新規事業を立ち上げたいと考える企業は増えていますが、多くの企業が抱えているのが、「新規事業のアイデアが集まらない」「良いアイデアが出てこない」「アイデアを考える方法がわからない」といった課題です。新規事業には核となるビジネスアイデアが必須なので、アイデア創出がうまくいかなければ先のステップに進むことはできません。
当記事では、新規事業の必要性・新規事業のアイデアに必要な要素から、アイデア出しの準備・アイデア発想法・アイデア出しのポイントまでをご紹介しています。新規事業のアイデア創出がうまくいかない方の課題解決や、アイデア創出の効率・質を高めるのに役立つ内容となっていますので、ぜひご参考ください。
新規事業の必要性とは
新規事業のアイデア創出を行う前に、新規事業の重要性・必要性について再度確認しておくと、自社が求めるニーズに合致したビジネスアイデアを生み出したり、新規事業立ち上げのタイミングを計ったりしやすくなるためおすすめです。
現代の企業に新規事業が必要である理由は、企業が継続的に発展・成長・存続するためです。現代社会は競争・変化が激しく、製品寿命や事業寿命も短命化してきています。つまり、旧来よりも同じ事業で長期的に収益を得ることが難しい状況となっているということです。
このような状況下で既存事業のみで企業が成長・発展・存続することは困難であるため、新規事業を生み出すことが打開策として重要視・必要視されているのが実状です。
新規事業立ち上げのタイミング
新規事業の立ち上げにおける適切なタイミングとはいつでしょうか。
起業の成長サイクルは、創業期→成長期→成熟期→衰退期、という順に回ります。このなかで創業期や衰退期は、新規事業を立ち上げるのに必要な人材や時間、資金に余裕がなく、適していません。創業期は既存事業を軌道に乗せることに注力すべきですし、衰退期はリソースに余裕がなく、既存事業を撤退するか改善するかを考えるべきでしょう。
売上が伸びて資金に余裕ができ、従業員のモチベーションが高まっている成長期か、事業が成長して安定した成熟期が、新規事業への挑戦に適していると言えます。
新規事業で必要とされるアイデアとは
新規事業は新しいアイデアをベースに作り上げていくものですが、成功に繋がる新規事業を立ち上げるにはどのようなアイデアでもよいわけではありません。
ここでは、新規事業のアイデアに求められる3つのポイントについてご紹介します。これらのポイントを満たすことで、成功確度の高い良質なアイデアを生み出せる可能性を高めることができます。これから新規事業のアイデア出しを行う方は、ぜひ参考にしてください。
「新規性」のあるアイデア
新規事業を立ち上げる際にまず重要となる要素が、新規性のあるビジネスアイデアです。
基本的に余程ニッチな業界でない限り、競合企業による類似の商品やサービスが既に存在しています。新規事業を立ち上げる際に、既存の商品・サービスとさほど変わらないものや劣っているものでは、事業を伸ばすことも成長させることも難しいでしょう。価格競争に巻き込まれたり、大手企業の参入によりシェアを一気に奪われたりするリスクもあります。
そのため、新規事業を立ち上げる際には、既存の商品・サービスとの差別化や優位性発揮を図るためにも、これまでにない新しさやオリジナリティを付加することが非常に重要となります。
新規事業立ち上げにおいては、容易に模倣できない新規性のあるアイデアを生み出すことを意識しておきましょう。
「解決性」のあるアイデア
新規事業のアイデアには、顧客の悩みを解決できるかどうかという「解決性」も重要な要素として求められます。
顧客の悩みには、「不安」「不満」「不便」「不快」「不信」などさまざまなものがあります。このような「不」を解消できるアイデアを創出できれば、顧客ニーズの獲得や顧客からの支持に繋げられるため、新規事業を成功させやすくなります。
顧客の感情面にフォーカスすると、「負の解消」と捉えることもできます。
解決性は上質な新規事業を生み出せるだけでなく、成功率も高めることができる重要な要素であるため、アイデア出しの際にはぜひ意識しておきましょう。
「収益性」のあるアイデア
新規事業は新規性・解決性といった顧客満足度や社会貢献度を追求することも大事ですが、事業として行う以上は必ず収益性が伴っている必要があります。いくら優れた新規事業を立ち上げても、収益性が伴っていなければ事業として成り立たず、継続することもできないためです。
新規事業の収益性については得られる金額だけでなく、安定して収益を得られることや継続して収益を得られることも重要となります。
新規事業は企業が成長・存続するために行うものであることを意識して、新規事業アイデアを生み出す際には、必ず収益性をセットで考えるようにしましょう。
新規事業アイデアを考える前に必要なこと
新規事業アイデアを考える際には、漠然と取り組むよりも事前準備を行っておくことで、質の良いアイデアをスムーズに生み出せる可能性が高まります。
