カスタマーサクセスとは

 2021.10.12  株式会社システムインテグレータ

「カスタマーサクセス」という言葉を聞くようになって久しいですが、従来使われてきた「顧客満足度」や「カスタマーサービス/サポート」との具体的な違いを認識していない人は意外と少なくありません。サブスクモデルのビジネスが広く普及してきた昨今、カスタマーサクセスは顧客の解約率の低下に欠かせない要素となっています。本記事では、カスタマーサクセスの概要と取り組みについてご説明します。

カスタマーサクセスとは

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カスタマーサクセス(Customer Success)は、「顧客を成功に導くための取り組み」です。最近になってこの言葉が大きくクローズアップされてきたのは、SaaS(Software as a Services)やサブスクリプションモデル(Subscription Model)などのように一定期間中サービスを利用できる契約形態が普及し、チャーンレート(解約率)を下げることが至上命題になったためです。顧客がサービスを利用して成功していれば解約されない、逆にいえば成功していないのなら解約されるということなので、顧客を成功させることが最も重要だと考えられるようになったのです。

カスタマーサクセスの認知度(日米比較)

カスタマーサクセスという言葉は、日本ではまだそれほど知られていません。UNIRITA社が2021年3月に行ったアンケート調査によると、知っている13%、聞いたことがある22%、知らない65%という回答割合で、知っている人はわずか13%しかいない状況に少しびっくりしました。

残念ながら、盛り上がりにも欠けています。以下のグラフは、Googleトレンドを使って「カスタマーサクセス」というキーワードがどのくらい検索されたかを日米で比較したものです。Googleトレンドは期間内のピークを100とした相対値なので、日本とアメリカの絶対値の大きさはわかりませんが、日本では2018年ごろにプチブームが来たあと横ばいなのに対し、アメリカは長い期間かけて右肩上がりにバズってきているのが見て取れます。

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図1:「カスタマーサクセス」のGoogleトレンド日米比較

カスタマーエクスペリエンス(CX)とカスタマーサクセス(CS)は違うか

実は2018年頃は、カスタマーエクスペリエンス(CX)というキーワードもバズっていました。カスタマーセントリックス(顧客中心主義)という言葉もよく使われていて、2019年2月に行われたガートナーカスタマー・エクスペリエンス&テクノロジサミット2019でも「デジタル・ビジネス時代において顧客中心主義で成功している企業に共通する10の習慣」として次のような項目が挙げられています。

  1. 継続的に顧客の声 (VoC)に耳を傾ける
  2. 顧客からのフィードバックに確実に対応する
  3. 顧客のニーズを見越し、先回りして行動する
  4. 顧客との共感を自社のプロセスやポリシーに組み込む
  5. 顧客のプライバシーを尊重する
  6. 顧客の日常生活を通じて価値を提供する
  7. エンゲージメントを維持するよう従業員のモチベーションを高める
  8. ビジョンを構築し、実行する
  9. CXの向上に対する責任者を明確にする
  10.  顧客のニーズや状況に適応する

(出典:ガートナージャパン 2019/1/29ニュースリリース)

各項目の内容を1つずつ読んでみると、そのままカスタマーサクセスに通じます。2018年に言われていた「カスタマーエクスペリエンス」「リテンションモデル」「カスタマーセントリックス」などの言葉が、「カスタマーサクセス」というキーワードに変わっただけで本質はそれほど変わらないのです。

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図2:キーワードの流行の変遷

カスタマーサクセスと顧客満足度は違う?

カスタマーサクセスを略するとCSになります。しかし、ほんの数年前までCSといえば顧客満足度(Customer Satisfaction)を意味することがほとんどでした。では、カスタマーサクセス(CS)と顧客満足度(CS)はどう違うのでしょうか。

この2つのCSは、違うといえば違うし、同じといえば同じです。カスタマーサクセスが顧客に成功体験をさせるための「取り組み」であるのに対し、顧客満足度はそれを測る「指標」で、「向上」などの言葉と一緒に使われます。つまり、顧客満足度の向上を図る取り組みがカスタマーサクセスということになります。

なぜ、ここにきてカスタマーサクセスという言葉が出現して広く使われるようになったのでしょう。その背景にはSaaSに代表されるクラウドサービスの普及があります。

もともと顧客満足度の向上というキーワードは、昔から多くの企業のスローガンに掲げられて取り組まれてきました。誰でもアンケートによる顧客満足度調査などを一度は経験していると思います。しかし、10年くらい前から消費スタイルが「モノの所有からサービスの利用」へ大きく変わり、チャーンレートを下げるための顧客満足度の向上が以前よりもさらに重要視されるようになりました。そこで、従来通りの顧客満足度という言葉を使うより、新しい言葉を使った方がインパクトありそうといったマーケティング的視点でカスタマーサクセスという言葉が急に広まったのです。

カスタマーサクセスとカスタマーサービスはどう違う?

