小売DXとは?課題と成功事例を紹介

 2022.08.16  株式会社システムインテグレータ

現代はさまざまな業界・業種でDXの推進が推奨されていますが、消費者に近い位置でビジネスを行っている小売業もそのひとつです。時代の流れに乗り遅れないために、また今後ビジネスを成長・発展させていくためにも、DXに注力している小売業の企業は多くあります。

当記事では、小売業が抱えている課題やDXの必要性、DX推進の際に意識すべきポイント、実際の企業の成功事例について解説しています。

小売業のDXならびにその必要性について理解を深めたい方や、DX推進の知識的地盤を構築したい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

小売業界が抱えている課題

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小売業でDXが重要・必要である理由を考えるにあたって、まずは小売業界が抱えている現状の課題を知っておく必要があります。それは、現代社会では多くの業界でIT化・デジタル化が進んでいるにも関わらず、小売業界の多くの企業は業務の大半をアナログな対応・アナログな処理で行っているという点です。

受発注・検品・請求・物流といったバックエンド業務から、店頭販売・接客・会計・販促といったフロントエンドまで、未だ前時代的な業務を行っている企業は少なくありません。

アナログに依存した業務は生産性・効率性・コスト・リソースの観点から好ましくなく、このような課題が小売業界の企業の成長・発展を妨げています。

なぜ小売業界にDXが必要なのか?

小売業界が抱える課題を解決するのに最適な施策が、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)です。DXとは、企業がIT・デジタルを駆使して経営課題の解決・業務改善・新規ビジネスの創出など自社の活動や顧客の生活をより良いものに変革・変容させていくという概念です。

現代社会は人々の消費行動・価値観の多様化が進んでおり、小売業においても前時代的なビジネスでは顧客のニーズ・ウォンツに対応できなくなってきています。また、小売業界内での企業間競争も激化しており、売上を確保するにはIT・デジタルを駆使して競合との差別化や独自性・優位性を発揮することが重要となってきています。

顧客に上質なサービスを提供して企業が発展していくためにも、小売業の企業はDXを推進することを強く求められています。

小売業界が推進すべきDXの例

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小売業界におけるDXの必要性については理解しているけれども、実際にどのようにDXを推進していけばよいか分からない方もいるのではないでしょうか。

ここでは、小売業界が推進すべきDX戦略・施策の例をご紹介します。どこの企業も取り組むべきであるマストな戦略・施策をご紹介していますので、ぜひご参考下さい。

OMOの実践

一定規模以上の小売業の企業では、オフラインの実店舗・オンラインのECサイトといった複数のチャネルで販売を行うことは今や一般的となっています。確かに有効な戦略ではありますが、各チャネルを別々に機能させていたのではそのメリットも十分に発揮することはできません。

そこで重要となる施策がOMO(Online Merges with Offline)です。OMOはオンライン・オフラインを融合させて、ユーザーがチャネルの違いを意識せずにシームレスな購買体験を行える施策です。ユーザー視点で最適な購買体験を提供することで、顧客満足度向上・リピート促進・単価アップ・売上拡大などさまざまなメリットを得ることができます。

OMOはトレンドの戦略であると同時に、これからの小売業が実践すべきマストな戦略であるため、DXの推進・実践を行うのであれば、戦略の基盤としてぜひ意識しておくことをおすすめします。

OMOについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご参考下さい。
OMOとは?意味やマーケティング施策の事例、O2O・オムニチャネルとの違いについて解説

店舗運営の効率化

近年の小売業はオンライン販売の比率が高くなりつつある傾向にありますが、上述のOMOなどオンラインと実店舗を組み合わせた施策も近年重要となってきているため、店舗運営の効率化を図ることも重要です。

現在ではデジタル技術・デジタルツールの発達により、在庫管理・受発注・顧客管理・無人レジ・キャッシュレス決済など、実店舗運営の効率化や顧客の満足度・利便性に繋がるさまざまな施策を実践することが可能となりました。DX推進により実店舗の価値・魅力が見直された事例も多数存在するため、小売業を営む企業は、今後のビジネスの土台を盤石にするためにも、実店舗のDXにも尽力しておく必要があります。

ECサイトの展開

ECサイトの展開は、小売業のDXにおいて最も基本的な取り組みのひとつです。オンラインでの販売チャネルを設けることで、以下のようなメリットがあります。

  • エリア・時間に依存しない販売が可能となる
  • 実店舗と組み合わせた戦略の実施も可能
  • 非接触の販売を実現できる

コロナ禍の影響により実店舗の販売促進が難しい状況下にあるため、まだECサイトを展開していない小売業の方は、優先的に取り組むべきDX施策となります。

ECサイトの構築・展開については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご参考下さい。
ECサイト構築を徹底解説 | 要件定義や費用相場、会社の選び方まで

小売業がDXに取り組む際に対策が必要なポイント

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DXと一言に言っても、業界・業種によって力を入れるべきポイントが異なります。そのため、小売業の方がDXに取り組む際には、同業種特有のポイントを押さえておくことが重要です。