ここでは、新規事業アイデアを考える前に行っておくべき準備についてご紹介します。
新規事業を立ち上げる目的や要件を整理する
新規事業を考える際には、自社が新規事業を立ち上げる目的・要件を整理することが必須です。なぜなら、目的・要件が曖昧なままアイデア出しを行っても、自社が求めている新規事業を作ることができないためです。
立ち上げた後で大きな方向転換が必要となったり、情熱を注げず撤退することになったりすると、新規事業立ち上げに費やした時間・コスト・労力を大きくロスしてしまいます。
新規事業の立ち上げは、多大な時間・コスト・労力を投下する一大プロジェクトです。自社が納得できる新規事業を立ち上げるためにも、事前に目的・要件の整理・明確化は必ず行っておきましょう。
理想の未来をもとに課題設定する
新規事業のアイデアを考える前には、目的・要件の整理だけでなく、自社が求める理想の未来を思い描くことも非常に重要です。理想の未来を思い描くことで、現状とのギャップや足りない要素が明確となり、今後取り組む課題を的確に設定することができます。
- 自社が望んでいること
- 自社が望んでいないこと
- 自社が何のために新規事業を行うのか
上記のように具体的に理想の未来を思い描くことで、新規事業のアイデア創出から、ビジネスモデル・ビジネスプラン設計といった事業化のプロセスに至るまで、新規事業のアウトプット全体の質を高めることができます。
新規事業アイデアを生み出すポイント
新規事業立ち上げのすべてはアイデアから始まるため、上質なアイデアを生み出すことは何よりも重要です。しかし、良いアイデアを生み出すことは容易ではないと感じている方は少なくありません。
ここでは、新規事業アイデアを生み出す際に押さえておきたいポイントについてご紹介します。これらのポイントを意識することで、アイデア出しをスムーズに行ったり質を高めたりすることが期待できるため、ぜひ参考にしてみてください。
アイデア出しは質より量
新規事業のアイデア出しが難航する大きな理由が、新規事業の成功や事業化の実現性を意識するあまり、アイデアの質にこだわりすぎてアイデアが出なくなったり、数が集まらなかったりすることです。
実際には、アイデア出しは少数のアイデアを煮詰めるよりも、数を集めて幅広い視点で良いものを残した方が、結果的に上質なアウトプットができるケースが多くあります。
新規事業のアイデア出しは質よりも量を重視した方がよいことを意識して、多少アバウトでもいいのでリラックスして実践するようにしましょう。
既存事業に囚われない発想も重要
新規事業アイデアをうまく生み出せない原因として、既存事業に囚われすぎているケースがあります。既存事業はナレッジ・ノウハウ・成功事例・失敗事例といった役立つ情報を多く持っていますが、一方で既存事業の常識・枠組みで物事を考えてしまう側面もあります。
そのため、新規事業を考える際には、時として既存事業から離れた新しい視点でアイデアの発想や創出を行うことも重要です。既存事業との連携やナレッジ・ノウハウの流用は後からでも十分考えることができます。
別の人の立場で考えてみる
新規事業のアイデア出しを行うとき、自社の成長・拡大を意識しすぎるあまり、自社目線で物事を考えてしまいがちです。しかし、視点が偏るとアイデア出しを行う際の選択肢や可能性を狭めてしまうため、良いアイデアが生まれにくくなる場合もあるでしょう。
アイデア出しを行っても同じようなアイデアばかり集まったり、質の良いアイデアが集まらない場合は、意図的に別の視点で考えてみるのも良い方法です。顧客の視点・男性の視点・女性の視点・競合企業の視点・業界外の視点など、さまざまな視点から発想を行うことで、視野が広がりこれまでとは違うアウトプットを期待することができます。
新規事業のアイデア出しは、自社目線で行わなければならないという決まりはどこにもありません。広い視野を持って柔軟な発想を行うためにも、別の視点で考えてみることをぜひ実践してみてください。
新規事業アイデアを生み出す方法
成功確度が高く自社の強みになるような新規事業アイデアを生み出すことは容易ではありません。そこでおすすめな方法が、アイデア発想法を活用して新規事業のアイデアを生み出すことです。
ここでは、新規事業アイデアを生み出す際に役立つ発想法についてご紹介します。
アイデア発想法については以下の記事でも詳しくご紹介しているため、併せてご参考ください。
アイデア発想法とは
既存事業の強みと弱みを分析
新規事業に取り組むのは自社であるため、新規事業の種となるアイデアを生み出す際には、自社の特徴・得意分野・強みを生かすことがポイントとなります。そこで重要となるのが、自社の既存事業の分析です。
現に取り組んでいる既存事業を細部まで分析することで、自社の強み・弱みが明らかとなり、自社の強みを活かし弱みを回避したアイデアを発想するのに役立ちます。新規事業の成功率や成長スピードも高めることができるでしょう。
