プロセスイノベーションとは?意味や効果、事例を解説

 2022.02.14  株式会社システムインテグレータ

現代のビジネスシーンでは、イノベーションを起こすことの重要性と必要性が叫ばれています。しかし、世の中にインパクトを与えるような画期的な製品やサービスの開発はそう簡単にできることではなく、イノベーションの実現は難しいと感じている方は少なくないでしょう。

そのような方に注目してもらいたいのが、「プロセスイノベーション」と呼ばれるタイプのイノベーションです。プロダクトを誕生させる以外にもイノベーションを引き起こす方法はあり、十分な効果が期待できます。

当記事では、プロセスイノベーションについて、概要や方法、事例まで幅広くご紹介していきます。イノベーションについて関心のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

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イノベーションとは

イノベーションとは

イノベーションとは、「革新」「刷新」「新機軸」という意味を持つワードで、ビジネス用語としては革新的なモノ・コト・仕組みなどによりビジネスに新たな価値をもたらすことをいいます。

現代の企業は市場の成熟による停滞やビジネス環境の急速な進化・変化といった厳しい状況に置かれています。イノベーションは、このような状況を打破して企業が成長するための重要なエッセンスとして、企業規模を問わずあらゆる業界で注目されています。

イノベーションの5つの分類

イノベーションは「革新」「刷新」「新機軸」という意味を持つ英語ですが、日本語では「技術革新」と訳されることが多いため、技術面ばかりにフォーカスされがちです。

しかし、イノベーションという概念・用語を提唱した経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの定義では、イノベーションは役割によって次の5つに分類されています。

  • プロダクトイノベーション
    革新的な製品・サービスを開発して市場に投下することで優位性を発揮する
  • プロセスイノベーション
    製品やサービスの製造・流通プロセスを革新することで生産性と生産効率の向上を目指す
  • マーケットイノベーション
    新規マーケットの開拓により優位性発揮を目指す
  • サプライチェーンイノベーション
    原材料・供給源・流通系の革新により付加価値向上や効率化を図る
  • 組織イノベーション
    組織体系を見直すことで、変化への対応や効率化・生産性の向上などを目指す

イノベーションの5つの分類については、以下の記事でも詳しくご紹介しているので、併せてご参考ください。
イノベーションとは?定義や種類から実現に向けた課題点を解説

当記事では、上記5つのイノベーションのうち、プロセスイノベーションにフォーカスして、概要やメリット、実現方法、成功事例を詳しく解説していきます。

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プロセスイノベーションとは

プロセスイノベーションとは、名前のとおり製品やサービスを製造・流通する過程・工程・手順・方法(プロセス)に大幅な革新を起こすことです。わかりやすく言い換えると、仕事のやり方を大幅に変えて、より良い状態を目指すことを指します。

例えば、次のような変革がプロセスイノベーションに分類されます。

  • 機械化による生産性向上・効率化・コスト削減
  • 実店舗を通して販売していた商品をメーカーのECサイトから直接販売(DtoC)

製品・サービスそのものを革新するプロダクトイノベーションと混同されがちですが、その内容は大きく異なるため、明確に区別することが重要です。

プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの違いについて、続けて以下に解説します。

プロダクトイノベーションとの違い

企業のイノベーションは5つに分類されますが、大別するとプロダクトイノベーションとプロセスイノベーションに分かれます。

どちらも製品やサービスの製造・提供に関連したイノベーションです。最も大きな違いは、プロダクトイノベーションが提供されるプロダクトを刷新するのに対して、プロセスイノベーションでは提供されるプロダクト自体は変わらない点です。

また、プロダクトイノベーションが売上を拡大して利益を確保する性質を持つのに対して、プロセスイノベーションは主にコスト(経費)削減によって相対的に利益を向上させる点も、両者の大きな違いとなります。

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プロセスイノベーションの効果と注意点

プロセスイノベーションによって企業が得られる効果は、生産性向上・効率化によるコスト削減という内面の変化であり、プロダクトイノベーションと同じく利益増大に寄与します。

しかし、経済に与える効果においては意味合いが違ってきます。プロダクトイノベーションではGDPの増加や雇用の創出などプラスの効果を期待できます。一方でプロセスイノベーションがもたらすのは雇用の減少や従来のプロセスに関与する企業の売上減少というマイナスの効果です。GDPにもマイナスの影響を与えますし、デフレを招く要因にもなりえます。

プロダクトイノベーションよりもプロセスイノベーションの方が、成功確度が高く難易度も低いため、近年ではどちらかといえば後者が優勢となっています。しかし、プロセスイノベーションに偏重し過ぎると、上述のようなマイナスの効果が生じる可能性がある点に留意しておく必要があります。

プロセスイノベーションの実現に必要なステップ

プロセスイノベーションの実現に必要なステップ

プロダクトではなく生産方法や生産方式に変革をもたらすプロセスイノベーションには、ほかのイノベーションとは異なるアプローチが必要となります。

ここでは、プロセスイノベーションを実現するために必要となる4つのステップについてご紹介します。プロセスイノベーションを推進したい方や、成功確率を高めたい方は、ぜひご参考ください。

現状把握と課題発見

プロダクトイノベーションを起こすためには、まず自社の生産プロセスや業務プロセスの現状を把握することから始めます。現状を把握しないと、課題や解決法を見いだすことはできません。