同じCSが意味する言葉にカスタマーサービスやカスタマーサポートがあります。カスタマーサクセスとこの2つのCSは、ニュアンスも役割も違います。

カスタマーサービスやカスタマーサポートという言葉もまた古くから用いられており、多くの場合は保守サポートと同じ意味で使われます。カスタマー(顧客)にサービスやサポート(支援)を提供する業務なので、本来は前向きな業務も含まれるのですが、一般的には問い合わせ対応やクレーム受付、不具合対応などお客様側で発生する不具合や障害に対応する「待ち」の業務が中心です。

一方、新しく登場したカスタマーサクセスは、顧客満足度を高めるためにユーザーの利活用を支援したり、要望をフィードバックしたりするといった攻めの取り組みです。どちらのCSも攻めと守りの両方を担うものだ、としても間違ってはいないのですが、一般的にカスタマーサクセスは攻め、カスタマーサービス/サポートは守りの役割を課されていることが多いでしょう。また、カスタマーサクセスは今のところ主にSaaSやサブスクモデルなどで使われていますが、カスタマーサービス/サポートはそれらに限らずすべての製品・サービスで使われています。新しく登場したカスタマーサクセスの方が優れているなどということはまったくなく、どちらも顧客の成功を支えるうえで重要な取り組みです。

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図3:3つのCSの関係

CACLTVとユニットエコノミクス 

CAC(Customer Accquisition Cost)とは、顧客1社を獲得するためにかかった費用のことで「顧客獲得費用」と呼ばれています。これは、営業要員の人件費だけではなく、セミナーや展示会、コンテンツ作成などマーケティングなどにかけたコストを獲得した顧客数で割って求めます。CACの計算は期間の設定がポイントです。

例えば半年とした場合は6カ月間の営業マーケティング総費用を、期間内に獲得した顧客数で割って求めます。これを半年ごとに計算する方法もありますが、コスト投入と顧客獲得にタイムラグがあるので毎月直近6カ月を計算する方が傾向が見やすいです。

CAC = 顧客獲得総コスト(営業・マーケティング費その他)÷ 獲得顧客数

LTV(Life time Value)は、顧客が契約終了まで落としてくれるお金(利益)の総額で「顧客生涯価値」と呼ばれています。例えば、eコマースサイトの場合はその顧客がどれくらい買ってくれるかの購入履歴になりますが、サブスクモデルの場合、チャーンがない限りは毎月ずっと積算されますし、アップセルやクロスセルで増加もします。

顧客獲得にかけたコスト(CAC)は、その顧客が生涯もたらしてくれる利益(LTV)より小さくなければなりませんね。2つの比較を表す指標がユニットエコノミクス(Unit Economics)で「顧客あたりの収益性」と呼ばれます。LTVをCACで割ったものがユニットエコノミクスで、通常、3以上(かけたコストの3倍リターンがある)が望ましいとされます。

ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

カスタマーサクセスが脚光を浴びているのは、サブスクモデルでLTVを最大化するにはこれまでのような受動的(リアクティブ)なカスタマーサービスでは不十分だからです。積極的(プロアクティブ)なサポートを行うことで、(たとえそのコストがCACに積み増ししたとしても)チャーンを防ぐことができれば十分ユニットエコノミクスを大きくできると考えられるからです。

顧客の成功とは

カスタマーサクセスの直訳は「顧客の成功」です。これが実際に何を意味するのか少し掘り下げて考えてみましょう。

例えば当社で提供しているプロジェクト管理システム「OBPM Neo」の場合、顧客の成功は「このシステムを導入したことですべてのプロジェクトがうまくいくこと」です。その結果、利益率が上がり、会社の信用が高まり、社員もイキイキと仕事ができるようになる。つまり、顧客の成功とは、「期待したとおりの導入効果を得る」ということにほかなりません。

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図4:顧客の成功

先ほど、カスタマーサクセスと顧客満足度は、違うといえば違うし、同じといえば同じだと述べました。使い勝手がいい、デザインが気に入っている、利用料金に満足、保守サポートが丁寧、どれも顧客満足度を示す言葉であり、必ずしも導入効果を成功とするカスタマーサクセスと同じではないように思えます。しかし、これらの満足があわさった結果として期待どおりの導入効果が得られているかを総合的に判断するのが顧客満足度だと考えれば、やはり2つのCSは同じともいえるのです。

