ラストワンマイルとは?抱えている問題や解決の兆しになる策も併せてご紹介

 2022.09.05  株式会社システムインテグレータ

ラストワンマイル」という物流用語をご存知でしょうか。消費者の手元に荷物が届くまでの物流の最終区間を意味する言葉で、物流業者やEC事業者にとって大きな意味を持ちます。本記事ではラストワンマイルの概要やMaaSとの関係、物流のラストワンマイルが抱える問題および解決策について解説します。

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物流業界のラストワンマイルとは

ラストワンマイルとは?抱えている問題や解決の兆しになる策も併せてご紹介 1

ラストワンマイルとは、物流プロセスにおいて商品を顧客に届けるまでの最後の1区間のことです。「ワンマイル」とは言いますが、単なる距離的な意味ではありません。「ラストマイル」と縮めて呼称することもあります。

ラストワンマイルは、元々は通信業界において、最寄りの通信基地局とユーザーをつなぐ最終区間を意味する言葉として使用されていました。最近では、上記のような意味で物流業界においてもしばしば使用されています。物流業界やEC業界にとって、ラストワンマイルは、届け先の顧客と直接に接触するポイントでもあるため、サービスの強化やほかの事業者との差別化を図るための非常に重要な区間として注目を集めています。同時に、ドライバー不足や再配達問題など、多くの課題が現在指摘されているところです。

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ラストワンマイルのカギを握る「MaaS」とは

物流におけるラストワンマイルのカギを握る存在として、近年「Maas」という新しい概念が注目を集めるようになりました。以下では、MaaSとはどのような概念で、ラストワンマイルとどのように関連するのかを解説していきます。

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)とは

MaaSとは、“Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)”を省略した言葉で、「マース」と読みます。ごく簡単に言えば、MaaSとはICT活用を軸にして、交通サービスの向上を図る概念です。

たとえば従来、私たちは目的地までの移動手段について調べる際、鉄道・バス・飛行機などの運行状況を個別に調べなければなりませんでした。しかし最近では、スマートフォンで「Googleマップ」を利用すれば、徒歩・車・電車・飛行機などさまざまな移動手段を自由に選択して、目的地までの最適なアクセス方法や移動時間を簡単に検索できるようになっています。

このように、交通情報を横断的に検索できるのもMaaSの一段階ですが、国土交通省や経済産業省ではこうしたモビリティ(移動)に関するサービスをさらに横断的に進化させていくことを図っているのです。

MaaSがラストワンマイルに与える影響

では、MaaSは物流におけるラストワンマイルにどのような影響を与えるのでしょうか。経済産業省は、物流領域に関するMaaSを「物流MaaS」と呼称しています。物流MaaSでできることはさまざまに考えられますが、たとえばセンサー技術を使ったトラックの位置情報や積載状況の見える化による輸配送の効率化などが挙げられるでしょう。

物流のラストワンマイルの問題としては、ドライバーの人手不足などが挙げられます。しかしMaaSによって、何を積んだトラックがどこにあるのかリアルタイムに見える化できるようになれば、配送ルートを最適化したり、荷物を混載したりして、配達業務の効率化が期待できます。

配達業務が効率化すれば、ドライバーの人手不足解消や労働環境の改善、安全性の確保につながります。顧客のもとに商品が届くスピードもはやくなるなど、付加価値や顧客満足度の向上も見込めるでしょう。MaaSは一般的な交通サービスに限らず、物流においても将来性を有望視されているのです。

物流MaaSについては以下の記事でより詳しく解説していますので、是非あわせてご覧ください。
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物流のラストワンマイルが抱える問題

続いては、物流のラストワンマイルが現在抱えている問題について解説していきます。

ドライバーの不足

第一の課題としては、ドライバーの慢性的な人手不足問題が挙げられます。近年ではEC業界の拡大とコロナ禍による影響が相まって、物流の需要にドライバーの供給が追い付いていません。一方、日本では少子高齢化のさらなる進行が今後確実視されており、人手不足が早期に解決されることは見込めないのが現状です。

それゆえ、今後の物流業界には、単純に人を増やすことで問題解決を図るのではなく、ICT活用による業務効率化や自動化などによって、少ない人数で物流業務を遂行できるような新しい仕組みが求められています。

再配達によるドライバーへの負担

再配達によるドライバーへの負担も深刻な課題です。国土交通省の調査によると、宅配便の取扱個数はECによる通信販売の普及などを受けて、2008年度は約32.1億個だったのが2017年度時点で約42.5億個と飛躍的に増加していますが、そのうちの約2割の荷物が再配達になっているようです。
(参照元:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/re_delivery_reduce.html

多くの物流業者は再配達業務を無料で行っているため、こうした再配達業務の多さは非常に大きなコスト負担となっています。もちろん、これはドライバーにとっても深刻な業務負担となっており、ただでさえ人手不足な状況で、再配達業務によって労働時間が余計に長くなってしまっているのです。

人件費の高騰

人手不足が生じている一方で、人件費が物流会社の利益を圧迫しているのも大きな問題です。ECサイトの中には「送料無料」などを売りにしているところもありますが、そうしたサービスの存在は結果的に物流会社の利益率に悪影響を及ぼしています。

物流会社としてはコストダウンのために人件費を削りたいところですが、容易いことではありません。最近では、注文者の自宅までの配送に必要な人件費を削減するために、注文者自らコンビニや駅などの受け取り場所に出向くサービスもありますが、そうなると今度は受け取り所への委託費が発生するため、あまり有効な効果を挙げられていないのが実情です。

ラストワンマイルが抱える問題を解決するには

ラストワンマイル問題を解決するために、物流業界はどのような取り組みをしていけばよいのでしょうか。

第一に考えられる対策は、ロボットやドローン、AI技術といった最新のテクノロジーの活用です。たとえば、人間に代わってロボットに単純な物流業務を遂行させれば、それで空いた分の人員をほかの仕事に割り当てることができます。荷物の積み下ろしなどの体に負担の多い作業を代行させれば、人間である従業員の安全を守ることにもつながるでしょう。

AIによる自動運転技術などもドライバーの人手不足に対する直接的なソリューションになります。あるいは、小型無人機のドローンを使った配送技術 が今後進歩すれば、人手不足のみならず、交通渋滞などの問題も回避できるようになるでしょう。大手通販会社もドローンの有用性に目を向け、実際に実験を開始しているほどです。

ギグ・エコノミーサービスも解決策のひとつとして期待されています。ギグ・エコノミーとはインターネットなどを通じて、企業に雇用されることなく単発で仕事を請け負う仕組みのことです。たとえば、コロナ禍で一躍有名になったウーバーイーツもギグ・エコノミーの一例です。こうした仕組みは物流業界にも転用可能で、配達業務を社外の一般人にアウトソーシングする仕組みを構築することで、人手不足の改善が見込めるでしょう。

まとめ

ラストワンマイルはEC事業者にとっても重要な顧客接点です。顧客満足度の向上と合わせて、現在問題になっているドライバーの人手不足や労働環境についても加味してラストワンマイルの提供を考えなければいけません。楽天はドローン配送に力を入れていたり、セブン&アイグループはオムニチャネル戦略に力を入れていたりと、テクノロジーを活用することで様々な物流体制が整ってきています。

ECサイトの利用が増加している今、ラストワンマイル問題だけでなく物流業務全体の見直しが必要となってくるでしょう。

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