総合商社でのDX事例を解説!推進のポイントも紹介

 2023.03.08  株式会社システムインテグレータ

近年注目されている「DX」とは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」を略した言葉です。激しく変化するビジネス環境に企業が対応するため、データやデジタル技術を活用しつつ、製品やサービス、業務プロセスや組織そのものを変革させることを指します。

DXは製品やサービスだけでなく、企業そのものを変革する方法です。現在ではさまざまな企業がDXを推し進めており、DXに特化した組織や部門を設置している企業が増加しています。

今回の記事では、総合商社のDX推進事例に着目し、メリットや実際の取り組みを解説します。

商社におけるDXとは

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変わりゆくビジネス環境において、変化や発展がないままでは競合他社との競争についていけません。これからはDXによってデータやデジタル技術を生かし、製品やサービスだけでなく業務や企業そのものを変革させることが求められます。また、DXはビジネスチャンスだけでなく、デジタル技術を活用するディスラプターといったベンチャー企業への対策としても有効です。

国内の大手商社では積極的にDXを取り入れるため、DX推進の専門部署を設置しています。住友商事株式会社は「DXセンター」、三菱商事株式会社は「産業DX部門」、三井物産株式会社の場合は「デジタル総合戦略部」などです。これらの大手総合商社では、グループ一体でDX推進の専門部署を立ち上げている特徴が見られます。

これまでの商社DXの取り組み

大手総合商社のDXへの取り組みは、2015年頃から積極的に推進されてきました。しかし、取り組みは当初から順調というわけではなく、十分な整備がない状態で進んでしまった例もあります。

特に総合商社は事業の「サイロ化」が目立ちます。サイロ化とは、組織やシステムが独立しておりシステムの連携ができなかったり、情報共有ができなかったりする状態をさします。システムのサイロ化が進むと連携が難しく、結果としてデータの収集や、収集したデータの活用が難しくなります。これはDX推進にも悪影響を及ぼします。方針や理解に食い違いが起き、十分にDXを進められない要因となってしまうのです。

当時各社は対策として、DX推進の専門部署を立ち上げて方針の策定や役割分担などを行いました。また、本社以外にグループ企業とも擦り合わせを行い、得られたフィードバックを磨き上げて部門や機能の細分化にも着手する施策を行っています。

商社がDXを取り入れるメリット

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企業がDXを活用することで、安定した経営による企業の成長、利益の向上といったさまざまなメリットが得られます。ここでは「販売チャネル」「経営」「利益アップ」の3つに焦点を当てて詳しくみていきましょう。

時代に合わせた販売チャネルの拡大

販売チャネルとは、商品やサービスの販売または購入経路のことです。実際の店舗だけでなく、代理店やネットで売買ができるECサイトなども含まれます。

商社は元々、商品を大量に仕入れ、商品を売る側と買う側の間に入って手数料を得るというビジネスが主流でした。しかし、インターネットが普及した現代では自力での販路開拓も可能になり、仲介手数料を得るだけでは他社との競争に勝てません。また、増加傾向にあるECサイトのような直販ビジネスは商社が間に入らないという特徴があります。「商社はいらない」と言われないためにも、従来の販売チャネルを変化させたり、付加価値を高めたりといった施策を行わなければならないのです。

例えば、InstagramやTwitterなどのSNSの活用も必須となりました。SNSによって従来の販売チャネルにはない経路が開拓でき、新たなビジネスチャンスを見いだせます。

さらに近年では「ダイナミックプライシング」と呼ばれる手法を用いる業界も増加しています。ダイナミックプライシングとは、需要の関係から繁忙期は販売価格を上げて、反対に閑散期は下げる方法です。ホテルなどの宿泊施設や航空会社によって推進されている手法ですが、他業種でも推し進める動きが出ています。最近ではDX施策として、この手法を応用した需要予測の取り組みも生まれています。

商社はあらゆる業種に精通しており知識やノウハウも多く所有しているため、DXに取り組むことで新たなサービスや技術が生まれる可能性を秘めているともいえるでしょう。

関連ブログ:ダイナミックプライシングとは?基本、メリット、レベニューマネジメントとの違いを解説

データに基づいた経営

商社はさまざまな商品やサービスを扱ってきたため、その知識や経験が情報として蓄積されています。それらの情報をビッグデータとして経営に活かすことで、企業としての競争力を高めることができます。

