カスタマージャーニーとは?基礎知識をわかりやすく解説

 2022.07.05  株式会社システムインテグレータ

現在の市場は単に商品・サービスの販売を行うだけでは他社との差別化が難しく、業績向上に繋がりません。今は顧客についての理解を深めて、より良い顧客体験を提供することが重要となっています。こういった市場環境において、顧客理解の促進や的確な顧客体験向上の施策実施に役立つことから注目を集めている概念が、カスタマージャーニーです。

当記事では、カスタマージャーニーの概要・必要性から、カスタマージャーニーマップを作成するメリット、マップ作成の方法・手順・注意点までを解説しています。

マーケティング課題の発見やより良い戦略の立案を目指す方は、ぜひご参考下さい。

カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは?基礎知識をわかりやすく解説 1

カスタマージャーニーとは、直訳すると「顧客の旅」という意味となり、顧客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでの一連のプロセスを旅に見立てた概念のことです。

顧客の行動・思考・感情を理解するのに役立つ概念であるため、主に顧客体験の向上を目指すことを目的に活用されます。

ECサイトに代表される現代のビジネスでは顧客体験の向上が重要視されており、顧客理解を深めて的確な顧客体験を提供するために、多くの企業がカスタマージャーニーの概念を採用しています。

顧客体験については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご参考下さい。
オムニチャネルとは?OMO・O2Oとの違いから事例や戦略について解説

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーの各プロセスでの顧客の行動・思考・感情をプロセス順に図示したフレームワークのことです。

一般的なマップでは、まずペルソナ(対象顧客)の設定を行い、横軸に行動プロセス・縦軸に行動・接点・施行・感情を書き込んでいく構成となっています。

顧客が商品を認知してから購入後までの状態の変化を可視化することができるため、顧客との接点が複雑化しつつある現代のビジネスモデルにおいても、マップ全体を見渡すことで各プロセスで生じる課題とその対策を考えるのに役立てることができます。

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カスタマージャーニーの必要性

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カスタマージャーニーの必要性・重要性が高まっている背景には、現代社会のビジネス環境が抱える以下のような事情が挙げられます。

販売チャネルの多様化

現代では、ECサイト・実店舗・SNS・アプリ・メルマガなど、さまざまなチャネル、デバイスを駆使して商品・サービスの販売が行われています。オムニチャネルやOMOのように複数のチャネルを組み合わせた販売手法・販売戦略も一般的となっています。各チャネルに分散した複雑な顧客行動を的確に把握するためにも、カスタマージャーニーマップの活用が必須となっています。

購買行動・購買プロセスの複雑化

チャネルの多様化に伴い、人々の消費行動・購買行動についても多様化・複雑化の一途を辿っています。従来型の手法では顧客行動を把握しきれない状況となっていることも、カスタマージャーニーマップを活用する必要性が高まっている理由となります。

顧客体験が重視されるようになった

消費者がより上質な顧客体験を求めるようになったこともカスタマージャーニーマップの必要性が高まった理由です。消費行動が多様化・複雑化しつつある状況下においても企業はより上質な商品・サービス・サポートの提供を迫られており、的確な顧客体験向上施策を実施するためにもカスタマージャーニーマップを駆使する必要があります。

OMO・オムニチャネル等のトレンドのEC戦略については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参考下さい。

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カスタマージャーニーの作成を通して得られるメリット

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カスタマージャーニーが大きな注目を集めている理由は、ビジネス・マーケティングを行ううえでさまざまなメリットを得ることができるためです。

ここでは、カスタマージャーニーマップの作成を通じて得られる主なメリットについて解説します。

顧客の購買行動を可視化できる

カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動・思考・感情まで含めた一連の購買プロセスを可視化できます。

近年では消費行動の複雑化に伴い、自社と顧客の接点や顧客の購買行動の把握が難しくなっていますが、カスタマージャーニーを活用して可視化することで、これらの全体像を容易に把握することができます。

