活用事例 MIJSコンソーシアム様

オンラインのアイデアソンで
企業の垣根を越えたチームが新製品の「種」を生み出す


「メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア&サービス・コンソーシアム(以下、MIJS)」は、2006年に国内の主要なソフトウェアベンダーが集まり結成された団体です。「ソフトウェアで日本を強くする」を目的に活動を続けています。
2022年6月に開催され、MIJSの参加企業10社から19名が参加されたアイデアソンで、アイデア発想支援ツール「IDEA GARDEN」をご利用いただきました。

このたび、アイデアソンの運営を担当された井口様と七島様に、活用方法や使ってみた印象などお話を伺いました。

アイデアソンを終えて、率直な感想を聞かせてください。

七島氏 アイデアソンの場は、人をオープンにさせて楽しい空間を作るんだな、ということを強く実感しました。参加者同士は皆さん初対面でしたが、アイスブレイクしてからアイデアソンを始めて、時間を一緒に過ごすことで非常に距離が近くなりました。イベント終了後には「リアルで会いたいですね」「アイデアをこの後もう少し検討したいですね」といったコメントも出ていたので、大成功だったのかなと思っています。

営業マーケティング委員会 運営メンバー 七島様

営業マーケティング委員会 運営メンバー 七島様

井口氏 以前はMIJS全体でのイベントをオフラインで開催していたのですが、最近はオンラインのイベントばかりでした。今回のアイデアソンは私も知らない方が多く参加されていて、アイスブレイクをしたあとに意見を出し合っていたのは良かったと思います。

もう一つ、いろいろな役職の方が参加してくれたのも良かった点です。当日にとある会社の社長も参加しますと言われて、ほかに取締役の方も参加されていたのでちょっとびっくりしましたね。想定としては入社1~2年目の若手社員が集まるのかなと思っていたので。準備の段階で役職や年齢など関係なくフラットにチームビルディングしたのも良かったなと思いました。

これまでにもMIJSでアイデアソンの取り組みはされていましたか?

井口氏 新規事業という切り口では以前1~2回実施した程度で、この数年は新規事業創出のためのインキュベーションプラグラム*1を行っています。

*1 MIJSインキュベーションプラグラム:MIJS営業・マーケティング委員会が主催する、4カ月間でアイデアの事業化を目指して本気で考え抜く実践型プログラム

営業マーケティング委員会 委員長 井口様

営業マーケティング委員会 委員長 井口様

 

今回アイデアソンを実施しようと思った経緯を教えてください。

七島氏 理由は2つあります。

まず、IDEA GARDENがリリースされたのでMIJSの人にも知っていただいて、実際に使ってもらう場を設けようという話がきっかけになりました。
企画を進めて、5月に開催したMIJSの勉強会でシステムインテグレータの横山さんに新規事業立ち上げの成功体験について講演してもらい、IDEA GARDENに興味のある人やこれまでアイデア発想に縁がなかった人に「体験会できますよ」といった触れ込みで参加を募りました。

2つ目は今年のインキュベーションプログラムの呼び水にできると考えたからです。
横山さんにお話しいただいた5月の勉強会から今回のアイデアソン、そしてインキュベーションプログラム、といった流れで参加してもらうことが意図としてありました。
実際、ネオレックス社から参加された方には5月の勉強会にも今回のアイデアソンにも参加していただきました。そういう意味でも大成功だったなと思います。
アイデアソン当日はIDEA GARDEN開発者の横山さんにも運営のサポートをしていただきました。

 

当日はどんな流れでアイデアソンを進め、どのようにIDEA GARDENを活用されましたか?

当日の流れ

当日の流れ

七島氏 最初にアイデアソンの概要を説明して、グループに分かれてアイスブレイクを行いました。初めましての人が多いだろうな、参加理由が「上司に言われたから」という人もいて温度感があるだろうな、と思っていたので、アイスブレイクの時間は長めに取りましたね。

アイデアソンでは実際にIDEA GARDENを使って、まず参加者それぞれがヒントを出す個人ワークの時間を作りました。その後にグループワークを行い、どのヒントを残してアイデアに育てるか議論しながらフェーズを進めていきました。

当日はすべてオンラインで完結させたのですが、IDEA GARDENありきでプログラムを組んでいたので、特にやりづらいということはありませんでした。

また、IDEA GARDEN側の参加者のアイコンに各社のロゴを登録しました。このロゴがあると各社の参加者からヒントが出ていることがパッと一目で分かります。1人2~3個はヒントを出していましたね。ヒントをもとにアイデアを練ってもらい、最終的に11個のアイデアの種が生まれました。

井口氏 各グループともオンラインではなかなか見られない盛り上がり方をしていましたね。オフラインで開催していたらもっと盛り上がるだろうな、と思いながら見ていました。

ヒント一覧画面

IDEA GARDEN:ヒント一覧画面

 

アイスブレイクではどんなことをしましたか?