例えば市場動向に変化があった際に動向を元に新しいビジネスを展開できれば、商品やサービスを競合他社よりも先に消費者に提供できます。先んじて利益が得られるだけでなく、市場でも優位に立てます。また、ビッグデータをうまく活用し、消費者の動向から需要を予測できれば必要な商品を必要な分だけ購入し提供できれば、在庫を適正に管理し、利益を最大化できるでしょう。

データに基づいた経営を行うためには、商社が持つ知識・経験といった情報をデータ化し、そのノウハウを若手社員に継承させていく必要があります。

利益率の向上

積極的にDXに取り組むことで、商流全体での利益向上が狙えます。上でもご紹介したように、例えばDXに取り組んだ結果、無駄な発注を削減できる仕組みができれば、余剰在庫や在庫切れを減らし、適正在庫を保つことができ、在庫保管の費用を抑えられます。

DXは商流だけでなく物流に関してもメリットがあり、配送車の位置情報や配送先のルートをシステム化できれば、コストを抑えた配送ができます。無駄な配送を減らすことができればドライバーの負担が軽減し、物流も最適化できるでしょう。このように、商流や物流の観点からも利益率の向上を図れるのです。

商社における実際のDX推進事例

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大手商社では、DX推進の取り組みとして専門部署や組織を立ち上げています。そこではDXの方針を決めたり、グループ企業などと擦り合わせを行ったりと、さまざまな施策を行ってきました。では、実際にどのようなDX推進に取り組んでいるのでしょうか。ここでは、「住友商事」「三井物産」「三菱商事」「長瀬産業」の4社について、DX推進の事例を紹介します。

住友商事の取り組み

住友商事では、2018年にDXの専任組織である「DXセンター」をデジタル事業本部に設置しました。2020年には経済産業省が選定する「DX銘柄」に選ばれた実績があります。住友商事では現在、300件以上のDXプロジェクトが生まれており、日本以外にもアジア・アメリカ・欧州・中東・アフリカなどでもDX組織が作られています。

住友商事はDXを活用して、デジタルテクノロジーをビジネスでの課題に組み込み、課題解決の施策や新たな価値の創造に取り組んでいます。DX推進の環境を整えるため、DX技術の専門会社Insight Edgeを立ち上げるなど、万全の体制を敷いてきました。また、ベンチャー企業に対して出資や支援を行う、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動なども行っています。

住友商事はさらなるDX推進を図るため、2026年までにDX推進の人材をグループ全体で1,000名ほどに増やす見通しです。

2023年の次世代成長戦略テーマとして、現在取り組んでいる分野に加え、次世代エネルギー・社会インフラ・リテイルコンシューマー・ヘルスケア・農業を開発分野に掲げています。社会インフラの分野では、日系の製造業者向けに製造DXサービスの提供をするなどとさまざまです。中長期的な目標として、量子コンピュータの技術を生かし、業種に縛られないビジネスモデルの構築を目指しています。

三井物産の取り組み

三井物産は、2019年に「デジタル総合戦略部」を設立しました。デジタル総合戦略部にはビジネス・デジタルの両面に精通した社員が集められており、デジタルインフラやデジタルテクノロジー戦略、DX人材開発の部署が設置されるなど、万全なDX推進体制が伺えます。

三井物産によるDXは、商品知識や物流機能といった商社のノウハウと、ビッグデータや AI・IoTを掛け合わせた取り組みです。利益向上やコスト削減、業務効率化を図り、新たなビジネスモデルの創造を目標としています。社会インフラを始め、新技術の活用や産業破壊の観点からもDXに挑戦する予定です。現在は、ダイナミックプライシングの手法を使った需要の予測や、建機業界向けにデータプラットフォームの提供、地下資源開発のために地層解析のAI開発・事業化を目指しています。

DX人材戦略についても強化が行われており、2022年3月にはMitsui DX Academyの開講やDX人材認定制度を導入しました。アジアと南米でDX人材の雇用を積極的に行うなど、採用にも力を入れています。

