ビジネスを行ううえで必要となる注文書等の書類は電子化が認められており、近年では多くの企業が電子化に取り組んでいます。従来の紙による注文書を電子化することに対して、どのような意味やメリットがあるのか知りたい方もいるのではないでしょうか。
当記事では、注文書を電子化する方法、電子化するメリット・デメリット、電子化する際の注意点について解説します。自社で注文書の電子化を検討している方や、電子化を推進する方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
注文書は電子データでの保存が可能
注文書等の業務関連の書類は保管義務がありますが、電子化しても問題ないのでしょうか。
従来は紙で発行された書類をファイル等に保管する必要がありましたが、1998年に電子帳簿保存法が施行されて以降は、一定のルールに従えば電子データで保存することが認められています。
近年ではペーパーレス化やDXが推奨されている流れもあり、注文書をはじめとした書類の電子化の流れが加速しつつあります。
注文書を電子化する方法
ここでは、注文書を電子化する方法・手順について解説します。注文書の電子化を進めたいと考えている方は、ぜひ確認しておいて下さい。
注文書をスキャンしてデータ化する
注文書を電子化する最もポピュラーな方法は、紙の注文書をスキャナーでスキャンして、PDF等で保存する方法です。画像撮影により電子化する方法もあります。
スキャナやカメラさえ用意すれば実施できるため、簡単に自社で内製できるのがメリットですが、多くの時間と労力を割かなければならない点がネックとなります。
OCRツールでデータ化する
OCR(光学文字認識)とは、紙に記載された手書きの文字をデジタル文字に自動変換する技術のことです。OCRツールを活用することで、スキャナやカメラで読み取った紙の注文書のデータをデジタル化することができます。
注文書の情報を本当の意味でデジタル化するには、記載されているテキストを手作業で入力し直す必要があるため膨大な手間と時間がかかりますが、OCRツールを活用すれば手間と時間を省いてスピーディーにテキストをデジタル化することが可能です。
導入コストが高いのが難点ですが、本格的に注文書の電子化を内製する場合にはおすすめです。
データ化作業を外部委託する
近年では、注文書の電子化に対するニーズの高まりから、専門的に請け負う業者も登場しています。クオリティの担保やリソース確保の観点から自社での内製が難しい場合は、外部の業者へ委託する方法もおすすめです。
当然コストは発生しますが、専門的な設備・技術・ノウハウを持つ業者であれば、クオリティも安定しますし自社の負担を大幅に軽減することができます。
電子商取引へ切り替える
電子商取引とは、BtoB-ECやEDIを活用して、電子データによる取引を行うことです。従来の紙ベースの取引を電子商取引へと代替することで、取引自体がデジタル化されると同時に注文書等の書類のデータ化も実現することができます。
電子商取引移行後の注文書等に関しては電子化の作業を行う必要がないため、最もおすすめの方法となります。
近年の企業間での電子商取引のトレンドであるBtoB-ECについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご参考下さい。
注文書を電子化するメリット
多くの企業が注文書の電子化を推進していますが、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、注文書を電子化する主なメリットについて解説します。注文書の電子化を検討している方は、ぜひご参考下さい。
業務効率化
注文書を電子化する最大のメリットが、情報の共有・処理・管理がスムーズに行えるようになり、大幅な業務効率化を実現できることです。効率化に繋がる具体的なポイントには、以下のようなものがあります。
- 紙媒体の注文書をシステムに入力する手間が省ける。
- オンラインでやり取りできるため、郵送の手間を省ける。
- 書類を探す手間が省け、いつでもデータの検索・参照・確認ができる。
- オンライン上でデータの共有・処理・管理を行うことができる。
- データの誤字脱字や間違いのチェックもツールを用いて手軽にできる。
- データの複製・流用が容易にできる。
受発注業務・管理業務の効率化を図りたい場合には、注文書の電子化は非常におすすめです。
コスト削減効果
紙媒体の注文書を使用していると、以下のようなさまざまなコストがかかります。
- 印刷用紙代
- インク・トナー代
- プリンターの維持費
- 郵送費
- 保管場所の確保にかかる費用
注文書の電子化を行えば、紙媒体の注文書に要するコストをまとめて削減することができるため、大幅なコスト削減効果が見込めます。注文書の種類・数が多くオフィスの規模が大きいほど、コスト削減効果も大きくなります。
セキュリティ対策になる
紙媒体の注文書は、厳密に管理しておかないと常に紛失・盗難・持ち出しといった情報漏洩のリスクが伴います。一方で電子化された注文書であれば、アクセス権限の設定・アクセスログの管理といったセキュリティ対策を施すことにより、重要な情報を安全に管理することが可能です。
このようにセキュリティリスクの防止・セキュリティ対策の実施が容易であることも、注文書を電子化するメリットのひとつです。ただし、正しくセキュリティ対策を施さない場合は逆にリスクが高まってしまう点には留意しておく必要があります。
テレワークに対応しやすい
注文書を電子化すれば、時間や場所に捉われずオンライン上でやり取りや処理を行えるため、テレワークに対応しやすいことも大きなデメリットです。テレワークでよく利用されるチャットツール・グループウェア・クラウドシステム等でも、問題なく注文データを取り扱うことができます。