七島氏 6つのお題を用意して、ブラウザでサイコロを振って出た目と同じ数のお題についてグループ内で共有し合う、ということをやりました。

オンラインのイベントを成功させるためにどうしたらいいか自分なりにいろいろ調べて、活発に意見を交わせる雰囲気を作れるように意識しました。何もない状態でグループ分けをして「さあ、みんなで考えましょう」と言っても、お互いのことを何も知らないままでは会話も盛り上がりませんし、その後のアイデアの質や数にも影響してくるだろうと思っていたので、時間をかけて取り組みました。

アイスブレイクのお題

アイスブレイクのお題

 

個人ワークのアイデア出しで、アイデアが出なかった人はいましたか?

七島氏 数に差はありましたが、1人1つはアイデアを出してもらえましたね。完全にゼロベースからの発想だったので、当日にヒントを登録してもらって、ほかの人が登録したヒントも参考にしながらアイデアを考えてもらいました。

今回このアイデアソンをやるうえで、全員アイデアの「芽」の段階までは進めましょうという話をしました。特徴的だと思ったのが、種の状態と芽の状態で比べると、コメントの数が全然違うという点です。

カンバン形式のアイデア管理画面

IDEA GARDEN:カンバン形式のアイデア管理画面

種の状態ではコメントの数は3~4件ですが、芽まで進むと15件ほどコメントされていて、相対的に「いいね」の数も多くついていました。リアクションが多いアイデアを次のステータスに進めようといった一つの基準にもなったのかなと思います。

井口氏 「アイデアソンでアイデアを出したらすぐ反応がもらえて、いろいろな気づきを得て、成長させたいアイデアの基準がすぐコメント欄で判断できるのはおもしろい」といった感想もいただきました。
自分が考えたものに対して「いいね」やコメントで何かしら反応がもらえると、誰でも嬉しいですよね。

 

印象に残っているアイデアはありますか?

七島氏 特に印象的だったアイデアは2つあります。

1つ目が「ドローンが雨を弾いてくれたらいいのに」というアイデアです。最初は私も「雨の日にドローンが迎えに来るとおもしろそう」くらいに思っていました。ところがその後チームで議論するなかで「雨をデザインする」という話に膨らんだんです。
種の段階では詳細が詰められていなくて記載情報も少なかったのですが、1時間ほど議論して出てきたのが「私たちは雨をデザインします」という言葉でした。それがそのままプロダクトのキャッチコピーやビジョンになるんだろうなと思いましたね。ドローンという手段から1回離れて顧客の負の部分に目を向けて、手段はドローンでもいいけど、別にドローンじゃなくてもいいよね、という話になる。良い議論の流れだなと思いました。

参加者それぞれが思いついたイメージや捉え方を言語化すると多様性が生まれるので、あえて書かせて言葉として残すといったことを、フォーマットを使ってやるべきなのかもしれませんね。
あとはチームのなかでほかの人の意見も聞けるし、コメントなどでレビューしてもらえるところも良かったです。

井口氏 参加者に恵まれたのかなという感じもするんですけど、MIJS全体のイベントだったらもっといろいろ出てくるかもと思いましたね。

七島氏 2つ目は「全社員VTuber化」というアイデアです。
1つのチームで同じ会社からの参加者が被らないようには配慮していたのですが、社長や役員の方が一緒になったチームがあり、そこから出たアイデアでした。経営者目線ならではの課題として興味深かったです。

井口氏 「全社員VTuber化」とだけ聞いた時はよくわからなかったのですが、いろいろな人が意見を出してくれました。「個人的には化粧しないでいいから使いたいな」とか「上司がかわいいキャラになったらむしろ怒られたい」とか、さまざまな意見が出ていました。ジェンダーレスは日本だと遅れてるよね、という話がここまで飛躍するのはすごいなと思いました。

七島氏 上司がかわいいキャラ…という発想は私からは出ないなと思いましたね(笑)

 

IDEA GARDENについて、良いところや改善したらもっと良くなると思われた部分はありますか?

七島氏 良いと思ったのは最初にヒントメソッドを使ってヒントを出せるところです。
最初から質が高くカチッとしたアイデアを作ってもらうのではなく、ヒントから思いついたことや気づいたこと、嫌だなと思ったことを気軽に書きこむところからアイデアソンをスタートできるので、参加者にとってハードルを下げるのにとても役立つ仕組みだなと実感しました。

また、新規事業のアイデア出しというとリーンキャンバスを埋めさせる会社が多いなかで、アイデアの種から芽、蕾、花というステージごとに入力項目を増やしていけるのも良いですね。この進め方であれば、「意識高い系」の方だけが参加される従来のアイデアソンではなく、より大衆的なイベントにできるのではないかと思いました。
アイデアソンの市民化、とまでは言えないかもしれないですが、そういったことにも寄与できるんだな、ということを実際に確認できたのがよかったですね。

井口氏 アイデアソンの市民化、普通の人でも参加できるイベントにできるという点はとても共感できます。
私自身が思いついたアイデアをポロポロ出すタイプなんです。出したアイデアについて、その後どうするのって聞かれてもそこまでは考えてないんだけど…といったレベルでも、アイデアの種をパパっと書けて、みんなで考えることでその種が膨らんだりするのかなと想像すると、そこが七島さんの言っていたハードルを下げることになるんだろうと思います。

