EC市場が拡大するにつれて、ただECサイトを立ち上げただけでは集客を見込めなくなりました。株式会社ネオマーケティングが2021年に行ったEC運用の悩みに関する調査によると、ECサイト運用で最も課題に感じていることは「新規顧客獲得」15.9%と一番多く、次いで「運用リソース不足」14.5%、そして「サイト集客」が13.6%でした。
参照:株式会社ネオマーケティング 20歳~69歳の男女743人に聞いた「EC運用の悩みに関する調査」
そんな中、ECサイトの差別化を図るべく、近年注目を集めているのが「メディアコマース」です。
今回は、メディアコマースとはなにか、メリットデメリット、成功事例についてご紹介します。
メディアコマースとは
メディアコマースとは、情報を発信する「メディア」と、商品をオンラインで販売する「EC」が一つになったサイトのことです。従来のECサイトは、オンラインで商品の販売をすることがメインでした。しかしメディアとECサイトが一緒になったメディアコマースサイトでは、情報発信と商品の販売の両方を行うことで、購買率の向上に繋げています。
メディアコマースのメリット3つを事例を用いてご紹介
メリット① 自然検索から集客アップ
ユーザーは調べたいことがあるとき、検索エンジンを使います。そのため、How To情報や、お役立ち情報など、有用な記事やブログを作成することで、検索結果からサイトへの訪問を見込めます。
スキンケア用品や化粧品を販売している資生堂が運営するワタシプラスでは、「プロの教える眉毛の描き方」や、「パーソナルカラー診断」などの記事を書いています。
例えば、眉毛の描き方を紹介している記事は、「眉毛 描き方」と検索すると一番上に表示され(2023年1月5日現在)、眉毛メイクに興味があるユーザーからのサイトアクセスが見込めます。記事では、眉毛の整え方や垢ぬける眉毛の色、眉毛の形ごとの描き方など、プロが写真や動画を使い丁寧に説明しています。また、眉毛を描く時に使用した商品のリンクが載せてあり、そのままカートへ入れてすぐ購入できるようになっています。
このように、有用な記事はサイトへアクセスをするきっかけになります。ユーザーにとって役立つ記事を定期的にアップすることで、リピーター創出にも繋がります。サイトに何回も訪問するうちに商品理解やブランドへの親近感が高まり、購入率の向上が見込めます。
メリット② ブランドコンセプトに合わせたコンテンツを充実させファン化
商品のこだわり、サイト運営者のおすすめ商品や日常のちょっとしたTipsなど、ブランドコンセプトに即したコンテンツを発信することで、ブランドの世界観に共感するファンを獲得することに繋がります。商品を企画した背景や細部へのこだわりを知ったユーザーは商品への関心が高まるだけではなく、そこまで考えてるんだ!と、ブランドへの好感も高まるでしょう。例えばバス用品を販売しているLUSHは、動物実験をしないことで有名ですが、多くの人から支持されています。このように、こだわり・理念などを発信するとユーザーからのブランド理解が深まり、繋がりが生まれます。
他にも、北欧雑貨を販売している北欧、暮らしの道具店では、「北欧のライフスタイルに魅かれ、そのスタイルの本質を自分たちらしく表現する」ことをコンセプトに、北欧のライフスタイルに惹かれているスタッフの生活を垣間見れるようなコンテンツを載せています。
数あるコンテンツの一つにスタッフの愛用品を紹介するものがあります。愛用している自社商品を、忙しいお母さんや料理好きな人など、スタッフそれぞれの目線で語っています。商品をどのように使っているか写真を多く用いながら説明しているため、北欧のスタイルを取り入れた日常をリアルに感じることができます。また、商品の使用感や便利な使い方なども知れるため、商品の購買意欲が掻き立てられます。
このように、コンセプトが伝わるコンテンツを発信し、ユーザーに世界観を感じてもらうことでブランドへの愛着を生み、ファン化に繋がります。
メリット③ 商品理解を高め購買率アップ
商品説明欄に写真だけではなく、動画も載せることで商品の情報をよりリアルに伝えることができます。ECサイトでは商品を手に取ることができません。そのため、動画でサイズ感や質感などを伝えることで、ユーザーは安心してお買い物ができます。
ソファなどを販売しているYogiboは、「人をダメにするソファ」で有名です。言葉通り、一回座ると心地よくて動けなくなるのですが、静止画ではそれを伝えることができません。そこで、Yogiboは商品説明欄にYouTubeを埋め込み、動画を使用しています。人がYogiboに飛び込んだり、Yogiboの上でポジションを変えたり、手で押したりすることで、フィット感を伝えています。写真を見るよりも、動画を見たユーザーは気持ちよさそう!と思い、購入意欲がかき立てられるでしょう。
メディアコマースのデメリット2つ
デメリット① 効果が出るまでに時間がかかる
欲しい商品があったとき、ユーザーはGoogleなどの検索エンジンを使って商品を探します。ECサイトへ集客をするためには、検索結果で上位表示を目指す必要があり、SEO対策が欠かせません。しかし、SEO評価を得るまで、一般的には半年〜1年以上かかると言われており、時間がかかります。
上位表示を目指すには、SEOを意識したコンテンツ作成が重要です。タイトルを変えたり、サイトの利便性を高めたり、コンテンツを充実させたり、対策は多岐にわたるため、地道な努力が必要です。
効果が現れるまで時間も手間もかかるかもしれませんが、効果が出始めたらサイトの集客力は格段にアップしますので、根気よく頑張りましょう。
デメリット② コンテンツ制作者の負担が大きい
良質なコンテンツを定期的に配信するには、負担がかかります。例えば、どういったコンテンツがお客様に喜んでいただけるか考えるコンテンツの企画を練ったり、コンテンツが記事であれば執筆、画像の編集、動画であれば撮影、動画の編集など、あらゆる作業が発生します。
メディアコマースを始める際は、コンテンツの作成を円滑に行える体制を整えてから始めることをおすすめします。
まとめ
メディアコマースは、コンテンツを発信することで商品やブランドを知らないユーザーからの集客ができます。そして、ブランド理解を深めるコンテンツを配信することで、ファン化施策としても有効です。
ユーザーにとって有用なコンテンツを定期的に載せ、上位表示を狙うことで、より多くのサイト流入が期待でき、サイトが広告として機能してくれるでしょう。また、ブランドのコンセプトに沿ったコンテンツを配信することで、顧客はブランドの理解を深め、共感を生むことで親近感を感じ、より良い関係構築を行えるでしょう。
「オンラインで商品を販売する」従来のECサイトから、「顧客と共創するECサイト」へと、進化させてみましょう!
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