドライバーの労働時間の多くは運転業務で占められているため、運転時間を短くすることで、時間外労働の上限規制に抵触しにくくなるでしょう。

とはいえ、単に運転時間を減らすだけでは売上が減ってしまう可能性があるので、配送ルートや荷積みの最適化などによって、運転時間を短縮できる余地がないかを検証することが大切です。また、運転時間以外にも、荷下ろしなどで生じる待ち時間の短縮に努めることでも、ドライバーの労働時間や労働環境の改善につながります。

まとめ

トラックドライバーの長時間労働を改善するためには、働き方改革の適用は必要と言えます。しかしそれに伴って人手不足はより深刻になることが想定されますし、事業者は売上減少に繋がらないような施策をとらなければいけません。

また、従来の業務についても様々なツールやテクノロジーを活用することで業務の負荷を減らし、生産性を上げられる部分があるでしょう。2024年問題の取り組みと併せて、既存業務の改善も行うことが重要です。    

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