ECサイトでは、社内の機密情報・顧客の個人情報・カード情報など数多くの重要な情報を取り扱うため、情報セキュリティには細心の注意を払う必要があります。しかし、ECサイトでの情報漏洩事故は毎年のように発生しており、大きな損害を被るEC事業者が後を絶ちません。
当記事では、ECサイトにおける情報漏洩の概要・原因・要因・事業者が受ける損失・対策方法について解説しています。情報漏洩はECサイトの運営を行っているのであれば無視できない問題であるため、EC事業者の方はぜひご参考下さい。
情報漏洩とは
情報漏洩とは、企業が保有している外部に漏れてはいけない情報が流出してしまうことです。ECサイトでは、個人情報・クレジットカード情報等の重要な情報・事業者の機密情報などが漏洩してはならない情報に該当します。
情報漏洩事故を起こしてしまうと、顧客への損害賠償・社会的信用の失墜・ブランド毀損など、EC事業者にとって致命的ダメージともなりかねない損失を受ける可能性があります。
情報漏洩事故は毎年のように発生しているため、EC事業者は自身のビジネスを守るためにも十分な知識を身に付けると同時に万全の対策を行っておくことが重要です。
情報漏洩が起きる原因
ECサイトの情報漏洩は、故意・過失を含めさまざまな原因から発生します。ECサイトを運営する事業者としては、情報漏洩事故を未然に防ぐためにも、どのような原因があるのかを把握しておくことが重要です。
以下に解説していますので、ぜひご確認下さい。
紛失・置き忘れ
情報漏洩の最も多い原因が、パソコンやタブレット等の端末・USBメモリ等の記録媒体・重要書類等の紛失・置き忘れです。スタッフの不注意によりこれらの紛失・置き忘れが起こることで、取得した第三者に情報が漏洩するケースが多く発生しています。
良心的な方であれば取得した紛失物の届出を行ってくれる可能性もありますが、誰に拾われるかは分からないため、対策として紛失・置き忘れを起こさないように社内スタッフに周知しておく必要があります。
誤操作
社内向けの情報を取引先に送信したり宛先を間違えたりといった、コミュニケーションツールやメールの誤操作による情報漏洩も多く発生しています。特にメールの一斉送信を行う際にミスが多発している傾向にあるため注意が必要です。
ECサイトの運営はクラウドサービス・電子メール等を活用した業務の比率が高いため、ツール・メールの操作方法や情報の取り扱いについてはルールを定めたり、セキュリティ研修を実施したりするなど、誤操作による漏洩を防ぐ対策も必要となります。
不正アクセス
近年では外部の悪意ある第三者からの不正アクセスによる情報漏洩の被害も目立ってきています。
セキュリティの穴を突破した情報の盗聴、情報を盗み出すウイルスやマルウェアへの感染、フィッシング詐欺 など、不正アクセスによる情報漏洩の手口も多様化・巧妙化しており、EC事業者にとっては大きな脅威となっています。
現代のEC事業者は、このような外部からの脅威に対抗するためにも万全のセキュリティ対策を施しておく必要があります。
フィッシング詐欺については、以下の記事にて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
フィッシング詐欺とは?利用者・運営者それぞれに必要な対策を解説
管理ミス
多くのEC事業者は、顧客情報・機密情報の取り扱い・管理に関しては一定のルールを設けています。しかし、誤ってルールが守られなかったり社内に浸透していなかったりすることでイレギュラーな管理が行われると、情報漏洩の原因となるケースもあります。
ルールや禁止事項は遵守されなければ効力を発揮できないため、業務に携わる従業員には徹底して遵守させることが重要です。
内部不正
悪意ある人物による情報漏洩は、外部だけでなく内部から発生するケースもあります。つまり、社内スタッフにより意図的に情報の盗み出しや漏洩が行われる可能性もあるということです。
内部不正により持ち出された情報は競合他社に渡っているケースが多く、外部からの攻撃よりも対策・対処が困難であるため、被害を受けた場合のダメージは大きなものとなります。
致命的なリスクとなる情報を持ち出される可能性も高いため、社内ルールの徹底・アクセス権限の設定・監視システムの導入など、可能な限りの対策を講じておくことが重要です。
その他の要因
情報漏洩が起こる要因は、これまでご紹介した4点が大半を占めています。割合としては少ないですが、上記以外にも盗難・設定ミス・バグ・セキュリティホール等により情報漏洩が起こってしまうケースもあります。
情報漏洩が起きた場合の損失
情報漏洩事故が起こると、ECサイト運営事業者は多大な損失を被ることとなります。事業者としては、情報セキュリティに関するリテラシーを向上させるためにも、具体的にどのような損失を被るのかを把握しておく必要があります。
以下に解説していますので、ぜひご参考下さい。
賠償金による金銭的な損失
ECサイト運営事業者が情報漏洩事故を起こすと、サイトの規模や利用者数にもよりますが、一般的に損害賠償として多額の賠償金を支払うこととなります。過去には実際に数千万円~数億円の賠償金を支払った事例も存在していますので、賠償金による経済的損失を免れることはできないでしょう。
賠償金の額によっては事業の継続・企業の存続が難しくなるケースもあるため、EC事業者はリスクの大きさを肝に銘じておく必要があります。