顧客体験向上のための有効な施策を実施するには、的確な現状把握が不可欠です。一般的な手法では把握しきれない顧客との接点・購買行動まで明確に把握できることは、カスタマージャーニーマップを作成する大きなメリットでしょう。

顧客視点で自社の商品・サービスを評価できる

カスタマージャーニーマップは、事業者視点ではなく顧客視点で作成する必要があります。

一般的に企業が自社のビジネスについて評価を行う際には、どうしても事業者視点で考えてしまいがちです。しかし、カスタマージャーニーマップを活用することで、自然と顧客視点での評価を行うことができるため、事業者視点では見えなかったさまざまな気づきを得ることができます。

また、事業者視点で評価を行う際にありがちな希望的観測が含まれるのを回避して、より現実的で妥当な評価を行うことが可能です。

顧客視点で自社の商品・サービスを評価することで、顧客体験向上に繋がる的確な施策も見いだしやすくなります。

関係者の認識を共有できる

カスタマージャーニーマップは、商品開発・マーケティング・セールス・カスタマーサポートなど、自社の商品・顧客に関するあらゆる部署の関係者が協力して作り上げるマップです。

作成の過程でさまざまな議論を重ねて認識を擦り合わせる必要があるため、自ずと部署間・関係者間で認識を共有できるようになることが大きなメリットです。

社内の関係者が共通認識を持つことで、カスタマージャーニーマップの作成に留まらず、実際に施策を実行・運用する段階において効果的に作用するため、結果にも繋がりやすいというメリットもあります。

施策の優先順位を明確化できる

カスタマージャーニーマップでは、顧客の購買行動のプロセスごとに課題を発見してマップ上に整理することができるため、優先して解決すべき課題とその解決施策を見つけやすいことがメリットです。

短期間で結果に繋がる施策や効果が大きい施策も明確化できるため、優先順位付けを行うことでスムーズかつスピーディーに施策を実施できます。

ビジネスにおいてスピードと効率性は成果を出すために重要な要素です。これらを満たしつつ顧客体験向上施策を実施できることは、事業者にとって大きなメリットと言えます。

カスタマージャーニーマップの作り方

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カスタマージャーニーの必要性や重要性について理解したため、実際に自社でもカスタマージャーニーマップを作成してみたいという方もいるのではないでしょうか。

ここでは、カスタマージャーニーマップの作成方法ならびに各作成ステップについて解説します。

ペルソナ作成

カスタマージャーニーマップを作成する最初のステップは、ペルソナの作成・設定です。ペルソナとは自社の見込み客・顧客の特徴を表現した仮想顧客のことです。

実際に商品・サービスを購入して欲しい理想の顧客像となるため、以下のように、具体的かつ詳細に設定を行います。

  • 氏名:西本なつみ
  • 年齢:35歳
  • 性別:女性
  • 職業:不動産会社営業
  • 勤務地:東京都渋谷区
  • 居住地:東京都世田谷区
  • 年収600万円
  • 家族構成:夫(34歳)・息子(5歳)
  • 趣味・指向:美容サロン通い・女子会・トレンドのファッションに敏感
  • 悩み:トレンドを押さえつつ周囲と被らないファッションアイテムが欲しい

ペルソナを詳細に作り込むことで、カスタマージャーニーマップを作成する際に、どのような経緯で購買行動を行うのかをイメージしやすくなります。

あまりに作り込み過ぎると現実的でない顧客イメージとなってしまう可能性があるため、マップ作成に役立つ程度の作り込みに留めておくのがポイントです。

自社のビジネスに応じたフェーズ設定

自社が展開しているビジネスにおいてペルソナが辿るであろう購買行動を、フェーズに分解してカスタマージャーニーマップに設定します。

ECサイトの購買行動では、以下のようなフェーズを辿るのが一般的です。

興味関心・認知>比較・検討>購入>継続利用・リピート>推奨

続いて、各フェーズに対して以下のような項目(縦軸)の設定も行っておきます。

  • 顧客接点(タッチポイント)
  • 行動
  • 思考
  • 感情
  • 課題

縦軸に関しては一般的に上記の項目を使用しますが、必ず全てを活用しなければならないわけではないため、自社のビジネスやペルソナの購買行動に応じてカスタマイズを行ってもOKです。