紙の注文書がテレワークの障壁となっている場合においては、電子化を行うことで多くの問題を解決することが可能です。
注文書を電子化するデメリット
注文書の電子化にはメリットだけでなくデメリットもあるため、必要以上のリスクを負わないためにも、事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、注文書の電子化に伴う主なデメリットについて解説します。
移行時に負荷がかかる
これまで紙の注文書を電子データへと移行する際には、業務フロー・業務内容についても大幅な見直しを行う必要があるため、大きな負荷がかかることがデメリットです。
従業員全員が業務改革に前向きなら問題ありませんが、従来の仕事のやり方を替えたくない人や、新しい仕組みに抵抗を感じる人が一定数存在すると、説得や調整など移行の負荷が増加してしまいます。
そのため、注文書の電子化を行う際には、事前に計画を作成して段階的に進めて行くことや、電子化によるメリットを伝えて周囲の理解を得ることが重要となります。
注文書をデータ化する手間がかかる
注文書のデータ化を進める場合は、データ化の作業やデータ化した後の管理方法について社内でルールを設けて統一しておく必要があります。このルール設定や社内への周知にはある程度手間がかかります。
また、これまで郵送やFAXなどアナログな方法で注文書を取り交わしていた場合は、データ化するという作業が追加されることになるため、ここでも手間が増えてしまいます。
データ化にはメリットがあるものの、このように目先の業務だけで考えると作業が増えると感じられるケースもあるでしょう。
注文書に情報を書き込めない
従来使用されていた紙の注文書は、手軽に情報やメモを直接書き込むことができました。電子データ化された注文書にも情報やメモを挿入することは不可能ではありませんが、紙の注文書のような手軽さ・便利さはありません。
注文書に注意事項や備考を書き込んでおきたい機会は意外と多いため、手軽に書き込みができない不便さは、注文書の電子化に伴うデメリットと言えるでしょう。
注文書を電子化する場合の注意点
注文書の電子化を行う際には、単に紙媒体の書面をデータ化するだけではなく、いくつかのポイントに注意して進める必要があります。
ここでは、注文書を電子化する際に必ず押さえておくべき注意点について解説します。スムーズに電子化を推進するためにも、ぜひ確認しておいて下さい。
電子帳簿保存法に沿って保存する
注文書や発注書といった書類は電子化できることが認められていますが、電子データとして書類を保存する際には電子帳簿保存法により定められた電子保存要件に従う必要があります。
電子帳簿保存法では、真実性の確保・可視性の確保という2つの要件を満たすことが求められます。
真実性の確保
- 訂正・削除履歴の確保
- 相互関連性の確保
- 関係書類等の備付け
可視性の確保
- 未読可能性の確保
- 検索機能の確保
電子帳簿保存法の要件を理解して対応するには労力がかかりますが、適切に電子化を推進するためにも、データ化した書類の保存ルールは遵守するようにしましょう。
電子化した帳票の取り扱いや電子帳簿保存法については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご参考下さい。
データの整理方法を定める
注文書を電子化する際には、必要な情報をいつでも速やかに活用できるように、データの整理方法を定めておくことがポイントとなります。以下のような点について、社内で統一したルールを設定しておきましょう。
- ファイル名
- ファイル形式
- フォルダの分け方
- フォルダの階層
また、注文書を電子化すると利便性が高まる反面、社内のメンバーが自由にデータを取り扱うと情報が散らばってしまい、情報漏洩のリスクが高まるという懸念があります。そのため、電子化したデータの取り扱い方法についてもルールを設定しておくことが重要となります。
セキュリティに関する設定
注文書の電子化によりセキュリティ対策を強化できることは先にご紹介しましたが、それには正しいセキュリティ設定を行うことがポイントとなります。ここでは、電子化した注文書に対して具体的にどのようなセキュリティ設定を行えばよいのかを解説します。
アクセス権限の設定
注文書にアクセス制限を付与して、権限を持つメンバーしかアクセスできないようにすることで、情報の漏洩や持ち出しといった不要なリスクを回避する。
暗号化・パスワードの設定
重要な注文書に対しては暗号化・パスワードの設定を行い、送受信の過程で盗聴されても内部の情報を保護できるようにしておく。
監視システムの導入
監視システムとは、電子化した注文書へ誰がどの程度の時間アクセスしたのかを監視できるシステム。不審なアクセスを監視することで内部からの情報漏洩事故を防ぐことが可能。
データバックアップの設定
社内外からの悪意のある攻撃だけでなく、機器の故障や災害に備えるためにバックアップを設定しておくことも重要。万が一の際にもデータを消失せずに保護することができる。
まとめ
注文書の電子化はある程度の時間・労力コストを要しますが、業務効率化・コスト削減といったさまざまなメリットを得ることができます。初動は苦労が伴いますが、長期的視点で考えると経営的にもプラスに作用する部分が大きいため、電子化を検討している方はなるべく早く着手することをおすすめします。
注文書の電子化にはいくつかの方法がありますが、BtoB-ECであれば書面の電子化だけでなく受発注業務の効率化を同時に実現することが可能です。弊社では、BtoB-EC導入によるデジタル化の概要や推進方法を解説したガイドブックを提供していますので、こちらもぜひご活用下さい。
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