ここでは、小売業がDXに取り組む際に対策が必要となるポイントについて解説します。

経営戦略との連動

小売業がDXに取り組む際には、DXによりビジネスにどのような変化・変革をもたらしたいのか、どのような経営課題を解決したいのかを考えることが重要なポイントです。

DXはあくまで経営戦略を達成するための手段であるため、効果的なDX導入・推進を行うためには経営戦略に則っていること、経営戦略に連動していることが必要不可欠です。DXに取り組むこと自体が目的とならないように、まずは経営戦略を突き詰めておくことが重要となります。

思いつきや勢いだけでDXを成功させることはまず不可能です。実りのある取り組みを行うためにも、DX導入前に経営戦略の立案ならびにDXとの連動は十分に検討しておきましょう。

DX推進人材の不足

小売業がDXを推進するには、ITシステム・デジタルツールの扱いに長けた人材を自社内に確保する必要があります。

導入のみであればアウトソーシングで済ませることも可能ですが、実際にDXで成果を出すには常駐した人材によるデータ活用・デジタル施策の実施から保守・運用・管理までを内製することが必須です。

しかし、日本においては欧米などと比較して、IT人材がIT関連企業に従事する割合が高くなっています。そのため小売業に限らず、IT関連企業以外の事業者側にはIT人材が不足しています。不足しているIT人材をいかに確保し、DX人材として育成していくかがDX推進のポイントとなります。

既存システムとの連携や共存

小売業がDXを実践する目的は、デジタル技術を用いてビジネスの成長に繋がる改革や変革をもたらすことです。その目的を達成するためには、単にビジネスに新しいデジタル技術・デジタルツールを取り入れるだけではなく、これまで活用してきた既存システムとの連携・共存を加味することも必要となります。

既存システムは、長期に渡り培ってきた販売情報・顧客情報が大量に蓄積されている自社の重要な経営資源です。これらの資源を新しい仕組みで活用できる方法を模索することも、小売業がDX推進により大きく飛躍するための重要なポイントとなります。

小売業におけるDX成功事例

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日本国内においても、既にDXを実践して成功した小売業の事例が多く存在しています。これからDXに取り組む小売業の方は、成功事例を参考にすることで多くの学びや気づきを得ることができるためおすすめです。

ここでは、日本国内の小売業の代表的なDX成功事例について3つご紹介します。

ビックカメラの事例

家電量販店大手のビックカメラでは、2020年9月よりDX・DC本部を設立してDXによる顧客体験向上施策を推進。実店舗のスケールメリットとデジタル技術を活かし、ネット取り置きサービス・店頭での電子棚卸といったオンライン・オフラインを融合した施策を実施して、新たな顧客体験を創出。大きな反響を呼ぶと同時に小売業のDX事例として注目を集めました。

2022年6月にはデジタルを活用した製造小売物流サーキュラー企業を目指す「DX宣言」を発表、Salesforce・Amazon Web Servicesを活用したOMO戦略の実現に向けて体制を強化しています。

ニトリの事例

インテリア用品小売業大手のニトリホールディングスでは、製造物流IT小売業というビジネスモデルを確立して業界内でも先進的にIT・デジタルの活用を行ってきました。

2022年4月には、グループ内にIT・デジタルをリードする専門会社「ニトリデジタルベース」を設立。新会社では、「2032年までに3000店舗まで拡大、売上高3兆円」という目標を大々的に掲げ、IT・デジタルに長けた優秀な人材を積極的に採用して本格的にDXを推進。既に多数のプロジェクトが企画されており、グループ全体のDXを強化・加速して業界をリードしています。

カインズの事例

ホームセンターの老舗企業であるカインズは、2018年にIT社会・デジタル時代でも選ばれる小売企業を目指し、「IT小売企業宣言」と呼ばれるDX戦略を提唱。その実現に向けて、以下4つの主軸となる戦略を立案しました。

  • SUB戦略
    戦略の基盤は上質な商品から。顧客価値創造に繋がる商品ラインナップを再構成。
  • デジタル戦略
    顧客が手間やストレスを感じることなく商品・サービスを購入できるように、デジタル技術を活用した顧客体験を提供。
  • 空間戦略
    実店舗にて自社のブランディング・他社との差別化に繋がるような商品陳列・販売を実践。
  • メンバーへのKindness
    上記3戦略を支えるメンバーに対して、働きやすい環境の整備・働きたくなる会社作りを実践。

カインズは、従来のトラディショナルなホームセンターの販売スタイルを見直し、デジタル戦略だけでなくビジネス全体を含めた戦略を実施することで、業界のリーディングカンパニーとしてのポジションを確立しています。2020年1月にはIT技術者を集めたデジタル戦略拠点「CAINZ INNOVATION HUB(カインズイノベーションハブ)」を表参道に立ち上げ、デジタル活用の推進を加速させています。

まとめ

現代社会では、インターネットの発展・スマホの普及・決済手段の充実・消費行動の多様化など、小売業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しつづけています。このような状況下で小売業が成長・発展していくには、消費者のニーズに応えるビジネスを実践していくことが重要。そのためには、DXの推進・実践は欠かせないでしょう。

現在はコロナ禍の影響もあり、OMO・オムニチャネルといったオンラインを絡めた戦略・施策が特に重要です。弊社では、OMO・オムニチャネルの実現に必要なナレッジ・ノウハウ・ポイントを解説した資料を提供していますので、ぜひこちらもご活用下さい。

OMO・オムニチャネルを実現させる 小売業のためのスマホアプリ活用ガイド

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