カスタマーの成功度は何を持って測ればいいでしょうか。サブスクモデルの場合、比較的簡単に計測可能な「利用者がシステムを有効に活用する」という指標がよく使われています。利用者が多いからといってそれが必ずしも“成功”を示すわけではありませんが、利用されていない状態であれば確実にチャーンリスクが高いことも事実です。

💎顧客の成功を定義

カスタマーサクセスを担当するCSM(Customer Success Manager)が最初に行うべきことは、顧客と一緒に成功を定義することです。何が成功かは顧客ごとに事情が異なりますので、サービス導入時に顧客とディスカッションして、理想のゴールを明確化してください。それが本来の導入目的であり、顧客と一緒に歩むカスタマーサクセスに向けた道のりのなかで、常にその目標を失わないで歩むことができるのです。 

カスタマーサクセスの取り組み

カスタマーサクセスでは、具体的にどのような取り組みが行われるのでしょうか。実は、従来のカスタマーサービスと取り組み内容がどう違うか、意外とわかっていないケースが多いです。そこでプロジェクト管理システム「OBPM Neo」を例に説明しましょう。

CS_05図5:当社のカスタマ―サクセスの流れ

この場合の「顧客の成功」は、「このシステムを導入したことですべてのプロジェクトがうまくいく」でしたね。この究極の目標は漠然としているので、これをブレークダウンして上記の「利用者がシステムを有効に活用する」という目標に落として考えてみます。このようにブレークダウンすると、次のように具体的な取り組みが見えてきます。

  1. 利用状況やヘルススコアをもとにグループ分けして解約予備軍を抽出
  2. 利用状況や課題をヒアリングする。得た情報はコンタクト履歴として共有する
  3. 課題や要望に対して誠意を持って回答し、フォローする
  4. エンドユーザーに向けて、使い方を直接レクチャーする
  5. ボイチケを使ってエンドユーザーの声(VoC)を直接取得する
  6. 要望や指摘をそのままにせず、短いサイクルで機能改善を行う

上記は一例で、実際には顧客ごとにフレキシブルにサポート内容を変更します。カスタマーサービスは「来た球を打つ」という待ちのスタンスなのですが、カスタマーサクセスは「こちらから行く」積極的スタンスなのです。

4つのタッチモデル 

カスタマーサクセスの取り組みは、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ、そしてコミュニティタッチという4種類に分類されます。ハイタッチは、定例ミーティングや1 on 1ミーティングの実施、エンドユーザー向け説明会などCSM(カスタマーサクセス担当)が直接的に顧客に提供する手厚いサービスです。これに対してロータッチは、ユーザー企業を集めてのワークショップ開催、ウェビナーの実施など、CSMが1対nで顧客を支援するサービスです。

この2つは主にCSMによるヒューマンサポートですが、もっと効率よくシステムや仕組みによって顧客をサポートするような仕掛けがテックタッチです。FAQの充実、オンボーディング動画の作成、チュートリアルのダウンロードなど、ユーザー数が多くなるとテックタッチの重要性が増します。

一般的に、ハイタッチはラージビジネス(大口顧客)、ロータッチはミディアム、テックタッチはスモール向けのサポートと説明されますが、正確に言うと図6のようにテックタッチは全ての顧客、ロータッチはミディアム以上を対象にする図式になります。そして、ユーザー会や掲示板、SNSなどをうまく活性化してユーザー同士で情報交換を行ってファンを増やすコミュニティタッチも全顧客が対象になります。

 

CS_06図6:カスタマーサクセスのタッチモデル

しかし、この解説も本当の実態を表してはいません。実際は、こんなふうにLTVの大きさで分けるだけでなく、解約リスクの大きい顧客(サクセスしていない顧客)に手厚いサポートを行ってチャーンを回避することが多いです。また、逆にロイヤリティの高い顧客に手厚いサポートを行ってアップセルを獲得したり、コミュニティタッチをリードしてもらうこともあります。eコマースなどのビジネスでLTVが脚光を浴び、マスマーケティングからOne on One重視になったように、カスタマーサクセスにおいても顧客と1社ずつ向き合うOne on Oneの考え方を導入しなければならないのです。

まとめ

カスタマーサクセスを推進するためには、顧客からのアクションを待つだけではなく、事業者側から働きかける体制が必要です。しかし、顧客が利用中の製品・サービスに何を求めていて、どこに不満があるのか、しっかりと把握するのは難しいというのが現実です。

Voice Ticketsは、エンドユーザーの「生の声」を簡単な方法で収集し、体系的に管理できます。製品・サービスの改善の方向性を適切に定め、顧客満足度を上げることで解約率を下げたいとお悩みでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

(株式会社システムインテグレータ 代表取締役会長 CCO 梅田 弘之)

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