現状把握を行う際には、業務に慣れ親しんだ特定の担当者だけでなく、複数のメンバーでチェックを入れたり、外部の専門家にアセスメントを依頼したり、多角的な視点で問題点や課題をリストアップしていくのがポイントとなります。

例えば、次のような視点で生産プロセス・業務プロセスを見直していきます。

  • もっと効率化できそうな部分はないか
  • 業務が停滞しがちな部分はどこか
  • ミスやトラブルを低減できないか

現状把握の結果次第でプロダクトイノベーションの成否も大きく分かれるため、高精度のアウトプットが得られるように注力することが重要です。

原因の特定と影響範囲の把握

現状把握により生産プロセスや業務プロセスの問題点・課題点をリストアップしたら、続けて原因を特定していきます。問題点・課題点がある場合には、以下のように必ず何かしらの原因があります。

  • 人手が不足している
  • 業務負荷が特定の人に集中している
  • 業務フローを確立できていない
  • システム化ができていない
  • IT化・機械化ができていない

原因の特定においても、より多角的な視点でボトルネックを特定するために、複数のメンバーで取り組むことがポイントとなります。また、原因を特定したら、その原因が及ぼす具体的な影響範囲・影響の大きさについても明確化しておきます。

原因の特定が曖昧なままでは、的確な改善策を見いだすことができないため、正確かつ詳細な現状分析を行うことが重要です。

改善策の検討

原因の特定と影響範囲の把握まで完了したら、改善策を検討していきます。ここで重要なのが、全体の目的はあくまで「イノベーションに繋がるような生産プロセス・業務プロセスの改善」であることに留意して改善策を検討することです。

人員不足解消のための人員補充、業務フロー改善による効率化といった個々の改善にフォーカスしてしまうと、当初の目的を見失ってしまい的確な施策を見いだせなくなるため注意が必要です。

改善策を検討する際には、あらゆる方法・手法を持ち寄り、全体の目的を達成できるような最適解(ベストプラクティス)を見いだしていくことが重要なポイントとなります。

改善策の実施と検証

十分な改善策を立てられたら、実際に実行して生産プロセス・業務プロセスの改善を推進していきます。改善施策を実行する過程で新たな問題・課題が表出するケースも珍しくないため、都度修正・検証を繰り返しPDCAを回しながらベストプラクティスを探っていくことになるでしょう。

改善策の実行後は、どの程度の成果が得られたのか、施策が成功したのか検証を行います。事前にKGI・KPIなど数値で目標を設定しておくと、スムーズに効果測定を行うことができます。

当初の目標を達成できていない場合は、施策の内容を見直して再度改善を行い、より高い確度で生産プロセス・業務プロセスの改善を目指します。

プロセスイノベーションの事例

プロセスイノベーションの事例

プロセスイノベーションは、製品の生産方法・生産過程という外部からは見えないイノベーションであるため、具体的なイメージを掴みづらい方もいるでしょう。

そこでここでは、プロセスイノベーションの有効性・効果性の高さやビジネスに与える影響力がわかる事例をご紹介します。

フォードの流れ作業生産方式

フォードの流れ作業生産方式とは、自動車メーカーのフォード社がT型フォードを大量生産する際に開発した、ベルトコンベアで移動させながら流れ作業で生産を行う方式です。プロセスイノベーションの成功事例として世界的にも広く知られていまです。

同方式を採用したフォード社では、流れ作業によって1つの工程が単純化され、短時間で効率的に自動車を製造できるようになりました。。また、技術の熟練も必要としなくなったため、人材も確保しやすくなりました。

フォードは流れ作業生産方式で大幅な生産性向上を実現したことで、大量の自動車を安価で生産することに成功。当時は一部上流階級のみしか購入できない高級品だった自動車を爆発的に普及させて、その名を知られるようになりました。

トヨタのかんばん方式

かんばん方式とは、トヨタ自動車が開発し実践している、在庫圧縮を主な目的とした生産管理方式のことで、日本国内における代表的なプロセスイノベーションです。

前工程で生産したものを一方的に後工程に流すのではなく、後工程の需要に応じて作成した作業指示票を前工程に渡す手順を踏むことで、「必要なものを必要なときに必要なだけ作る」ジャスト・イン・タイムの生産を可能にする仕組みです。この方式で用いられていた作業指示書の通称が「かんばん」であったことから、かんばん方式と呼ばれています。

かんばん方式は仕掛り品の在庫を抱えずに合理的な生産が可能となることから、自動車業界に限らず多方面で採用されています。

まとめ

プロセスイノベーションは、社会的インパクトの大きさではプロダクトイノベーションには及びませんが、生産性向上・効率化・コスト削減ならびに利益向上といった、企業経営に大きなベネフィットをもたらすものです。プロセスイノベーションを起こすことに成功すれば、企業間競争の激化や人口減少による人材確保の難化が課題となる現代社会において、大きなアドバンテージとなるでしょう。

プロセスイノベーションを含む各イノベーションを起こすには、自社の状況把握・課題発見とともに、劇的な改善に繋がるアイデアも必要となります。弊社が提供するアイデア創出プラットフォーム「IDEA GARDEN」であれば、アイデア創出・収集・管理・育成までをまとめて行うことができるため、効率的なアイデア出しを実現できます。イノベーションの材料となるアイデアを見いだしたい方は、ぜひご検討ください。

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