ペルソナの行動・思考・感情をマップに記入

上記で作成したカスタマージャーニーマップに対して、ペルソナと自社のタッチポイント、思考・行動・感情を記入していきます。

ポイントとしては、行動を記入する際には行動にフォーカスして、最初のフェーズから最後のフェーズまでの一連の流れを洗い出して記入してしまうことです。このような方法で進めていくことで、ペルソナの状態の変化を具体的にイメージしやすくなります。

思考・感情・タッチポイントを洗い出してマップに記入する際にも、同じ方法で進めていきましょう。

課題発見・解決策の決定

カスタマージャーニーマップの各フェーズの項目を全て埋めたら、その情報をもとに現状で達成できていない課題とその解決策を洗い出してマップに記入していきます。

全ての情報をマップ上に記載することで、顧客の行動・思考・感情の移り変わりを踏まえた課題・解決策を明確に把握することが可能となり、的確なマーケティング施策へと繋げることができます。

完成したカスタマージャーニーマップは社内の各関係部署・関係者に共有を行い、共通認識を持って今後の活動を行っていきます。

カスタマージャーニーマップ作成時の注意点

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カスタマージャーニーマップを作成する際には、注意しておいた方がよい点がいくつかあります。以下に解説していますので、パフォーマンスを高めるためにも失敗のリスクを避けるためにも、ぜひご参考下さい。

事業者側視点になりすぎない

カスタマージャーニーマップは、顧客側の視点で作成することが原則です。顧客視点が欠けたまま作成を進めてしまうと、事象者側の要望・願望のみが反映された有用性を発揮できないマップができあがってしまうため注意が必要です。

しかし、頭では理解しているものの普段の事業者側の視点から顧客側の視点に切り替えるのは意外と難しく、つい事業者側のまま作成してしまうケースは多くあります。顧客に関する理解が乏しいとこのような状況に陥ってしまいがちであるため、マップの作成前には十分な情報収集・リサーチを重ねて顧客に対する理解を深めておくことが重要です。

細かく作りすぎない

カスタマージャーニーマップの作成は、回数を重ねて慣れてくるまでは難しく感じるものです。関係者との認識・意見の調整にも多くの時間を必要とします。

完璧を目指し過ぎると、いつまでたってもマップが完成せずに時間ばかりが過ぎるという状況に陥りやすいため、最初から細かく作り過ぎないことも重要なポイントです。

また、あまり細かく作り過ぎるとマップが示すセグメントが絞り込まれ過ぎてしまい、実際の顧客が予想と反したアクションを起こした場合の対応を考慮できないというリスクも生じます。

最初はある程度アバウトな感じでも構わないので、まずはマップを最後まで完成させることが先決です。マップの作成にある程度慣れてきたら、必要な部分の詳細を突き詰めていくようにしましょう。

定期的に更新する

ビジネスの状況は時間の経過とともに変化し続けるため、カスタマージャーニーマップを構成する顧客との接点についても、定期的な更新・メンテナンスを行う必要があります。

いくら完成度の高いマップを作成しても、更新・メンテナンスを怠ると徐々に有用性・効果性を発揮できなくなってくるため、状況の変化に合わせてアップデートを行い、常に最適なパフォーマンスを発揮できるようにしておくことが重要です。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、複雑難解な顧客の購買行動の一連のプロセスを可視化・明確化できる優れたフレームワークです。オムニチャネル・OMO等の戦略が主流となり、より複雑化・多様化の様相を呈するECビジネスにおいても、的確な改善を実施して顧客体験を向上させていくのに役立てることができます。

ECサイトの課題発見や改善施策に苦戦している方は、ぜひ時間を確保してじっくりとカスタマージャーニーマップの作成に取り組んでみて下さい。

弊社でも、ECサイトの顧客体験向上のポイントを解説した資料を無料で公開していますので、ぜひこちらもご活用下さい。

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