既存事業には、新規事業に役立つヒントがたくさん隠されているため、新規事業アイデアを創出する際には必ず分析を行うことをおすすめします。
競合企業の強みと弱みを分析
基本的にどのような業界・業種のビジネスにも競合が存在するため、新規事業アイデアの発想を行う際にも、競合の存在を意識する必要があります。そこで重要となるのが、競合分析です。
新規事業の競合となり得る企業の強み・弱み・動向などを細かく分析することで、競争優位性を発揮できるポイントや差別化に繋がるポイントを見いだすことができます。また、事業立ち上げ後に脅威となりそうなリスク要因の発見にも繋がります。
このように競合分析を行うことで、競合との関係性を踏まえたアイデアを生み出しやすくなり、新規事業の実現性や成功率を高めることができるため、競合分析は徹底的に実施しておくようにしましょう。
既存のものに新たな付加価値を付ける
新規事業アイデアはまったく何もないところから生み出すイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には既存のビジネスモデルをカスタマイズしたり、新たな付加価値を付け加えたりすることで、新規事業のアイデアにできるケースも多くあります。
既存のビジネスモデルをベースとする場合は、基本的に以下のように既に成功しているものを参考にします。
- 自社の既存事業
- 同業他社の成功事例
- 異業種の成功事例
成功事例は既にビジネスモデル・仕組みが確立されているため、新規事業の展開がある程度予測できるというメリットもあります。
ただし、自社の特徴・得意分野とあまりかけ離れている場合は、想定外のイレギュラーが発生する可能性もあるため注意が必要です。
新規事業アイデアの発案に役立つフレームワーク
新規事業アイデアの発案には、ビジネスフレームワークを活用することがおすすめです。フレームワークとは、「思考の枠組み」のことで、特定の枠やパターンに当てはめることで思考や発想をサポートするツールです。
新規事業アイデアの発案においても、漠然とディスカッションを重ねるよりも、フレームワークを積極的に活用することで効率的なアプローチが可能となります。
新規事業アイデア発案に役立つフレームワークには、次のようなものがあります。
KJ法
KJ法とは、ブレインストーミングなどで出した断片的なアイデアや情報を1つずつカードや付箋に書き、要素別にグルーピングなどによって整理する手法です。
アイデアを可視化し、論理的に情報を整理することで、課題・問題点や改善点などを抽出できます。少数派の意見も多数派と同様に扱われる点も特徴の一つです。
マンダラート
マンダラートとは、曼荼羅(まんだら)模様のように並んだマス目に1つずつアイデアを書き込み、整理したり発展させたりするためのフレームワークです。
まずは3×3に並んだうち中心にあるマスにテーマや課題を書き込み、周辺のマスに関連する語句を記入します。9つのマスが埋まったら周辺のマスの1つを中心とした9つのマスを新たに作り、同じことを繰り返していくことでアイデアを広げていきます。
オズボーンのチェックリスト(SCAMPER法)
オズボーンのチェックリストとは、A・F・オズボーン氏が考案したアイデア抽出の手法です。転用・応用・変更・拡大・縮小・代用・再配置・逆転・結合という9つの視点から既存のアイデアを変化させることで新しいアイデアを生み出します。
ペルソナ分析
ペルソナとは、事業や製品・サービスのターゲットを具体化した顧客像です。氏名や性別、年齢、職業、家族構成、趣味、価値観などを設定し、ペルソナを明確にすることで目指す方向性や軸をブラさずにアイデアを考えることができます。
また、企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明文化し、新規事業で何を実現したいのかといったゴールを明確に定義することも、事業化につながるアイデアを生み出すポイントです。
アイデアの創出からビジネスモデル構築まで、新規事業立ち上げに役立つフレームワークについては以下の記事で詳しくご紹介しているため、ぜひご参考ください。
【用途別】新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク10選
まとめ
経営者にとって、新規事業を立ち上げて自社を成長・存続させたいという思いは共通しているものです。しかし、新規事業に繋がるような上質なアイデアを創出することは容易ではなく、多くの企業はアイデアが集まらなかったりアイデアが出なかったりといった課題に直面します。
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- カテゴリ:
- アイデア発想法
- キーワード:
- 新規事業