三菱商事の取り組み

三菱商事では2022年に、デジタルテクノロジーを生かしたビジネスの創出や価値向上を目指す「産業DX部門」が創設されました。

三菱商事は総合商社としての強みを生かし、「産業DXプラットフォーム」の構築を目指しています。産業DXプラットフォームの構築とは、事業の効率化や需要の予測といった機能をプラットフォーム化することです。産業全体を変革するとともに、社会全体の課題について解決を図ります。

DXの具体的な取り組みとして、食品ロスの削減や位置情報のデータベース化が挙げられます。食品流通において、在庫過多による食品ロスは深刻です。需要予測によって必要な分だけ食品を生産するようにできれば、食品ロスの発生を抑えられるでしょう。三菱商事は食品メーカーの生産量から配送効率、販売量まであらゆる商流データを統合管理することで、過剰在庫も欠品も出さないような需要バランス予測に役立てようとしています。この取り組みでは受発注や在庫データなどをAIが解析し、需要予測機能のモデルを作成しています。

また、位置情報の活用も新たなビジネスモデルの一つです。三菱商事はNTTと共同で「HERE Technologies」という世界最大級の位置情報データベースを管理するデータサービスに出資し、物流や都市交通に位置情報を生かす取り組みを行っています。位置情報をうまく活用できれば、ドライバーの業務効率化などに貢献できます。

長瀬産業の取り組み

長瀬産業は、創業180年以上を誇る老舗の商社です。経済産業省が定めるDX認定制度にて、2022年に「DX認定事業者」の認定を受けました。

長瀬産業は商社として食品素材やケミカルを取り扱っており、自社内に製造・加工・研究開発を行うナガセR&Dセンターという施設を有しています。食品素材やケミカルの他、医薬品や合成樹脂、デジタル分野にもビジネスを広げているのが特徴です。

2020年にはデジタルビジネスをさらに展開するために、AIを用いた新材料探索プラットフォームである「TABRASA(タブラサ)」を立ち上げました。バイオ素材メーカー向けに開発されたTABRASAは、新材料の開発を効率化するMI(マテリアルズ・インフォマティクス)用SaaSサービスです。数多くの材料メーカーと取引がある長瀬産業は、TABRASAのプラットフォームを使って素材開発の期間短縮を狙っています。日本の素材メーカーが国際的な競争力を強めることを目標に掲げています。

商社がDXに取り組む際のポイント

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商社がDXに取り組む際に重要なのは、「トップ自ら変革に対する意識と覚悟を持つ」「さまざまなデータの活用」「ITツールの利用」の3つです。DXを成功させるために、このポイントは押さえておきましょう。

変革への強い意欲をトップが表明する

目標がない状態でとりあえずDXを推進しようとしても、当然のことながらDXを成功させることはできません。重要なのは、トップが変革への意識と覚悟を持つことです。時代の変化に対応するという意欲がなければ、他のDXに取り組む企業との競争には勝てないでしょう。DXは事業の改革を伴うということを忘れずに取り組むのが大切です。

データを有効活用

商社は幅広い商品知識やサービス、経験といった情報を持っています。商社特有の情報をデータ化すると、さまざまなノウハウを若手社員に継承させられます。実際に、データ化を進める企業が近年増加している傾向です。DXによりデータを有効活用できれば、少ない人材もしくは経験が乏しい新人を早急に即戦力へ育てられるでしょう。

ITツールを活用する

DXでは積極的なITツールの活用が求められます。例えば、AIを用いて発注を適正数にすることで、売り切れを防ぎつつ余分な在庫を抱えずに製品を売れるのです。在庫処分が増えるとブランドイメージを損ねてしまうデメリットがありますが、AIで発注量を調整すればデメリットを回避できます。また、ITを用いたプラットフォームの立ち上げも、豊富な情報を持つ商社にはおすすめです。

なお、ITツールのうち「販売管理システム」を商社で活用するポイントについて、こちらの記事でまとめておりますのでぜひご覧ください。

商社で活用する販売管理システムに必要な機能とは?詳しく解説

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
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まとめ

変化し続ける環境の中で発展しないままでは、競合他社との競争に対応できません。商社に限った話ではありませんが、デジタルを活用した業務改善や組織変革は、企業の競争力を高めるために欠かせないものになっています。

DXを推進するための人材と組織づくりについては、こちらの資料で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。


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