社会的信用の低下
情報漏洩事故を起こしたEC事業者は、情報管理やセキュリティ対策が不十分であるとみなされ、社会的信用や企業イメージが著しく低下します。
社会的信用を失ったEC事業者は、顧客離れ・利用率減少・ブランド毀損などECサイトの運営にも大きな影響を受けることとなり、売上をあげることが難しくなります。
一度失った社会的信用や企業イメージを回復させるには、多大な労力と時間が必要となるため、EC事業者はリスクの重大性を認識しておく必要があります。
情報漏洩を引き起こす要因
情報漏洩を引き起こす事業者には、直接的な原因だけでなく潜在的な要因を抱えているケースが多く見られます。ここでは、情報漏洩を引き起こす要因について解説します。
これから情報漏洩対策を行うにあたって必ず押さえておくべきポイントとなるため、ぜひご参考下さい。
セキュリティ対策にかける予算の不足
情報漏洩を防ぐには、セキュリティ製品の導入・環境改善・人材の採用・人材の育成・専門企業への外注など、多額の予算が必要となります。予算不足によりセキュリティ対策にかける予算を十分に確保できない場合は、当然ながら強固なセキュリティ対策を実施することができません。
業績が十分でない等の理由から予算の確保が困難なケースもあるため、セキュリティ対策の重要性を認識しつつも潜在的な情報漏洩リスクを抱えているEC事業者は少なくありません。
セキュリティ対策にあたる人材や技術力の不足
情報漏洩に対して十分な対策を行うには、相応の人材・技術力が必要となります。しかし、近年ではIT技術の急速な進化やITビジネスを取り巻く環境の変化が激しく、人材・技術力の確保が追い付いていないケースが少なくありません。
リソースが不足するとセキュリティ対策も不十分となり、情報漏洩を引き起こすリスクが高まります。特に人材の確保が難しい中小規模の企業では、人材・技術力が不足しやすい傾向にあるため注意が必要です。
情報漏洩を防ぐ対策
情報漏洩が起こるとECサイトの運営も運営元である企業も多大な損害を被るため、事業者としては可能な限りの対策を講じておくことが重要です。
情報漏洩を防ぐ具体的な対策について以下に解説していますので、ぜひご参考下さい。
ECサイトのセキュリティを強固にする
ECサイトの情報漏洩を防ぐ最も基本的な対策は、技術的脆弱性からのリスクを防ぐために、ECサイト自体のセキュリティを強固にすることです。従業員のセキュリティ意識を高めても業務の基幹であるECサイトのセキュリティが弱いと、リスクに対処することはできないためです。
ECサイトのセキュリティを強化するには、次のような方法があります。
- セキュリティに強いECシステムを導入する
- サーバーのOSを最新に保つ
- アクセスを適切に管理する
- セキュリティ対策製品を導入する
- 不正検知システムを導入する
- セキュリティホールを発見、対処する
ECサイト・ECシステムだけでなく、監視システムや入退室管理システム、ユーザー認証の導入など、業務に使用する端末・システム・業務環境のセキュリティ強化を行っておくことも重要です。
セキュリティに関する従業員教育を徹底
先にご紹介した通り、ECサイトの情報漏洩事故は社内の従業員のヒューマンエラーに起因したものが多くを占めます。そのため、ECサイトの運営に従事する従業員に対しては、情報セキュリティに関する徹底した教育を実施しておくことも重要な対策となります。
具体的にどのような行動が情報漏洩事故に繋がるのかを教育すると同時に、情報漏洩事故が起こった際のリスクの大きさについて認識させておくことも重要です。
従業員の情報セキュリティ・情報漏洩に関するリテラシーが向上すれば、知識不足・意識不足による情報漏洩事故が発生する可能性を低減することができます。
情報管理などのルール策定
情報漏洩を防ぐには、情報の管理・取り扱いに関してルールの策定を行い、情報漏洩に繋がる行動を制限しておくことも重要となります。例えば、以下のようなルールが挙げられます。
- 情報の不要な持ち出しを禁止する
- 私物の端末・記録装置の使用を禁止する
- 不用意な情報の放置・破棄を制限する
- 守秘義務を課す
- 業務権限・管理権限の濫用・譲渡を禁止する
策定したルールは従業員が守らなければ情報漏洩対策としては意味をなさないため、ルールの周知・遵守を徹底させる必要があります。
情報漏洩が発生した場合の報告用窓口の設置
上記のような情報漏洩対策を実施すれば情報漏洩事故が起こる確率を大幅に低減できますが、完全に事故の可能性を無くすことはできません。そのため、万が一情報漏洩事故が発生した際に、速やかに対処してリスクを最小限に留めるために、報告用の窓口を設置しておくことも重要となります。
報告用窓口への連絡方法については社内に周知しておき、緊急時のセキュリティポリシー・対処フロー等についても確立しておく必要があります。
まとめ
ECサイト事業者は数多くの顧客情報・個人情報を保有しているため、情報漏洩対策は必須です。もし情報漏洩事故が発生してしまうと、信用失墜・顧客離れ・売上不振・損害賠償などさまざまなリスクを被る可能性があるため、自社のビジネスを守るためにも万全の対策を講じておくことが重要となります。
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