自社の製品・サービスの企画や改善について考える際、皆さんはどのようにアイデアを出しているでしょうか。自分一人ではいいアイデアが思い浮かばない、複数人で話し合っても案がまとまらない。そんな悩みを抱えている方は少なくないと思います。本記事では、今日からビジネスに活かせるアイデア発想法をご紹介します。
アイデア発想法とは
アイデアは、突然、湧いてくるようなものではありません。日ごろからいくつかネタが頭の中に溜まっていて、何かのヒントを見て急に活性化し形となります。ニュートンにとってのヒントはリンゴであり、アルキメデスも浴槽に入ったときに溢れる湯を見てヘウレーカ(わかったぞ)と叫びながら裸で走ったのです。
自然と湧き出るものでないなら、何らかの方法でアイデアを導き出そう。そういう思いから、古今東西、世界中で100以上のアイデア発想法(Idea Method)が考案されてきました。でも、たくさんのアイデア発想法をただ並べても、どれが自分たちの用途に合うのか、なかなかわかりませんね。そこで、これらの発想法を図1のように4つに分類しました。
図1:4種類のアイデア発想法
①ヒントをもとにインスピレーションを湧かす手法
アイデア発想の基本は、ヒントを見てひらめくことです。刺激的な言葉、ユニークな商品の特徴、無関係な分野のカタログ、周囲にある物や自然現象など、なんらかのヒントを数多く用意し、それと発想テーマを強制的に関連付けることで新しい発想を生み出します。
その1つである刺激語法を、図2を用いて紹介します。当社はeコマース製品「SI Web Shopping」を作っているので、今回の例では発想テーマを「これからのeコマース」にしてみます。
最初に、刺激となるようなキーワードをカードに書き出しておきます(a)。
そして、ランダムにカードを引いて発想テーマと関連付けます(b)。
引いたカードが「セルフサービス」だった場合、テーマと結びつけると「(システム会社に委託しないで)自分で作れるeコマースサイト」というアイデアの種が生まれたりします(c)。
そして次のステップで、実現可能か、どう実現できるかを検討する(d)、というようなアプローチになります。
次のカードを引いて「音声UI」だったら「会話形式で買い物ができるeコマース」、「カスタマーサクセス」だったら「カスタマーサクセス機能を有するeコマース」という感じでアイデアの種を生んでいく感じです。
図2:刺激語法
②複数のメンバーでアイデアを高めていく手法
「三人寄れば文殊の知恵」と言うように、1人で考えるより複数人で意見を出し合った方がより洗練されたアイデアに育てられます。この手法の代表格はブレインストーミング法ですが、そのほかにもブレインライティング法、KJ法、ZK法などさまざまな手法があります。ブレインストーミング法はよく知られているので、ここではブレインライティング法を図3を使って紹介します。
最初にテーマを決めて(a)、メンバーを集めます(b)。ここでは「自分で作れるeコマース」というテーマでメンバーは6名と仮定しましょう。
最初のステップとして、6名全員がテーマに合った要素を3つ書きます(c)。
次のステップでその用紙をそれぞれ隣の人に回し、前の人が書いたものを発展させた要素を書き加えます(d)。
この作業を6名全員に一回りするまで5回繰り返すと、最終的に6人×3要素×6ステップの最大108の要素が書き込まれることになります(e)。
最後に集まった要素について実現可能性や実現方法などを議論し具体的なアイデアにまとめる(f)、というイメージです。
図3:ブレインライティング法
③課題や目標を論理的に整理して、発想を思いつく手法
ヒントでインスピレーションを得るのが右脳的アプローチだとすると、課題や目標を論理的に整理するのは左脳的アプローチです。この分野では、テーマをブレークダウンしながら発想するマインドマップ法が有名ですが、目的をブレークダウンする目的展開法、手段をブレークダウンする系統図法、解決策のパターンを列挙するTRIZ法などさまざまな手法があります。
当社がよく使っているのは、図4のようなマインドマップ法です。この例では「これからのeコマース」というテーマを中心に設置し、「自分で作れるeコマース」「会話形式で買えるeコマース」「カスタマーサクセス型eコマース」などの発想が派生しています。さらに「自分で作れるeコマース」は「提供形態」や「サイト規模」などさまざまな項目を生み、各項目が次々とブレークダウンしていきます。
一見、単に構造化手法で整理する左脳作業と思われがちですが、実はテーマを置いたとたんにそこからアイデアが派生して湧く右脳効果も大きい手法です。
図4:マインドマップ法
④ペルソナやユーザーニーズから発想する手法
最後にご紹介するのは、視点を180度変えてユーザー側から発想していく方法です。ペルソナとは架空の顧客像のことで、どんな顧客がどんな場面で購入するか想定するときによく使う言葉です。購入するユーザーになりきって考えると、何が欲しくて、何に困っているかが見えてきますね。ここではちょっと楽しいキャスティング法をご紹介しましょう。
キャスティング法は、寸劇仕立てで状況を思い浮かべてニーズを発見する方法です。図5では「私がネットで買うとき」という寸劇で、4人のキャストが女子高生や主婦、孫娘などのペルソナを配役されています。Aさんは、彼女の誕生日にサプライズをしたいから有料でも時間指定で配達を頼みたいというニーズを思いつきました。女子高生役のBさんはクレジットカードではなくPayPayで手軽にスマホ決済したい、主婦のCさんは店舗で商品バーコードを読み取ってネット価格と比較したい、Dさんはおねだりする孫娘として単なるウィッシュリストではなく優先順位を付けておじいちゃんに欲しいものを伝えたいそうです。役になりきるといろいろなシーンが浮かんできて、そのなかから良いアイデアが生まれそうですね。
図5:キャスティング法
アイデア発想法の根幹
上記で紹介したアイデア発想法の①と②をまとめると次のような手法となります。
①何らかのヒントをもとにしてインスピレーションを湧かし、
②複数のメンバーでアイデアを高めていく
そして、
③課題や目標を論理的に整理する
④ペルソナを設定して、ユーザーのニーズを想定する
という2種類の発想法は、実はその発想法を使うこと自体が何らかのヒントになるというものです。つまり、次のような根幹が見えてくるわけです。
【アイデア発想法の根幹】
「何らかのヒントをもとにしてインスピレーションを湧かし、みんなでアイデアを高めていく」
数多くあるアイデア発想法のほとんどは「ヒントの出し方」と「アイデアの高め方」の2つに関してさまざまなアプローチを提案しているものです。
「Hints Method」と「IDEA GARDEN」
ネットの時代にいつまでも紙と鉛筆でアイデア発想するのもどうかと思います。そこで当社は、上記の「アイデア発想法の根幹」を「Hints Method」とネーミングし、これをツール化して「IDEA GARDEN」というクラウドサービスをリリースしました。
デフォルトのヒント種別としては、図6に示す6つの「ビジネストレンド」「技術トレンド」「5年後の〇〇」「嫌なこと、無駄なこと」「やっつけたい巨人」を提供しています。ユーザー自身でヒント種別を入れ替えることもできます。例えば「やっつけたい巨人」の代わりに「刺激語」にして、そこに「刺激語」をたくさん登録すれば「刺激語法」が実現できます。
「みんなでアイデアを高めていく」部分は、おなじみのカンバン方式を採用しています。オフラインだけでなくオンラインでもコメントを出し合い、「いいね」で応援することもできます。
図6:IDEA GARDENのヒント種別
昔は「アイデア発想法」そのものの有効性が論じられていましたが、現代はアイデア発想法とツールが一体となって評価される時代になったといえます。
(梅田 弘之)
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