七島氏 外部の知らない人とアイデアソンを実施するとすごくわかるのですが、初めて参加しますという方は考え込んでしまって手を動かせないんですよね。でも人によっては同じ時間で3~4倍の数のアイデアを出すんです。
これはやはり慣れによるものですが、自分のアイデアを評価されるという経験がないと次に同じような場面でもアイデアを出せない。生煮えのアイデアでも拾ってくれたっていう成功体験は大事です。

「アイデアソンでみんな必ず意見出すように」と偉い人は言いますけど、その心理的ハードルを上げてるのは、成果を出したいという焦りや、一部の意識高い人たちがほかの人たちを置いていくという状況だったりするので、不完全でいいんだよと伝えるといいと思います。ワークの前に、イノベーションは既存のアイデアの仕組みの組み合わせだ、という話をしたのですが、これも障壁をできるだけ取り払うためです。アイデア出しのハードルを下げていくことで、広く盛り上がる場づくりができるのが良いなと思います。

井口氏 そういう意味では、みんながそれぞれ得意な領域を活かしてアイデアを育てていくというIDEA GARDENのコンセプトがすごく良いですね。育てる人がいれば、肥料を開発してる人もいて、雑草を抜いてくれる人もいる。それぞれが違う役割をもって貢献できるイメージが湧いて、すごく良かったと思います。

七島氏 改善のポイントとしては、登録したアイデアがどこのチームから出たのかっていうのが、今は少しわかりにくい点ですね。個人が出したアイデアは自分のだと言えば済みますが、チーム単位で出したアイデアを共有する場合には目印があると便利だな、と。

もう一つは、アイデアの複製ができるといいなという意見がありました。IDEA GARDENではイベントごとにガーデンを作成するんですが、過去のアイデアは参照のみで編集はできない、代わりに複製して新しいアイデアとして登録できる、となるといいですね。
例えば翌年に同じイベントを実施する場合、去年のアイデアを書き換えられるのは困るので、去年のものは去年のものとしてフィックスさせる。今年は去年のアイデアをもとに考えたものをフィックスして蓄積していく。そういう運用が今後できるといいなと思います。

今回の参加者の感想はいかがでしたか?(アンケート抜粋)

  • アイデア出しの切り口として6つの観点を提示いただいたうえで、実際にアウトプットの時間を設けていただけたので実践的でした。またIDEA GARDENでほかの方のヒントを閲覧できたのも何に課題を持たれているのかを知る機会となり、いい気づきになりました。
  • 個人的に「アイデアに水をやる」進め方でリーンキャンパスを埋めていくプロセスが心地よかったです。(開始時は、リーンキャンパスに埋めていくのか…とテンションが落ちていたので笑)
  • IDEA GARDENを使用したからこその利点ですが、さまざまな人が考えているアイデアの種を見ることができたのが大きかったです。私のなかではざっくりと大きなテーマだったものが、ほかの方々の種とつながることで、より強く成長していく過程を体験できました。
  • 自分では思いつかないテーマも多くあり、社内の人全員に1つの種を出してもらうだけでも、その会社としてはかなりの強みになるのではないかと感じました。なかなか大人数でテーマの洗い出しはできないので、素晴らしいサービスだと思います。
  • グループに分けたことで、密にコミュニケーションが取れたことが一番良かったです。だからこその深い考えが多く聞けました。種を成長させる肥料や水のようなものでしょうか。考える幅が広がりましたし、逆転の発想もあったので、考える視野をもっと広くしてみようと気づけました。

 

今後のIDEA GARDENの活用について、考えていることがありましたら教えてください。

七島氏 まずはインキュベーションプログラムですね。そして秋には日本最大級のアイデアソンを目指して、MIJSアイデアソン*2を開催する予定です。

アイデアソンやIDEA GARDENを通して、MIJSから新しいアイデアやサービスをたくさん生み出していきたい。そして、そういった活動や意欲をMIJSとしては全力でサポートをしていきたいと思っています。
MIJSの新規事業プロジェクトで最初にサービス化したのがIDEA GARDENです。MIJSから生まれたサービスを使って今後のイベントを進められていくというのは、とても素晴らしいことだと思います。

井口氏 MIJSは「メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・アンド・サービス」という名のとおり日本国産のソフトウェアを提供する企業からなる団体です。メイド・イン・MIJSのサービスが生まれましたよ、ということを私は今理事会で強くアピールしています。
営業マーケティング委員会としてはやはり営業やマーケティングを全面支援して、IDEA GARDENを通じてキャッチアップしながら学んでいければいいなと思っています。

*2 MIJSアイデアソン:MIJSが主催する、日本を豊かにすることを目標にアイデア発想を行うオープンなイベント。今年は10月15日に開催予定。
https://ideathon2022.mijs.jp/

 

今後もIDEA GARDENのご活用を支援させていただければと思います。本日はありがとうございました。

メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア&サービス・コンソーシアム(略称:MIJSコンソーシアム)

企業HP:https://www.mijs.jp/
設立:2006年8月
事業内容:企業間の交流イベントの運営や企画

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